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第十二話~助けたが~

(助けたくないなぁ……あんまり関わりたくないなぁ……)


 どうしたものかと頭を掻いていると、フォルンが霊太の服を引っ張る。


「師匠!!」


 助けよう! ということだろう。

 目の前では、エローカが今にも三人に襲われそうになっている。目撃しておいて、放置というもの人としてやってはならない行為。

 何よりも弟子にかっこ悪い姿は見せられないと霊太は動く。


「おい、そこの世紀末に居そうな三人」

「あぁん? なんだてめぇは!」

「今俺達はこっちの姉ちゃんと楽しいことをしようとしてんだ! 邪魔すんじゃねぇ!」


 やれやれと、眉を顰めていると。


(なんて……なんてことでしょう)


 またエローカの心の声だ。


(あぁ、やはりわたくしは神の愛された聖女……いつもこうです。ピンチになると必ず、わたくしに危害が及ぶ前に誰かが助けに来てくれる……今回も、だめだった。あぁ……また妄想の世界に)


 というところまで遮断する。

 霊太は、こちらを睨んでいる三人へと悠然と近づいていく。


「やるってのか?」

「そんなひょろっちぃ体でよ!」

「うら!!」


 まずは、左に居たスキンヘッドの男が拳を振るう。しかし、霊太はそれを避けることなく止めて見せた。


「な、なんだ!? 体が……!?」

「ほう。あれが霊太くんの力か。光属性による障壁? いや、呪文を詠唱する素振りはなかった……ならば、あれは」


 冷静に霊太の力について分析しているアルデンスに対し、フォルンがものすごいドヤ顔で口を開く。


「あれこそ! 師匠だけの力! その名も!」

「超能力だ。簡単に言えば、魔法じゃない力ってところか」

「……です!」


 本当は自分が説明したかったような表情だったが、霊太ならいいだろうととりあえずドヤ顔で決めるフォルンだった。

 力を説明したところで、ずっと止まっている男と後ろで動揺している二人へと霊太はあー……っと若干やる気がなさそうに声をかける。


「あんたら、今退くなら見逃してやる。だが、これ以上やるっていうなら容赦なく叩きのめす。そうだな……ほい」

「ひっ!?」

 

 どうなるのか止めておいた男を一度建物の屋根よりも高く上げ、勢いよく硬い石の地面へと叩きつけようとする。

 一ミリでも動けば鼻だけが地面につく絶妙なところで止まった男は、冷や汗が一気に流れ出ていた。


「こうなる。それか」

「うわ!?」


 また浮かせ、教会のほうを指差す。


「このまま教会に突撃させるっていう方法もあるぞ? 聞いたが、教会へ無作法な入り方をしたものはきつーい刑罰に処されるんだってな?」

 

 いったいどういう処罰なのかは霊太は知らない。しかし、この街に住んでいる者達は、そうならないように気をつけているようだ。

 前に街のゴロツキが、そんなもの恐れるか! と教会のシスターを狙い扉を壊して侵入したところ……ボコボコにされ縄で縛られたようだ。その後、数週間ゴロツキの姿は見えず、帰ってきたと思えば前とは別人のように汗水垂らして働く善人になっていたとか。

 そんなこともあり、ゴロツキたちは教会を恐れている。


「な、なんなんだおめぇは!! まさか教会からの使者か!?」

「いや、ただの旅人だ。それよりも、どうなんだ? 早く決断しないと」

 

 男を教会のほうへと向ける。

 そして、霊太はまるで野球投手のような構えをする。


「ピッチャー第一球。投げ」

「ま、待ってくれ!! ひ、退く! 退くから!!」


 霊太の言っている言葉の意味はわからないだろうが、何をされるかは理解できたようだ。投げられそうな男が必死に叫びながら、他の男たちに視線を向けた。

 すると、素直に首を縦に振る。

 

(くそ……! なんなんだこのガキは! マジでやべぇ……)

(こんな奴に関わってたら命が)


 心を読んで、戦意喪失したのを確認した霊太は少し乱暴に男を二人の傍へと放り投げる。


「いけ」

「く、くそ!!」


 最後に、威圧を込めた一言で、男たちは脱兎の如く逃げていく。


「さ、さすが師匠! 相手を傷つけずに勝ってしまうなんて!!」

「まあ、確実に精神には傷をつけたけどな。さて」


 問題はここからだ。

 助けたのは、この街でグルドンと同等かそれ以上の有名人。聖女エローカだ。なぜ聖女がこんな裏路地に居るのかはわからない。

 しかし、心を読み取ったところ、霊太はこんな予想をした。誰にも明かせないそういう趣味があって、裏路地などに行けば、そういうことをしてくる輩だいっぱい居て、そういうことをやってくれるとでも妄想していたら、いつの間にか、と。


「聖女様! 大丈夫ですか?」


 先に声をかけたのはフォルンだった。しかし、なぜか直視していない。


(はうー! ま、眩しいです……! こんなにも人が輝いているのを見るのは初めてです……!?)


 どうやらエローカから後光でも出ているのか。それで直視できないでいるようだ。


「見ず知らずのわたくしを助けて頂き、心より感謝を申し上げます。旅の方々、でしたね? 初めまして。わたくしは、このリュテュカの教会の聖女エローカと申します。もしよろしければ、お三方の名をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 聖女たらんとする態度に言動だ。

 しかし、心の中では。


(はあぁ……! 自分で聖女と名乗るとやはり……は、恥ずかしい……! でも……この恥ずかしさが気持ち良い!!)


 ただの変態である。

 それを表に出さないとてつもないポーカーフェイスに感心しつつ、フォルンから頭を下げた。


「あ、アザグ村からやってきました! フォルン・クローリーと言います! 十二歳です!!」

「別に歳までは聞いてないだろ。俺は、霊太だ」

「アルデンスと言う。ちなみに私は【ソウルナイト】だ」


 自分の正体を隠さず、普通に教えるアルデンス。その正体を聞いた刹那、エローカの表情が変わる。


「あなたが、噂の」

「ええ。おそらく噂の、だろう。しかし、私は善良な鎧。ただの紅茶好きのね」

「な、なるほど。……それで」


 アルデンスから視線を外し、霊太へと向ける。


「あの霊太様、でしたね?」

「ああ。そうだけど」

「先ほどの力……超能力という力」

「だからあれは」

「もしや、あなた様は地上にご降臨した神の使いなのでしょうか!?」

「……は?」


 いったいなにを言っているんだと霊太は硬直する。

 が、エローカは冗談を言っているような表情ではない。


「ただ見ただけで相手の動きを止める……まさしく聖典に記された神の力!!」

「そ、そうだったんですか!?」

「はい。魔力を使わず、気をも使わず、ただ相手を見ただけで動きを止め、浮かせるなど神と神の使いにしか扱えぬという神技としか思えません!」

「おお! ということは、やはり師匠は!」

「あなた……霊太様のお弟子さんなのですか?」

「は、はい! まだ何も教わっておりませんが! 弟子の証拠にこの首輪をつけてもらえました!!」


 あっ、それはと弁解しようとするが……遅かった。


(く、首輪をつけた!? そ、そんな……こんな十二歳の幼く無垢な少女に!? なんて……なんて……なんて羨ましい!!)


 おっと、やはりそうなってしまったかと眉を顰める。

 ともあれ。

 エローカは色々と誤解している。確かに、地球では神々の力。つまりは神通力とも呼ばれているものもある。とはいえ、神通力と超能力は色々と違う解釈がある力。

 霊太本人も、自分の力がどんなものなのか完全に理解しているわけじゃない。もしかすると、本当に……自分の力は。


「く、首輪? さ、さすが神の使い。こ、こんな幼い少女に首をつけるなんて」


 こういうことには初心という反応を見せるが、本当は羨ましがっている模様。


「なんで赤くなっているんですか?」

「それはだね、フォルンちゃん」

「教えなくてもいい。……あのさ、エローカさんだったな」

「は、はい!!」

「俺は、神の使いじゃない。この世界でいう異界人って奴だ。そして、この力は超能力。神技とかいうものじゃない」


 そう伝えるも、簡単には信じてもらえないようだ。やはり神を信じる聖職者として、ようやく出会えたかもしれない神、もしくは神の使いであろう人物を否定したくないのだろう。

 どうしたものかと悩み、霊太はある答えを導き出す。


「……」

「あ、あのなにか?」

「信じてもらないか?」

「……いえ、その」


 ずんずんとエローカに詰め寄る。エローカも、霊太をまだ神の使いだと信じているのか、距離を取っている。

 だが、その内に逃げ場がなくなり、壁に追い詰められる。


「なあ、お前が信じてる神や神の使いってのは」

「は、はい」


 ドン! と右手を壁に打ちつけ、顔を近づける。


「こういうことをするような奴か?」

「ひゃんっ!?」


 左手でおもむろにエローカの豊満な胸を鷲掴みにした。

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