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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第一章 おっさんは冒険者を目指す
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第四十一話 武闘大会個人戦学園代表選抜一日目

 試合はこれまで同様、同時進行で行われる。

 5×5のステージが6つに主審一人副審四人。制限時間は20分となっておりそれまでに決着が付かなければ審判の判定になる。

 演習場も第二演習場と以前の演習場より大きい場所だ。正直ホールのほうは余裕で開いている。今はそんな事どうでもいいか。

 俺と対峙するように渡辺飛鳥が俺を睨む。俺ってよっぽど嫌われやすい体質らし。10人中8人には間違いなく嫌われてる気がする。


「これより武闘大会個人戦学園代表選抜一試合目、冒険科三年一組ワタナベ・アスカ対冒険科四年十一組オニガワラ・ジン。両者正々堂々と闘うこと」

 そろそろ試合開始だな。あ、欠伸が。昨日新しい子が入ったって連絡があったから夜中に学園を抜け出したからな。流石にそのせいで寝不足だ。


「ぅふぁあ……」

「随分と余裕ですね」

「別に。俺はいつも通り闘うだけさ」

「馬鹿にしてますよね」

 え?なんでそうなるの?俺は普通に答えただけなのに。褒めたら馬鹿にされたと勘違いするヤンキーと一緒じゃん。正直あれ意味がまったく分からなかったんだよな。今も分からないけど。


「なんでそう思ったんだ?」

「全然やる気が感じられないからです。私はこの大会に命を賭けてるんです!それなのに貴方みたいなやる気の無い人間を見ると腹が立つんです」

 真剣に取り組んでるのに一人だけ不真面目な奴が居ると腹が立つ原理ね。よく分かるよ。でも別に良いじゃん。仲間でもチームメイトでもないんだからよ。ましてや今から闘うんだから敵同士なんだから、そこまで怒らなくても。


「もしてかしてお前って女だから無理って言われるの超嫌な人?」

「よく分かりましたね。女だからって試しもせずに追い返すんです。あれほど屈辱的なことはありません」

 それこっちの世界に来てからの事じゃないだろう。絶対に。あ!そう言えば今日の夕方から放送のサスペンスアニメの録画予約したっけ?………超不安!早く試合終わらせて帰って確かめたい。


「でも安心しろ。俺は男女差別しない主義だから」

「っ!なるほど、男女差別しない主義は認めて上げます」

「それはどうも」

 話はもう良いから早く始めようよ。


「でも流石ですね」

 なんで会話続けるの!今の流れどうみても試合を始める流れでしょ!


「なにが?」

「軍務科の連中は貴方を嘲笑っていましたが、私は個人戦代表に選ばれた時点で貴方の実力は認めています。そのやる気の無い態度は気に入りませんが」

「へぇ~迷い人に実力を認められてるんだ。ありがたいね」

「いえ、冒険科の生徒なら貴方の実力が本物だと感じ取っているはずです。ま、中にはプライドが高くて目を背けている人たちもいるようですが。それでも団体戦決勝での魔族を三人を相手に勝利したんです。認めない人なんて居ません」

 あの試合見てたのか。俺も仲間がやられて無駄にやる気出してたからな。目立つとイザベラに怒られるし困ったなぁ。いや、それよりもだ!


「そろそろ試合始めないか?」

「そうですね。ですが本気で闘ってください。男女差別はしない主義のようですが、本気で闘おうとしている相手に対してその態度は礼節を軽んじていると私は思います」

 本気って言われてもな。本気出したらお前死んじゃうし、イザベラに怒られるからな。ま、目立たない程度に本気を出しておくか。


「ああ、解った」

「表情が変わりましたね」

「そんな感想はいいから、さっさと始めようぜ」

 でないと録画が出来なくなる!今回は後編でようやく犯人が分かるんだ。ましてや放送直後から何かが起こる可能性があるんだよな。だから絶対に間に合わせてみる。


「両者準備は良いな?」

「ああ」

「はい」

 そんなの聞かなくて良いだろ!さっさと始めろよ!


「それでは………始め!」

「いき――え?」

「悪いな」

 開始早々に相手の懐に入り込んだ俺は学科別の時より強めに掌底を叩き込んだ。

 空気を吐き出した飛鳥はそのまま気絶し倒れた。


「しょ、勝者、オニガワラ・ジン!」

「悪いな。俺にはどうしてもやらなければならない事があるんだ」

 サスペンスアニメの録画という使命が!

 気絶した飛鳥は先生方に任せて俺はステージを降りた。今すぐ録画予約したいが、今日の日程が終わっていない状況で抜け出すのはまずい。あとで怒られる。エレイン先生とか、クラスの連中とか、ジュリアスとか、イザベラとか、ジュリアスとか。仕方が無い今は我慢しよう。でないと長時間のお説教コース直行だからな。

 午前中の試合が全て終わった俺はジュリアスたちと食堂で食事していた。因みに今日のメニューはエビカツサンド!プリップリッとして海老の感触とピリ辛の特性ソースが最高だ!

 で、問題なのが。


「そんなに落ち込むなよ、ジュリアス」

「ジンさんの言うとおりです。まだ一回負けただけじゃないですか」

「元気出して。私のステーキ半分……3分の……10分の1上げるから」

「エミリアが人にお肉をあげるだと!」

「いや、でも10分の1だぞ」

「馬鹿!10分の1でも、エミリアが他人に肉を分け与えるなんてありえないからな!もしかしたら明日は槍でも降るかもしれない」

「レオ君酷い!」

 それほどまでにエミリアは肉を愛しているってことなんだろう。


「みんなありがとう……だが私が落ち込んでいるのは負けたからじゃない。そう簡単に勝てる相手とは思っていなかったからな。だがあれほどまでに力の差を感じてしまうとな………」

 俺にはよく分からないけどイザベラは超強いらしいからな。落ち込んでも仕方が無い。


「でも、情けないなジュリアス」

「ジンさんそれはあまりにも酷いですよ」

「そうだよ。同じルームメイトとは思えないよ!」

「だって事実だからな。俺たちはあと約半年もすれば冒険者として活動を始める。その中にはイザベラより遥かに強い冒険者や魔物と戦う可能性だってあるってことだ。この程度のことで凹んでいたらお前は一生冒険者になれないぞ。それでも良いのか。冒険者になりたくここまで頑張ってきたんだろうが!イザベラ程度に負けたぐらいで凹んでんじゃねぇよ!」

「そ、そうだな。ジンの言うとおりだ」

「流石はルームメイトだね!」

「一度落として引っ張りあげる素晴らしいテクニックですね」

 いや、フェリシティーさんや。あなたは何を仰ってるんだい。


「でも、言葉は選んだほうが良かったですね」

「え?」

 振り向くと軍務科連中が物凄い形相で睨んでいた。


「軍務科の憧れであるイザベラさんを引き合いに出すのは失敗でしたね」

「そういう事はもっと早く言ってくれ!」

 大丈夫だ。学園での喧嘩は禁止されている。ましてや学園代表選抜に出場生徒への妨害行為も禁止されている。だから今何かされる心配はない。はずだ。


「代表選抜が終わったあとに死体になっていないことを願っていますね」

 フェリシティーさんや、貴方はどっちの見方なんですかねぇ。

 軍務科連中に殺意を向けられながら俺は食堂を後にした。録画予約と一緒に遺言も書いておいたほうが良いかもしれない。


    ************************


 目を覚ますとそこは久々に見た保健室の天井だった。


「飛鳥!」

「冬也……先輩……」

 はっきりと自分の信念を持ち私を最初に認めてくれた人であり、異世界に来て不安で仕方が無かった私を助けてくれた人。優しくて真っ直ぐな人。だけど恋愛感情は一切無い。私にとって冬也先輩は頼れる先輩であり、仲間。それ以上でも以下でもない。


「気分はどう?」

「平気です。どこも痛くありません」

「そっかそれは良かった。でも君が負けたって聞いたときは驚いたよ」

 そうだ私……負けたんだ。


「彼はそんなに強かったの?学科別の時の闘いを見る限り躱せるって言ってたよね」

「分かりません……気が付いたときには意識を失ってましたから……」

「そうか……」

 ごめんなさい先輩。嘘です。一瞬ですけど掌底を打ち込まれる瞬間彼の表情が見えたんです。笑っている表情が。

 でもあれは弱い私を嘲笑うものでも、勝利を確信した喜びの表情でもない。戦いそのものを楽しんでいるかのようなそんな表情……。

 初めて見た。闘っている最中に笑っている人なんて。

 私が冒険者になろうと思ったのは私の実力を認めさせるため。迷い人はこの世界の人間より遥かに才能に恵まれている。だから軍務科にも誘われた。だけど私の実力を知って貰うなら冒険者の方がしがらみも少ないだろう。そう思って入った。

 冬也先輩も自分の信念のために軍務科じゃなくて冒険科に入っている。そこらへんは興味がないので聞いてはいない。彼と同じチームに入ったのは誘われたから。勿論他の人にも誘われたけど冬也先輩には恩義を感じているから同じチームに入っただけ。


「でも安心して。必ず飛鳥の仇は僕が取るから!」

「ありがとうございます」

 正直その気持ちは嬉しいです。ですが冬也先輩でもきっと彼には勝てません。

 学科別の時より遥かに速かった。つまりそれだけ余裕があったってこと。そしてまだ余裕があるようにも見えた。

 試合前に見せた一瞬の笑みと掌底を打ち込む時の笑みは同じもの。そして試合前に見せた笑みと一緒に彼が言った言葉。


『でも安心しろ。俺は男女差別しない主義だから』

 あれは本心だと思う。だけど私が思っている男女平等とは違う。

 男女関係無しに優しくするって意味じゃない。あれは男女関係無く容赦はしない。って意味だ。


「っ!」

「飛鳥、どうかしたの?」

「い、いえ。急に起き上がったので少し眩暈がしただけです」

「ならもう少し横になっていると良いよ。昼休みが終わる頃に迎えにくるから」

「すいません」

「気にしないで」

「では、お言葉に甘えてもう少しだけ横にならせて貰います」

 軽く頭を撫でてくれた冬也先輩は保健室を後にした。良かった……今、先輩に顔を見られたくなかった。

 これが死ぬことはない闘いで本当に良かったと。もしもこれが戦場で殺し合いだったら間違いなく私は瞬殺されていた。

 その恐怖と戦場ではなかった安堵で涙が止まらない。

 そしてそれがとても悔しい!なにが命を賭けてるだ!こんなに怖がって安堵して情けない!


「絶対にもっと強くなってみせる……」

 私は心にそう誓った。二度とこんな惨めな思いはしたくない。そして絶対に彼を見返してやる!


「…………」


    ************************


 昼休みも終わって午後からは二試合目が始まる。

 演習場内は午前以上に賑わっていた。軍務科生徒による俺に対する罵詈雑言なんだけどね。完全にアウェー状態だな。

 で、よりにもよって俺の相手は軍務科の生徒なんだよなぁ~。うわ、めっちゃ睨んでるし。目を合わせないようにしよう。って飛鳥の奴気が付いたんだな。良かった良かったってなんでアイツにまで睨まれてるんだ。まさかアイツもイザベラのファンだったのか!


「それではこれより武闘大会個人戦学園代表選抜二試合目、軍務科四年一組イーサン・ゲンリ・ムーサル対冒険科四年十一組オニガワラ・ジン。二人とも正々堂々と闘うように」

「ああ」

「分っています。そしてこの能無しに教えてやる!自分が如何に愚かな蛮行を行ったのかを!」

 ああ、やっぱりこいつも耳にしてるんだな。それともあの場に居たのかもしれない。はぁ……面倒なことしてしまった。原因が俺である以上難癖つけるわけにもいかないしな。


「両者準備は良いね?」

「はい!」

「ああ……」

 ああ、どうしたものか。


「それでは………」

 ま、この試合を終えてから考えるか。


「始め!」

岩石の(ロック)ぐはっ――!」

 さすが軍務科のエリート。魔法発動も早いな。でも段違いってほどでもない。それにイザベラやロイドの方が遥かに早いしな。


「しょ、勝者、オニガワラ・ジン!」

 さて倒して終わったことだしどう対処するか。ん?軍務科連中からの罵詈雑言が消えてる。これは結果オーライって奴だな。さっ!帰ってサスペンスアニメの録画予約だ!遺言は念のために保留にしておこう。

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