第三十三話 悪戯の範疇を越えた悪戯
更新が遅れてすいません。
今日は二話更新します。
「だが実際によく思いつくな。私には無理だ」
「そうでもないぞ。これも経験によるものだからな」
「経験によるもの?」
「そうだ。これは今後冒険者として本格的に魔物と闘うことになれば分かると思うが、まずは目の前の魔物がどのタイプなのか見極めることから始まる」
「うん、そうだね」
「当然ですね」
なんか当たり前なことを言ってすいません。
「で、なんども同じ魔物と戦っていれば今度は効率度を優先するようになるんだ」
「効率度?どういうことだ」
「同じ魔物と戦ったって面白くないし、強くなれないだろ?だから如何に効率よくスムーズに倒せるようになるかを考えるようになるんだ。そうなれば敵の身体能力は魔法だけでなく相手の心理、魔物でいうところの本能を探ろうとするんだ」
「それがどんな意味があるの?」
「同じ魔物でも数が違ったりや空腹で死にそうになっているとでは話は別だ」
「確かにその通りだ。お父様も空腹で死にそうな魔物は同じ魔物でも厄介だって言っていたからな」
「そうだ。相手の状態などから読み取ることで相手を誘導したりすることで危険無く効率よく倒すことが可能になるんだ。ただ単に俺はそれを人間に置き換えてやっているだけだ。な簡単だろ?」
「「「「………」」」」
ん?また停止したがどうしたんだ。今日はスリープモードデーとかなのか?
ジンは気づいてはいない。自分がどれだけ凄いことを成し遂げているのかを。
(そんなのSランク、いや、SSランク以上の冒険者でなければ無理だ。私の両親ですら出来るかどうか。ジンお前はいったいどんな人生を送ってきたんだ)
ジュリアスはそんな事を思いながら寛ぐジンを見つめていた。
「ま、この話はこのぐらいにして明日、準決勝の作戦会議でもしようぜ」
「あ、ああ。そうだな」
「私たちもそれで構いません」
「うん、大丈夫だよ」
話題が変われば表情も変わる。それは当たり前でありジュリアスたちの表情は真剣そのものだった。俺が誘っといてなんだが一番真剣じゃないのは俺かもしれない。いや、俺は自分に出来ることだけするだけだ。
「明日の準決勝の相手は四年一組のみで結成された『銀の斧』だ。同じ一組として私から意見を言わせて貰うなら彼らの実力は良くて上の下、悪くても中の中と言ったところだろう」
「ま、それでも一組の中での話しだからな。流石に苦戦は免れないだろうな」
まったくさっきまでのやる気はどこに行ったんだよ。
「それにしてもどうして銀の斧なんだろう。普通一番を狙うんだら金じゃないの?」
「自分たちの実力をきっちりと理解しているからでは?」
「さあ、流石の私もそこまでは分からない」
「ジンさんはどう思いますか?」
「一撃必殺」
「「「「え?」」」」
「狼男、悪魔、ある地域では吸血鬼もか。普通の武器では太刀打ち出来ない。しかしそんな存在を一撃で倒せる物が銀製品だ」
「だから#銀の斧__シルバーアックス__#なんだね」
「でもそれなら普通は銀の弾丸じゃないの?」
「たしかに銀の斧には魔導銃器を使う生徒はいるが今回は全員が近接戦闘武器だ。一番間合いがある生徒でも武器は槍だからな」
「なるほどね」
「それに銀の弾丸はカクテルの名前でもあるからな。かぶると思ってやめたんじゃねぇか」
「ああ、それはあるかもね」
「それで、銀の斧のメンバーってどんな奴らなんだ?」
「これがメンバーだ」
ジュリアスがタブレットを開いて見せてくれた。ん?こいつらは。
「はぁ……」
「どうしたんだジン?」
思わず嘆息してしまったが、仕方が無いよな。なぜなら――
「メンバーのうち二人は俺が個人戦で闘った相手だ」
「え、嘘?だれ?」
「このタギラって奴は五回戦で、こっちのガルムって奴は準決勝で闘ったやつだ」
「そう言えばガルムはジンが唯一苦戦した相手だったな」
「まあな」
「では、こっちのタギラさんって方は?」
「そいつは俺の一撃を食らっても立ち上がってきた男だ。今のところ俺の一撃を食らって気絶しなかったのはこの男とエレイン先生ぐらいだろうな」
「マジか……」
「嘘でしょう。ジン君を苦戦させた程の策略家とタフネスさを持った相手なんて最悪だよ~」
「それだけじゃない。こっちのジックは剣術で私と互角に闘える数少ない相手だ」
「ジュリアスさんと同等の剣術の持ち主ですか……」
「なら、他の二人は?」
「こっちのウーケンは雷属性の魔法を得意としていて槍術との組み合わせの攻撃力はクラスの中でもトップクラスだ。流石の私でも肉体強化だけでは勝てる相手ではない。最後の彼女だが彼女もまた厄介だ。魔導双剣から放たれる大量の斬撃はとても早く回避するのは難しい。ましてや風魔法で強化してくるとなると流石に苦戦は強いられるだろう」
「なにそれ。頭脳、体力、技術、威力、速度。各得意分野を集結したみたいなチームじゃんか!」
「簡単に言えばそうだ。で、ジンどうする?」
各パラメーターから見ても全員が平均的で一つだけ少しだけ突出している。こういうタイプは自分の実力をはっきりと理解している。だからこそ無駄な虚勢は張らない。そんな連中をガルムの戦略がバックアップするわけか。流石の真壁でも勝つのは至難の技だぞ。え、俺?勿論余裕ですよ。一人で闘うのならね。
でも、どうしたもか。一対一でまともに殺り合えるのは俺とジュリアスだけ。相手の実力を考えるなら二対一。いやガルムの策略があるなら三対一じゃないと負ける危険性がある。
ガルム、お前はいったいどんな策略で闘うつもりだ。
俺がもしもガルムならどうする。相手になったつもりで考えるんだ。
今日の戦略の事を踏まえるなら……まず、ジュリアスを潰す。リーダーであり作戦立案者を最初に潰すのは当然だからな。その次に狙われるとするなら俺だろうな。相手の二人を倒しているからな。それだけ危険視されているはずだ。で、レオリオたちは最後……いや、何かが違う。そうだ。相手が強いなら全員で潰し筈だ。俺ならそうする。なら、まずはジュリアス。その次にレオリオたちか。一歩出遅れることになるかもしれないが、そこは臨機応変に立ち回るしかないか……いや、違う!実力さがあるからこそ主導権はこちらが握らないと駄目だ。主導権まで渡せば間違いなく負ける。となると………。
「って聞いているのか!」
「え?」
「え?ではない!まったく人の話を聞かないなんて何がごとだ!」
「悪い悪い。つい作戦立案に入り込みすぎていた」
「む、それなら仕方が無いがちゃんと人の話は聞くんだぞ」
「分かってるって。で、なんの話だ?」
「作戦はどうするかって話だ」
「なら、俺の考えが纏るまでまってくれよ」
「誰もお前が作戦を考えてるなど思いつくわけないだろうが!」
それもそうか。
「それで作戦の方は思いついたのか?」
「ああ、大まかにだけどな」
「なら聞かせて貰えるか?その作戦を」
「勿論だ。もしも意見や疑問があったら言ってくれ」
「分かった」
「まず作戦だが、如何に相手より先に主導権を奪うかだ」
「ま、妥当だな」
「いや、妥当とかの問題じゃない。策略に長けたガルムがいる以上主導権を奪われたら高確率で負ける」
「「「「…………」」」」
俺の言葉をちゃんと理解したみたいだな。真剣みが増してる。
「主導権を奪う方法としては一番手っ取り早いのが相手に驚いて貰うことだ」
「相手を驚かせるの?」
「そうだ。想定していない事が起きれば一瞬硬直する。ましてや実戦が少ない学生相手だ。それは大きな隙になるだろう」
「でもどうやって?」
「それが第一段階だ。まず俺が相手の懐に飛び込み一人を倒す。一番はガルムを倒すことだが、そう上手くはいかないだろうからウーケンを狙う。勿論ガルムを狙うフリをしてだけどな」
「なんでウーケンなんだ?確かに奴の貫通力は凄いが」
「それに関しては全て作戦を聞けば分かるさ。で、第二段階はジュリアスとエミリアの出番だ」
「私たちの出番ってことは今日と同じ作戦をするのか?」
「正確には似た作戦だな。同じ魔法を発動はさせるが出現場所が大きく異なる」
誰もが首を傾げている。やっぱり分からないか。
「どういうだ?」
「それはだな……」
時は流れ5月26日木曜日。いよいよ準決勝が始まる。
俺たちの相手、銀の斧はステージの反対側で登場待ちしていた。ここからでも伝わる闘志。恨み辛み、憎しみなどは一切無くただ強敵を倒し上に行く。それだけしか考えていないと言うのが肌身に伝わってくる。まったく死んで欲しいぐらいクズもいれば、楽しいと感じられるほどの敵も現れる。これはけして前世では味わえなかったことだ。
『準決勝第一試合目はこの両チームだ!』
なんだ今日もミューラ先生が実況か。ジュリアスのメンタルが問題だが、大丈夫なことを祈るしかないな。
『まず紹介しますはあらゆるチームを策略で危なげなく倒してきたチーム、銀の斧!』
凄い歓声だな。ま、ここで勝利すれば代表入りは確実だし四年一組のチームだからな。人気が高いのも頷けるな。
『そんな銀の斧と闘うのは準々決勝で素晴らしい戦略を見せ付けてくれたチームAAA!武と武、知略と知略の闘いが見られることは間違いないでしょう!そして解説は』
『どうも、四年一組担任のエレイン・グウ・ウェルマンです』
もう少し他の自己紹介はないのか?
『エレイン先生もう少し別の自己紹介をして頂けると生徒たちも盛り上がるです』
『そ、そうですか?』
あ、言われてる。
『例えばその我侭ボディーになるための秘訣とか』
『そ、そんなのありません!』
エレイン先生完全に遊ばれてるな。いったいどんな表情してたのかとても気になるところだが、今は試合に集中集中………駄目だ、とても気になる!
『それでは気を取り直して行きましょう。まもなく両チームの準備が整いますので少々お待ちください。それにしても今日の試合はどのようになると思いますか?』
『そうですね。相手は戦略に長けたガルム君ですからね。勢い任せでは勝てないことは事実です。ですがAAAにも考えはあるのではないですか?試合では初めて見る魔物がいるようですし』
『本当です!とても愛らしい白銀の狼が居ますね。情報によりますとあの魔狼はジン選手が使役している魔物ということですね』
『はい、その通りです。頭も良くて座学などの授業でも静かに寝ています。飼い主であるジン選手と一緒にね。ジン君あとで職員室に来てください。こないだの悪戯ついて相談があります』
「ゲッ!バレてのかよ!」
『当たり前です!』
俺とエレイン先生の会話に演習場ないが黄色い笑い声で満たされる。
「ジン、貴様は悪戯なんかしてたのか?」
「してないしてない。実験しただけだ」
「実験だと?」
「ああ、エレイン先生は蛙が苦手っていうから机に置いてただけだ。でもまさかあそこまで驚くとは思わなかったけどな。ま、見ててとても楽しかったけど」
「いや、あれは普通に驚くだろ」
「うん、私でも驚くよ。っていうより驚いたよ」
「あれは悪戯の限度を超えていると私は思いますけどね」
「いったいどんな悪戯を仕掛けたんだ」
「箱いっぱいに蛙を入れておいただけだ」
俺の言葉に演習場内が一瞬で暗く重たい空気になる。
「ジン、それは悪戯の範疇を超えているだろ!」
「私たちも流石に気分が悪くなりましたね」
「ま、ジンだけは思いっきり笑っていたけどな」
「部屋中が蛙だらけになって後片付けが大変だったよ~」
「いや、悪かったな。でも面白かったろ?あんなエレイン先生はそうそう見られるもんじゃねぇからな。でもなんで俺ってバレたんだ?」
「そりゃあ、一人だけ笑っていたらバレるだろ」
「まず、あんな酷いことを思いつくのはジンさんぐらいです」
「うん、そうだね」
『エレイン先輩のこと尊敬しています』
『ありがとう……』
あの二人って先輩後輩だったのか。初めて知ったな。
『さ、さあ、会場内が重たい空気にとなっちゃったけど両チームの準備が整ったみたいなので、試合を始めようか!』




