名前 1
5話目にしてやっと主人公のストーリーに入りました。
でも、セリフは少なめです。
途中で母親が空気です。
ごめんなさい。、
産まれた時の名前は山田幸太、俺の始まりは名前の通り普通だった。
父は山田太郎、母は山田花子冗談の様に思うかも知れないけど、そんな一見平凡だけど2人揃うと奇跡の様な夫婦の間に俺が産まれた。
役所なんかで書類を出せば見本を持ってきたんじゃ無いのかと思う位の平凡だ。
サラリーマンの父と専業主婦の母と俺、貧乏でもなく金持ちでもない中流家庭でもそれなりに幸せな家族だったと思う。
俺が小4の時に父親が居なくなった、別に離婚した訳じゃ無い、何処の誰から見ても名前の通りの様にまさにお似合いの夫婦だったからな。勿論事故死や病死でも無い、行方不明と言う奴だ。
俺は子供過ぎて何も出来なかったが、母や父の両親なんかはそりゃあ必死に探してたみたいだ、捜索願いも当然出したしビラやネットで尋ね人として情報も募ったが結局手掛かりは何一つも無かった。
3年も経てば周りの環境も変わって来る、もう諦めろと言い出す人なんかはまだマシだ、父の両親なんかは母が虐待して追い出したんじゃないのか?とか、終いには殺したんじゃ?とか言いやがった。
俺の事を引き取りたいとか抜かしていたが行く訳ねぇよな。。
だって、それでも母は待ってるんだから、父が戻るのを。
離婚してないもんだから当然母子手当は出ない勿論養育費も、母の父親、俺の“たった一人の”じいちゃんが食べ物や衣服とか、色んな物を援助してくれた。
父の両親?あんなのは祖父母とは認めたくないね……
じいちゃんは公認会計士とか言うのをやっている、昔は大企業の顧問契約なんかしてた、結構凄かったらしいけど正直『へぇ〜』って感じだ
仕事柄なのか物はくれるけど金には厳しいからな、小遣いもセコイ………
中学生活も最後の一年を迎えて夏休みも終わる頃、問題が発生した。
母がある日俺に言った『アンタ高校どこいくの?』と………。
高校受験だ、俺は行かないで働いても良いと思ってた、三人家族とは言え実質は母と俺のふたり暮らしだ、じいちゃんの援助があるとは言え母も当然働いている。
だから少しでも…と思ってたが、余計な心配するなと、父が帰ってきた時おれが中卒だと父に申し訳ないと言われた訳だ。。
俺はヤバイと思ったね。行く気無かったから勉強なんて適当だった、赤点取らなきゃ良いや位の成績だ。
行くにしても負担の少ない公立に行かなければと必死だね。
俺のグレーなブレインはひらめいたね。
大企業の顧問とかやってたじいちゃんなら頭よさそうだなと。
会計とか言う位なんだし、最悪苦手な数学だけでも何とかしてもらおうと。
そして『あの人』に出合うことになる……
じいちゃんに会いに行ったら美人家庭教師が付いた。
何を言ってるんだと思うだろうが俺にもわからねぇ。。
その人は神野里美さんと言って、なんと現役の女子大生だった。
なんでこんな所にと思ったけれど、公認会計士を目指してじいちゃんの所で修行中だそうだ、聞いたらびっくり、日本一有名なあの大学らしい。
こんな美人で頭も良いとか、チートだろ。
もう、360度どこから見ても『The出来る女』って奴だな。
下から見たら流石に怒られるけど、後ろから見ても出来るオーラが流れていたね。
そんな人に教えて貰えるとか、しかも週3だぜ?じいちゃん金払ってんのか?
最初はおっかなびっくりだったけど、ある時気付いたね、この人不器用だけど実は優しいんじゃ無いか?と、教え方も上手いし、聞いたら何でも丁寧に教えてくれる
勉強の質問ばかりだったのが段々と雑談も混じり、何時しか呼び名も『里美さん』に変わっていた。
「ねぇ、里美さんは何でじいちゃんの事『お師匠様』ってよぶの?」
「最初は教わる立場だったので『先生』とお呼びしてましたが、こそばゆいから辞めろ!と言われまして、色々と変えてみたところ『師匠』とお呼びした所で少し嬉しそうな反応が有りましたので、それからですね。。」
「へぇ、じゃあ俺も里美さんの事、先生って呼んだ方が良い?それとも師匠?」
「……いえ、幸太さんは今のままで結構です。」
「じゃあ、里美さんは俺に『さん』付けは辞めてよ、せめて『君』が良いな。」
「………分かりました、では幸太君、勉強を真面目にやって下さい。」
「…………。Yes my mam。」
偶に怒られながらも勉強は進んだ。
教え方が上手いのか俺の頭が良かったのかは置いておいて、何とか第一志望の公立高校に入ることが出来た。
里美さんは大学を卒業して、そのままじいちゃんの事務所に就職した。
時偶じいちゃんの事務所に『里見さんに会いに』遊びに行ったりした。
そして高2に上がった頃にそれがやって来た。。
何時の間にか父の行方不明から7年が過ぎていた……
一般的に行方不明から7年立つと死亡届が出せるらしい……
やりやがったんだ、アイツ等が、必死に帰りを待つ俺達を差し置いてやりやがった
今まで頑張っていた母も、それで気が抜けたのか一気に元気が無くなった。
呑まないお酒を飲む様になり、家事も疎かになって行き、仕事まで辞めてしまった
このままでは母まで居なくなって仕舞うんじゃないかと本気で思った。
それを救ったのが“親父”だった。まぁ、この時はまだ親父じゃないがな……
その人は近所の洋食屋のおじさんだった、町内会で見た事もあるし何度か食べに行った事も有る、母と二人でも……父と三人でも。
そのおじさんは、落ち込む母を励まし自分の店で働かないかと言ってくれた。
働き出して半年も過ぎる頃にはは母は少し笑うようになり、お酒も辞めた。
俺も良くその店で夕飯を食べるようになった、金は払ったことは無い。。
1年も経つと心から笑える様になり、良くおじさんの話をする様になった気がする、俺もここまで来ると流石に、もしかして?と思う様に。
少し思う所も無かった訳じゃ無いが、俺はずっと頑張って父を待つ母の姿を見てきた、もういいんじゃないか?誰も母の事を薄情なんて言う奴は居ない。
こんなに幸せそうに笑ってるんだ、この人なら母を任せて大丈夫じゃないか?
もし、二人から言われたら許してあげる事を決めた。。
そしてその時がきた、高3になって年が明け大学受験が終わったばかりの頃、お店で夕飯を食べていたら二人から「話がある」と切り出してきた。
既に許すと決めている。。
「幸太君、僕は君と君のお母さんを幸せにしたい!家族になりたいんだ。せめて君の受験が終わる迄は待とうと二人で話し合ったんだ、勿論君の気持ちが一番大事だ、だからよく考えて………」
「いま、母は毎日とても幸せそうに笑っています。それなら……それだけで良いんだと思います。宜しくお願いします母と…僕を、貴方の家族にして下さい『お父さん』」
「有難う……必ず幸せにすると誓うよ、これからは二人共笑顔にすると誓う。だから君にも一つお願いがあるんだ……。」
「なんですか?」
「出来ればお父さんじゃ無くて『親父』って呼んでくれないか?ずっと夢だったんだ息子に親父って呼ばれるのが。」
「わかった、じゃあ親父おかわり。」
「お、おぅ。」
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次の日、さっそく母と親父は二人揃って市役所へ結婚届を出しに行った。
俺はじいちゃんの事務所へ報告に行った。
「じいちゃん、俺に……俺と母さんに新しい家族が出来るんだ!」
里美さんは驚いたけれども、じいちゃんは余り驚いた顔をしていなかった。
「もしかして、知ってた?」
「当たり前だろう?ワシは花子の父親だぞ、当の昔に挨拶に来ておる。『娘さんとの結婚を認めてください』とな。しかしお前には自分達から言うからそれ迄は黙ってて欲しいと言われとった。まぁワシもお前が許すなら認めるとは言ってやったがな。。そうか……許したんだな?」
「あぁ、母さんが幸せそうに笑うんだ。ずっと前から二人から話があれば許すつもりだったよ。」
「そうか………おめでとう。」
「おめでとう、幸太君」
「有難う、じいちゃん、里美さんも。」
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夕方、お店に行くと二人は帰っていた。。とんでもない物と一緒に。
「ナニコレ………」
「何って見ての通り冷蔵庫だよ、業務用のね。」
そこには銀色に輝くとんでも無く大きな業務用冷蔵庫が三人を見下ろしていた。
「家族が出来たお祝いにね、前のも古くなって来ていたし三人になるんだ、もっと頑張らないとな!これで後20年は戦える!」
「マジかよ………親父ぃ〜!」
今日、三人が新しい家族になった、とても嬉しい最高の一日…………だった。
やっと冷蔵庫の登場です。
次話は多分ダーク回です。。
先に謝りましょうか?
だが断わる!