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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第一章 おっさんは冒険者を目指す
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第五十五話 保健室での激闘の末、快楽を得る。

 見慣れない天井に一瞬困惑したが、意識を失う前のことを思い出してここが保健室だと理解した。


「おや、目を覚ましたようだね」

 褐色肌に濃い紫のポニーテール。それと見事な双丘を強調するきわどい服装と白衣。アヴァ先生だ。てか教育委員会から注意とかされないのか。絶対日本じゃされる格好だ。

 それよりもだ。


「俺どれぐらい寝てましたか?」

「お前さんが運び込まれてからかれこれ18時間ってところかね」

 意外とそんなものか。


「で、体の具合はどうさね。違和感とかあれば言っておくれ」

「違和感?」

 新しい包帯が巻かれていただけでなんの違和感もないんだが。


「何も覚えてないのかい。重症の怪我で運び込まれてそこから11時間にも及ぶ大手術だったんだからね。ま、普通ならもっと掛かるだろうが、私はそこらへんの医者と違って腕がいいからね」

 別にアンタの自慢話を聞きたいわけじゃないんだが。


「って手術!」

「そうさ。弾丸の摘出に撃たれた場所の縫合。今のアンタならフランケンシュタインにも負けないほどの縫合があるよ」

 別にフランケンシュタインと勝負とかしてないっての。


「で、アンタには聞きたいことがある」

「聞きたいこと?」

「…………アンタ何者だい?」

 まったく意味が分からない。大抵の人間からは何者だ。とか化け物だとか、能無しとか言われてきた。だからこそ今更言われても困る。


「あれだけの負傷をして未だに生きて私の許に運び込まれた。ありえないことだよ」

「ま、人一倍生命力は強いほうなんでな」

「そうみたいだね」

 上手く流されてしまった。


「ま、そうそう簡単に話すとは思ってないさね。だから勝手に調べさせてもらったよ。今年四月に編入試験にてテトルを殴って合格して、やってきた唯一の編入生。しかし編入初日に暴力事件を起こして一週間の謹慎処分。武闘大会においては学科別で個人戦団体戦ともに1位通過。個人戦学園代表選抜では学園最強の女帝をも倒して優勝し学園代表になった。そのあと即座にアンタ優勝したことに納得のいかない生徒2000人との決闘が行われたが、それにも勝利。尋常じゃない。プロフィールだね」

「それはどうも」

「でもその前のことが分からないだよ。分かっている事と言えば、学園最強の女帝と知り合いで、彼女のお陰で編入試験を受けれたってことぐらい」

 よく調べたことで。


「どうしてアンタみたいな奴が女帝と知り合いなのか、そこも不思議だけど。一番の不思議はイザベラと出会う前のことが一切分からないということさね」

 ああ、なるほど。


「この国の人間じゃないからな。分からないのは仕方が無いだろ」

「アンタこの学園のこと知らないね。この学園は世界的にも有名な学園の一つでね。一人の個人情報を調べるだけの力は余裕で持っているのさ」

 どこかの秘密組織みたいな学園だな。さすがはマンモス学園。裏側も半端ないな。


「その力を使ってもアンタのことは一切分からなかった。出身地、両親、住所、その全てが出鱈目か不明のどちらかだったのさ」

 そりゃあな。この世界に来て5年と少しだけど、その大半を気まぐれ島で過ごしてきたからな。不明なのは仕方が無い。と、心の中で答えてみる俺。


「で、それを知ってアヴァ先生は何がしたいわけ?」

「別にどうとかはないね」

「は?」

「私はただこの学園の教師の一人として生徒を守る義務があるんだよ。危険人物を学園に通わせるわけにはいけないんだよ」

「それならあの学園長が最初から入学させないだろ」

「そ、それは確かに」

 この先生見た目はあれだが、根は真面目で優しい先生なんだな。ちょっと好評か。


「今馬鹿にしただろ」

「してないが」

 なんで褒めたのに馬鹿にしたってことになるんだよ。てかこの世界の人間は鋭い奴しかいないのか。


「一ついいか?」

「なんだい?」

「どうして急に調べようと思ったんだ?」

「そんなのアンタのステータスを見たからさ」

「っ!」

 良かったアヴァ先生が向こう向いていてくれて。表情見られていたらバレているところだった。


「魔力と運以外は全て測定不能。こんなことって普通ないさね。一瞬機械の不調かと思ったけど流石にそれはないだろうしね」

「そのデータ誰かに見せたのか?」

「いや、まだだけど」

「なら、誰にも見せないでくれ」

「ほぉ……」

 やっぱりこの先生他人の弱みを握って喜ぶタイプのいけ好かない先生だったか。


「そうさ。私は人の弱みを握って好き勝手するのが好きなのさ」

「心が読まれた!」

 化け物だ。この学園には化け物が住み着いている!


「って言うのは冗談さ」

「へ?」

「生徒の弱みなんて沢山持ってるさね。本当はBカップなのにEカップってことにしている生徒とかね」

 いや、それは盛りすぎだろ。誰にだってすぐばれると思うぞ。


「なら一つだけ教えてくれ。どうしてアンタはこの学園に編入したんだい」

「冒険者になりたいから」

「なんでだい?」

「楽に金が稼げそうだったから」

「………それだけ?」

「それ以外に理由が欲しいのなら探すけど今のところそれだけだ」

「はぁ………まさか化け物が金のためだけにこの学園に入ってくるとはね。世も末って奴なのかね」

「おい」

 まるでゴ○ラが就職のために大学に入学して来たみたいな言い方はやめてくれ。


「分かったよ。このことは黙っといてやる。データも消去しておいてやるさね」

「助かります」

 どうにか危機を免れたな。これで心置きなく学園生活を楽しめるな。


『ジン!』

「ジュリアス、それからみんなもどうしてここに?」

「私が呼んだのさ。目を覚ますまでここに居るって聞かないからね。だから目を覚ましたら連絡するって約束で一度寮に帰ってもらったのさ。ここは学生のたまり場じゃないからね」

 それは言えてるな。


「もう大丈夫なのか?」

「ああ、問題ない」

「そうか、それは良かった」

「もう心配させないでよ」

「悪かったな」

「本当です。私たちの心臓が止まるかと思いましたよ」

「お前が無事で本当に良かった」

「男が泣くなよな」

「うるせぇ、泣くわけないだろうが!」

「ジュリアス、銀に餌やってくれたか?」

「ああ、いつものステーキ肉をあげたら嬉しそうに食べていたよ」

「そうか。それはよかった」

 これで心配することはなくなったな。


「あとは来週からの団体戦に出て代表になるだけだな」

「なに言ってるんだい。あんたは当分運動どころか外出禁止さね」

「なんでだよ!」

「当たり前さね。そんな体の患者を外に出すわけにはいかないだろ」

「こんな怪我大量に飯食って寝てりゃ一日で治る!」

「そんなに早く怪我が治るなら医者は要らないんだよ!」

 確かに。だが、それでも俺は絶対にでるぞ。


「悪いが先生が何を言うおうが俺は出るからな!」

 タンッ!


「うおっ!」

 メ、メスが壁に刺さった!


「いいかい坊や。そのふざけた耳でよくお聞き。私は医者だ。自分の患者を治るまではけして退院はさせないよ。それが国王や魔王、神様でもね。分かったんなら返事をしな」

「だれが返事をするかババア!ギャアアアアァァ!!」

『ジン!』

 スタンガンを当てられて体に強烈な電気が流れて痺れる。こんなことなら力を解放しておけばよかった。


「それと言い忘れていたけど。私は医者だから人は殺さない。だけど私のことをババアって言った奴は例外だ。そいつが患者でも神様でもね」

 理不尽すぎるだろ。


「だが、俺は絶対に出てやるからなクソババア!グハッ――!」

『ジン!』

「ほら言ったこっちゃない。喚くから傷口が開いたじゃないか」

「アンタが思いっきり殴るからだろうが!」

「クソガキ、よくお聞き。私は医者だ。だから人は殺さない。だけど例外ある。私のことをクソババアって言った奴は私が知る限りの苦しみを与えた後に必ず殺す。それが嫌なら口を閉じておとなしく寝てな。それに私はアンタの秘密を握ってるんだよ」

「脅すのかよ」

「脅しじゃない。これは医者からの命令だよ。患者は医者の言うことを聞くものさ」

「ジン、気持ちは分かるが諦めよう」

「そうだよ。私たちが学科代表に選ばれただけでも凄いことなんだから」

「そうです。これだけでもギルドからの誘いは確実です。ですからもう安静に休んで下さい」

「俺たちのことは気にするな。お前のお陰で頑張れば夢に近づけるってことが分かったんだからよ」

 クソッ!俺が最初から本気でイザベラを倒していればこんな事にはならなかった。

 悔しくてたまらない。俺が誘ったのに俺のせいで団体戦を棄権するなんて。こんなクソったれなことがあってたまるかよ!


「ジン、もう休め。私たちがここまでこられたのはお前のお陰だ。これいじょうお前が怪我をする必要はないんだ」

「……みんな、すまん」

「気にするな」

「全然平気だよ」

「大丈夫ですよ」

「お前は早く体を治せ」

「ああ……なんて言うと思ったか!脱出ダアアアアアァァ!」

「この私から逃げようなんて一千万年早いんだよ」

「クソ………」

『ジン………』

 電気ショックで痺れた体に床の冷たさは心地いいな。

 結局なんども試したが無理だった。だけど素直に諦める俺ではないのだ!



 7月1日日曜日、0時24分。


「ギャアアアアァァ!」

「アンタもこりないね」

「当たり前だろ!」

「そんなに団体戦に出たのかい?」

「いや、そっちは諦めた。どうせジュリアスたちが棄権するって言い出すだろうからな」

「分かってるじゃないか。ならどうして外にでようとするのな」

「決まってるだろ。夜の街に出かけて綺麗な女性と色々するためだ!」

「呆れた。まさかそのために何度も脱出しようとしてたのかい」

「当たり前だろ!学園生活で数少ない俺の楽しみなんだからな」

「女教師の前で言うことじゃないって分かってるのかい?」

「アンタ女だったのか」

 ボコッ!!


「なんか言ったかい?」

「ひへ、はひほ」

 怪我人を平然と殴り飛ばす保健の先生ってどうなの?本当に教育委員会に言っちまおうか。


「……はぁ、仕方が無い。どうせ私も一人身だしね。私がアンタの性欲を解消してあげようかね」

「マジで!」

「声がでかいんだよ!」

「すいません」

「で、どうするんだい。こんなオバさんはいやだろうけど」

 自分では言ってもOKなんだな。

 

「別にそんなことないと思うけが?普通に20代後半にしか見えないぞ?」

 いや、マジで本当に大人の女性って感じがする。スタイルも抜群だしな。


「褒めても退院日は変えないよ」

「いや、それはもう諦めてるから」

「そ、そうかい」

「なら、遠慮なくさせて頂きます!」

「こ、こら!ちょっと待ちな!」

 ベッドに戻った俺はアヴァ先生と楽しい楽しい夜を過ごしたのでした。たまに怪我するのも悪くないな。

 それと男性諸君正直に頼みこめが上手くいくかもしれないぞ!

 その日目を覚ました俺はアヴァ先生と一緒に正座されられていた。

 理由としては俺を心配して見舞いに来てくれたエレイン先生に裸で一緒に寝ているところを見られてしまったからだ。


「まったく二人は何を考えてるんですか!」

「いや、エレイン。これには訳があってだな」

「でしょうね。訳も無く裸で一つのベッドで寝ているなんてことがあるなら逆に教えて欲しいぐらいです。それでどうしてこうなったんですか?」

「そ、それはだな……」

「俺がアヴァ先生の体に欲情して襲いました。それだけです」

「お、おい!」

「本当に?」

「本当です」

 パチンッ!

 乾いた音が保健室内に響き渡る。

 超痛い!


「貴方の闘いを見て素晴らしいと思っていましたが残念です。ですが、正直に話した事は認めてあげます。ですが無理やり女性を襲うなんて最低です。人間以下の存在です。分かっていますか?」

「はい、二度と致しません」

「はぁ……もう良いです。さっさとベッドに横になりなさい。私は学園長に報告してきます」

 そう言って出て行った。


「なんで私を庇った」

「恩返だよ」

「恩返しだと。私はお前に恩を売った覚えはないが?」

「ジュリアスたちに俺の秘密を黙っていてくれたじゃねぇか。それが恩だ。それにあの場で女性を庇わないのは男の恥だって爺ちゃんに教えられたんでな」

「………」

「どこか行くのか?」

「仕事だ。お前はちゃんとベッドで寝てるんだぞ」

「分かってるよ」

 そう言って先生は出て行った。ああ、頬っぺたが痛い。さきにシップ貰っておけばよかったな。


    ************************


「エ、エレイン!」

「アヴァ先生。どうかしましたか?」

「いや、さっきの事なんだがな………」

「分かっていますよ。誰にも話しません」

「え?」

「どうせ、ジン君が頼み込んで断れなかったんでしょ」

「うっ」

「昔から先輩はそうなんですから。でもジン君の事少し見直しました」

 だろうな。まさかあそこで庇ってくれるとは思わなかった。男として少しは評価しても構わないかもしれない。


「だが、危ういな」

「え?」

「これは勘だが、アイツは無意識の内に他人を庇う習性がある」

「確かにジュリアス君の時もそうでしたね」

「だが、それは誰かを助けたいという気持ちからでは無いように感じる。いや、その気持ちもあるのだろう。だが無意識に自ら死地に飛び込むことを望んでいるような気がする」

「自分から死地にですか。そんな自殺願望みたいなことをするような子には見えませんが」

「何も死地を求めているが自殺願望者とは限らない。たとえばスリルを求めているとかな」

「スリルですか……そう言えば試合や決闘でもそうでしたが、彼笑っていたんです。強い相手だろうが弱い相手だろうが、弱い者を苛めるのが好きって感じではないとは思うんですけど」

「間違いないな。奴は真性の戦闘狂(バトルジャンキー)だ」

戦闘狂(バトルジャンキー)ですか」

「そうだ。相手が強いことに越したことはないが、自分が死ぬかもしれないという緊張感とスリルを無意識に求めているに違いない。エレイン気をつけろよ。あのタイプの奴は一度道を踏み外すとこっちには戻ってこれなくなるからな」

「分かりました。担任としてしっかりと見張っておきます」

「そうか」

「ところで一つお聞きしたいんですが?」

「なんだ?」

「どうして脚が震えてるんですか?」

 震える下半身にエレインの視線が向けられる。


「アイツの相手は体にくるぞ」

「そ、そんなにですか?」

「ああ、最高だった」

「…………」

「相手して貰おうかななんて考えてないだろうな」

「そ、そんなわけないでしょ!私は教師ですよ。生徒に手を出すわけが」

「なら、あと数ヶ月我慢することだな。そうなれば手を出せる」

「先輩!」

「冗談だ冗談」

 これ以上怒られても敵わないからな。保健室に戻るとしよう。


    ************************

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