第三十六話 武闘大会団体戦学科別代表選抜決勝 上
5月25日金曜日。
いよいよ団体戦決勝戦の日がやってきた。団体戦代表にはなっているがやはり優勝して軍務科連中と挑みたい。
「円陣組むぞ」
そんなジュリアスの突然の言葉に俺は驚いたが、レオリオたちは普通に輪を作り出した。
「何している。早く来い」
「あ、ああ」
流石若者。躊躇いも戸惑いもない。精神年齢37歳の俺としては18歳の学生に混じって円陣を組むなんて恥ずかしいほかないんだが。
「絶対に勝つぞ!」
「「「「おう!」」」」
ま、気分を害さないためにも一応声は出しておいた。
『これより武闘大会団体戦学科別代表選抜決勝戦を開始します!実況はお馴染みのミューラがお届けします。解説は勿論この人!』
『ミューラに無理やり主審と解説を交代させられたエレインです』
なんともノリノリな開会式だな。てかミューラ先生勝手に審判を交代しちゃだめだろ。なにしてんの。
『ええ、だって先輩の解説とても解り易いし、話しやすいですもん。実況と解説のコンビネーションってとても大事でしょ?』
『大切かどうか分からないけど、貴方は後で主任から話があるそうよ』
『え!』
主任って学年主任みたいなものか?教師も色々と大変なんだな。
『ええ、それでは気を取り直して両チームの紹介と行きましょう!』
あ、絶対にミューラ先生は嫌なことからは目を逸らすタイプだな。
『まずご紹介しますのは、ここまで圧倒的な力で勝ち進んできたチーム、失われた大冠!』
威風堂々とした登場に演習場内が歓声に満たされる。それにしても女子生徒からのラブコールが凄いな。イケメンで強かったら女子生徒は夢中になるよな。男子生徒からの声もあるな。後輩の癖に生意気な!
『圧倒的力を持った失われた大冠と闘うのはあらゆる戦略と悪知恵を最大活用。女性ファンはジュリアス君とジン君の関係がどこまで進んだのか興味津々。そんな二人が率いるチーム、AAA!』
おお、凄い歓声。内容がラブコールじゃなくて俺とジュリアスの進展具合を聞くものだけど。あ、ジュリアスの奴恥ずかしくて俯いてるし。試合前からモチベーション大丈夫か?
『それでは両チームのリーダーから一言ずつ貰いましょう!まずは失われた大冠のサイモン君から!』
「俺たちはいつも通り全力で敵を潰すだけだ」
『えっと……それだけかな?』
「ああ、それだけだ」
『わ、分かりました!揺れぬ強い意志を感じました。ありがとうね!』
さすがのミューラ先生も戸惑いを隠せないみたいだ。それにしてもなんて生意気な奴だ。イケメンだからって容赦しないぞ!
『それではAAAのジュリアス君一言お願いね』」
「…………」
『ジュリアス君?』
あ、こいつまだ立ち直ってなかったのか!
「悪い、俺が代わりに!」
『え?ではジュリアス君に代わってジン君お願いね!』
参った。勢いで代わったけど何を言えば良いんだ?適当で良いか。
「ま、ここまで来たからには優勝するしかないよな。それに俺としてはさっさ試合を終わらせて寮に戻りたい」
『そ、それはつまり早くジュリアス君と二人っきりになりたいと!』
相変わらずノリの良い先生だな。なら俺も!
「ああ、勿論」
「なっ――!」
『キャー!』
おお、凄い歓声だな。ほぼ悲鳴だし。それよりジュリアスが自分の世界から戻ってきた。ラッキー。
『大変素晴らしい抱負を貰ったところで両チームは定位置に移動してね!観客のみんなももう少しの間だけ待ってね!』
ほんと元気いっぱいの先生だな。正直見た目も幼いから近所に住む女の子って感じだ。
「それよりジュリアス現実世界に戻ってこれたようだな」
「まるで私が現実逃避していたみたいじゃないか」
「事実だろ?ミューラ先生も無視してたし」
「あ、あれは……ってだいたい現実逃避する原因を作ったのは貴様じゃないか!それどころか事態を悪化させおって」
「いや~つい俺の悪ノリ精神が疼いてね」
「悪ノリするな馬鹿者!」
うん、いつものジュリアスに戻ったようだな。
怒鳴るのを止めたジュリアスは一回深呼吸すると真剣な面持ちとなった。一瞬で切り替わる表情。戦場に立っているんだと実感し、俺の中にある闘争本能が疼く。
「全員ジンが考えた作戦は頭の中に入ってるな」
「「「うん!」」」
「よし、なら行こう!」
「「「「おう!」」」」
リーダーたるジュリアスの言葉に全員が闘志を燃やし奮起する。的確な指示に冷静な判断。俺はこの時ジュリアスのリーダーとしての力の片鱗を見た。
『それではこれより間もなく試合開始となります。両チーム準備が整い主審が右手を上げたぞ!』
どうやらもうミューラ先生の実況は聞こえないようだな。
では、ここからはミューラ先生の実況でお送りします。
『武器を構えた両チーム。そして………試合開始が開始されたあああぁぁ!』
「土柱!」
『おっといきないエミリア選手の土柱が出現した!しかしこれまでとは違い数も少なくランダムに出現したぞ!これはなにかの作戦なのか!』
どうやら最初の仕掛けは上手くいったようだな。
「各自指定した相手に向かえ!検討を祈る!」
「「「「おう!」」」」
俺たちは作戦で決めた対戦相手に向かう。
『AAA全員が陣形も連携も無しに失われた大冠の各選手に向かって走って行く!』
『どうやら最初から賭けに出たようですね』
『賭けですか?』
『ええ、総合力で劣るAAAが勝つには陣形をしっかりとし連携を密にしなければなりません。しかしそれは相手も同じこと。それでは勝ち目はないと考えたのでしょう。ですから相性の良い相手とそれぞれ闘うことで少しでも勝率を上げたのでしょう』
『ですが、もしも相手の力量を見誤ったりでもすれば……』
『ええ、直ぐに勝負はついてしまいます。ですからこれは賭けなのです』
そんなエレインの言葉に観客席で観戦する生徒たちの反応はそれぞれだ。馬鹿だ。愚かだと鼻で笑う者。生唾を飲み込み驚きを隠せない者。拳を握り締め夢中になる者。祈る者。しかし誰もがAAAと失われた大冠の試合に見入っていた。
『しかし誰が予想していたでしょうか!大半が十一組のAAAが奮闘しています!』
『一番危険と判断したオリヴィア選手をリーダーであるジュリアス選手が相手をし、二丁拳銃のレイラさんを銃の使いに長けたフェリシティーさんが相手をすることで均衡が保たれているのでしょう』
『それにしてもフェリシティー選手と三叉熊のトア君とのコンビネーションを素晴らしいですね』
『入学前からともに生活していそうですからね。息が合っていてもおかしくはありません』
『ライラ選手と闘うレオリオ選手とエミリア選手のタッグも素晴らしい連携でライラ選手と素晴らしい闘いを繰り広げています』
『どうやらリーダーのジュリアス選手は失われた大冠のリーダー、サイモン選手が動かないと予想していたようですね』
『そして失われた大冠の中でもダントツで物理攻撃による破壊力を持つウェルド選手を相手しているのがジン選手です。が、これは……』
『完全に馬鹿にしてますね……』
「てめぇ!真面目に闘う気があるのか!」
「俺はいつだって真面目だぜ。勿論相手をおちょくる時もな」
「て、てめぇ……」
『これは完全に怒っていますね……』
『当然ですね。相手の攻撃を躱して反撃かと思えばパチンコ玉で挑発するだけですから。いったい何がしたいのでしょうか』
「ほら、どうした全然攻撃が当たらないぞ。どれだけ攻撃力が高かろうが当たらないと意味無いぞ」
「うるせぇ!この一撃でてめぇを真っ二つにしてやるよ!」
『凄まじい速さでジン選手に接近する!だがこれは……』
「てめぇ逃げるんじゃねぇ!」
「どこの世界に自分から攻撃を食らう奴がいるんだよ。馬鹿かお前は」
「絶対にてめぇは殺す!」
「先輩に対して口が悪いぞ!」
そんなジンの一言にジンを知っている者たちは全員がこう思った。
(お前にだけは言われたくない)
と。
「そんな事より真面目に闘いやがれ!」
「ああ、良いぜ」
『ジン選手ようやく本気で闘う気になったようだ!』
「これは死ねやあああぁぁ!!」
「よっと」
「なっ!」
「え?」
ドオオオオオオオオォォォン!!!
『あああああぁぁ!これはなんと言うことでしょうか!ウェルド選手の一撃を食らったのはライラ選手だあああぁぁ!』
『見事な作戦ですね』
『エレイン先生これも作戦なのですか?」』
『ええ、多分ですがそうだと思います!わざとウェルド選手を挑発して視野を狭めさせ誘導し攻撃を躱して見方に当てさせたのでしょう。ですがこの異端とも呼べるような作戦……ジュリアス選手が思いつくとは思いませんが……』
「どうやら上手くいったようだな」
「おい!ライラ大丈夫か!」
「…………」
『どうやらライラ選手はここでリタイアのようですね』
『な、なんと最初のリタイアは失われた大冠のライラ選手だ!』
「てめぇよくもらライラを!」
「おいおい倒したのはお前だろ。自分の過ちを他人に押し付けるなって母ちゃんに教わらなかったのか?」
『た、確かに言っている事は正論ですが……』
『これほど腹立たしい思いになることはそうそうないでしょう。ある意味才能ですね』
「ぜってぇ、てめぇは俺がぶっ殺す!」
「悪いがそれは無理だ」
「なんだと!」
「だってもう――」
「隕石槌の一撃!」
「グハッ!」
お前は終わりだから。って最後まで言わせてくれよ。
『なああああぁぁ!ウェルド選手の背後からエミリア選手の強烈な一撃が襲い掛かった!』
それにしても凄いな。ステージが陥没してるぞ。これウェルドの奴生きてるか?あ、息はしてる。
『ななな、なんと!二人のリタイアも失われた大冠のウェルド選手だ!これで5対3!一気にAAAが優勢となったぞ!』
『それにしてもエミリア選手の今の一撃は凄まじいですね。授業でもあれほど強烈な一撃は見たことがありません。この期間にきっと練習したのでしょう』
「さあ、残りは三人だ。レオリオ、エミリア、まだ闘え――」
ドンッ!
「調子に乗るな虫けら風情が」
「「「トア!フェリシティー!!」」」
『い、いったい何が起きたのでしょうか……ウェルド選手が倒されたかと思った数瞬、今度はフェリシティー選手とパートナーのトアが吹き飛ばされ土柱に激突しました』
『どうやら今の一撃はサイモン選手によるものでしょう』
チッ!もう動いてきやがった!仲間が倒されれば必ず動くと予想はしていたがここまで動くのが早いとは。少し計算外だ。
ここは少しでも士気を上げるためにジュリアスに頑張って貰いたいところだが、|三属性持ち__トリプル》相手にそんな余裕は流石にないか。
「今すぐ降伏しろ。さすれば絶望せずにすむぞ」
それにしてもなんて上から目線だ。王様のつもりか!
「誰が降伏するかよ!大切な仲間を傷つけやがって絶対に許さねぇっての!」
「レオ君の言うとおりだよ!私の親友を傷つけたんだから絶対に許さない!」
ジュリアスを呼ぶ必要は無いようだな。
「フッ、状況を理解できぬとはやはり虫けらだな。ならば身を持って絶望をしるが良い黒き雷撃」
「ぐあああああぁぁぁ!!」
「きゃああああぁぁぁ!!」
「レオ!エミリア!」
銃口を向けてきたらてっきりそこから放たれるかと思ったがまさか上空からの一撃とは想像してなかった!
『つ、強い!サイモン選手のたった一度の攻撃でレオリオ選手、エミリア選手が倒れてしまったあああぁぁ!なんという強さ!』
『そうですね。あれほどの攻撃力と魔力操作を持っているとは恐ろしい生徒です』
『僅か十数秒で形勢逆転一気に3対2とAAAが劣勢に追い込まれてしまった!しかし残った二人は我ら影から見守り応戦するジン君とジュリアス君コンビ!』
『ミューラ、本当に好きよね……」
『BLは正義です!』




