第八話 食事会
イザベラの案内で二階にある客室へとやってきた。
清潔感漂う綺麗な客室にはキングサイズのベッドと豪華な家具にドリンクバー、そして大量の本がテーブルの上に山済みになっていた。
「なあ、イザベラ」
「なに?」
俺は山住になっている本を指さしてイザベラに問う。いや、問う必要もない。何となくあの本が何なのか理解している。それでも問わずにはいられない。もしかしたら間違いであるかもしれないしな。
「あの大量の本はなんだ?」
「勿論、試験勉強に必要な教材よ。既にお父様に頼んで編入試験の申し込みはして貰ったわ。明後日が試験だから今日から、これまでの倍頑張って貰うわよ」
「あれ?おかしいな。今日は休みって言わなかったか?」
「そんなのあるわけ無いでしょ。今日ライルビードに到着するから朝の試験勉強をなくしただけよ。それに試験が終われば一週間は遊べるんだし良いでしょ?」
良いでしょ?じゃない!これまでの倍なんて俺の身体が保たん!今までも十分地獄だったのに倍なんて俺にどうなって欲しいの?臨死体験でもさせたいわけ。ああ、こんなにツッコんだの何年ぶりだよ!
「ほら早く座って。始めるわよ」
「別に今から始めなくても明日からでも――」
「何か文句でも?」
「いえ」
流石はオッサンの娘。迫力パネェ。
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私の名前はハロルド・ネイズ・ルーベンハイト。このルーベンハイト領を治める領主だ。
書斎に戻った私はパソコンに映し出された報告書を読み終わったところだった。
先日、愛娘であるイザベラが炎龍に襲われたと知らせがあった。神童と呼ばれている娘でも炎龍を相手にするのは無理だ。そのため私は即座に娘たちの救出と炎龍撃退の部隊を編成し送り込むつもりだった。しかし送り出す直前になって炎龍が討伐されたと言う報告がセバスから届いた。まさか娘たちが倒したのか?最初そう思った。しかし話によれば禁止区域で救出した青年が一人で倒したと言う。いったい何の冗談かと最初は思った。
だから私は娘から詳細を聞いた。
硬化魔法の魔方陣が組み込まれたアサルトライフルの弾丸ですら易々と弾く炎龍の鱗を石ころで貫通させ、腕力だけで翼を千切り、拳で胸を貫いたと言う。正直愛娘の言葉でも信じられなかった。
「だが、兵士達の報告書を読んでしまうとな………」
思わず呟いてしまう。パソコンには娘と共に装甲列車に乗っていた兵士たちからの報告書が映し出されている。そこには娘と同じ事を書いている。忠義に厚いロイドですらだ。そしてこうも付け加えてられている。何が起こったのか理解できない。あれは本当に人間なのか?有名な冒険者じゃないのか?色々な憶測が記されていた。それは私も思うところだ。
いったい何者なのか?住民票には記載されていない。セバスに聞いても私の口からお答えすることは出来ません。の一点張りだ。その口ぶりから正体を知っている事だけは分かる。セバスは私が信頼できる数少ない人物の一人だ。そして何よりこの私に何十年も仕えてくれている筆頭執事だ。忠義も厚い。そんなセバスが口に出来ないとはいったいどんな人物なのか。想像できない。
「やはり、イザベラと彼に直接聞いてみるほかないようだ」
先ほどは時間が無くて聞けなかったが、今日の夕食の後にでも聞いてみるとしよう。
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疲れた……。頭が熱くて痛い。別に風邪で熱があるわけじゃない。勉強のしすぎで知恵熱が出ただけだ。だが、今からは俺が待ち望んだ夕食の時間だ。この間に少しでも回復しないと、本当に死んでしまう。
イザベラの案内で向かった食堂は20人は余裕で食事が出来るテーブルのある部屋だ。いったいどれだけの家族がいるんだ。それともメイドや執事たちも一緒に食べるのかと思いきや、席に座ったのは俺を含めて7人だけだった。
一番奥にこの家の当主であるハロルドのオッサン。オッサンから右側の席にイザベラと同じ淡い青色の瞳を持つ女性、きっと母親が座り、その対面には一人の好青年が座り、母親の隣にイザベラ、その対面には少女、たぶん妹だな。が座っていた。で、俺はイザベラの右隣に座っていた。普段はロイドが座るらしいが、客人でありイザベラを救ったということもありここに座っている。で、ロイドは俺の対面に座っている。なぜこいつの顔を見ながら食べたないといけないのかと文句を言いたいところだが、仕方が無い。
「さて、食事の前に簡単だがジン君に家族の紹介をしておこう」
いや、そんなのは良いからさっさと食事をさせてくれ。内心そんな事を思うが勿論表情にはだなさい。
「まず、妻のライラだ」
「初めましてジンさん。娘を助けてくれて本当にありがとうね」
「あ、いえ。最初に助けて頂いたのは俺ですので」
貴族のご婦人ってこうもっと威厳や権力を振りかざしてくるイメージがあるんだが。なんともお淑やかな人だ。だが、やっぱりイザベラの母親だな。顔が似ているし、スタイルも良い。イザベラと違うところがあるとすれば性格だろうな。イザベラと違って優しそうだし。
「で、こっちが息子のライオネルだ」
「初めましてジン君。イザベラの兄のライオネルだ。気兼ね無く話しかけてくれると嬉しいよ」
金髪碧眼でイケメンだけど嫌味を言ってくることも無いし好感が持てそうだ。まさに好青年って感じだ。
「で、そっちが末っ子のリリーだ」
「初めまして、リリーって言います。お姉さまを助けてくれてありがとう」
まだ礼儀作法の勉強中なのか少しぎこちなさがあるものの、それも見た目と相まってとても可愛らしい。あ、一つ言っておくが俺はけしてロリコンではない。俺の好みは申し訳ないがライラさんのような人だ。え、年上好き?馬鹿野郎俺は今年で37歳だ。別に可笑しくはない。見た目は18歳ですけど……。
おっと、こっちからも挨拶をしておかなくては。
「初めまして、鬼瓦仁と言います。イザベラ……様には倒れている所を助けて貰いました」
危ない危ない。敬語なんて久々すぎて困る。危うくイザベラを呼び捨てにするところだった。
「ねぇねぇジンお兄ちゃん」
「なんだ?」
しまった思わずいつも癖でタメ口で問い返してしまった。今は反省したばかりなのに!
だが俺の言葉を気にした様子もなく、リリーは目を輝かせながら口を開いた。
「銀色の狼を飼ってるって本当?」
「飼ってはいないな。家族だから」
「そうなんだ。見せて貰える?」
「こら、リリー。食事前になんてはしたない」
「御免なさい……」
ライラさんがリリーを叱る。怖いとは思わないがやはり母親だな。
「御免なさいジンさん」
「いえ、大丈夫です」
ふぅ、今度は大丈夫だったな。
「ジン君敬語が苦手ならいつも通りで構わないよ」
「では遠慮無く」
これで、楽になる。ん?ロイドが睨んでいるが知ったことではない。
「リリーも見たいのなら食事の後で見させて貰うといい」
「そうします」
こうして自己紹介が終わりようやく食事が始まる。待ってました!ってしまった!俺ナイフやフォーク持てないのにどうやって食べろと言うんだ。そんな冷や汗を流しながら思考を巡らせる間にも料理が運ばれてきた。
どうすればって思ったが俺の前に出されたのはサンドイッチだった。俺は思わず、イザベラに視線を向けると、
「(料理長には私から伝えて置いたから問題ないわ)」
と小声で言ってきた。ああ、なんて心遣いの出来る優しい女性なんだ。これが先ほど俺に地獄を見せた女性とは到底思えない。
「(今、失礼な事考えてなかった?)」
「(イエ、ナニモ)」
忘れていた。こう見えてイザベラは鋭いんだった。
「どうしてジンお兄ちゃんだけ、サンドイッチなの?」
そんな当たり前の疑問を投げかけてくる。
さて、どう説明したものか?
俺は一瞬、イザベラに視線を向けると軽く頷いた。どうにかして誤魔化せと言う事らしい。
「昔、とある女性に呪いと受けて、武器となりうる物はすべて持てないんだ」
「それってナイフやフォークも?」
「そうだ」
ま、名前を出すのは流石に駄目だからな。はぐらかさせて貰うがこれで誤魔化せただろう。
「それは不便だね。つまり剣や銃も持てないって事だろう?」
「そうだ」
ハロルドのオッサンが質問してくるが、いつも通りと言われたので普段通りに答える。ああ、気兼ね無く話せるってこれほどストレスの溜まらないものだったんだな。
「あら、それは不便ですわね。でもどうやってそれで炎龍を倒したのかしら?」
『っ!』
その言葉に部屋の隅で待機するメイドや執事達が驚きの表情を浮かべる。どうやら知らされていなかったみたいだな。でも、これは面倒な事になりそうな予感だ。イザベラに視線を向けると「なんとかしろ」とアイコンタクトで返って来た。無茶な。
「それは……拳で」
「まあ、それは凄いですね。ぜひその力を見せて貰いたいですね。ねぇ貴方」
「ああ、その通りだ」
やっぱりそうなるよな。てかライラさん誘導尋問が上手だな。とんだくわせもんだぜ。
「ま、機会があれば」
「ええ、楽しみにしていますね」
近いうちにお披露目しないといけないだろうな。その後は他愛も無い会話をしながら夕食を終えた。ああ、またこれから地獄の試験勉強か。嫌だなぁ~。そんな憂鬱な気分で食堂を出ようとした時だった。
「すまないがジン君、このあと書斎に来てもらえるか?」
「分かった」
何か悪いことでもしたか?
「よかった。イザベラ案内を頼むよ」
「分かりました、お父様」
そう言ってハロルドのおっさんは先に書斎へと向かう。
俺は一度寝室に戻る。銀にご飯をあげるためだ。食堂で一緒に食べたかったが、流石に駄目だとイザベラに言われて大人しくしてもらっていたのだ。
「銀、ご飯だぞ」
イザベラが用意してくれていたらしく豪華な肉料理を床に置いた。俺よりいい物喰ってないか?
そんな俺の気持ちなど知る由もなく銀は嬉しそうにご飯を食べ始めた。
「銀、悪いがこれからハロルドのおっさんのところに行ってくる。って聞いてないな」
完全にご飯に夢中になっている銀。まったくこの俺の話より飯か。この食欲魔狼め!
廊下で持っていてくれたイザベラに案内され俺は書斎へと向かった。
「お父様、イザベラです。ジンを連れて来ました」
「入りたまえ」
扉の向こうから聞こえた了承の言葉にイザベラは扉を開け中に入り、俺も続いて入る。そこにはハロルド、ライラ、ライオネルの3人が待っていた。どうやらそれなりに大事な話し合いのようだ。リリーが居ないのはまだ小さいからだろう。
「さあ、座りたまえ」
俺はハロルドのおっさんに言われるがまま、対面のソファーに座った。イザベラはライオネルの隣に座っている。この高級なソファーを独り占め出来るのは有難いが、いったい何を言われるのやら。
「さて、君を呼んだのは他でもない。君についてだ」
「え?」
「おや、随分と驚いているようだが、どうしてだい?」
俺の反応にハロルドのおっさんの目が鋭くなるが、それは当たり前だ。
「てっきりイザベラから全て聞いているものだと思っていたからな。俺が蜥蜴野郎を倒した事も話しているみたいだったし。イザベラ話してないのか?」
俺の言葉に全員の視線がイザベラに集まる。おい、どうして視線を逸らす。
「ほ、ほら、あれよ!こういうのは私からじゃなくて本人から聞いたほうが真実味があるじゃない!ねえ、お母様」
「ええ、そうね」
いやいや責任転嫁するなよ。どうせ忘れていたとか、そんな理由なんだろうが。ライラさんも乗らないで欲しい。
「それじゃジン君。教えて貰えるかな?炎龍を瞬殺出来る力とその理由を」
おいコラ。愛娘だからって納得するな。でも仕方が無いか。世話になってるわけだし。でも、
「その前に一つ聞きたい」
「何かね?」
「あの蜥蜴野郎、そんなに強いのか?俺にはそんな感じはしなかったが?」
「「「…………」」」
「はぁ………」
おい、どうしたんだ急に驚いた表情なんかして。イザベラも何で嘆息なんかしている。失礼だぞ。
「ジ、ジン君。それは本気で言っているのかね?」
「当たり前だ。逆に俺からしてみれば嬉しい限りだ。あれだけ大きければ数日は飯に困ることは無いからな」
あれだけの大きさがあれば、一週間は持つな。その間は自由自適な昼寝が出来る。なんて素晴らしい。
「イザベラ。彼はいったい何者なのかね?」
「(ジンの馬鹿。だから言いたくなかったのよ)」
ん?なんか罵倒された気がするがよく聞こえなかったぞ。
「イザベラ、聞いているかね?」
「あ、はいお父様。ジンは………そ、その……送り人なんです」
「なにっ!」
信じられないと言わんばかりの表情で俺を見詰めてくる。全員俺より美形だからな。そんな素っ頓狂な表情をされると優越感に浸れて嬉しいぜ。
「ジン君。それは本当かね?」
「ああ、本当だ。俺はあのクソッタレな女神によって転生させられたんだ」
「随分とアリエス様の事を嫌っているんだね」
「当たり前だ。あの野郎のせいで俺がどれだけ苦労して、何度死にかけた事やら」
今思い返しても腹が立つぜ。
「絶対いつかアイツに文句言ってやる!」
「そ、それは……叶うといいね」
ああ、絶対文句言ってやる。
「おっと話がそれたね。それで君の実力を知りたいんだが、ステータスを見せて貰っても良いだろうか?」
「俺は別に構わないが、イザベラとの約束で他人に見せるなって言われてるからな」
「イザベラ構わないね」
「一つだけ、条件があります」
先ほどとは打って変わって真剣な面持ちでハロルドのおっさんを見つめるイザベラ。美人が真面目な顔をすると凛々しいな。
「何かね?」
ハロルドのおっさんも何か察したように真剣な面持ちになる。ダンディな男が真剣な表情をすると良い絵になるが、腹が立つな。これだからイケメンは。
「絶対にジンを利用しないと約束してください。これはお兄様もお母様もです」
どうしてそんな事を言うのか分からないが、きっと保護者としてあたりまえな事なんだろう。俺も銀を利用しようとする奴が居れば容赦なくぶん殴るだろうし。
「分かった」
「ええ、私も構わないわよ」
「僕も異論は無いよ」
「分かりました。ジンお願い」
「分かった」
俺はポケットからスマホを取り出しステータス画面を開いてからハロルドのおっさんに手渡す。もしかしたらまたイザベラの時みたいに怒られるかもあのクソ女神を怒らせたことについて。それは面倒だな。
「「「…………」」」
「ん?なぁイザベラどうして三人は目を見開いたまま動かないんだ?」
「ジンこれが自然な反応なの」
「そうなのか」
俺にはよく分からないが、まあ放って置こう。そのうち現実に戻ってくるだろうし。
数分してようやく我に返った三人。長くないか?
「ジン君。これはどう言うことだい?」
「どうもこうもないと思うが?それが俺の実力だ。正直俺には分からん。測定不能ではっきりしないからな」
「なるほど、イザベラが言いたいことは良く分かった。もしも誰かが知れば取り込もうとするだろうからね」
「分かって貰えてなによりです」
俺にも分かるように説明してくれ。
「ジン君」
「なんだ?」
「はっきり言って君の力は異常だ」
異常って酷い言われようだな。
「これまで通り誰にも見せることはしない方が良いだろう」
「それはイザベラとも約束したからな。見せるつもりはない」
「そうか、それは良かった。さて物は相談なんだが、ジン君我が家の兵士にならないかね?」
「お父様!」
「じょ、冗談だよ!そんな怖い顔しないでおくれ!」
イザベラに迫られて小さくなってる。まったくお茶目なおっさんだな。
「嬉しい申し入れだが、俺は冒険者になるっていう夢があるからな。悪いが断させてもらう」
「そうか」
「さて話は終わりか。俺はそろそろ寝たいんだが」
「ああ、もう十分だよ」
「なら、部屋に戻る」
「ジン、今から試験勉強するから」
「うっ」
ちっ、忘れてなかったか。このまま上手くいけば寝れると思ったのに。俺は憂鬱な気分になりながら寝室に戻るのだった。
「イザベラは悪いが、少し残ってくれ」
「分かりました」
お、どうやら家族会議が始まるみたいだ。なら、この気に俺は寝ると――
「言っておくけど後で見に行くからね」
うん、笑顔で脅さないでくれ。夜眠れなくなるだろう。
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嘆息しながら出て行ったジン。まったくどうしてあんなに面倒臭がりなの。やはり保護者としてちゃんとした人間にしないと駄目ね。
「さてイザベラ。電話でも話したと思うが」
はぁ、結局その話なのね。
「電話でも言ったでしょ。結婚する気は無いって」
「だが、同世代でお前より強い奴なんて――」
「ジンさん」
「え?」
「なん……だと?」
私達の会話にお母様が入り込んできた。別にそれはおかしな話じゃないけど、口にした言葉が問題だった。お父様も含め、私達は驚きを隠せなかった。
「同世代でイザベラより強い人となると、もうジンさんだけよ」
「な、何を言ってるんだ!」
「だいたい、私はこの話は最初から反対していた筈ですよ?」
え?そうだったの?私は初めてお母様の考えを知り、少し驚いていた。
「確かに娘は十八になって成人はしましたけど、まだ学生です。それに好きでもない相手と結婚なんて私は反対です」
この世界では男女とも十八歳になれば成人として認められている。大抵の貴族はそれまでに婚約し、学園を卒業後に直ぐに結婚する。歳が離れていればまた変わってきたりもするけど。
「だが、イザベラには幸せに――」
「好きでもない相手と結婚して本当に幸せになると思っているのですか?」
「そ、それは婚約してからデートしたりしてだな……」
「その相手が変な性癖を持っていたり、浮気性でも良いのですか?」
「うっ………」
お父様はとうとうお母様に反論出来なくなった。でも、この光景に驚く事はない。既に何度も見てきたから。お母様はお父様の考えに対して口出しや反論することは少ない。だけど家族の事になるとお母様はハッキリとモノを言う人だ。私はそんなお母様に憧れてるし、大好きだ。
「確かに、ジンさんとの付き合いはまだ一週間程度ですけど、実力だけで言えばイザベラの要望に当てはまると思いますけど?」
「そ、それはそうだが、彼は貴族では……」
「あら、相手が貴族である必要があるの?私は娘を心から愛し、養ってくれるのであれば貴族でなくて構いませんよ」
公爵夫人としてあるまじき発言をしていることに誰もが驚く。しかしその言葉に対して反論出来る者はお父様ですら無理だった。
「………分かった。この話は無かった事にする。結婚はイザベラが決めた相手とする。勿論厳正な審査はさせてもらう。これで良いな」
「ええ、それで構いません」
「僕も異論はありませんよ」
「私もです」
はぁ、良かった。お母様の力によるところが大きいのは確かだけど、これってジンのお陰でもあるのかな?そんな事はないよね。
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