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宅配少女孝子 2

少し長めです。

2話でここ迄は終わらせたかったので…


おかしいです!不在票です!


あ、スミマセン取り乱してしまいました。

いえ、例の不思議マンションの彼なのですがここ暫くお見掛けしません

あれは約一月前くらいでしょうか?初めての不在票をポストに入れる事が

珍しい事もあるものですと、そのときはその位の気持ちでしたが

いくつかの荷物を不在で預かったまま音沙汰一つ無く、連絡先にお電話しても

繋がりません。気になりますこれは心配です。


彼との会話は「はい」「ああ。」「ありがとう」「ご苦労様」

この4種類くらいしか交したことはありませんが、毎日の様に会っていた人なのでこれだけ見かけないと寂しい気持ちがしてきます。何でしょうコレは……。


もうすぐ最初の方の配達不在の預かり期限が終了してしまいます。

本当なら最長で2週間なのですが、超が付くお得意様なので所長からひと月は待ってみようとなりましたのに。もうすぐそれも過ぎてしまいます……


当初は旅行かお仕事かな?と思いましたが、これだけ日にちが過ぎると違うのでしょう。もしかしてお引っ越しされたのでしょうか?


実は、気になり過ぎて嫌らしい話ですが、2度程電気メーターの確認をしてしまいました。全く動きがありません。

普通なら冷蔵庫等の常時使用電力があるはずで、少しは動いていないと可怪しいはずですがそれすらもありません。微動だにしていないのです。


そう言えば、最初の不在票を入れた2日後くらいにこの辺りで落雷があったはずです

その為に停電等も起こったはずですがもしかしてそれからこの状態なのかしら?


まさか?中で死んで………………。


これは警察か消防署に連絡をしたほうが良いのでしょうか?

でも、近所から異臭騒ぎ等もありませんから大丈夫かな?

それに、何と言って通報するのかと。毎日宅配していたお客様がずっと不在なので調べてくださいとか?いやいや、有り得ませんね。。


イジメられて学校を辞めてからは家族と職場の人以外は親しい、いえ本音では職場の人とも親しくないのかも知れません。

それに彼とも別に……只の宅配人とお客様でしたし。

私一人が勝手にそんな気持ちになっていたのかもしれませんね、いつの間にか。


もう、彼には会えないのでしょうか…………




-------------------------


あれから更にひと月が過ぎてしまいました。

やはり彼には連絡も着きませんでしたね。

預かっていた荷物は全て廃棄処分となってしまいました、代金の方は引き換えでは無く全てが先払いの振込済みだったらしく大きな問題はなかったのですけどね。

本来ならば廃棄にもお金が掛かるのかも知れませんがお得意様でしたし、何より連絡も着かないのですから、その辺りは会社がどうにかするのでしょう。

はぁ、このモヤモヤした寂しさも何時か無くなる時が来るのでしょうか?

それも少しだけ寂しいような変な気持ちです。。


あの不思議なマンションや不思議な彼との毎日が何かワクワクする様な

私に違う世界を見せてくれる様な、そんな気がしていたのですが。

そんな訳ある筈が無いのですけどね。。




-------------------------


只今、夜のバイト中です。

あ、変なバイトではないですよ?例のもう一つのバイト先

近所の定食屋さんです、まかない目当てのね……。


いつもなら接客や配膳、後片付けの担当ですが今日は出前をやらされています。

出前担当のおじさんが怪我でお休みだそうで、暫くは出勤できないそうです。

それで、昼間は宅配をしていて近所の地理に詳しい私が急遽代役に。


時給を少し上げてくれるらしいですし、酔っぱらいの相手もしなくていいし

何よりもまかないさえ出るなら別に構いません。

そして次の出前先は……。


何と例の不思議マンションでした。もしかして、いや無いですね。

新しい方でも越されて来たのでしょうか?


「えーと。301号室ですか?」

ふむ、この部屋は一度も宅配で伺ったことの無い部屋番号ですね、やはりもしもは無かった様ですね。


しかし変な間取りです、3階建ての十二部屋、宅配で伺った限りでは1階2階は

ワンLDKらしいのですが、3階だけドアの間隔が広い様な気がします。

そして目的の301号室だけはなぜか狭い部屋に見受けられます。


凄い違和感ですね。。まぁ気にしても仕方がありませんね。


でも、いつ来ても素敵なマンションです。小ぢんまりとして落ち着きのある感じが

独り暮らしをするならこんな感じの所が良いかも知れません、ここなら実家から近いですし母も安心してくれるでしょう。1階か2階、いえ一応女の子なので出来れば2階がって妄想にふけっていては出前が冷めてしまいますね。


さてインターホンを…

「ピーンポーン♪」


『はい。』


「あ、出前です、あいえ、満腹亭です。」


『はい、今出まーす。』


ガチャッ!


「あーっ!」


「えっ!?」


もしもでした、なんと例の彼が出てきたのです!

2ヶ月前と何も変わらず、いえ少し髪が伸びて痩せた様な?

??思い出しました!見た事があったはずです。

1年近く前にネットで晒され、マスコミや日本中を騒がせたあの人です!


「あの?品物を…。」


「あっ!スミマセン、カツ丼とトンカツ………トンカツ好きなんですね。」

やはりこの彼は不思議な方のようです。この組み合わせはドン引きです。


「まぁ、そうなんですが。ずっと病院食だったもので久し振りに食べたくて、どっちかに選べずに両方共……」


「あー、入院されてたんですか!?どーりでお見掛けしないと。」

なんと入院とは、私とした事がその可能性を失念していましたね。

髪型や体型等もそのせいで戻ってしまったのでしょうか。

そのせいで?おかげで?正体が解ってしまったのですけども。


「えっ?あ、もしかして宅配の人??」


「はい!あの、失礼ですけどあの方ですよね?配達の時のお名前が違ったもので…」

彼の表情が変わった様な気がしました……


「あー、はい。ご存知でしたか…………」


彼の声が…悲しい様な悔しい様な怒っている様な、そんな暗い物へと。


私は馬鹿だっ!自分がイジメられてた時、独りぼっちになった時、そして大好きだったバスケを辞めなければいけなかった時に。

あんなに寂しくて悔しくて悲しい想いをした筈なのに他の人の、私なんかよりもずっと辛いはずの彼の心を気持ちを想いの痛みを何も考えずに言葉にするなんて!


何も変わらない、あの人達と同じじゃない、弱ってる人を傷付けるなんて。

傷付いてる人の痛みがわからない人間に自分がなってしまっている事に、馬鹿だ……


「あの……なんで泣いて………。」


どうやら私は泣いていたらしい。でも、これは悲しいからでも、ましてや彼への同情の涙なんかでは決して無い。ただ今の自分が恥ずかしくて情けないから……

でも、自分の事なんて今はどーでも良い、彼に謝らなきゃ、彼を安心させてあげなければ。


「こめんなさい!あの、私もう少しでバイト終わりなので。すぐに戻ってきますから待ってて下さい!」


「えっ!?」


お辞儀をして彼と一旦別れお店に戻る事に。涙を拭いて出前自転車に跨る

きっと泣いていた事はバレるだろう、戻るのに時間が掛かっている事にも何か聞かれるかも知れないけど彼の事は何も言わない、決して迷惑は掛けない。

今日はまかないは食べれないだろうけど仕方ない、どうせそんな気分じゃ無いし…


-------------------------

自転車で走り去った彼女を見下ろしてどの位だろうか?

何が何だか訳も分からずにあの時一瞬浮かんだ暗い気持ちも何時しか消えている


「ホントに来る…のか?」


まぁ断る前に去って行ったのだし多分来るのだろう。

何があるかわからないので、取り敢えずアレをどうにかしなければならない

部屋に戻ろうと振り向いた俺の足元に………


「あっ!金払ってない……」


蓋の開いたおかもちと中から覗くカツ丼とトンカツがそこに在った。


-------------------------


お店に戻ると店長と奥さんが安心した顔で出迎えてくれました。

その後、私の泣き跡やおかもちも代金すらも忘れてきている事に気付き何か合ったのかと心配をしてくれました。


本当の事も言える筈が無く咄嗟に言い訳を考えました。

出前はちゃんと届けた事、受け渡しの時に電話が鳴ってお客さんが出ても良いと言ってくれたので出てみると姉だった事、そのまま電話越しに姉妹喧嘩で口論になってしまい気が動転しておかもちも代金も忘れて泣きながら戻ってきた事。


何とか誤魔化せた様ですね。我なが上手く言い訳が出来たと思います。


家族間のプライベートなので追求される事もなく、おかもちと代金はちゃんと自分で器を引き取りに行く時に謝罪して受け取ってくると言う事を約束して許してもらえました。


その日のまかないも食欲が無い事を理由にお断りをして定時少し前には帰って良いと言ってくれてバイトを上がらせて頂きました、優しい方達です。

どうやら私はバイト先には恵まれているようです。

そして、お姉ちゃんゴメンナサイ。。今度お菓子でも持参して遊びに行こう……。




バイト後、真っ直ぐに不思議マンションに向かい301号室のインターホンを鳴らす


彼は出て来てくれて代金を払い忘れた事に謝ってくれました…悪いのは私なのに。

彼は不思議な人から良い人へと私の中でランクアップしました。。


「あの、先程はスミマセンでした。」

先ずはきちんと謝らないとですね。


「いや……まぁ、その……なんで泣いてたの?」


何だか彼も気不味そうです、私の反応を伺っているような。


「あ、その……あのですね。……………。」


「…………………。」


何を言えば良いのかわからないまま沈黙が数分続きます。

私は何をしに来たの?どうするのが正解なのでしょう…


「あの…中で話しますか?」


沈黙に耐えられなくなったのか、外で立たせている事に気を使わせてしまったのか

彼は入室を勧めてくれたのです。


「あ、では御邪魔します。」

勧められるままに玄関を潜った私はそこで気付きました


こんな時間に男性の独り暮らしの部屋に入ってしまいました。

初めての体験です……いや、こんな時間じゃ無くても初めてなのですけども。


自分の行動に驚きながらも室内をチェックしてしまう私がいました。

まぁ、これは他人の家に御邪魔したときの普通の反応ですよね、バレたら失礼な行動なんですけど。


その部屋は少しだけ広めのワンルームでした

入った事が無いのでわかりませんが、想像するに男性の独り暮らしにしては大変綺麗に片付けられて居るのでは無いでしょうか?

ゴミや雑誌そしてティッシュ……ゴホン。等が散乱している訳もなく、掃除が行き届いています。そして何故か


部屋の奥にバイト先で使っている物よりも大きな業務用冷蔵庫があるのです。

何故ワンルームに、独り暮らしの部屋にこんな大きさの冷蔵庫が存在しているのですか?やはり彼は…私の中で又彼が良い人から不思議な人へとランクダウンです。

いや、不思議だけど良い人なのでしょう。


「どうぞ座って下さい。」


部屋の真ん中にある卓袱台の横にクッションを二つ置いた彼が片方を指して言葉を掛けてくれます。私の物色はバレていない様ですね、安心です。


「ありがとう御座います。」


「お茶で良いですか?コーヒーとか?」


「あ、じゃあお茶で。」


はっ!思わず返事をしてしまいました。彼の不思議オーラに流されてしまったのか

いつから私はこんなにも厚かましく……


「あっ!スミマセンお構い無く。。」


「いえいえ、お茶どうぞ。」


出された湯呑みからとても香ばしい良い匂いがしてきます。

男性の独り暮らしだからてっきりペットボトルの麦茶か烏龍茶が出てくるのかと思っていましだが………。渋い、とても渋い選択です。まさか熱い玄米茶とは。

どうやら私は彼の事を侮っていた様ですね。


「…頂きます………。ズズズッ」


ふぅ。やはり玄米茶は落ち着きますねぇ。って落ち着いてどうしますかっ!

冷蔵庫の違和感に彼の不思議オーラで動揺していたのか。

玄米茶の癒やしによって本来の目的を忘れるところでしたよ。

私は姿勢を正し座り直して話し始めました………。


「実は私、母子家庭なんですよ。。」


「はぁ?!」


-------------------------


手出しは流石に混乱していたのか、何を言っているんだ?みたいな顔をしてらっしゃいましたが話を進める内には黙って聞いてくれました。


私は自分のこと家族の事学校の事バスケの事そしてイジメにあって高校を辞めて現在のフリーターの事等の色んな話を語り、かれはその全てを黙って聞いてくれました。そして先程の泣いた理由に続くのです。


「そんな訳で、私は他人の嫌な部分や暗い感情、妬みや嫉みとか他人を傷付ける行為や言葉に対して嫌悪感のような物を持って居ると思っていました……先程迄は。」


「……………。」


「それなのに、さっき貴方に対して酷い行為を、自分の好奇心を優先して過去を穿るように聞かなくて良い事を……そのせいで貴方に嫌な気持ちをさせてしまいました。心の痛みを知っていた筈の自分がそんな事をしてしまうなんて……自分がとても恥ずかしくて、情けなくて……。気付いたら涙がでていたのです。だから、貴方に謝る為に、安心してもらえる様にと。なるべく早くと思ってこんな時間に御邪魔した訳なんです………。」


「安心?………ですか?」


私は彼の目を見て、誠心誠意伝わる様に……


「はい!貴方の事は、ここに住んでいる事等も含めて絶対に誰にも言いません!他の誰にもわからない様に、これからも私がにもつの配達や出前も責任持ってさせてもらいます!」


「…………ありがとう。」


彼の目がそして顔が僅かに笑った様な、優しくなった様な気がしました。


「でも、出前はいいかな?」


「えっ?」


あっさりと断られました………。やはりまだ怒っているのでしょうか?

少しだけシュンとなった私を見た彼が言葉を続けてくれました。


「君も知っていると思うけど、普段は宅配サービスで食料や生活に必要な物等のほぼ全てを賄っているんだよね。今日は偶々退院したばかりで食料が無くて仕方なく出前にしたんだけれどね。でも、まさか君が出前までしてくれるなんて思っても見なかったけど。(笑)」


「あ、それは本当に偶然なんですよ?いつもは私は接客担当なので。今日は出前の人がお休みで、この辺りの地理に詳しい私が出前する事になったんです!」


「おー、そんな事も在るんだね。今日退院してきた俺が、偶々出前を取って何時もは有り得ない君が出前を届けてくれるなんて。凄い確率だよね!これも何かの縁なのかもしれない……あ、ゴメンね。。こんな怪しい……。あんな事があった俺なんかに縁があるとか言われたら………。」


また彼の表情に影が指した様な、私は全然そんな事は気にしていないのに。

むしろこうやって話しが出来て良かったとさえ思っていると言うのに…。

やはり彼は他の人には抱え切れない程の心の闇が在るのかも知れませんね。


私はもう一度彼の目を見つめて、出来る限りの明るい声で力強く言い切ります。


「そんな事絶対に有りません!こんな偶然なんてそうそうあるもんじゃないですよ?これは縁以外の何物でも有りません!腐ってもいないです、そうですね。これは良縁ですよ!」


何故かわかりませんが、突然彼が吹き出しました。先程の暗い雰囲気よりは遥かに良いのですが理由が不明です。。


「良縁って、あははっ!それは普通、お見合いとか結婚の時以外あまり聞かないんじゃないかな?(笑)」


かぁーーーっ!

そうなんですか?なんか、腐れ縁とかは言葉が悪いのでは無いかと思って普通にいい縁だと良縁って使ったのですが……恥ずかしくなって来ました。穴があったら入りたいです。あ、あの冷蔵庫なんか隠れるのに良さそうな気がします。。


赤い顔をして業務用冷蔵庫を見つている私に気付いたからかも知れません。


「あぁ、あれは父さん……親父の形見なんだ。」


「形見?ですか?冷蔵庫が??」


私が不思議に思っている事にも気が付いているのでしょう。

彼が少しだけ過去を話してくれました。。


「ウチはね、あココじゃ無くて前に家族で住んでた家なんだけどね。飲食店をやってたんだよね、家族経営の小さな店だったんだけど……父さ………親父が亡くなる前、いや病気が見つかる少し前かな?とても嬉しい事があってね。そのお祝いかな?新しく業務用冷蔵庫を買ってさ?これで後20年は戦えるっ!とか言ってね(笑)まぁその後直ぐに病気になって、殆んど新品のまま使う事も無かったんだけどね……」


「…………。」

彼は懐かしそうに微笑みながら、そして偶に寂しそうな顔をしながらも教えてくれるのです。多分、他の人には話さないであろう過去のことを、家族の事を………

彼にとって父親の呼び方は拘りの様な物が在るのかも知れません、それはきっと彼の心の中に強く存在して私には、今の私にはきっと教えてはくれないでしょう。


「そんな訳でさ?これは俺にとって親父の形見そして家族の思い出その物なんだよね。だから今ここに置いてる。」


この業務用冷蔵庫にそれ程の深い理由が……この部屋に存在する意味が解りました。

ただ、わたしが恥ずかしくて隠れるのに使って良い物ではありませんでしたね。。


「まぁ、壊れて動かないんだけどね?」


「えぇ~っ!?」


びっくりです、いきなりの爆弾を落とされました。

あれだけ真剣に大事な思い出を聞かせてくれたのにそんな事が……


「何故か退院して戻ってきたら壊れててさ?」


「あぁ、落雷………」

そうでした。彼は知らなかったのでしょうね、何せ入院されてたのですから。

どう見てもキッチンに置ける様な大きさではありませんし、この位置ならアースなんかも繋いているとは思えませんし。落雷の負荷で壊れてしまっていても不思議では有りませんし。火事にならなかっただけでも幸い……いいえ。彼にとって普通の冷蔵庫では無いのだから、幸いなんて私なんかが決めてはいけませんでした。


「落雷?それでかぁ。帰って来たらブレーカーが落ちてるし、電化製品のいくつかも動かないしで可怪しいと思ったよ。」


なぜでしょうか?大事な筈なのに、お父様の形見の筈なのに落ち込んでいるきがしません。


「あの?修理……されないのですか?」


「修理ね…するよ?絶対にする。でもそれは今はまだできないんだ!でも、いつか必ず直して見せるっ!」


………。不思議です、普通に修理と聞いてみただけなのですが、彼の内側からは凄く大きな決意の様な物が溢れているきがします。。先程迄とは違う、まるで将来の夢を語る男の決意が……



-------------------------


それから私と彼は時間を忘れて話をしました、夜も遅いと言うのに楽しくて……

いつ以来でしょうね。家族以外の人とこれだけおしゃべりをしたのは。

職場でも無かったはずです、最近では家に居辛いという理由で母とも会話が少なくなってしまっているかも?明日から、いえ、帰ったら母と話をしてみよう。

最近の事やバイトの事、そして友達?が出来た事を…


楽しい話は続きます、お互いに他人との触れ合いが無かったからかも知れません。

何時までも話していたいそう思っていました………あんな事があるまでは。。


今となっては何故かはわかりません。気配?予感?そんなあやふやな物かもわかりませんが、視線を向けたその先にアレはあったのです。


私の知る所では、ゲームや某アニメ、一部のジャンルの小説に出てくる。

そう、序盤に現れるアイツです。プルプルとした青い半透明の………


私の会話が止まり視線まで固まっている事に気が付いたのでしょう。

彼の首がまるで機械仕掛けのオモチャの様にギギギッと音さえも聞こえたかの様に

私の視線の先にあるアレに重なりました。。


「「………………………………………。」」


世の中には話したくない事があるかも知れません、いえきっとあるのでしょう

そして、聞かなければいけない事も確実に存在するのです。。


会話も、呼吸も、そして時間さえも停まったと思えるくらいの静寂の中

私は声を絞り出して彼に訪ねたのでした……


「あの……………アレは?………なんでしょうか?」


彼は今にも泣きそうに、イタズラが見つかって怒られる子犬のような縋る目で私を見詰めて囁きました。


「………………………………………。スライムです。」



見てしまいましたね?……………

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