第七十九話 じゃあな
あれから月日は流れ、8月25日土曜日がやってきた。今日俺はこの国を出る。まさか国外追放処分で出る羽目になるとは思ってなかったけど。
電車で国境を越える予定だが、それまでは二人の軍人が見張りに付くそうだ。
犯罪者とは言え手錠を付けたまま電車に乗るわけじゃないらしい。本当はつけるようだが、きっとルアルあたりが口ぞえしてくれたんだろう。ありがたい事だな。
それと二度目の裁判のあと記者会見が行われたらしい。俺は牢屋の中だったので後から教えて貰ったが、これまで息子の仕出かした事を見過ごして来た事を全て話し、王族、貴族であろうと罪を犯したものは平民同様に厳正なる裁判を以って裁く事を記者会見で発表した。また、それに伴う法の改正なども行っていくようだ。
また見過ごしてきた事への罰として王族にもそれなりの罰が与えられることになったが、それが何なのかは俺には分からないし、興味がない。どうせ国を出るんだしな。
んで、駅には何故かイザベラたちが見送りに着てくれていた。本当なら駄目らしいがこれもルアルの口ぞえしてくれたに違いない。
「ジン君。君には家族を何度も助けられた。なのにこんな形で別れなければならない事に悲しく思うよ」
「死ぬわけじゃない無いんだ。また会えるさ」
「それもそうだな。その時はまた屋敷に遊びに来てくれたまえ」
「ああ、その時はまた宜しく頼む」
「ジンさん、その時は婿修行を受けて貰いますからね」
「婿修行?」
「お母様!」
普通は花嫁修業だと思うんだが。
「ジン君、その時はまた模擬戦の相手をしてくれると嬉しいね」
「ライオネルの相手は色々と頭を使うから苦手なんだよな」
「君にそう言ってもらえるのは嬉しいね」
握手を交わしていると、服を引っ張られる。
「ジンお兄ちゃん。どっかに行っちゃうの?」
「少しこの国を離れるだけだ。またこの国に来るさ」
「本当に?」
「ああ、本当だ」
「その時はリリーと結婚しようね!」
『なっ!』
リリーの言葉に女性人の驚きの声が聞こえるが、小さい子がお父さんと結婚するって言ってるようなものだろ。
「あら、うふふふ。こんな近くにライバルが居ましたわね」
「ぐぬぬぬ。娘は絶対にやらないからな!」
いったいあの二人は何を言ってるんだ?
「リリーが結婚できる年になっても俺の事が好きなら、その時に考えるとしよう」
「本当に?」
「本当だ」
「約束だからね!」
「ああ」
そう言うとリリーはライラさんの後ろに隠れてしまう。やはりまだ子供だな。
「ジンさん。カピストラーノ家の会社で働く件はどうするおつもりですの?」
「保留にしておいてくれ」
「分かりましたわ。もしもその時が来たら必ず我が社で働いてもらいますわよ」
「ほどほどに頼むぜ」
まったくいつだって元気で自信満々だな。で、なんで俺はイザベラたち女性人に睨まれてるんだ?
「貴様を倒すのは俺だ」
「久々に話す最初の言葉がそれかよ。オスカー」
「そうだ。必ずお前を倒す。それが俺の目標だ」
ぶれないなコイツは。
「ジンさん~、あまり話すことは~ありませんでしたが~またお会いしましょう~」
「アイリスも元気でな」
「はい~」
何度も思うがその喋り辛くないのか?
「まったく担任は何回かしましたが、これほど問題を起こした生徒は初めてですよ」
「悪いなエレイン先生」
「反省してないでしょ」
「まあな!」
「はぁ、貴方と言う生徒は。ジン君、貴方は短い間でしたが、私の受け持つ生徒でした。ですから体には気をつけてくださいね」
「病気はした事がないから、心配ないよ」
「怪我はよくしましたけどね」
返す言葉も無いな。
「それではお元気で」
「ああ」
「ジン君……」
「真壁、お前も見送りに来てくれたのか」
「一応同じ冒険科だったしね。それにようやく僕のやりたいことが見つかったから」
「そうか。それはよかたな。だけど忘れてないか?」
「何が?」
「俺は退学だから、武闘大会には出られないんだ。つまり個人戦で四番目の成績だったお前が二学期の大会に俺の代わりに出場するんだぞ」
「確かにジン君の言う通りですね」
「俺は優勝するつもりでいたからな。必ず優勝しろよ」
「これは大きな土産を残されちゃったな。でも精一杯頑張ってみるよ」
「ああ、それで良い」
さて、次はジュリアスたちか。
「まったく馬鹿だ、馬鹿だとは思っていたがここまでとはな」
「酷い言い草だな」
「事実だろうが」
確かに。
「体には気をつけるんだぞ」
「分かってるよ。ジュリアスもまた一人の部屋になっちまうが頑張れよ。前みたいな事が起きたら今度は誰かに相談しろよ」
「ああ、そうするさ」
握手を交わす。やはり女だな。あんまり会わないと忘れそうになる。
「レオリオ、フェリシティー、エミリア、悪いな」
「お前の無茶振りは一緒にチームを組んだ時から知ってたからな」
「ええ、ですから問題ありません」
それはそれで悲しいんだが。
「ジ、ジン君元気でね」
「ああ、いつの日かお店に食べに行くからな」
「絶対だよ」
「絶対だ」
全員と握手する。エミリアにいたっては握手すると同時に号泣してしまったが。いつもは元気だがこういう場面には弱いらしい。女の子らしくていいと思うけどな。
さて、最後はイザベラとロイドだな。
「お前の事は最初から気に食わなかった」
「安心しろ俺もだ」
「不真面目でいつも怠けようとする。だがイザベラ様を何度も救ってくれたことには感謝している。ありがとうな、ジン」
「俺はしたいことをしただけだ」
「そうだったな」
互いに笑みを浮かべて握手をした。
さて、最後はイザベラか。
「5ヶ月だな」
「え?」
「俺とお前が出会ってから丁度5ヶ月だ」
「そ、そうね」
「色々あったが、楽しかったぜ」
「私も楽しかったわ。それで、ありがとうね。何度も助けてくれて」
「前にも言っただろ。助けるのは当たり前だって」
「本当はあの時だって助けてくれたのに酷い事を言ってごめんなさい」
「謝る必要はねぇよ。俺が黙っといてくれって頼んだんだからな」
「そうかもしれないけど……」
「出発時に泣くなよな。縁起が悪いだろ。それよりも武闘大会、個人戦、団体戦とも優勝しろよ。俺がいないんだ。楽勝だろ?」
「ええ、必ず優勝するわ。そして次に会ったら必ず倒してみせるわ!」
「ああ、その意気だ」
これで全員と挨拶が終わったな。これだけの人間が俺の為に集まってくれたのかありがたい事だな。
「おい、そろそろ出発の時間だ」
どうやらもう時間のようだな。
俺は銀を抱えて電車に乗り込む。
「それじゃ皆、またな」
その言葉と同時にドアが閉められるのだった。
どうも月見酒です。
これにて第一章終了です。
長かった気もしますがあったいう間でしたね。
ここで少しぶっちゃけた話をしますと、最初この話「中身がおっさんの異世界放浪録~なぜ、こうなった!!~」を思いついた時、イザベラたちと過ごす話を書くつもりはありませんでした。本当は第二章から書く予定でしたが、世界観や話の流れ的に書かないと矛盾を起こすと感じたりしたので書くことにしました。でもまさかここまで長くなるとは思いませんでした。超ビックリ!
この後の展開も色々と考えていますので是非楽しみにしていてください。
また、アルファポリス様にて「鬼神転生気~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~」を書籍化しておりますので、書店で見かけた際は手にとって貰えるととても嬉しいです。また続きが読みたいという方はアルファポリス様の公式サイト等で読めますので、読んでもらえると嬉しいです。
それでは機会ありましたらお会いしましょう。




