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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第一章 おっさんは冒険者を目指す
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第六十七話 魔物殲滅戦 下

 これで少しは部下たちの負担も減るはず。

 ――クラッ。

 一瞬視界が歪む。

 残り3割ってところかしら。思った以上に魔力を使いすぎたわね。

 それでも私は隊長として前線で戦わなければならない。

 斬って、斬って、斬って。ただ目に付く魔物を屠っていく。

 ゴブリンだろうが、ブラックウルフであろうが、なんであろうが、ただ全力で倒していく。

  ――クラッ。

 まただわ。どうやら魔力だけでなく体力も消耗しているようね。でもここで倒れるわけにはいかない。お父様が援軍を送ってださったんだもの。それまではなんとしても戦わないと部下の士気に関わる!


「ギャアアッ!」

「うるさい!」

 背後からゴブリンが襲い掛かってこようとも倒す。

 ただ同じことの繰り返しながら魔物を屠る。

 そんな私の前にオーガウォーリアが現れた。まるで私の人生に立ちはだかる大きな壁のように。


「グギャギャ、グギャググギャ」

 喋っているつもりなんでしょうが、まったくわからないわよ。ただ私の事を馬鹿にしていることだけはその表情を見れば分かるわ。

 この乱戦では部下に助けを求めることはできない。私が倒すしかない!


「はああああああぁぁ!」

 咆哮を発しながら私は目の前の敵に目掛けて魔導剣を振り下ろす。

 キィン!

 全長2メートル近くある鉈で受け止められる。魔物中で腕力に優れたオーガ。その中でも戦闘に特化したオーガウォーリアに簡単に攻撃が当たると思っていない。でもまさか片手で止められるとは思って無かったわ。

 これまで単独で倒した事がある最高ランクはA-。それよりも一つ高いランクA。このオーガウォーリアを倒せば事故新記録だけど。今はそんな夢に浸っている場合じゃない。ジンだって言ってたじゃない。我武者羅に戦ってたって。

 醜くても、無様でも構わない。私は貴族として隊長としての使命のために私は戦う!

 って、なんでこんな時にアイツの顔が浮かぶのかしら。大事なときに助けにも来ない最低男のことを。


「グギャギャ、ググギャギャ」

「その耳障りな声を今すぐやめなさい!」

 アイツの顔を思い出した瞬間これまで抱え込んできた不満が一気に爆発した。


「もっと真面目になりなさいよ!」

「グギャッ!」

「面倒面倒って聞き飽きたわよ!」

「ギャギャッ!」

「眠いじゃないわよ!」

「ギャグギャッ!」

「私だってずっと寝てたい日ぐらいあるわよ!」

「グギャッ!」

 ほんとどうしてあの男は不真面目なのよ。堕落を貪るし、気がつけば寝てるし、面倒な事からはすぐに逃げるし、保護者である私の気持ちも少しは考えなさいよ!


「この怠惰の化身が!」

「ギャアアアア!」

 不満を口にするたびに振っていた剣は今までに無いほどの威力だった。きっと怒りでリミッターが外れたのね。

 でも、そのお陰で私はオーガウォーリアを倒すことが出来た。その原因がジンだと思うとまた腹が立つけど。

  ――クラッ。

 駄目だ。リミッターを外したせいで体力が。


「ギャアッ!」

「しまっ――!」

 後ろから襲い掛かってきていたゴブリン。普段ならすぐに対処できるけど、体力を消耗した今の状態では避けることもできない。

 ごめんなさいお父様。ごめんなさいみんな。

 私は死を覚悟した。

 そして恨むわよ、ジン。一生後悔すると良いわ。


「ガアウッ!」

 視界にいた醜いゴブリンが一瞬にして白銀の毛並みを持つ神狼に変わる。


「ギン!」

 元の姿に戻っていたギンはゴブリンを噛み千切る。


「クウゥ」

 鼻先を私の頬に擦り付けてくる。心配してくれてるの?貴方はジンと違って優しいわね。


「大丈夫よ。少し休めば動けるわ」

 そんな私の言葉にギンはその場に伏せる。


「ガウッ!」

「まさか、背中に乗れってこと?」

「ガウッ!」

 はいってことのようね。


「ありがとう。なら遠慮なく乗らせて貰うわ」

 ゆっくりと私は跨る。なんて綺麗で手触りの良い毛並みなの。

 いつもはカワイイと感じるギンだけど、今だけはとても勇ましく心強い味方だわ。


「ゥオ―――――ォン!」

 乱戦の戦場に響き渡る遠吠え。

 それはまるで、自分は此処に居るぞ。と敵味方に教えているようだった。

 そして何より消耗して鈍くなっていた体に力が湧き上がってくる。ほんと頼りになるわね。


「行くわよ、ギン!」

「ガウッ!」

 は、速い!なんて速さの!高速、いえ、神速と言っても過言ではない速さ。両手でギンの毛を握り締めていなければ振り落とされそうになるほど速い。

 高速で流れていく景色。

 そんな景色に一瞬魔物が死体と化す瞬間が映りこんでくる。まさか、この移動中に敵を殺しているの。

 後ろを振り返れば敵の死体で道が出来ていた。凄い……。

 一度ギンとも戦ったけどまさかこれほど速く走れるなんて。ジンが本気は出してないから安心しろ。って言ってたけど本当だったのね。


「ってそんな事より、ギン!もう少しスピードを落として!」

 徐々にスピードが落ちていき止るギン。


「クウゥ……」

「別に怒ってるわけじゃないわよ。ただあのスピードでは私が戦えないの。だからもう少し遅く走ってくれる?」

「ガウッ!」

 なんて賢いのかしら。ジンの数百倍は賢いでしょうね。もしもギンが人の姿になったらきっとモテたでしょうね。

 その後はギンと一緒に魔物を倒しながら移動し続けた。

 簡単な指示を出すだけで察して移動するギン。私が知る限りどんな戦車や戦闘車両よりも優秀で最強だわ。


「どんどん倒すわよ!」

「ガウッ!」


    ************************


 一対一でこの男と戦い始めてどれぐらいの時間が経過したのか分からない。

 5分なのか。10分なのか。はたまた1時間なのか。

 ただ分かるのは未だに聞こえてくる戦場の音とこの戦いも終わりが近いと言う事だ。

 ま、正直最初か本気で戦えばこの男に負けることは無い。だけど本気を出せばイザベラたちに気づかれるし、なにより魔物が感じ取って暴走する危険性があるかもしれないからな。


「ま、その心配も必要ないだろうが」

 肩で息をする謎E。

 最初は拮抗していた戦いも徐々に俺のほうが優勢になってきて数箇所に指突によって血を流していた。それでも倒れないのは致命傷を与えられてないのと、ずば抜けた精神力によるものだろう。


「それじゃ、そろそろ終わりにするか」

「その考えには賛成だ」

 どうやら負けるつもりはないらしい。まったく凄い自信だな。

 互いに地面を蹴って攻撃を繰り出す。

 他人から見ればまるで忍者同士の戦いにも見えるかもしれない。周囲の木々を足場にしたりして戦っているからな。

 俺はまたしもて奴の攻撃を躱して指突で攻撃。


「くっ!」

 奴の右胸に刺さった。

 これまで致命傷は無かったが、やはり怪我と長時間の戦闘で体の動きが鈍くなっていた。そのせいか躱す体力もなかったようだな。

 男はそのまま数メートルしたの地面にどうにか着地する。


「もう終わりだ。今の攻撃は肺にまで達している。それじゃまともに呼吸するのもむりだ」

「どうやらゴボッ!」

 喋ろうにも血反吐を吐く始末。


「俺の人生もこれで終わりか。呆気ないものだな」

「俺よりお前が弱かった。それだけだ」

「ああ、その通りだ。だが最後に勝つのは俺たちだ」

「それはどういう意味だ?」

「ふふ、俺たちの仲間はもう一人いる。きっと仲間が……」

「そいつならお前らと戦う前に殺しておいた」

 俺はポケットから一枚の布切れを取り出す。模様も入っていない。緑色の布切れを。


「ふふふ、結局依頼は失敗か」

「どうせ喋る気はないんだろ?」

「ああ。俺は最後まで一人の暗殺者として死んでいきたいからな」

 なんでこうもプライドが高いかね。嫌いじゃないが、馬鹿だろ。


「最後はお前の手で殺してくれ。弱者が強者に討たれる。戦いが生まれた時からの世の常だからな」

 未だに外套で顔は分からない。見せるのは死顔だけってか。


「分かった」

 苦しまないようにと俺は指突で奴の心臓を突き刺した。

 楽しそうに、満足げにあの世に行った姿に俺は、ふとアイツと重ねていた。


「さてと、どうするかね。一応ハロルドのおっさんに連絡しておくか」

 スマホを取り出して電話する。


『もしもし、君から電話なんて珍しいね。それでどうかしたのかい?』

「ああ実は今イザベラに頼まれて禁止区域に来てるんだが」

『そうみたいだね。まったく客人を戦場に連れ出すとはまったく』

「いや、別にそれは構わないんだが。ちょっと問題が発生してな」

『危険な状態なんだろう。既に援軍は送っているから安心したまえ』

 それならイザベラたちは安心だな。


「いや、そうじゃなくてだな。今回の魔物の群れ襲撃事件なんだがな。どうやら人為的に起こされたものだと分かった」

『それは本当かね?』

 一瞬にして声音が変わる。


「ああ。俺は魔物の群れを作り出したと思われる集団。だいたい分隊規模の奴らと戦闘を終えたところだ」

『なるほど……それで奴らの狙いは?』

「確信は無いがスナイパーが狙っていたのは――」

『そうか。よく知らせてくれた。戦闘が終わり次第セバスたちに調べさせるとしよう』

「なら、俺は――」

 話していると上空を数台の戦闘ヘリが爆音で通過していった。


「なんだありゃ?」

『私が送った援軍だ。どうやらもう戦いは終わりそうだ』

「そうか。なら最後に頼みがある」

「頼み?」

「ああ、実は――」


    ************************


「ギン、今度は右翼のタリスたちを助けるわよ!」

「ガウッ!」

 頭に上っていた血も体に当たる風で冷やされて冷静になった。それにギンが移動してくれるから肉体強化にそれほど魔力を使う必要はない。


「次の目標は凶暴樹木(バーサーエント)よ。やつらの弱点は火。一気に焼き尽くすわよ!」

「ガウッ!」 

 高速で移動した私たちは陣形を維持しながら戦うタリスの許まで近づく。


「タリス、大丈夫?」

「イザベラ様!どうしてここに?」

「私の持ち場は既にギンが手伝ってくれたから、あらかた終わったの。だから援軍に来たわ」

「申し訳ありません」

「気にしちゃだめよ。今まで陣形も崩さずに持ちこたえてるんだから。それでこちらの被害は?」

「はい!今のところ死傷者は出ていません。負傷者が数名出ましたが、重傷者は1名のみです!」

「偉いわ。よく頑張ったわね」

「い、いえ!」

 今にも泣きそうだけど我慢しているのが分かる。なら私も頑張らないとね。


「ギン、周りの森に燃え移らないように凶暴樹木(バーサーエント)を焼き尽くしなさい!!」

「ガウッ!」

「ちょっ!」

 なんで凶暴樹木(バーサーエント)の群れに突っ込んでいるのよ!


「ギン、止まりなさい!」

 だけど私の指示に従うことなくギンは凶暴樹木(バーサーエント)の群れに突っ込むと前足と口で攻撃していく。

 でもそりゃじゃ、また再生する。凶暴樹木(バーサーエント)は地面からエネルギーを吸収すればなんどでも復活する魔物。だから燃やすしかないのに!


「え?」

 振り返りると何故か凶暴樹木(バーサーエント)たちは燃えていた。どういうこと?

 しかしその答えはすぐに分かった。

 ギンが攻撃する瞬間、牙や爪に炎を纏わせて攻撃していた。


「凄い……」

 ギンはこんなことも出来るの。

 原理で言えば魔導武器に魔法を纏わせるのと同じ。だけど肉体そのものに纏わせる事は私たちにはとても難易度の高い技術。それをギンは生まれて一年で扱えるなんて。天才だわ。

 ジンとは違う。天才であり強者。

 いえ、ジンの奇抜な発想を一つ一つチャレンジしていき出来るようになったのかもしれない。なんせギンを強くしたのはジンなのだから。

 そんな事を考えているうちに凶暴樹木(バーサーエント)は全滅していた。


「クウ?」

 これで良い?って聞いてるのね。


「ええ、完璧よ。ありがとう」

 返事はしないけど尻尾がバタバタの揺らしていた。でもやっぱりまだ子供なのね。こんなに大きいのに。


「ギン、次は左翼――」

 その時上空に数台の戦闘ヘリが姿を見せた。まさかあれがお父様が言っていた援軍。ってそれどころじゃないわ。


「総員、一時撤退!ヘリの攻撃に巻き込まれるわよ!」

 私の言葉に全員が一斉に装甲列車まで撤退する。

 ほぼそれと同時に耳を押さえたくなるほどの爆音と同時に魔物への攻撃が開始された。

 今回は空を飛ぶ魔物は居なかった。だから制空権の奪い合いの心配はない。だからといって派手に撃ってるわね。

 空からの弾丸の嵐に魔物たちは抵抗する隙さえ与えられることなく、殲滅されていく。

 それでも生命力が強いもの頑丈な魔物は未だに動き続けている。なんで森に帰らないのかしら。いえ、今はそんな事考えている場合じゃないわね。

 ヘリからの攻撃が止んだ。今だわ。


「総員、三度攻撃か――」

『その必要はありませんわ!』

「その声は!」

 ヘリから飛び降りる数名の影。しかし私がよく知っている人物だった。


「アンドレア、オスカー、アイリス!」

 同じチームメイトたちだった。


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