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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第一章 おっさんは冒険者を目指す
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第五十三話 決闘 下

「私が教えれるのは、ジンは自分の運命に納得がいかなかった。だから抗うことにした。その結果が今の彼ということぐらいよ」

「そう言えばジンも言ってたな。理不尽な運命に抗うために強くなったって」

「そう、魔力が無いから、ましてや呪いで武器どころかナイフやフォークすら持てない。そんな運命から抗うために強くなったのよ。彼は」

「でも、それと傷がどう関係してるんですか?」

「確かエミリアさんだったわね?」

「は、はい!」

「この世界で誰もが生まれつき持っている物って何かしら?」

「魔力ですか?」

「私も昔はそう思っていたわ。ジンと出会うまではね」

「た、確かに。でもそうなると………」

「ごめんなさい。言い方が悪かったわね。誰もが手にすることが出来るものって何かしら?」

「誰もが手にすることが出来る物ですか?」

 私の言葉に誰もが考え込む。


「分かったかしら?」

「いえ、分かりません」

「俺も分からないです」

「私も分かりません」

「答えは経験値よ」

「経験値ですか?」

「そうよ。戦闘で魔物や犯罪者などを倒せば得られるもの。それが経験値よ。その相手が自分より強ければ強いほど得られる経験が大きくなる。そして経験値を得て強くなることがジンにとって運命に抗う唯一の方法だったのよ」

 誰もが私の言葉に黙りこむ。


「私たちは強弱はあれど生まれつき魔力を持って生まれる。それは強くなるための最初の力。だけど魔力は色んな物に応用が出来ため我々は魔力という力を存分に発揮できる武器や道具の開発や新たな魔法の研究にどうしても目を向けてしまっている。言い換えれば私たちは魔力がなければまともに魔物と戦うことが出来ない存在ってこと。だってそうでしょ。無限の可能性を秘めている魔力を最初から手にしているんだもの。誰だってそれに注目する。私たちは色んな物を開発したり研究したり、また戦闘では作戦を考える。だけどそれは魔力があるってことが絶対条件で考えられたもの。その証拠にアンドレアの会社がそうよ」

「私の家ですか?」

「ええ、そうよ。大手の製造会社であるカピストラーノ社が製造して販売しているのは魔法武器や魔導武器。必ず魔力を必要とする物を作っているでしょ?」

『あ』

「だけどジンはそんな無限の可能性がある魔力を持って生まれなかった。誰もが持っている力を与えられなかった。だからジンは魔力が無くても強くなれる方法を考えた。そして辿り着いた答えが誰もが手にすることが出来る経験値を大量に獲得すること。その方法が戦い敵を倒すこと。その結果が今のジンよ。ましてや呪いで武器すら持てない。武器として使えるのは石ころサイズの物だけ。己の肉体と石ころだけで今の力をにするまで戦えば傷だらけの体になってもおかしくはないわ」

「だからジン君の体には大量の傷があるんだ」

 誰もが落ち込む。大切な友達がそんな辛い人生を歩んでいたことに悲しくて仕方が無いのだろう。でもきっとジンはそれを望んではいない。なぜならジンは運命に抗うだけの力を手に入れたのだから。でも言わせて貰うわよ、ジン。


「私が初めてジンと戦ったのは学園に来る前。編入試験の次の日のことよ。その時初めて思ったはこれほど敵として戦いたくない相手はいないって」

「ど、どうしてですか?」

「確かに魔力が無くて力が無い敵であれば怖くはないわ。でも魔力の無い強い敵ほど怖いものはないもの」

「よく意味が分からないのですが?」

 誰もが首を傾げているわね。戦ったことがある彼等でもまだ気づいていない。


「貴方たちがジンと闘った時必ず思うのが魔力が無いけど身体能力が高い敵。もっと分かりやすく言うならば肉体強化しか出来ない敵ってところかしらね。そう思わなかった?」

「その通りです」

「それは間違ってはいないわ」

「ああ、確かにそんな感じだな」

「AAA(ノーネーム)のみんななら思いたる節があると思うけど、発想が普通の人間とは違うとは思わない?」

『あ』

「やっぱりあるようね。戦い方を考えてきたジンにとってそれは得意分野。ましてや魔力を持つ私たちですら思いつかないような戦い方を考え付く。それがジンの怖いところ。敵からしてみればどんな攻撃をしてくるのかまったく想像がつかない。だって魔法ありきで作戦を考える私たちとは違ってジンは魔法が使えない。言い換えれば魔法が使わない作戦を考えることが出来るし魔法有り無しの作戦を混ぜ合わせる事だってできるんだから」

 そう、それは魔力がある私たちからしてみれば異質。魔力という概念の枠組みの外に居る存在。それはなんの違和感も感じずに生きてきた私たちにとっては畏怖すべき未知数の存在なんだから。


「ましてや、あの怠惰の化身は戦いに関してはポジティブ思考。なんたって自分の呪いを己の武器として使う発想をするような人間なんだから。これほど怖いものはないわ」

「確かに」

「敵だったら戦いたくない相手ですね」

 そこまで嫌そうな顔をしなくてもいいと思うけど。ジンがちょっと可哀想に思えてくるわね。


「でも、流石のジンも2000人相手に勝てるとは思えないけどな」

「レオリオそれは仲間としてどうなんだ」

「いや、だって普通そうだろ。たった一人で2000人相手に勝てる人間なんて生徒じゃなくてもそうそういるとは思えないぞ。ましてや広範囲の魔法攻撃も使えないんだ。どうやって勝つっていうんだ?」

「そ、それは……」

 彼等はジンの本当の実力を知らない。だからそう思っても仕方が無いのかもしれない。だけど私とロイドは知っている。ジンがどこで生きてきたのか。

 でもジン、本当に分かってるの?もしもこの決闘に勝ってしまえば貴方は間違いなく注目される。だって2000人相手にたった一人で勝てる人なんて現役の軍人や冒険者にもそうそう居るもんじゃない。ましてや学生である貴方が勝ってしまえば、貴方が嫌う目立つことからは逃げることはできないわよ。本当にそれで良いの?


    ************************


「ハァハァ………ハァ…ハァ……」

 ヤバイ。流石に疲れてきた。最初から1%の力で闘っているからそこそこ体力もあるが、さすがにこの体じゃ限界があるか。

 正直数が多すぎて何人倒したかなんて覚えてもいないし、あと何人残ってるのかも分からない。


「残り半分ってところか?」

 目に見える範囲で良いならそれぐらいだろう。だけど今の体力であの数に突っ込むのは自殺行為に等しい。

 絶対後ろから攻撃を食らって終わりだな。で、そのあとはリンチだろうな。考えたくも無い結末だな。


「なら闘い方を変えるだけだ!」

 ポケットから無造作に取り出したパチンコ玉を親指で弾き飛ばす。爪が割れるんじゃないかって思えるほど高速で連射する。

 先頭に立っている生徒たちが攻撃を食らって倒れる。今ので40人は倒したか?


「土魔法と氷魔法が使えるものは前方に壁を作ってくれ!」

 その言葉でいくつかの壁が出来るが流石にこの戦闘で魔力を使い過ぎたんだろう。生徒の前方全域に出現させることができていない。間を狙って連射するが、即座に壁の後ろに縦列になって隠れる。


「射撃部隊は各班ごとに応戦開始!同士討ちはないから遠慮なく撃て!」

 こっちは隠れれる場所がないってのに。いきなりぶっ放してくるなよな。

 でも思考を止めるな。考えろ。動き回りながらも考えろ。この危機的状況を打開する作戦を。

 射撃部隊が反撃しだしから他の者たちが後ろに下がった。一部は残っているがあれはきっともしもの時に防御するつもりなんだろう。早く反撃の一手を考えないと負ける。さすがにこの弾丸の嵐を躱しきるのはそろそろ限界だし、だからといってこの中を進んで接近して闘う余力は残ってない。怪我さえしてなければ余裕で勝てるんだが。イザベラとの約束もあるし炎龍をぶっ飛ばしたとき以上の力を出すわけにもいかないしな。何か………何かないか!

 ――っ!


「マト○ックスだ!」

 誰かがそう叫ぶのが聞こえたが、今の俺に返事をする余裕はない。てかマト○ックスを知ってるんだな。

 弾丸を躱す際に目に差し込む強い光。演習場内を照らすLEDライト。

 確かあれのON/OFFは壇上の近くでやってたよな。あれか!

 壇上近くにおかれた機材。なら、狙うは唯一つだ。

 弾丸を躱しながら俺はポケットから取り出したパチンコ玉を機材目掛けて数発弾き飛ばした。


「なっ!急に真っ暗に!」

「誰か電気の復旧を急げ!」

 先生たちは大忙しだな。さてニコラスたちはというと予想通りというかやっぱりその場から動いていないな。

 気配から感じる場所と感情。突然目の前が暗闇に支配されて困惑している。

 ここがプロと学生の違いだろう。突如の緊急事態に対しての対処能力と冷静な判断力。その速度が段違いに遅い。


「全員、動くな!相手にだってこの暗闇では動けないはずだ!」

 無線機が無いとはいえ、仲間を冷静にさせるためにそんな大声で出したら自分の位置を教えているようなもんだろ。ま、このすてーじ障害物は存在しないから正直あまり意味をなさないが、正確な位置を把握するには十分だ。

 この連合軍を指揮しているお前の能力は今の俺には驚異的だ。


「お前から倒させてもらうよ」

「なっ――!」

 いつ電気が回復するか分からないからな今のうちに出来るだけ倒しておかなければあとあと面倒だ。

 一応リーダーは倒した。これで連携は難しいだろう。次に狙うはライゼだな。あいつも冒険科のリーダー的存在だったからな少数になったときにその力を発揮されても困る。

 適当に敵を倒すのではなく脅威になりそうな生徒を確実に気絶させていく。

 思いつく限り倒した。10人ぐらいだろうか。そうなると先に始末するなら射撃部隊の連中だろう。あいつらがいるとまともに近づけないからな。

 銃を手にする奴等の気配を感じてゆっくりと後ろから接近して静かに倒していく。まるで俺が暗殺者になった気分だな。

 だけど隠密行動はあの島では必須スキルだ。狩りをするときでも逃げるときでも必要となってくるからな。

 僅か数分足らずで射撃部隊を全滅させたこれで残りは500人ってところか。

 魔法攻撃なら俺の力で無力化できるがさすがにこの数を相手にすれば一時的に腕が使いものならなくなるだろう。


「もう少し削っておくか」

「オニガワラ・ジン!」

 やばっ!俺としたことが心の声を口にしてしまった。素直だとこう言う時不便だな。

 だけどそれが結果的に上手く行った。


「奴が中に入り込んでるぞ!」

「え?」

「そこか!」

「キャあああ!」

「誰かがやられたぞ!」

「この暗闇を利用して攻撃してくるなんて、やはり卑怯な奴だ!」

 いや、戦場に卑怯なんてないだろ。効率よく勝つ方法は如何に相手が嫌がることをするかだ。これ俺の師匠が教えてくれた言葉な。

 それにしても本当に貴族連中の頭の中には正々堂々というのが好きだな。中性時代から変わってないのか?いや、プライドが高いからこそ一騎打ちで勝ちたいんだろ。俺も男だから分からないでもないがこの状況でそれを口にしても意味無いだろ。

 で、今俺が何をしているかと言うとだな。最初の定位置に戻って観戦しています。

 恐怖に支配された仲間同士が平然と殺しあう。これほど怖い光景はないな。勉強になった。


「あ、電気が戻った」

 気がつけば電気が復旧したみたいだ。先生方お疲れ様です。


「ニコラスがやられてるぞ!」

「射撃部隊もよ!」

「きっと全部あの卑怯者の仕業に違いない!」

 全て俺のせいかよ。今倒れてる半分以上はお前等が倒したんだぞ。ま、その原因を作ったのは俺だからあながち間違ってはないか。

 さて、残り300人弱。今のコイツ等なら軽く力を出せば勝てるな。


「さて、お前等」

 立ち上がる俺に戦闘態勢になる。


「悪いが、お遊びはこれでおしまいだ。ここからは戦場の怖さを教えてやるよ」

『っ!』

 1%から1.3%に上げた俺はただ目に留まる敵から殴り飛ばす。

 右の奴。左の奴。前の奴。右の奴。そのまた右の奴。今度は左の奴。

 そんな感じで殴り、蹴りを繰り返し敵を倒していく。

 正直、俺の力が上がったこともあり目では捉えられない。ましてや指揮をしてくれていたリーダーがいないんだ。統率力を失った烏合の衆を倒すのは容易かった。

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