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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第ニ章 おっさんは仲間を探す
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第十四話 実技試験Ⅱ ①

 9月2日日曜日。

 冒険者試験2日目が始まる。

 2日目と最終日は実技試験Ⅱである。

 実際に魔物と戦い野宿もする。言わばミニ冒険者活動と言ったところだ。

 どこの森に入るかは知らないが、カルアが言うには毎回戦闘するのはホーンラビット、スカーボア、ゴブリンなどの低ランクモンスターが生息する森らしい。ただし数年前にはランクB+のモンスターが出たこともあったらしい。

 んで、現在俺たちはその森に向けて一時間前に出発したところである。

 軽装甲機動車、74式特大型トラック2台、軽装甲機動車の順で森に向かって走行中だ。勿論正式な名前は違うだろう。ただ似た車というだけだ。それでもまるでどこかの紛争地に向かう傭兵集団のようだ。

 出発前に班が発表され7人1組が計6組あり、俺たちの班は2台目のトラックの荷台に乗っている。なんだか説明がダジャレっぽくなったが気にしないでくれ。え?気づかなかったって。やはり俺がおっさんなのだろうか。

 俺のパーティーメンバーの中にはカルアも入っており、組み分けが発表された時あと嬉しそうに話しかけてきた。

 で、他のメンバーはと言うとこれまた個性的な連中ばかりだ。

 大きな棺を背負った男、ナイフでジャグリングをする頭のネジが数本外れていそうな青年、筋骨隆々で赤黒いハンマーを使うドワーフ、無言で何も話そうとしないダークエルフ美女、金髪碧眼だが左目に眼帯をした中二病全快の少女。ほんと個性豊かなメンバーである。絶対にバラエティ番組に出られるメンバーだ。

 お、少し涼しくなった。どうやら森の中に入ったみたいだな。

 そんな俺の予想通り十数分後に目的地に到着した。

 トラックから降りた俺たちは整列されられた。

 俺たちの前には現役の冒険者12名と冒険者組合の職員1名が並んでいた。


「それではこれより冒険者試験2日目、実技試験Ⅱを行いたいと思います。試験開始は30分後。現役の冒険者2名がそれぞれの班の試験官兼護衛として同行して森の中に入って貰います」

 既に森の中だと思うのは俺だけだろうか。


「それでは行動を開始してください」

 え?それで終わり。何かもっと説明はないのかよ。ってみんなバラバラに行動してるし!これは拙い!


「カルア、この森で試験をした事はあるか?」

「いえ、ありません。たぶん他の人たちも無いと思います」

「そうか」

 それは最悪だ。初めての森は迷い易く遭難もしやすい。そんな場所での戦闘だ。一番求められるのはパーティーでの協力が不可欠。全員が自分に出来る事は何なのかを考えパーティーのために行動する。そうしなければ戦闘そのものが危険でしかない。

 なのになんだこいつらは。俺たちの班も他の班の連中も全員が全員ライバルを蹴落とすことしか考えてない。ま、その理由は分かる。誰だって冒険者になりたいに決まっている。ましてや毎年冒険者になれた人数は10人。そうなれば周りの人間が敵に見えたって仕方がない。


「なるほどな」

「何がなるほどなんですか?」

 毎年冒険者になれるのが10人なだけの理由が分かった。こいつら全員勘違いしてやがるんだ。毎年冒険者になれるのが10人だと知れば、自然とその人数が規定人数だと勘違いする。そうなれば誰だって周りを蹴落としてでもなろうとする。本当は規定人数なんてない。なのに誰もが冒険者になりたいあまり本質が見えていないんだ。最悪の図式。見えない自然に出来た迷彩。

 なるほど。逆に10人しか合格できないわけだ。


「カルア、一人でも多くメンバーに話掛けに行くぞ」

「何故ですか?」

「まさか……気づいていないのか?」

「何がですか?」

 予想外の奇襲とも言える言葉に眩暈がしそうになる。なるほど。俺の想像以上にこの迷彩は協力だ。なんせ受験回数最高記録保持者であるカルアですら気づいていないんだからな。まったく先が思いやられるぜ。


「良いから話しかけに行くぞ」

「は、はい!」

 30分後に開始するという言葉。あれはどう見ても最終通告であり、猶予なんだ。なのに誰もその事に気付いていない。きっと武器の最終確認や現場に慣れておけって意味に捉えてるんだろうが、全然違う。

 苛立ちを抑えながら俺、カルア、銀の2人と1匹は一人一人パティーメンバーに話しかけていった。


    ************************


 俺の名前はパイク・ウェストバン。今年で38になるAランク冒険者だ。

 俺は現在組合からの依頼で冒険者試験の試験官兼護衛兼現役冒険者リーダーとしてここに来ている。正直またかと思う光景だ。

 何度もこの依頼を受けてきたがいつも同じ光景だ。全員が獰猛な獣の目をして敵だと、蹴落とす対象と思っている。誰もがそれが間違いだと気付いていない。この試験の本来の意味を。


「パイクさん、アイツ」

「お、ほう……」

 いや、一つだけ訂正しよう。どうやら今回はいつもとは違うようだ。

 同じ班の仲間に話しかける青年。


「たしかアイツは」

「はい。この冒険者試験において初めての魔力無しの受験者です」

「因みに昨日の実技試験の結果は?」

「瞬殺です」

「ほうそれは凄いな」

 正直どこにでも居るような青年であり、この試験で一番似つかわしくない。だがこの中で一人だけこの試験の本来の意味を理解している。


「これだからこの依頼は断れないんだよな」

「そうですね」

 運が悪いことに俺はあの青年が配置された班の試験官じゃない。ま、それは試験が終わったあとあの班の担当だった冒険者たちに聞けば良いか。


「そろそろ出発の時間だな」

 俺は自分の依頼をキッチリと完遂するとしようか。でないとかみさんに怒られるからな。


    ************************


「それでは実技試験Ⅱ開始です」

 職員の声と同時に試験が開始された。

 最悪だ。班の仲間全員に話しかけたがまともに話を聞いてくれた奴は一人だけ。それも一番個性が強そうな眼帯少女だ。それ以外は全滅だ。話しかけた瞬間に殺すぞ宣言されたり、近づいただけで武器を向けられたり、無視されたり、最終的には逃げられる始末だ。


「ほんと前途多難だな」

「まだ始まったばかりじゃないですか。こっから頑張りましょ。ね!」

「そうだよ。落ち込んでても始まらないよ」

 そして別の意味でも予想外だったのが、この眼帯少じゃなくて、ジュディー・メルティネスが中二病じゃ無かったことだ。なら何故眼帯をしているのか不思議だが、今はどうでも良い。

 身長155前後。武器は腰に携えた2本のククリナイフ。鞘に収まっていて全体は分からないがきっと魔導武器だろう。


「それで2人はどんな武器を使うの?」

「私は2丁拳銃です。勿論魔導拳銃です」

「俺は拳だけだ。知っていると思うが俺は魔力がないからな。魔法支援は期待しないでくれ。一応遠距離攻撃なら出来る。で、こっちは銀は大抵の初級魔法なら使える」

「そうなんだ。なら私とジンが前衛でカルアが後衛かな」

「ま、3人でするならそうだろうな」

「だけど、それじゃ駄目なんでしょ?」

「ああ」

 この試験でもっとも試されるのは仲間との連携だ。なら一人でも多く仲間が居た方が効率も良いし、安全だ。だけど他の連中は自分の事だけで頭が一杯のようだ。まったくどうして面倒なことだらけなんだ。

 その後は周囲を警戒しながら俺たちは森の奥へと向かう。

 試験が開始されて1時間ようやく魔物が俺たちに接近してきた。


「ガウッ!」

「ああ、そうだな」

 どうやら銀も気付いたらしく敵意を剥き出しにして吼える。

 気配から察するの数は10匹。全てがゴブリンだった。この程度なら俺じゃなくても余裕で倒せるだろう。

 よし、全員に伝え――なてくも大丈夫みたいだな。

 気配を察知したのか分からないがどうやら敵が近づいていることに気がついたみたらしく、全員が戦闘態勢に入っていた。


「それでどうするの?」

 本当に俺の指示に従うみたいだな。これなら安心だ。


「今回は何もしない」

「え、戦わないんですか!」

「今欲しい情報は他の奴らの戦闘スタイルだ」

「なるほどね」

「勿論危険と判断すれば戦闘に参加するが、それ以外は観戦だ」

「でも、それだと……」

「カルア、焦るのは分かるが今は我慢だ最悪の状況を考えて行動しなければ今後冒険者になったとしても直ぐに死んでしまうぞ。それにまだ試験は始まったばかりだ。そんなに焦る必要もないだろ」

「そ、そうですよね」

 どうにか冷静になってくれたか。さて、他の奴らの力を見せて貰うとするか。

 静寂とかした戦場に緊張が走る。聞こえてくるのはそよ風で揺れる草木だけ。しかしそんな静寂を破ったのは茂みから飛んできた一本の短剣。

 キィン!


「こんなボロイ武器で俺を攻撃するとかアホやろ」

 棺を背負った男はそんな事を口にする。てかこの世界で関西弁ってが聞けるとは思ってなかった。ま、関西弁なのか微妙だけど。


「それで死んでくれてたら僕的には嬉しかったのにな~」

「なんか言うたか餓鬼」

 おいおいまだまともな戦闘も始まってないのに仲間同士で喧嘩するなよ。

 思いやられる気分になりながらも戦闘は開始された。

 襲撃が通用しないと判断したゴブリンが茂みから出てきたのだ。ほんとこいつ等ってバカだよな。

 濃い緑の肌をした身長120センチの#醜鬼__ゴブリン__#どもは戦術もなにも無しでただバカの一つ覚えのように突っ込んできた。


「こいつらは俺の獲物や!」

 関西風男は棺から銃を取り出す。てかどんだけ銃が入ってんだよ。

 俺がそんな事を思っている間にも戦闘は進んでいく。

 関西風男とナイフ使い青年が嬉々としてゴブリンどもを殺していく。


「で、似た武器を使う二人からしてあの二人はどうなんだ?」

「凄いですね。無駄弾を使う事無く一撃で敵の頭を撃ち抜いています」

「あの青年も凄いよ。アクロバティックな動きはしてるけど一切の無駄がない。投擲技術も高いしね」

「そうか」

 やはり俺の考えは間違っていなかった。どういうわけか俺が注目した殆どの受験者が同じ班にいる。残念ながら一番戦ってみたかった奴は別の班のようだけど。

 結局戦闘は関西風男とナイフ青年の二人によって終了した。俺的にはドワーフとダークエルフ美女の戦いも見て見たかったが、それは別の機会で見れるだろう。

 今回の試験ではゴブリンを倒してもお金は出ない。勿論それは他の魔物でも同じことだ。そのため倒した魔物は放置するのが一般的らしいがダークエルフ美女によって燃やされてしまった。火属性の魔法が使えるのか。それも無詠唱で。外套を着込んでいて武器も見えないが魔法を使うそぶりも見せなかったことから考えて相当魔法を練習したに違いない。


「放置してもかまへんかったのに」

「アンデッド化する可能性もある。それにこの私に醜い小鬼どもの死骸の中をあるけと?」

「これまたキッツい女やな」

「さっきから思ってたけどそのバカみたいな喋り方ってなに?」

「おい餓鬼俺に喧嘩売ってんのか?そうなんやろ!」

 だからなんでお前らは直ぐに喧嘩になるんだよ。それとナイフ青年。そんな言い方はしないほうが良い。一部の住人を敵に回すことになるからな。

 どうにか宥める事に成功した俺たちは先へと進む。疲れた。なんで俺が初対面の奴らの喧嘩の仲裁なんかしないといけないんだよ。

 そのあと何度か魔物と遭遇し戦闘を行った。

 大半は関西風男とナイフ青年が倒したが、ダークエルフ美女とドワーフの戦いかたも見ることができた。

 ドワーフは予想通りハンマーを使っての攻撃だった。連続した攻撃には時間がかかるものの一撃一撃の重さはこの中ではダントツだろう。

 ダークエルフ美女の武器はこれまた変わっていてマスケット銃型の魔法銃だ。先端には銃剣も装備できるようだが大半は遠距離からの攻撃が基本だ。それだと魔力量の消費が激しいかと思ったがそんな事はないようだ。よほど魔力量が多いのだろう。

 お昼になると俺たちは休憩のため開けた場所で昼食をとる事になった。


「それにしてもこれで間違いなく俺は合格やな!」

 冒険者たちに自分の実力を見せ付ける事が出来たと思ったのか既に合格した気でいる。本当にバカだ。確かにそれも目的の一つだろうが、実力は昨日の実技試験Ⅰで見られてるんだよ。それなのに勘違いしやがって。


「それに比べてお前ら3人は大変やな。まだ1匹も敵を倒してへんなんて。ま、その敵を俺が倒してしまっとるんやけどな。ガハハハハッ!」

 大口を開けて笑う関西風男。ああ、こいつ褒められたら調子に乗るタイプだ。絶対にそうだ。

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