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第九話~リュテュカ到着~

「……本当に害はないのですね?」

「ああ。中身がないけど、紳士な鎧だから心配ないと思うぞ」

「うむ。中身はないが、街で暴れるようなことはしない。誓って……あっ、紅茶が飲めるお店などはあるかな?」


 リュテュカに入る直前で、足止めをされていた霊太たち。

 理由としては、当然アルデンスだ。

 リュテュカでもかなり有名になっていた紅茶を求める怪しい鎧。それがついに街に現れた。噂通り、中身がないことを確認した警備兵は、どうしたものかとずっと悩んでいる。


 アルデンスは【ソウルナイト】だ。【ソウルナイト】とは、鎧に魂が定着してしまった変わった存在。普通にモンスター扱いをされているが、決してモンスターではない。

 似たようなモンスターで【デュラハン】という首なし騎士が存在するようだが、それと【ソウルナイト】は別だ。


 この町では、悪魔が現れたことがあるので検問はかなり厳重に厳しく行われている。

 最初は、荷物もなしに? と疑われたが、収納魔法でどうにかなっていることを証明したら、納得してくれた。しかし、アルデンスのことについてはもう十分ぐらい待っている。

 どうやら他の兵士が、この街のお偉いさんに確認を取りにいっているようだ。


「いつまで待てばいいんだ? できれば、早くしてほしいんだが」

「もうしばらくお待ちください。今、仲間が確認を取っている最中ですので」


 幸い、霊太たち以外リュテュカに入ろうとしている者達はいない。しかし、こうもずっと検問所で足止めをされていると、街のほうから視線を感じてしまう。

 そう明らかに怪しい者を見るような視線だ。

 このままでは、気持ちよく街中を歩けない。


「すまない。私と一緒に居るばかりに」


 とアルデンスが謝罪してくるが、気にするなと霊太は制す。


「俺がお前と一緒に行こうって提案したんだ。お前が謝ることじゃないって。それに旅にはトラブルがつきものだろ?」

「心が広い人だ。こんな怪しい鎧と一緒になどいたくないと思うのが、普通だと言うのに」

「普通じゃないからだよ。似た者同士、惹かれあうってことで納得してくれ」

「はっはっはっは! なるほど。では、そういうことにしておこう」


 そんなたわいのない話をしていると、上へ確認に赴いていた兵士が戻ってきた。そして、霊太たちとずっと話していた兵士へと耳打ちをする。


「わかった。申し訳ありません、お持たせして。上からの許可が下りました」

「じゃあ」

「はい。ですが、ひとつだけ」

「なんだ?」

「リュテュカに入った際、まずこの街の長であるグルドンさんのご自宅へお向かいください」

「ど、どういうことですか?」


 なんとなくだが心を読まなくても察しがつくが、つくが念のための用心しておこう。


(ひとまず手筈通り、彼らをグルドンさんの家へと通して、周囲を囲むように防衛線を張ろう)

(なるほどね)


 許可が出たが、まだ警戒心は解けていないということだろう。二人にも伝えたほうが……いや、アルデンスはともかくフォルンは隠し事が下手そうだ。

 そう思った霊太は、自分だけでも相手に気づかれないように、周囲への警戒を忘れないようにしようと決めた。


「申し訳ありません。詳しい話は長自らお話することになっております」

「……わかった。それで長、グルドンさんの家はどっちにあるんだ?」

「はい。まずこの先を真っ直ぐ進み、最初の十字路を左へ。その後、分かれ道を右へ曲がった先にあります。もし、わからなければ近くの兵士や住民にお聞きください。お手数かけますが、どうかご容赦を」

「ああ」


 こうして、霊太たちはリュテュカ内へと入ることができた。検問所から見えていたが、レンガの家が並んでいる。人々は活気に溢れており、アザグ村と比べ物にならないぐらい多い。

 よく見ると、人間以外にも亜人も多く混ざっていた。

 あの小さい髭男はドワーフという種族だろうか? アザグ村ではフォルン以外人間しかいなかったため、新鮮な光景だ。


「おおー! すごい街並みですね! 師匠!!」

「だな。さて、さっそくだがグルドンさんとやらの家というところに行くか」

「では、街並みを見つつ、ということで」


 リュテュカの街並みは、なかなかよく見るファンタジーなものだった。

 他種族同士が暮らし、魔法が私生活で活用されている。

 例えば、途中でフォルンが涎を垂らしながら食べたそうに見詰めていたアイスクリーム屋。適度な温度調整を氷の魔法で店員がやっていたり、一度に持ちきれない料理を風の魔法で浮かせて持って行ったりと、魔法が生活にはなくてはならないものとなっていた。


 フォルンも、火打石を使うより火の魔法で火を熾していた。

 しかし、霊太が期待していた街灯などは、どうやら電気というよりもランタンのように火を灯している部類のようだ。

 いや、まだ諦めるわけにはいかない。こうして魔法を生活に活用しているのであれば、雷属性の魔法を活用しているものや、場所があるかもしれない。


(とはいえ、フォルンは雷属性の魔法使えないみたいだからな……)


 アルデンスにも道中聞いてみたが、扱える魔法は地属性と光属性だという。当然だが、霊太は魔法を一切使えない。

 雷属性の魔法を使える仲間が欲しいところだ。

 

「ここ、でしょうか?」


 そんなことを思っていると、目的地であるグルドン宅へと辿り着いた。他の建物と比べれると違いがすぐにわかるほどの外観。

 長というほどなので、かなり豪華な家に住んでいるのだろうと思っていた霊太だったが、予想通りだった。他とは違い兵士が家の前に立っており、敷地も広く、玄関まで距離がある。金持ちの家のイメージとぴったり当てはまる光景だ。


「ん? 君達は」

「ここに住んでいるグルドンさんとやらに呼ばれてきた旅人だ。こっちの【ソウルナイト】の件について話があるそうだ」


 霊太から事情を聞いた兵士の一人は、なるほどと頷きもう一人の兵士へと何かを伝える。

 そして、そのまま中へと入っていく兵士は、しばらくすると執事のような格好をした白髪の男を連れて戻ってきた。


「ようこそ、お三方。私、ここで執事をしていますセルヴァと申します。以後、お見知りおきを」

「霊太だ」

「フォルンと言います」

「アルデンスだ。すまない、私が怪しい存在なばかりに」


 律儀に、執事へと謝るアルデンス。

 が、セルヴァはいえいえと笑顔で首を横に振る。


「こちらこそ、お時間を取らせてしまい申し訳ありません。ですが、これも街の治安を守るため。どうか、ご容赦ください」

「いやいやこちらこそ、忙しい中時間を取らせてしまい申し訳ない。さっそくだが、案内をして頂けるかな?」

「はい。かしこまりました。グルドン様は、応接間でお待ちしております。さあ、どうぞこちらへ」


 挨拶もほどほどに、霊太たちは執事のセルヴァの後をついていく。中に入ると、すぐ心の声が聞こえた。


(よし、三人が予定通りきたな)

(警戒を怠らないように……)

(あの鎧も怪しいが、あの白髪の青年……見た事のない格好をしている。それに狐の亜人も)


 どうやら検問所で読み取った通り、兵士達がこの家を包囲しているようだ。数にして、十五と言ったところか。三人に対して、大げさだと思うが、警戒心がないよりはあったほうがマシだろうと霊太は笑みを浮かべる。


「どうしたんですか? 師匠」

「いや、なんでもない。大きな家だなって」

「ですよね。なんだか中に入るのが、怖くなってきました」


 セルヴァが玄関を開け、中に入る。

 まず目に付いたのは、一人の男が描かれている絵画。おそらくここに住んでいるグルドンだろう。

 自分の絵画を入ってすぐ見る。

 なるほど、自分大好きなんだろうと霊太は理解した。そして、視線を上に向けると……あった。シャンデリア。左を見ても、右を見ても長い廊下が続いている。

 部屋の数はざっと左右合わせて六部屋ぐらいあるだろうか。


「あわわわ!? ま、眩しい……!!」

「ああ、色んな意味で眩しいな。ま、慣れてるけど」

「え!? な、慣れてるんですか!? まさか、師匠は貴族!?」

「違うって。ただこういう家に何度か行った事があるだけだよ。あっちの世界で」


 戦争を止めたり、人助けをしてた頃、お礼とばかりに金持ちの家に招待されたことが何度かあった。その時に、こういう内装を目にしているので、あまり驚くことがなかった霊太。

 そんな霊太に、改めて尊敬の目を向けるフォルンだった。


「外観からもそうだったが、中々豪華な光景だ」


 なにやら成金の臭いがぷんぷんする。


「お三方。こちらが応接間でございます」


 玄関前で立っていると、セルヴァが右側の部屋のドア前で待っていた。霊太たちが近づくと、まずノックをする。


「グルドン様。お三方をお連れしました」

「ああ。入ってくれ」


 部屋の中から聞こえたのは、三十代から四十代ぐらいの男の野太い声。

 一礼をし、セルヴァはドアを開ける。

 

「お邪魔しまーす」

「し、失礼しまーす」

「失礼する」


 それぞれ一言いいながら入る。

 応接間と呼ばれる部屋の奥に座っていたのは、小太りの男だった。

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