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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第一章 おっさんは冒険者を目指す
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第三十二話 武闘大会団体戦学科別代表選抜準々決勝

 初戦を勝ち抜いた俺たちの勢いは止まらず、また対戦相手にも恵まれ俺たちは三回戦、四回戦と勝ち抜きいよいよ準々決勝までやってきた。

 準々決勝からは連続で試合することはない。一日で三回戦、四回戦していた昨日とは違い今日からは一試合しかしないのだ。

 今目の前では準決勝であたるかもしれないチームが闘っている。しかし今俺たちが倒すべきなのは準々決勝の相手だ。


「それじゃもう一度作戦の見直しをする。ジン、頼んだ」

「へ~い。今日闘う準々決勝の相手『スピードパンサー』はスピードを重視した完全近接戦闘チームだ。そのため武器も短剣やショートソードといった物だ。昨日試合を見たから分かると思うがあのスピードは脅威だ。全員が四年二組と言うこともあって連携も良い。一度でも翻弄され平静さを失ったら負けるぞ」

 ま、俺一人になれば余裕で勝てるが目立つのは嫌なので適当に負けるけど。


「でもあのスピードは脅威だよ。どうやって止めるの?」

「それには考えがある。まず、ジュリアスとエミリアに土柱アースピラー氷柱アイスピラーを出して貰う」

「でもその作戦、昨日のチームが使ってたよね?」

「そうですよ。本当にそれで勝てるのですか?」

「確かに出してはいたが、見た感じあれは少しでもスピードを落とさせるためだけだった。きっと対戦相手はそれで勝てると思ったんだろうが結果は皆が知っている通りだ」

「なら――」

「勿論俺の作戦はそれだけじゃない」

「どう言うことだ?」

 俺の言葉に全員が首を傾げる。


「それはな――」

 不敵な笑みを浮かべながら俺は作戦内容を説明した。



 時間は経ちついに俺たちに試合が始まる。


『準々決勝二試合目はこの両チームだ!圧倒的スピードを活かした戦法で次々と対戦チームを薙ぎ払ってきたチーム、スピードパンサー!』

 実況の言葉と同時にステージに上がる。流石は四年二組の連中だ。そこそこ有名だな。


『そんなスピードの申し子たちに挑むのはなんと!個人戦代表者でありルームメイト同士でもある一部の女子に大いなる支持を得ているジュリアス君とジン君の二人のカップルが率いるチーム、AAAノーネーム!』

「誰がカップルですか!」

 あのふざけた実況はやはりミューラ先生か。


「完全に俺らモブ扱いだな」

「なら、私は生徒Aかな?」

「でしたら私は生徒Bで」

 二人とも完全に悪ノリしているな。なら俺も!


「気にするなジュリアス。部屋ではいつも可愛らしい喘ぎ声をだしてるんだから」

「なっ――!」

『キャー!!』

「デタラメを言うな!」

「おっと」

 危ない危ない。危うく右フックを食らってしまうところだった。


「でも実際昨日は可愛い声出してたじゃねぇか」

「あ、あれはお前がもっと優しくしないから悪いんだ!」

『キャー!!』

 完全に墓穴を掘ったな。


「お、お前らって本当にそういう関係なのか……」

「ち、ちが――」

 レオリオの奴完全に引いているな。ま、無理もないけど。


「気にすること無いよジュリアス君!」

「ええ!障害は多いでしょうが、私たちは全力で応援しますよ!」

「二人は目を輝かせながら変なことを言うな!」

 このままだとジュリアスの奴いじけるな。流石にフォローしておくか。


「ま、冗談はこれぐらいにしてそろそろ試合を始めようぜ」

「冗談なの?」

「ああ、流石に昨日は二試合して疲れたからな。互いにマッサージをしただけだ」

「で、そこから禁断の行為には?」

「残念ながらお前たちが想像しているような展開にはならないぞ」

「そうなんだ……」

「残念です」

 本気で落ち込むなよ。俺が悪いみてぇじゃねぇか。


『それでは気を取り直して試合を始めましょう!両チームはそれぞれの定位置に移動してね』

 ミューラ先生もどうやら真面目に実況する気になったようだな。


「ミューラ先生の悪ふざけにも困ったものだな。な、ジュリアス」

「お前がそれを言うな!」

「うおっ!」

 危ねぇ、もう少しで刀の餌食になるところだったぜ。

 呆れ果てたのか嘆息しながらも主審が合図を出した。ここからは試合に集中したいのでミューラ先生の実況でお楽しみください。


『準々決勝二試合目、スピードパンサー対AAAノーネームの闘いの火蓋が切って落とされたぁ!先に動いたのはAAAノーネームのジュリアス選手とエミリア選手だ!これまでとは違う陣形だぞ!』

土柱アースピラー!」

氷柱アイスピラー!」

『なんと大量の土柱アースピラー氷柱アイスピラーが両チームの間に出現した!これではスピードパンサーお得意の速攻が封じられてしまった!』

『それはどうでしょうか』

『あ、貴方は!』

『準々決勝から解説を勤める四年十一組の担任エレイン・グン・ウェルマンです』

『な、なんと!鮮血の鉤爪ブラッティ・ネイルの異名を持つエレイン先生が解説者として来て下さいました。それで先ほどの言葉はどう言ういみでしょうか?』

『両チームの間に土柱アースピラー氷柱アイスピラーを出現し障害物として相手のスピードを落とし速攻を封じたつもりでしょうが、この作戦は昨日の四回戦で既にスピードパンサーが対戦し負けたチームが実行していました』

『つまりAAAノーネームは同じ作戦を真似たということでしょうか?』

『そうなりますね』

『それではスピードパンサーも対応が早いのでは?』

『ええ、そうなりますね。見ての通り動じることなく柱の間を高速ですり抜けて行っています』

『本当だ!これはAAAノーネーム作戦ミスだ!ここに来て大きな痛手だ。さあどうする!』

 どうやら作戦通りだな。


『そうこうしているうちにスピードパンサーが通過して出てきてしまった!さあ、どうするAAAノーネーム!なっ――!』

「待ってたぜ!」

『スピードパンサーが出てきた瞬間を狙ってフェリシティー選手とジン選手による弾丸とパチンコ玉の嵐が襲い掛かり早くも四名がリタイアしてしまったぞ!これではまるで相手が出てくる場所が分かっていたかのようです!エレイン先生これはどう言うことなのでしょうか?』

『上手いですね……』

『え?』

『横からの映像では分かりにくいですので上からの映像をモニターに出してください』

『こ、これは!』

『はい。両チームの間に全面的に出現した土柱アースピラー氷柱アイスピラーですがAAAノーネームの選手の皆さんに近いほど柱が太く数が少ないんです』

『スピードパンサー側から見た映像では柱が全部で8本。それに対してAAAノーネーム側からみた映像には柱が3本しかありません!で、ですが何故柱の太さを徐々に変えているのでしょうか?』

『それはきっと昨日のスピードパンサーの試合が鍵だったのでしょう』

『昨日の試合がですか?』

『はい。こちらの映像をご覧下さい。相手チームは柱を出すことで相手の速攻を封じました。しかし敵を視認できなくなりました』

『ですがそれは柱と柱の間を狙っていれば良い話なのでは?』

『その通りですが、柱の数を数えてみてください』

『えっと……8本ですね』

『つまり柱と柱の間は全部で7ヶ所。1チーム5人しか居ないチームで7箇所を見張るのはとても困難です。ましてや全員が魔導銃器ならまだしも魔導銃器を使用していたのはたった一人だけ。これではせっかくの作戦も台無しです』

『た、確かに』

『ですが、AAAノーネームは柱を太くし数を減らすことで狙う的を減らしただけでなく柱と柱の距離を狭めることで相手に気づかれないようにし尚且つ全員による同時攻撃をさせないという三つの目的を最初の段階で完成させていたんです』

『な、なんと三つもですか!』

『そうです』

『ですが残り一名は柱に隠れて出てきませんよ?』

『もう関係ありません』

『え?』

『既に四人が倒され残りは一人。制限時間がくればAAAノーネームの優勢勝ちとなります』

『つまりスピードパンサーの残り一人がこのまま何もしなければ人数差でAAAノーネームの優勢勝ち。だからといってこのまま突進しても待ち構えるフェリシティー選手とジン選手に撃たれて終了というわけですね』

『その通りです。試合開始した瞬間この罠に入り込んだ瞬間、勝負は決していたんです。まるで何も知らない獲物を誘い込むため洞窟かと思い込ませた大蛇が大きく口を広げていたかのように』

『なるほど』

 エレインの解説に実況のミューラ。そして観戦していた生徒たちまでもが戦慄を覚えた。

(それだけじゃない。昨日の今日で似た策略を使うことで相手に油断させるためでもある。速攻を封じられながらも勝利を掴んだスピードパンサーの足元を狙ったかのような策略。自信と慢心は紙一重って言うけどこれほどまでの相手の心理を利用した戦略を考えてくるなんてジュリアス・L・シュカルプ。なんて恐ろしい子なの……)

 まさかこの策略を考えたのがジュリアスではなくジンであることなど誰も想像していなかった。それは観戦していた生徒だけでなく実況や解説のミューラやエレインといった教師人もであった。

 結局、残りの一人は姿を現すことなく優勢勝ちということで俺たちは準々決勝に勝利した。

 その日の試合日程が全て終わった俺たちAAAノーネームは俺とジュリアスの部屋に集まっていた。

 女子が男子の部屋に来ることは禁止されてはいないが、規則で午後7時以降は異性の寮にいることは禁止されている。今は午後5時20分残り一時間は余裕で話し合いが出来るってわけだ。


「それにしてもまさかあれほど上手く行くとは思ってなかったもんね」

「そうですね。これもジンさんのお陰ですね」

「もっと褒め称えるが良い」

「調子に乗るな」

「テヘ♪」

「でも、お前たちは良いよな。魔法や技が使えたんだから。俺なんて剣士で前衛なのに一番後ろでポツンと突っ立てただけなんだからよ」

「そう怒るな。明日準決勝。つまり明日勝てば団体戦代表になれるんだ。他の生徒たちは今日の試合で疲れているが私たちはそこまで疲れていないんだ。これは大きなメリットなんだぞ」

「それもそうだな。よし!明日は今日の分もまとめて全力で闘ってやるよ!」

「ああ、その意気だ」

 こんな呑気な体験が出来るなんてあの島に居たときは考えもしなかったな。そういや前世でもこんな青春染みたことはしなかったような気がするな。別にボッチってわけじゃなかったが友達が多いほうでもなかったからな。


「それにしてもよくあんな作戦を思いつくよね」

 物思いに耽っていたからいきなり話を振られても対処に困るな。


「そ、そうか?」

 やばり言葉に詰まってしまった。ま、気にすることでもないか。


「いつあんな策略を思いつくのか是非教えて貰いたいものですね」

「いつって言われてもな。大体の策略を思いついたのはスピードパンサーたちが勝利して手を振っているのを観客席から見ていた時だな」

「え、あの時!」

「そうだ。俺はまず両方のチームのデータを集めることから始めてで勝ったチームが分かった瞬間に策略を練り始めるんだ」

「普通はそうだと思うけど?」

「スピードパンサーは速度を主軸に闘う完全近接戦闘集団だ」

「試合前にも言ってましたね」

「そんなチームが速度を封じられながらも勝利を掴んだんなら必ずそれが自信になる。まして相手は学生だからな。無意識に自信が慢心に変わるんじゃないかって思ったんだ。だから同じ作戦を使ったフリをして相手を油断させたってわけだ」

「「「「…………」」」」

「ん?どうかしたのか?」

 変なことでも言ったか?久々に停止しているのを見たきがする。


「いや、なんて言うかな」

「まるで軍師のようでした」

「軍師って俺は軍には興味はないぞ」

「なら、腹黒策士」

「誰が腹黒だ」

 まったく褒めるのか貶すのかどっちかにしてくれ。出来れば褒め称えてくれるととても嬉しいです。

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