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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第ニ章 おっさんは仲間を探す
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第十五話 実技試験Ⅱ ②

 昼休憩を終えた俺たちは再び森の中を歩き回る。

 この実技試験Ⅱに明確な目標はない。つまり自分たちで魔物を探して倒せってことだ。それが仲間を作れない原因でもあるような気もするが。

 昼を過ぎ夕方になろうとしているが、俺たちは魔物と遭遇することがなくなった。


「全然会わへんな~」

 関西風男はやる気を無くしたように歩くスペースが遅くなる。

 確かに遭遇することはなくなったが、別に魔物が近くにいないわけじゃない。今ですらここから20メートル離れた茂みに魔物が数匹潜んでいるが誰も気付いていないのだ。なら、教えてやれば良いだろうにって思うかもしれないが、それではなんの意味もない。各々が協力する姿勢を見せなければならないのだから。


「なぁ~、お前さん魔法得意なんやろ。なら魔力探知で敵の居場所見つけてくれへんか」

 お!これは良い傾向じゃないか。


「何故、私がそのような無駄な事をしなければならない」

「けっ!ケチな事を言いよってからに」

 やはり駄目か。そう上手くは行かないよな。


「っ!」

 この気配……拙いな。


「ジンさんどうかしたのですか?」

「お、あんちゃん何か気付いたのか?」

 カルアの言葉を耳にした関西風男が近寄ってくる。耳良いな。てか他の奴らも平然としてはいるが聞き耳立てているな。


「この先から他の冒険者たちがこっちに向かって走って来てるだけだ」

「ホンマか~。全然見えへんで」

 俺の指差した方向に全員が視線を向けるが、声や土煙も見えない。


「それも大量の魔物に終われている」

 そんな俺の言葉と同時に森から土煙が上がる。

 それと数秒遅れで試験官でもある冒険者が慌てて声を上げる。


「君たち試験は一時中断だ!今、他の冒険者から連絡があって100匹近い魔物の群れがこっちに向かって来ているとの事だ」

『っ!』

 その言葉に誰もが危機感を覚える。


「それは拙いな。今すぐ逃げたほうが良さそうやな」

「そうだな。死んだら意味ないしね」

 なんだ逃げるのかせっかく運動が出来ると思ったのに。

 俺たちは急いで逃げる。しかしその判断が遅かったためか直ぐに最初に追われていた受験者たちに追いつかれてしまった。


「これはラッキーだぜ」

「お前は童貞野郎」

 そこには昨日揉めたエリックがいた。


「誰が童貞だ!それよりもお前らと合流できるなんて思ってなかったぜ」

 この顔間違いなく何か企んでるな。


「キャッ!」

 後ろから聞こえた悲鳴。振り返って見るとダークエルフ女が倒れていて、その前を一人の男が下卑た笑みを浮かべて走り去っていった。あの野郎わざと倒したな。


「チッ!」

 俺は急いでダークエルフ美女の許へ戻る。


「頑張れよ~」

 エリックの苛立つ言葉を耳にしながら俺はダークエルフの下へ駆け寄る。そんな俺の行動にカルア、ジュディー、関西風男、ナイフ青年、ドワーフまでもがその場に止まる。何気に良い奴らじゃねぇか。


「おいおい、何してるんや!早よう逃げるで!」

「少し待て!大丈夫か?」

「私の事は気にするな――っ!」

 さっき倒された時に右足を挫いたのか。


「カルア、ジュディー、応急処置出来るか?」

「はい!」

「任せて!」

「やめろ!私なんか置いて逃げろ!」

「その女の言う通りや!逃げたほうがええ!」

「なら逃げたら良いだろうが!だがなここで逃げてお前らは冒険者になった時家族や友人に自慢できるのかよ!」

「そ、それは……」

 俺の言葉に誰もが黙り込む。

 俺も俺だ。苛立ちと危機的状況に冷静さを欠いている。だから普段なら言わないような事を口にしている。


「どうだ応急処置出来そうか?」

「骨は折れてはいないですけど、安全な場所でしないと駄目ですね」

 銀の背中に乗せて走っても良いが、それほど速くは走れないだろう。そうなれば間違いなく追いつかれる。


「仕方がない。ここで応急処置してくれ」

「でも、そんな事をすれば間違いなく魔物に襲われます!」

「安心しろ、そんな事はさせない。銀、許の姿に戻れ」

 俺の言葉に銀は3メートルの姿に戻る。


「うわっ!急にデカくなりよった!」

「それが本当の姿だ。それよりも助かりたいのならさっさと逃げたらどうだ?」

「お前はどうするんや?」

「決まってるだろ。全ての魔物を倒す」

「それは無謀や!」

「無謀?お前らは冒険者になっても同じ事を言って逃げて仲間を見捨てて依頼を放棄するのか?」

「そ、それは……」

「ま、好きにすれば良い。銀、行くぞ!」

「ガウッ!」

 俺と銀は魔物の群れに目掛けて走っていった。

 魔物種類は殆どがゴブリンとグリーンウルフ。イザベラたちが相手にした魔物に比べれば全然低レベルだ。


「好きに暴れろ!」

「ガウッ!」

 俺も最初から0.5%の力で戦う。

 殴り、蹴りを繰り返し魔物の群れを殺していく。正直容易い。あの島にいた化け物連中に比べれば赤子の手を捻る以上に楽だ。

 後ろから襲い掛かってこようが裏拳で頭蓋を破壊し、前から来ても回りの奴らを巻き込んで殴り飛ばす。それの繰り返しだ。

 銀も久々に暴れられるのが嬉しいのか牙や爪を使って敵を殺し回っていた。

 そんな俺と銀による戦闘は僅か10分にも満たない時間で終了した。


「銀、好きな肉があれば食べて良いぞ」

「ガウッ!」

 嬉しそうに返事をした銀はグリーンウルフを食べ始めた。よし、周りには魔物はいないな。

 タオルで手についた血を拭き取りながらカルアたちの許へ戻ると。


「ん?どうかしたのか?」

 全員が驚愕の表情を浮かべて俺を見ていた。


「なんなや、お前は?」

「なにが言いたいんだ?」

 なんで驚いているのかさっぱりだ。


「お前本当に魔力の無い能無しか?」

「魔力が無いのは本当だぜ。だけど誰も戦えないなんて俺は一言も口にしてたいぞ」

 そんなに魔力が無くて戦える事が凄いかね。イザベラたちも驚いてたっけ。やはり魔力量=実力って考えは相当根強いようだな。

 ま、今はそれよりもダークエルフ美女の状態だな。


「カルア、ジュディー、応急処置は終わったか?」

「はい。ジンさんのお陰で普通に処置が出来ました。ですから明日の朝には大丈夫なはずです」

「そうか、それは良かった。ならもう夜も近いし近くで野宿できる場所でも探すか」

「待て!」

「どうした?」

 適当に散策しようとしたが、ダークエルフ美女に呼び止められてしまった。俺また何か気に障るような事でもしたか?


「そ、その……助けてくれた事には感謝する。それと私の名前はミレイユ・モスキーツだ。ミレイユと呼んでくれ」

 どう言う心境なのか分からないけど、自分から名前を名乗ってくれるなんて良い傾向だな。


「俺の名前は仁。鬼瓦仁だ。改めてよろしくな、ミレイユ」

「あ、ああ」

「さて、お前らも突っ立ってないで野宿が出来そうな場所でも食い物でも見つけに行くぞ」

「そんな事言われなくても分かってるわ!」

 関西風男たちは急いで野宿が出来そうな場所を探しに行く。

 野宿の準備が終わり、焚き火を囲みながら俺たちは夕食を食べていた。運が良いことに魔物を倒したお陰で肉は手に入ったし、この森の中でも木の実や果物が手に入った。


「ウマッ!お前料理上手だな!」

「確かに美味しいです!」

「褒めたって何もでぇへんで!」

 関西風男が作った料理を食べながら俺たちは雑談をする。試験開始の時に比べれば遥かに班の雰囲気は良くなった。


「そう言えばまだ名乗ってなかったな。俺の名前はカイや。カイ・サイジンや」

 ズルッ!


「どうしたんや急に、喉にでも詰まったか?」

「い、いや、なんでもない」

 惜しい!とても惜しい!一文字違えば凄い名前だったのに。


「僕の名前はライ・ジャックトス。得意な事はナイフで遊ぶこと」

 うん、見てたから知ってる。


「儂の名前はゴルバス・ドロイトじゃ。武器はこのハンマーじゃ」

 だろうな。

 楽しい食事は自然とさっきの戦いへの話となる。


「なんでお前はあの状況で戦えたんや?」

「なんでって、あそこで戦わなかったらミレイユが死んでたからな」

「普通はそこまで出来ひんやろ。今日会ったばかりの相手のために」

「普通って俺たちは仲間だろ」

「それは試験を受けるために組合側が勝手に決めたことやないか!」

「だとしてもだ。そもそもお前たちはこの試験の事は理解できてなさ過ぎるんだよ」

「俺たちがこの試験を理解できてないやて」

 俺の言葉にカイの額に青筋が出てくる。


「そうだ」

「抜かせ!俺はな今回の試験で5度目や!初めて試験受けるお前に何が分かるって言うんや!」

 勢いよく立ち上がったカイ。そのせいで皿が地面に落ちる。


「なら聞くが、どうしてお前らは仲間同士で協力しようとしないんだ?」

「そんなの仲間やないからや。これは試験やで。一人でも多く蹴落とそうとするのが当然やろ」

「なぜ、蹴落とす必要があるんだ?」

「そんなの10人しか受からないからに決まってるやろ!」

 やっぱりそうか。こいつらは大きな勘違いをしてやがる。


「はぁ……」

 俺は思わず嘆息する。いや、これは誰だってするだろ。こんな簡単な事にどうして誰も気付かないのか不思議でならない。


「だからそれが間違ってるって言ってるんだよ」

「何がや?」

「だからなんで10人しか受からないんだ?」

「それは冒険者試験の紙に書いてあるからや」

「それは去年の合格者人数が10人だっただけだろうが。そもそも10人しか合格者を出さないんだったら年に24回も試験をする必要がないだろうが」

「そ、それはそうやな」

「確かに言われて見ればそうだね……」

「カイは昼飯の時に俺の実力は充分に見せたって言うが、実力は昨日の実技試験Ⅰで大半が見られてるんだよ。だからこの実技試験Ⅱでは個人の実力なんかそこまで重要視されてないんだよ」

「なら、この試験はなんのためにあるんや」

「決まってるだろ。仲間との協力、全員が全員出来る事を探し考え実行する。分からなければ相談もしあう。それがこの実技試験Ⅱで求められているモノなんだよ。なんせ冒険者になればギルドに入りギルドメンバーと一緒に依頼をこなすんだからな」

「それって僕らが即席のパーティーでも協力し合えるかを見るってこと?」

「そうだ。なのにお前らと来たら全員が敵だって警戒し合うは、魔物が現れたら早い者勝ちみたいな考えで一目散に敵と戦うは。毎年10人しか合格者が出ないのも頷けるな。いや、10人もいる事の方が奇跡なのかもな」

 俺のそんな言葉に誰もが脱力する。


「なんや、そんな事やったんか。アホや。アホ過ぎるわ俺」

「確かに言われて見れば納得できる。実力を見るならパーティーを組ませる意味がないからな」

「僕も勘違いしてたよ」

「儂もだ」

 自分たちが勘違いしていたことに気付いたところで俺たちは作戦会議を行った。前衛、後衛、連携の仕方。勿論即席のチームだ。難しい連携は無理だろうが簡単な連携ならこの面子なら直ぐにでも可能なはずだ。

 夕食を食べ終わった俺たちは交代で火の見張りを行うことにした。

 カイたちのはからいで俺はさきに寝かせて貰うことになった。別にそんな事しなくても良かったんだが、せっかくの厚意だ。ありがたく受け取っておくことにした。

 因みにテントは二つあり一つは女性が使う用だ。

 最初の見張りはカイ、ライ、ゴルバスの3人。次にミレイユとジュディー、最後に俺とカルアが見張りをすることになっている。

 さて今日は疲れたから風呂に入りたいが、野宿ではそうもいかないので我慢するしかない。ま、さっさと寝たら気にならないだろう。

 俺と銀は一緒にテントの中で目を瞑った。地面が硬かったことに少しあの島で過ごした夢を見た。まだエレンが生きていて俺と銀、エレンで生活していた時の事を。ほんと辛く、理不尽で、いつ死ぬかと思いながらも生活していたがエレンと一緒に生活していた事は俺にとって掛け替えのない思い出であり嬉しくもあり悲しくもあった。

 ま、今は今で楽しいのは事実だし、明日は実技試験2日目だ。頑張らないとな。ま、今日以上に精神的疲れはないだろうけど。

 気がつけば俺は意識を深い闇へと浸けて熟睡していた。

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