鎌のお姉さん
ある昔・・・
おばあちゃんから聞かされたお話。
後ろに長い棒を背負った女の人に話しかけられたら、すぐ逃げなさい。
にげるの? なぁんで?
長い棒はね、人の魂を狩る“鎌”なんだよ。
たましいをかる、かま?
大きくなったら分かる日が来るわ。忘れちゃいけないよ、それの名前は・・・
「とぎ・・・、東土木!!」
なんか、呼ばれてる?
今は国語の授業でボーっとしてたら眠くなって・・・、寝た。
寝たぁぁぁあ!!??
「えっ?」
案の定、起きると国語の先生が仁王立ちしてこっちを見てる。
うわー、何で寝ちゃったんだろ。
「東土木!!廊下に立ってろ!!!」
「はーい・・・」
私は廊下に出た。
「うわぁ・・・、さむっ」
今は真冬。
暖房が効いた教室とは違い、廊下は肌寒い。
しかも授業中のせいか、廊下は静まりかえっている。
「マジついてない・・・。にしても、あの夢はなんだったんだろ?」
懐かしさを感じる夢。
鎌とか、女の人とか言ってたような?
「名前?」
何の名前?
まぁ、関係ないし。
キーンコーンカーンコーン
「やっと終わった」
ドアから先生が出て行くのを確認し、私は教室内に戻る。
職員室に呼び出しなんていやだ。なんたって私は常連なのだ。
「真奈美ぃ、またぁ?」
席に着くと、前の席の斉藤鈴華が話しかけてきた。
ちょっと、いやかなりミーハーでブリッコだが優しい子。
いまではお互い相談までする仲なのだ。
「まただよ。だって眠くなるじゃん」
「まぁね。真奈美の気持ちも分かるけどさぁ」
「鈴華、サボろうか?」
「えぇ?私はぁ、いいよ。次は社会だしね」
「あぁ、そっか。じゃあ、私は帰るわ」
「バイバイ、真奈美」
鐘が鳴る前に私は鞄を持って玄関まで走った。
早くしないと担任に捕まってしまう。
なんとか先生に見つからず走り抜けた。そのまま靴を履いて門まで。
「やっぱり閉まってるかぁ・・・」
門に行くと閉まってる。
けど、私には関係ない。
鞄を門の向こう側に投げて私は門を飛び越えた。
「らくしょう♪」
そのまま家に向かって歩き出す。
「あ、れ?ここの道って、こんなに人通りがなかったっけ?」
商店街並の大きな道。
それなのに、人が歩いてない。もちろん動物もいない。
なにか、おかしい。と思ったときにはもう遅かった。
「長い棒に女?」
夢に出てた幽霊?
確か、魂を狩る鎌だったような・・・。
「あなたのたましい、おいしそうね」
「おいしくないです!」
「わたしにたましいをくれない?」
「えっ!?」
その時にはもう、女は鎌を振り上げていた。
反射的に私はそれを避ける。
こいつに会ったときはどうするんだっけ?
どうやって逃げるんだっけ?
考えていたら、鎌が左腕に刺さった。
「(やばっ)」
思いっきり手をひく。
血はでてない。傷もついてない。
ただ、・・・感覚がなくなっていた・・・。
「あなたはもうひだりうでをなくした。あとはしんぞうのみ」
「やめて!鈴華!!」
言った瞬間、鎌は私の心臓に刺さった。
なぜか、鈴華の名前が出た。気配が鈴華に似ていたから・・・。
そのまま私は倒れた。
「真奈美のたましいはやっぱりおいしいわね」
その女は姿を消した。
真奈美は救急車で運ばれたが、もう既に息はしていなかった。
学校の屋上。
そこには鈴華の姿が。
「真奈美ぃ、魂ありがとねぇ。おいしかったよぉ」
鎌のお姉さん。
名前は『魂狩りの鈴華』