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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第ニ章 おっさんは仲間を探す
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第十六話 実技試験Ⅱ ③

    ************************


「交代の時間だ」

「お、そうか」

 静寂と闇が支配する森の中。この時間帯は魔物が活発に行動する時間帯でもある。

 だからこそ見張りは警戒を張り巡らせるが長時間続くわけもなく、交代で周囲を見張るのだ。

 ミレイユとジュディーの見張り時間になったらしくテントから出てきた。


「ようやく寝られるわ」

「僕たちは何もしてないけどね」

「アホか。俺は魔物を倒したやないか」

「それは最初頃の話じゃろ。ライ坊が言うておるのは午後の出来事の事や」

「そ、それぐらい分かっとるがな!」

 試験開始時には考えられないぐらい、穏やかな雰囲気が漂うのはこの試験ではこの場所だけだった。

 だが、それは一瞬のこと誰もがあの時の事を思い出す。


「ホンマ、情けなかったわ……」

「それは儂らも同じことだ」

 揺らめく焔を誰もが見つめる。

 その度に数時間前の出来事が鮮明に頭に浮かぶ。


「あん時、俺は逃げることしか考えとらんかった。ここで死んだら冒険者になれへんと思ったからな」

「僕も同じだね」

「儂もだ」

 しんみりとした話が突然始まったが誰もツッコミを入れる者はいない。それは無粋であると分かっているからだろう。


「私も死を覚悟した。全員が敵なんだ。けして助けて貰える筈がない。と思っていたからな。だからと言ってお前たちを責めているのではない。きっと逆の立場なら私も逃げることを選択していただろうかなら」

 ミレイユはそう言いながら包帯が巻かれ右足首を摩る。


「だけどジンだけは違った。一人だけこの試験の意味を理解し、だからと言って試験に合格するためでなく己の信念のために私を助けてくれた。その時私はとても嬉しかったと同時に己の浅はかな考えに嫌気がさしたよ」

「俺だって同じや。魔力のないお前に何が出来るんや。勇敢と無謀は違うで。って内心思っておったわ。だがあの男は見事一人で魔物の群れを倒しよった。正直俺はその姿に感動しちまったわ」

「うん、僕も同じかな。昔テレビで見た冒険者の格好良い姿に似てた」

「儂も自分が情けなくなったわ」

 誰もが一つのテントに視線を向ける。そのテントの中で誰が寝ているのか誰もが知っている。

 嫉妬もした。感動もした。だが一番は納得したのだ。

 きっとこの中で一番冒険者になることが出来る存在だと。きっと冒険者になるのに相応しい存在だと。焚き火を囲む誰もがそう思った。

 魔力が無い能無しと蔑まれ、馬鹿にされ、嘲笑われた存在がこの中で、いや、この試験を受けた受験者の中で一番冒険者になる資格があると納得したのだ。


「さて、そろそろ俺たちは寝るとするわ」

 カイたちは立ち上がるとテントの中に入り寝るのだった。


「そう言えばジュディー」

「何?」

「どうしてお前はジンが話しかけてきた時、それを信じられたんだ?」

 ミレイユが言っているのは試験が始まる十数分前の事を言っているのだとジュディーは直ぐに理解すると、笑みを浮かべて、こう答えた。


「なんとなくそう思っただけだよ」

 なんとも歯切れの悪い。いや、はぐらかす言い回しにミレイユはこれ以上踏み込むのは野暮だと察し、そうか。と答えるのだった。


    ************************


 9月3日月曜日。

 実技試験2日目。冒険者試験も今日で最終日だ。気合を入れて頑張らないとな。

 朝食を軽く済ませた俺たちは昨日の夕食時に決めた陣形で森の中を歩く。


「ミレイユ、獲物は発見出来たんか?」

「私を誰だと思っている。この程度朝飯前だ」

 昨日とは違い誰もが自分の出来る事を精一杯行っていた。うん、これだよ。これ。俺はこれを待ってたんだ。

 思わず笑みが零れるが誰にも見られることはなかった。



「獲物はここから40メートル先、11時の方角。数は21匹だな」

「ちょうど3倍の数だね。だけど」

「俺たちなら楽勝やな」

 俺たちの顔には笑顔があった。ほんと昨日までとは別人だな。俺としては嬉しい限りだけど。

 俺たちはゆっくりと敵の側面に回りこむ。そこにはホブゴブリンが戦利品を持って巣に戻ろうとしている最中だった。この現代的世界で強奪が出来るのはこの森は隔離されていないからだ。それにホブゴブリンはゴブリンよりも知能が高い。なら車一台ぐらい襲えるだけの知識は持ち合わせているんだろう。タイヤをパンクさせるとか。

 因みに前衛はジュディー、ゴルバス、ライ、後衛がカイ、ミレイユ、カルアだ。俺は遠距離攻撃も出来るので中衛だ。一人だけってのも不自然ではあるが、俺の実力なら問題ないし、それはカルアたちも昨日の戦闘で理解してくれたようだ。


「ほな、リーダー合図を頼むで」

 ただ一つだけ問題があるとすれば、


「なんで俺がリーダーなんだ。他にも適役は居ただろうに」

 ジュディーやミレイユとか。

 今朝誰をリーダーにするか議題に上がったが、満場一致で俺になった。てか、その話が出た瞬間俺しかいないって言われて即効で決まって終わったんだが。俺の意見は無視なの。


「ジン以上にリーダーに相応しい奴はこの中にはいない」

 真顔で言われても困るんだが。美女に言われるのはとても嬉しいが。


「リーダー早くしてよ」

「男なら腹を括るべきだ」

「はぁ……」

 たぶん俺がどんな言い訳や屁理屈を並べたところでも聞く耳を持たないだろうな。ならさっさと戦闘を開始したほうが良いか。


「作戦通りに行くぞ。攻撃開始!」

『おう!』

 俺の合図と同時に戦闘が始まった。


「シッ!」

「あはっ♪」

「フンッ!」

 前衛3人が一番近くの敵を一撃で倒す。一人だけ攻撃する際の掛け声がおかしかったが気にしないでおこう。

 突然の奇襲に驚くホブゴブリンたちだが、直ぐに対応して反撃しようとするが、バックアップ組みのカルア、カイ、ミレイユの攻撃で阻止されてしまう。そこからは一方的な虐殺と言っても過言ではない。圧勝。楽勝。完勝だった。正直俺も驚いている。作戦も簡単で奇襲が上手くいったのもあるが、しっかり話し合い作戦を練ればここまで機能するものなのか。ゴブリンと違ってホブゴブリンは知能も高いが身体能力も高い。ましてや数的にはこっちが不利だ。いや、コイツ等の元々のポテンシャルが高いのもあるだとう。それが上手く噛み合わさり機能すればこれほどの力が発揮されるのか。いや、まだこれは始まったばかりだ。今後一緒に冒険者活動を行えばこれ以上に発揮されるはずだ。ま、たら話だが。いやそれよりも。力を発揮したこともあってか、俺何もすることがなかった。気がついたら終わってた。俺たちより3倍の数なのに一瞬で終わった。俺合格出来るかな。


「いや~、こんなに簡単に上手く行くなんて思ってなかったわ~」

「背中を守ってくれる仲間が居るってだけで、私は安心して戦えたよ」

「儂もだ」

「私も前衛が敵を引き付けてくれているお陰で集中して攻撃することが出来た」

「す、凄いです!こんなに上手くいくなんて凄いです!」

 誰もが予想以上の結果に驚き笑みを浮かべていた。ま、当然だよな。誰だってここまで作戦通りに上手くいけば嬉しくもなる。少し怖いぐらいだからな。

 その後も何度か戦闘を行ったが、誰一人として怪我する事無く見事に魔物を倒すことが出来た。

 そして時刻は4時過ぎになり、俺たちは試験開始場所に戻ってきた。

 既に他の受験者たちも戻ってきていたが、俺たちみたいに仲良くしているような奴等はいなかった。


「開始前まで俺たちもこんな態度してたと思うとほんとアホらしいわ」

「まったくじゃのぉ~、ジンに教えて貰わなければ今頃後悔しておったわ」

 まったく別の空間を作り出す。ほんと合格者が少ないわけだよ。

 今になって改めて思う。


「なんだお前等、生きてたのか」

 苛立ちを覚えるこの声は。


「童貞野郎か」

「だから童貞じゃないと言ってるだろ!」

「なら、風俗にでも行って捨ててきたのか?」

「うっ!」

「なんだ図星か」

「おいおい、ホンマかそれ!こりゃ傑作だわ!ギャアハハハッ!」

「カイ、笑いすぎだ。事実だったとしても笑うのは失礼だろ。最近卒業君に」

「ミレイユ、オモロイこと言うなや。駄目や!オモロ過ぎて、お腹痛いわ!」

「こ、この野郎……」

 あ~あ、完全に顔を真っ赤にしてるぞ。いつ爆発して襲い掛かってくることやら。

 エリック一人に対してこちらは7人。別に人数が有利だから安心しているわけじゃない。やはりこいつも班の連中とは仲良く出来なかったみたいだと思っただけだ。


「それで、能無しと最高記録保持者がいる落ちこぼれ班はちゃんとポイント稼ぎ出来たのかよ」

「そう言うお前はどうなんだ?」

「俺か?」

 そんな俺の言葉に自信たっぷりの笑みを浮かべる。ウザッ!


「当たり前だろ。一人で魔物を何匹も倒したさ。周りが邪魔しなければもっと倒していただろがな。ってなんだその哀れな人間を見る目は」

 きっとそんな目をしていたのは俺だけじゃないだろう。だけど仕方がない。実際にそうなのだから。これほどまでに哀れな人間もいまい。


「ま、せいぜい俺が合格する姿を見て悔しがるんだな」

 大抵そう言った奴は合格出来ないのがお決まりだぞ。

 全員の受験者が揃ったところで組合が喋りだす。


「これにて冒険者試験の日程を全て終わります。合格の発表は明後日。場所は筆記試験と実技試験Ⅰを受けた冒険者専用第4訓練場で行います。それではみなさん。車に乗ってください。大変お疲れ様でした」

 トラックに乗り込んだ俺たちは帝都へと戻ってきた。ほんと疲れた。

 外食を済ませた俺と銀はホテルに戻るなりシャワーを浴びた。あ~、気持ち良い!日本人としては湯船に浸かりたいがこのホテルに浴槽はないからな。

 風呂を出た俺と銀はようやく終わったことに安心してか熟睡した。



 9月5日水曜日。

 いよいよ冒険者試験合格発表の日がやってきた。正直この日のためにこの数ヶ月間頑張ってきたんだ。ま、予定では来年の春頃に取る予定だったけど。前倒しになったと思えば問題ないか。

 実技試験Ⅰを行った1階の訓練所に整列した俺たちの前には冒険者組合の職員3名と実技試験Ⅱで試験官を勤めた冒険者十数名が並んでいた。冒険者が来る必要性があったのか疑問だが、気にしていても仕方がないので話でも聞くか。


「皆さん、改めて冒険者試験お疲れ様でした。この中には何度も試験を受けている方も居れば初めての方も居るでしょう。ですが合格であれ、不合格であれ、もう一度頑張って冒険者を目指してください。それではこれより合格者を発表します。今回は例年に無いほど優秀な受験者が多く居ました」

 その言葉に受験者からざわめきが起こる。

 話によれば合格者が出たとして最高で3人までだそうだ。それを考えれば今回は優秀と言えるのかもしれない。俺からすれば試験内容をちゃんと理解出来ていないアホ集団に感じるんだが。


「1人ずつ名前を呼びますので、返事をして前に来てください」

 その一言で訓練所内に緊張が走る。当たり前と言えば当たり前か。ここで合格すれば晴れて冒険者として活動が出来る。不合格ならば落ちる。つまり今後の人生の別れ道なのだ。


「それでは一人目。ジュディー・メルティネス」

「は、はい!」

 一瞬信じられないと言った表情をするもその返事には嬉しさが宿っていた。


「次、カイ・サイジン」

「シャー!」

 ガッツポーズをしながら前に向かう。


「次、ライ・ジャックトス」

「は~い!」

 これまた軽い返事だな。でも嬉しそうだ。


「次、ゴルバス・ドロイト」

「はい」

 全然嬉しそうに見えないぞ。あ、でも白い髭が動いてる。ニヤけそうになっているのを我慢しているのか。

 そしてこの時点で、ここ数年の一度の冒険者試験での合格者人数を突破した。


「次、ミレイユ・モスキーツ」

「私だ」

 クールを装ってはいるが、拳を作って小さくガッツポーズしているな。


「次、オニガワラ・ジン」

「ほーい」

 どうにか冒険者になれた。いや~………本当に良かったよ!マジで良かった!本当は合格出来るか不安だったんだ!だけどこれで冒険者になれた。後は冒険者活動をしてお金をためて自由自適の勝ち組ニート生活を堪能するだけだ!


「次、カルア・テカータ」

「…………」

「カルア・テカータ。居ないのですか?」

「え?は、はい!」

 信じられないと言わんばかりに口元を押さえながらゆっくりと前へ、俺たちの許へとやって来た。


「以上、7名が今回の冒険者試験合格者だ」

 そう告げられた瞬間、冒険者たちから盛大な拍手が俺たちに送られ、それに続くように受験者からも拍手が送られた。


「今回不合格者だった者たちは、次回頑張って下さい」

 そして俺たちに冒険者としての資格取得を意味する証書と冒険者カードが送られた。


「おめでとう、俺は君がなんども受験生として受けていたのを試験官として見て来た。今まで諦めずに頑張ってきたな」

「は、はい!ありがとうございます!」

 今にも泣きそうなのを我慢しながらカルアは冒険者と握手を交わしていた。


「それではこれにて冒険者試験合格発表を終了――」

「なんでだよ!」

 そんな不満と怒りだらけの声が訓練所内に響き渡る。

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