新しい場所
少し用事があり、遅くなってしまいました。
短いですが、これは前話とは別に書きたかったので……
じいちゃんは俺の為に色々な用意をしてくれていた。
まず、里美さんを相続財産管理人に任命して、亡くなった親戚の内で受取人や相続人が居ない7名の固定資産や銀行預金と保険その他を一括して〈特別縁故者〉の俺に相続手続きをせた、そしてじいちゃん個人の遺産は事務所以外を全て養子として俺に相続させ、相続税は各種証券と管理し難い遠方の土地等を現金化して、それ等を宛てた。
じいちゃんが死んだ後、里美さんが俺の財産管理人になり、最低成人までは資産を管理してくれる。
おれの手元には、じいちゃん他、親戚7名の遺産、そして親父と母さんの生命保険等
、親父を殺した病院からの和解金やバスの運転手を含めた葬儀社からの慰謝料と賠償金……。そんな信じらない程の金が残った、失くした物と比例したら嬉しくもなんとも無いが。。
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全ての手続きが終わった後、俺の居場所をどうするかの話し合いが俺と里美さんの二人の間で行われた。
前の家や親父の店には勿論戻れない、このままじいちゃんの家に閉じ込もる訳にも行かない。
話合いの結果【新しく作る】と言う事になり色々な構想の上、じいちゃんの持っていた土地に俺だけのマンションを建てる事になった。
3階建て全12室のだけど、他人には貸すつもりは無い、俺だけの“隠れ家”だ。
ほぼ俺の意見を取り入れてある。と言ってもは子供が考えるような秘密基地の様な物ではなく、ちゃんと建築基準法に基付いた外見は普通のマンションだ。
違うのは3階部分の内装と拘りの1部屋そしてその使い道だけだ。
1〜2階部分は一人暮らしや新婚夫婦向けの普通の1LDKタイプになっていて、1階の2部屋は里美さん名義で住居や事務所兼倉庫として登録する。
本当の事務所は、元はじいちゃんの物を権利移譲して【神野里美会計事務所】としてそこを使っているけれど。
3階部分は302号室~304号室迄の3部屋打ち抜きの構造になっている、外から見れば普通に見え実際玄関から入って風呂トイレ、寝室とクローゼット迄は普通の造りになっているが、リビング部分が3部屋繋がっていて、ダイニングキッチンは一つだけだ。
将来、俺が出ていく時には3人~のファミリー向け2LDKに改装をするつもりだけどね。
そして、1番拘ったのが俺の主部屋となる301号室。
この部屋は将来的には管理人室として使用の予定だが、造り的には広めのワンルームになっている、玄関を入って風呂トイレに収納があり、扉を開けると部屋に繋がっている、普通と違うのは壁の異常な厚みだ、余程高性能のコンクリートマイクでも中の音は拾えない。今の俺に最低限必要な【シェルター】だ。
約7ヶ月後に完成引き渡しとなった。
家具調度品は全てを里美さんが手配してくれた、直ぐに引っ越しが出来る状態と言われたが、あと一つどうしても持って行きたい物があった。
あの業務用冷蔵庫だ、突然親父が買ってきて三人で笑い合った、短い一時だったけれど、あの時確かに俺達三人は家族だった。そしてあの業務用冷蔵庫は俺にとって、親父の形見だ、他の物と同じに処分する訳には行かない。
業者に頼んで大型家具搬入用のクレーンが使われた、一応シートで中身が何かは見えない様にしておいたので、近所の人達にはまさか業務用冷蔵庫だとは思われていないと思う。設置が終わった時、やっと俺の居場所になったと実感した。
これからが本当の再スタートだ、じいちゃんがくれた伊勢海幸太として。
これで前置きと主要キャラの紹介&ストーリーが終わりました。
つぎから本編が始まります。
これからも、お付き合いください。。