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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第一章 おっさんは冒険者を目指す
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第六十四話 戦闘開始!

 セバスの運転で駅までやってきた俺たちの前には初めて見る装甲列車が待機していた。


「前に乗った奴とは違うな。色替えしたのか?」

「違うわよ。ルーベンハイト家が勝有するもう一台の装甲列車よ。前のは炎龍との戦闘で破損していて、未だに修理中よ」

「なるほど」

 装甲列車がもう一台って。なにこの大富豪。マジで呆れる。


「そんな事より乗り込むわよ」

「へーい」

『イザベラお嬢様お待ちしておりました!』

「うおっ!」

 兵士たちが駅に響き渡るほどの声でイザベラを出迎える。まった驚かせるなよ。俺心臓悪いんだからな。この体になってから病気になったことはないけど。


「出迎えご苦労様。それより準備は出来てるかしら?」

「はい!弾薬、食料、燃料と全て多めに積み込んでおきました!」

「よろしい」

 駅に漂う空気が一瞬にして変った。初めてこの場に来た奴ならきっと重く息苦しく感じるだろう。

 戦場へと赴く兵士たちの顔に恐怖は微塵もない。それどころか威風堂々としたイザベラの姿に誰もが安心しやる気に満ち溢れていた。学園で見るイザベラとは大違いと言うより別人のようにも思えるほどだ。


「イザベラお嬢様、一つ質問してよろしいでしょうか?」

「何かしら?」

「後ろに居る奴は前に禁止区域で助けた奴ですよね。どうしてここに居るのかお聞きしても宜しいでしょうか」

「今回ジンには助っ人として今回の討伐に参加してもらうつもりよ。また炎龍に襲われないとも限らないしね。その時のための保険よ」

 なんだその言い方だと討伐には参加させて貰えないのか残念。


「確かに炎龍を一人で倒した事はここに居る誰もが目撃した事実です。ですが部外者を戦場に出すのは如何なものかと」

「今回は私が必要として判断しました。それに不満があると?」

「い、いえ!滅相もありません!」

 ま、どこの馬の骨かも分からない奴が助っ人ってのはこれまでこの都市を守ってきた兵士たちからしてみればいい気はしないよな。


「なら行くわよ、魔物討伐に!」

『はっ!』

 イザベラの後に続いて俺は装甲列車に乗り込む。

 外装はとても物騒なのに中はほんと高級感漂っているよな。俺としては内装に金をかける必要があったのか疑問に感じるところだが。

 そんな事を思っていると後ろでロイドと兵士たちが何やら話していた。


「(ロイド様、本当にあの男を連れて行くのですか?)」

「(仕方あるまい。お嬢様が決めたことだ)」

「(しかし炎龍を倒したのはマグレっと言う噂も兵士たちの間では流れています。本当に信用していいものか)」

「(奴の強さに関して心配する必要はない。なんせスヴェルニ学園で行われた武闘大会個人戦学園代表選抜において、奴はイザベラ様を倒し優勝して代表者になったなのだからな)」

「(あの男がですが!)」

 なにやら話しているが小声のせいか全ては聞き取れない。ただ俺の方を見て兵士たちが驚いているのだけは見て分かる。


「(ああ。つまり現スヴェルニ学園最強はあの男ということだ)」

「(ですが、学園最強であろうと所詮は学生。イザベラ様やロイド様のように実戦経験を積んでいるわけではないでしょう。それを考えれば最悪ただの役立たずになる可能性だってあるのでは?)」

「(それに関しても無用だ。詳しいことは言えないが、奴はこの場にいる誰よりも魔物との戦闘を経験している)」

「(信じられません……今だって戦場へと赴くところなのに呑気に欠伸をしているような男がですよ)」

 いったい何を話しているのやら。それより俺の部屋はどこなんだ。昼寝の途中だったから正直眠くて仕方が無い。


「貴方たち一体何しているの!早く準備して乗り込みなさい!」

『は、はい!』

 イザベラに怒鳴られて急いで準備を整えた兵士たちが乗り込んでくる。


「イザベラ、俺の部屋はどこだ?」

「ジンの部屋は隣の車両の手前から二番目よ」

「分かった。なら到着するまで寝かせて貰うな」

「相変わらず警戒心が低いわね。よくそんなんであの場所を生き抜いたわね」

「別に警戒してなわけじゃないさ。それにずっと精神を張り詰めていたって疲れるだけだしな」

(まったく気楽なんだから)

 呆れた表情を浮かべるイザベラをおいて俺は自分の寝室のベッドで昼寝をするのだった。

 目を覚ましたのは午後2時30頃の事だった。

 思いのほか早く目が覚めた俺は食堂へと向かうとイザベラとロイドが話し合っていた。


「よく眠れたみたいね」

「二時間も寝てないぞ」

「昼寝には十分でしょ?」

「俺としてはあと数時間は寝ていたい気分だがな」

「魔物の郡と戦うと言うのに呑気な奴だな」

「気を張っていても疲れるだけだからな。それであとどれぐらいで到着するんだ?」

「明後日には到着するはずよ」

「随分と早いな。前は一週間近く掛かったのに。どこから襲ってくるかなんて分からないもの」

「それもそうだな」

「夕食の準備は出来ているけど食べる?」

「ああ、貰うよ。銀も腹をすかせているようだしな」

「分かったわ。セバス、料理長に頼んで持って来て貰えるかしら?」

「畏まりました」

 って居たかよ!ほんとあの老紳士は神出鬼没だな。

 今回の夕食は肉が入った生春巻きだった。野菜のシャキシャキとした食感と肉の旨みが絶妙にマッチしていて美味かった。因みに銀は3キロステーキだった。


「それで何を話し合っていたんだ?」

「魔物の群れと戦うにはどこが一番最適な地形なのか地図を見ながら探しているのよ。それに合わせ陣形や作戦も考えないといけないしね」

「そんな事までしないといけないのか。軍人ってのは大変だな」

「ジンも冒険者になればするのよ。見ていて損はないわよ」

 そんな事言われても作戦なんて団体戦の時に思いつきでやっただけだからな。


「だいたい、ジンはあの場所で戦う時はどうやって戦ってたの?群れと戦うこともあったでしょ?」

「勿論あったが、大抵は一番近い奴から片っ端に殴り飛ばしてただけだからな。作戦も陣形も考えてなかった。力が無い時は群れを相手にはしなかったし」

「行き当たりばったりね」

「集団を相手にする時のコツはそこで覚えたんだ。凄いだろ」

「ただの馬鹿だろ」

「なんだと!」

「事実だろうが!」

「はいはい、喧嘩しないの」

 ったくどうしてこいつは口を開けば悪態しか出てこないんだ。ひねくれ過ぎだろ。


「ただ、俺が戦っていた時には必ずといって統率する魔物が居た。それが同じ系統の魔物であろうが、そうでなかろうがだ」

「確かにその通りね。統率する魔物を倒せば自然と魔物は分散していくもの」

 やはり島でなくても同じか。

 そんな話し合いをしている時だった。


「イザベラお嬢様、大変です!」

「どうしたの?」

 突如やって来た一人の兵士が慌ててやって来た。また炎龍でも出たのか?


「それが魔物たちが急激に進行方向を変更しました!」

「何ですって!」

「それが何で大変なんだ?」

 魔物が方向を変えても可笑しくないだろ。あの島ではよくあったぞ。


「魔物が大きな群れで行動するのは大量の食料を求めている時が大半なの。で、魔物にとって一番の獲物が」

「人間ってことだな」

「ええ、そうよ。でこのまま真っ直ぐ進めば都市に到着するのに方向を変えるなんて……一体なにが起きてるの」

 普通ではありえない事が起きたか。イザベラに助けて貰った時も炎龍に出くわすというありえない出来事が起きた。こうも立て続けに起きるものなのか?あの島ではなくもないが、この場所では考え難い。となると………どうもきな臭い臭いがし始めたな。


「それで、こんどはどっちに向かってきているのかしら?」

「そ、それが……」

「早く言いなさい」

「も、もうしわけありません。実は魔物はこの車両目掛けて進行を変更したみたいなんです!」

「なんですって!」

 おいおいなんでまたこの車両なんだ?奴等の好物の肉でも乗せてるんじゃないだろうな。


「近くに少し高い丘を通るからそこで停車後、即座に戦闘準備!非戦闘員は隠れているように伝えなさい!」

「わ、分かりました!」

 イザベラの指示に部下は慌てて自分の持ち場の車両に戻っていった。

 なんで魔物討伐となるとこんなに慌しいのかね。誰か呪われてるんじゃないだろうな。


「ジンは部屋で――」

「嫌だ」

「ジン!」

「貴様、お嬢様の命令が聞けないのか!」

「前と違って今回は戦闘員の一人として乗ってるんだ。部屋で待機なんて絶対しないからな」

「………分かったわ。ただし私が指示出すまでは後方で待機して貰うから」

「ああ、それで構わねぇよ」

 この禁止区域があるのがルーベンハイト家の領地内だ。だからルーベンハイトの血を引くイザベラが指揮官として戦うのは理解できる。だが何故俺に倒して来いと命令しない。そっちの方が早くて確実だ。別に俺がこの世で最強なんて思ってはない。きっと俺より強い奴なんてごまんと居るだろうしな。だけどこの場にいる誰よりも強いとは思っているなら、囮でも何でもさせればいい。そうすれば少しは勝率が上がるはずだ。なのに何故しない。やはり起きている出来事がルーベンハイト領内の出来事だからか?貴族として、この領で生まれ育った者として戦わなければならないってか。確かにその覚悟は格好いいが反吐がでる。

 どうせ客人に戦わせるわけにはいかないとか、そんなくだらない事を考えているんだろうよ。ってこんな不満を思ったって仕方が無い。


「ん?」

「ジン、どうかしたの?」

「いや、なんでもない」

 一瞬誰かに見られているような気がしたが気のせいか。


「それで、あとどれぐらいで目的地の丘に到着するんだ?」

「あと5分も掛からないわ」

 あ、結構近くまで来てたのね。なら俺はそれまで優雅にお茶でも楽しんでいるとしよう。

 キイィィィッ!


「冷たっ!」

 突然の急停車で緑茶を被ってしまう。これが熱々じゃなくて良かった。っていったい何事だよ。


「どうやら到着したようね」

 5分も掛かってねぇじゃん!


「ジン、何してるの。早く行くわよ!」

「分かってるって」

 まったく一使いの荒いお嬢様だな。

 移動した車両には既に大半の兵士たちが準備を整えて待機していた。まるでアクション映画のワンシーンみたいな光景だな。


「この列車から降りた瞬間、そこは戦場だ!死ぬかもしれない戦場だ!そのような場所に何故我々は来ている!」

『人々を護るためです!』

「大切な家族や仲間、友人に恋人たちの平穏を奪おうとするのは誰だ!」

『魔物です!』

「そうだ!我々の安寧を脅かす存在が再びやってきた。そして我々は兵士だ!軍人だ!軍人が成すべき事はなんだ!」

『安寧を脅かす敵を屠る剣となり、人々を護る盾になることです!』

「その通りだ!屈強な兵士たちよ、心を奮い立たせよ!そして我々の力を魔物どもに思い知らせよ!」

『ハッ!』

 なに、この集団。マジで怖いんだけど。てか俺の直ぐ目の前で兵士たちを鼓舞しているのって本当に俺が知ってるイザベラなのか?まるで別人なんだが。


「扉を開け」

 淡々と呟かれた筈の短い言葉の筈が、何故か俺には凛々しく格好良くみえた。

 薄暗かった車内に眩しいと感じさせるほどの光が入り込む。


「出るぞ」

『ハッ!』

 地上に降り立つ紅の長髪は日光を浴び爛々と輝きを放っていた。

 ――美しい。

 ただその一言が脳裏を過ぎった。

 同い年とは思えない威風堂々とした立ち振る舞いはまさに歴戦の将を彷彿とさせる姿その者だった。


「ジン」

「なんだ?」

「私の前には出るなよ」

「あ、ああ」

 いつもとは違う口調。しかし、薄く浮かべた微笑みは何度か見たことがある。ああ、イザベラだ。

 俺はこの時ようやく理解した。

 俺に指示を出さないのは別に俺の力を信用していないわけじゃない。イザベラにとって俺もまた戦場に立つ仲間なのだ。そんな仲間に囮になれなんてことは絶対にイザベラは言わない。それがイザベラが考える指揮官なんだ。

 ゴォォオオオオオオオオオオ!!

 徐々に大きくなり森全体に轟く地鳴りと目視出来るほどの土煙がこちらへと来ているのが分かる。

 これだけの殺気を感じるのは久々で全身の毛が逆立つ。

 俺としては今すぐ敵に向かって走って行きたいが、この戦場の指揮官はイザベラだ。逆らうわけにはいかない。それに逆らえば絶対に長時間の説教コースは免れないだろうし。


「……砲撃開始!」

 戦闘を開始の咆哮が戦場に響き渡ると同時に装甲列車から鼓膜が破れるかと思うほどの砲撃音が轟く。

 着弾と同時に爆音と舞い上がる土煙。

 だが、仲間の死など気にする様子もない魔物の群れは木々を縫うように走って森から出てくる。


「総員、武器を構え!」

 殺気放ちながら近づいてくる。

 

「攻撃開始!」

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