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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第一章 おっさんは冒険者を目指す
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第四十六話 武闘大会個人戦学園代表選抜四日目

「悪いな、すっかりカエルの話で盛り上がってしまって。すっかり忘れていた」

「いや、それは構わないよ。だけど今から闘う対戦相手のことを忘れられては困るな」

 一瞬にして変わる表情。良いね。真剣に向かってくる奴ほど闘う価値がある。ま、それでも今の俺が求める闘いは出来ないだろうが。


「それではこれより、武闘大会個人戦学園代表選抜四日目第一試合を始めます。二人とも準備は良いですね?」

「はい!」

「俺はいつでも良いぜ」

 平常に戻ったエレイン先生。余計な時間を費やしてしまったな。また睨まれてしまった。


「それでは試合……開始!」

 試合開始と同時に真壁は突進してくる。なんでさっさと倒さないのかって?こいつの実力を知りたくなったんだよ。だって冒険科トップの実力。気になるだろ。


『試合開始と同時に動いたのはトーヤ選手だ!ジン選手は余裕そうに立ったままだが、これはどういう事だ?』

『分かりません』

『アビゲイル先生。興味が無いからって一言で終わるのは止めてもらえますか?』

『私に解説をさせること自体が間違っているんです。一般人とは違いますし』

『気を落とさないでください!って戦闘が始まったぞ。トーヤ選手の魔法剣(ソード)がジン選手を襲う!しかしジン選手は未だ余裕な表情で最小限の動きだけで全ての攻撃を躱しているぞ!』

『やはり……』

『アビゲイル先生、何がやはり、なんですか?』

『ジン選手ですよ。魔力も無い。武器も使わない。己の拳と体術のみでどうしてここまで闘えるのか不思議でなりませんでした』

『確かにそれは私やアビゲイル先生だけでなくこの学園に通う生徒、教師全員が思っていることだと思いますけど?まさかその理由が分かったんですか?』

『これは仮説に過ぎませんけど、話しても大丈夫ですか?』

『是非教えて下さい!』

『分かりました。ジン選手が何故あそこまで強いのか。それは経験が違うからだと私は思います』

『経験ですか?』

『そうです。私たち教師人が遥かに自分より才能のある生徒と闘い勝てるのか、それは実戦の数が違うからです』

『それは当然ですよね?実戦演習が授業であるとはいえ、四年間で数回しかしませんしから。それに対して私たち冒険科は実戦の毎日。軍人も厳しい訓練を毎日行い、年何度も実戦を重ねているのですから』

『そうです。ですがジン選手は違います。誰かに知識や武術を教わってから強くなるのではなく、実戦の中で強くなって行った。そんな闘い方です』

『まさかジン選手が学園に来る前は魔物と戦って生活していたって言うんですか?』

『事実かどうかは分かりません。ですが彼が一瞬見せる表情や行動の中に野生を感じます』

『そう言われれば……』

『ま、仮説に過ぎませんから気にしないで下さい』

 今の話を聞いていた観戦する生徒の大半は鼻で笑い飛ばしていた。だがその内の数名だけは真剣な表情のまま仁と冬也の試合を観戦していた。

(クソッ!なんで一撃も当たらないんだ!肉体強化で何倍ものスピードになっている。途中に魔法攻撃も混ぜながら攻撃しているのに魔力の無い彼にどうして一撃も当たらないんだ!)

 ふむ、大分焦りが見えてきたな。やはりこれまで大きな壁にぶつかって来る事無く上ってきたタイプだったか。それとも実戦経験が少ないだけか?

 ま、どちらにせよこれ以上こいつと闘う理由はないな。魔法属性の種類も分かったしな。

 でも確かに強いな。冒険科トップなだけはある。だけど作戦も戦略もなしにただ己の力だけで倒せるほど俺は甘くないんだよ!


「ぐはっ!」

 俺はいつもどおり相手の腹部に拳を叩き込んだ。いつもより少し強めに打ったのはお前の実力を認めている証拠だと思ってくれるとありがたい。


「そこまで!勝者、オニガワラ・ジン!」

『決まったああああぁぁ!またしても一撃!またしても勝利!ジン選手はまた勝利を手にした!』

 なんだか俺の勝利実況がテキトーになってないか?

 ま、試合は終わったんだし、俺はいつも通り廊下の休憩室で寛ぐことにしよう。


    ************************


 早く試合が終わった私はロイド、オスカーの三人で観客席からジンの試合を観戦していた。


「予想通り勝ったわね」

「奴の実力から考えれば当然ですが、あの態度には腹が立ちます」

 勝利を喜ぶわけでも手を振るわけでもない。まるで授業が終わったから帰ろうとしているそんな姿で会場を出て行く姿にロイドは苛立ちを覚えたんでしょうね。真面目なロイドと怠惰のジン。水と油よね。


「だが奴の攻撃を全て躱す動体視力と身体能力は脅威だな。イザベラ様が言いたい事がようやく理解できた」

「そうでしょ」

「だが、あの男を相手に一人で闘うのは無謀だ」

「ええ、それは私も分かっているわ。だから個人戦優勝はもう諦めている。その代わり団体戦は……」

「なるほど。なら俺は全力で役目を果たすとしよう」

「自分も同じ気持ちです」

 ほんと私は頼もしい仲間に囲まれているわね。きっとそれはジンも同じ気持ちでしょうけど。


「見てなさいジン。団体戦で勝つのは私たちよ」


    ************************


 残り4試合か。ま、俺はいつも通りに闘うだけだけど。


「ジン」

 また、マイラか。まったくアイツはどんんだけ暇なんだよ。って視線を向けたらそこにはジュリアスが立っていた。


「なんだジュリアスか」

「なんだとはなんだ」

「いつもここにいると話しかけてくる暇人が居るんだが、そいつかと思っただけだ」

「なるほど、そういうことか」

「それで、検査は終わったのか?」

「ああ。異常なしだったよ」

「そうか、それはよかった」

 もしもこれで後遺症が残るようなら流石の俺も気にするからな。


「それで午前中の試合はどうだったんだ。確か相手はマカベ君だったな」

「なんだ試合見てなかったのか?」

「検査中だったからな」

 なるほどな。


「試合には勝ったぞ。伊達に冒険科トップなだけはある」

「そんな事言っているが、どうせ余裕で勝ったのだろう」

「まあな」

「まったくお前は」

 あれ?いつもなら調子になるな。って叱られるパターンなんだが。

 呆れながらも優しげな笑みを浮かべるジュリアス。


「お前、もう一回検査して貰った方が良いんじゃないのか?」

「それはどういう意味だ」

「い、いや。なんでもない。気にするな」

 どうやら心配は要らなかったようだな。

 午前中の試合が全て終わると俺とジュリアスはレオリオたちと一緒に食堂で昼食をとった。因みに食堂にカエルを使った料理は無いのかって聞いてみたら、馬鹿にしているのかと怒られてしまった。

 それにしても軍務科連中の視線が凄いな。全てが敵意と殺意のどりらかだけど。

 こんな場所で長居するのも気分によくないのでさっさと食事を終わらせた俺は試合が始まるまで廊下の休憩コーナーで寛いで体力を回復した。回復させるほど消耗はしてなかったけど。

 昼休みが終わった俺は第4ステージに上がる。


「ふぁあ………」

 いかん。ここに来て昨日の寝不足が出てきた。


「相変らずふざけた態度だな」

「ゲッ!」

 ステージに上がった先にはこれまた鬱陶しい極まりないロイドが不機嫌そうにこちらを睨んでいた。

 まったくどうして朝からこいつと闘わなければならないんだ。前の日から知っていたけどジュリアスの件ですっかり忘れていた。


「今日は厄日だな」

「それはこっちのセリフだ」

「黒星が増えるからだろ?」

「貴様馬鹿にしているのか?」

「ありゃ、バレた?」

「貴様……」

 ほんとロイドはからかい甲斐があるな。


『武闘大会個人戦学園代表選抜も後半戦へと突入!そんな第4ステージでは軍務科四年一組ロイド・サウス・グリード選手が未だ全勝にして一撃無双(ワンターンキル)の冒険科四年十一組のオニガワラ・ジン選手と闘うぞ!いったいどんな試合を見せてくれるんだ!』

『ロイド選手は銃器、魔導銃器の扱いが学園内でトップクラスです。ジン選手の高速移動からの一撃を止めることが出来るかもしれませんね』

『ロイド選手がジン選手の記録、または一撃無双(ワンターンキル)勝利を阻むのか、はたまたジン選手が新たな勝ち星を手にするか期待の高い一試合だ!』

 相変らずノリの良い先生だな。


『それじゃ審判さん。ちゃっちゃと試合を始めちゃって下さい』

 おいおいどう見てもミューラ先生より先輩の先生だろ。そんな口の利き方していいのか?ま、俺が言えた質じゃねぇけど。ほら、主審の額に青筋が出てるぞ。絶対後でお叱りパターンじゃん。ま、俺には関係ないけど。


「それではこれより武闘大会個人戦学園代表選抜第一試合を開始する。両選手とも準備は良いな?」

「もんだいありません」

「いつでも始めてくれ」

「試合……開始!」

 悪いなロイド、ジュリアスとの約束もあるからな。負けるわけにはいかないんだ。

 いつも通り地面を蹴った俺は相手の懐に入り込み掌底を打ち――コイツッ!

 バババッン!


『おっとこれはどういう事だ!相手の懐に入り込んだはずのジン選手が攻撃するのをやめて距離をとったぞ!それと同時にロイド選手の魔導拳銃(ハンドガン)が火を噴いた!』

『ですが、すべての攻撃を見事躱していますね。さすがと言ったところでしょう』

『おや、これはいったいどうしたんだ?二人とも一切動かなくなってしまったぞ!』

『完全に睨み合っていますね』

「まさかお前がそんな博打紛いのことをしてくるとは思わなかったぞ」

「これまでの貴様の試合の大半は腹部に掌底を打ち込むものだったからな。どれだけ速いスピードで接近しようがこれに関してはどうすることもできまい」

 奴の腹には起爆札(ペーパーボム)と呼ばれる爆弾がある。その効果は強い衝撃を与えると爆発するというものだ。言うならばニトログリセリンの紙バージョンだと思ってくれ。普通は廃墟ビルなんかを爆破解体する時にしようするものだが、戦場では罠や敵を道連れにするときに使われるが、まさかそれを今ここでしてくるとはな。それだけ俺の事を評価してくれているんだろうよ。


「だけど、そこまでする必要があるのか?」

「俺はこう見えても戦闘力に関してだけはお前のことを認めているんだ。そしてお前に勝つためには手段など選んでいられないと言うことがここ数試合を見てハッキリと分かった。それに防護結界で覆われているからな死ぬことはない。ま、精神ダメージは相当食らうだろうが、お前に勝てるなら安い買い物と言うものだ」

 そこまでして俺に勝ちたいのかよ。これだからプライドの高い貴族様は。いや、勝負事で負けたい奴はいないか。ましてやこんな大きな大会では。


「だがそんなの、お前の顔面に叩き込めば良いだけの話だろうが」

「それも想定内の事だ。それにお前は俺から離れた時点で負けている」

「なに?」

「なぜならこの距離は俺が最も得意とする距離だからだ!」

「チッ!」

『こ、これはまさに防戦一方!圧倒的攻撃力で全勝していたジン選手が学園代表選抜で初めて追い込まれている!』

『相手の癖や習性を研究したのでしょう。ロイド君らしい闘いと言えるでしょう』

 まさかあいつがここまでするとは思わなかったぞ!


「だけど残念だったな。俺にも遠距離攻撃は出来ることを忘れてるだろ!」

 ポケットから乱雑に取り出したパチンコ玉を奴の腹部に張られた起爆札(ペーパーボム)目掛けて弾き飛ばした。

 ボッン!

 強い衝撃を受けた起爆札(ペーパーボム)は連鎖で次々と爆発していき大きな黒煙を立ち昇らせた。


「………」

 煙が晴れるとロイドは地面に倒れていた。研究するなら学科別の時の試合もデータに加えておくべきだったな。


「勝者、オニガワラ・ジン!」

『決まったあああああああぁぁぁ!最後は相手の起爆札(ペーパーボム)をパチンコ玉で爆発させて試合終了だ!』

『今回はロイド選手の作戦が素晴らしかったですが、詰めが甘かったようですね』

 まったくだぜ。ま、少しは楽しめたから俺は別に構わないけど。

 こうして四日目の試合が終了した。

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