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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第一章 おっさんは冒険者を目指す
26/205

第二十五話 武闘大会個人戦学科別代表選抜開始!

 楽しく堕落が許される休日は一瞬に過ぎて、また憂鬱な月曜日がやってきた。

 最初は好奇心で退屈しなかった座学も次第に退屈になり居眠りするようになった俺はエレイン先生に叱られながらも放課後を迎えた。

 今日は訓練も無いのでAAA(ノーネーム)メンバーで寮へと戻る。


「まったく授業中に居眠りなんて、スヴェルニ学園の生徒として恥ずかしくないのか」

「ふぁあ~……ねむ」

「聞いているのか!」

「聞いてるよ。まったく下らない事で怒らなくても良いだろうに」

「下らないだと!」

「お、俺が悪かった!だから刀を抜くのはやめてくれ!」

 まったく、日に日に暴力的になっていくな。


「お前ら本当に仲が良いよな」

「そ、そんなことはない!」

「おい、即答で否定されたら俺が悲しいんだが」

「す、すまん……」

「でも、本当に仲良いよね。ルームメイトだからなのかな?」

「確かにそれも関係しているでしょうね。でも私やエミリア以上に仲がよろしいようにみえます」

 その言葉にジュリアスが何故か俯いていたが、俺は別の事が気になった。


「二人ってルームメイトだったのか?」

「そうだよ。フェリとはこの学園に入学した時からずっと一緒なんだよ」

「ですから、性格や好みまで知っています」

「ねー」

 嬉しそうに話す二人。本当に仲良しなんだな。


「でもお二人以上ではありませんけど」

「そうか?」

「うん。ルームメイトになって一ヶ月とは思えないよ」

「確かに友達以上の関係にも感じる」

「友達以上?」

「そうですね……例えば親子とか」

「俺が父親だな」

「なんでだよ」

 即答でツッコまれてしまった。ボケたつもりはなかったんだが。


「どちらかた言えばジンさんが世話をやかす子供って感じですね」

「まさにその通りだ」

「おい、なんで頷くんだよ」

「まさにその通りだからだ」

 くっ、思い当たる節があるから言い返せない。


「それか、出来の良い兄と怠け者な弟でしょうか?」

「なら俺が兄だな」

「だからなんでだよ!」

 ナイスツッコミ。俺のボケに素早く入るなんて漫才師の才があるんじゃないか。


「でも、なんて言うのかな。そんな感じはするけど、しっくりこないんだよね」

「ああ、それは分かる」

「確かに……」

 急に考え込む三人。その光景に俺とジュリアスは疑問符を浮かべた。


「なら、何だって言うんだよ」

「「「おホモだち」」」

「おい」

 顔を赤面させるジュリアスとジト目を向ける俺。誰がおホモだちだ。俺は男になんて興味はない。俺は女が好きなんだ!


「(でも、それならどっちが攻めだろうね。私的には攻めがジン君で受けがジュリアス君なんだけど)」

「(確かに見た目で言えばそうですが、私的には逆だと思います)」

「(え、なんで?)」

「(嫌がりながらも抵抗できないジンさんに、舌なめずりしながら迫りよるジュリアス君)」

「(アリだね!)」

「(ですよね!)」

「おいこら。そこの腐女子二人組。何をコソコソと話している」

「「いえ、別に」」

 笑みを浮かべているが、間違いなく如何わしいことを想像しているに違いない。まったく絶対に中世時代であればそんな事を考える女性なんていない筈なのに。もしやこれもあの腐女神の仕業なのか。


「それより早く戻ろうぜ」

「そうだな。俺も早く帰ってタコスを大量に食べたい」

「最近それに流行っているな。飽きないのか?」

「具材が違うからな。飽きることはない!」

 そんな雑談をしながら俺たちは寮へと向かった。

 途中で女子寮へと戻るエミリアとフェリシティーと別れた俺たち三人はバルリスじゃなくて、マリリンに出迎えられて寮へと入った。

 タコスを堪能した俺はシャワーでさっぱりすると窓から入り込むまだ少し冷たく感じる夜風にあたりながら火照った体を冷ましていた。


「ジン、お茶だ」

「お、サンキュー」

 麦茶の入ったグラスを受け取り喉を潤す。うん、冷たくて美味いな。


「いよいよ明日だな」

「そうだな」

 武闘大会科目別予選が明日から始まる。これまでの対人練習をぶつけられることと、毎日の授業で溜まったストレスを発散する良い機会だ。


「ジンは今回の大会が最初で最後だが、どんな気分だ?」

「そうだな。ワクワクしているな」

「ワクワクか。ジンらしいな」

「ジュリアスは違うのか?」

「私は前の大会もそうだが、大会前日はいつも緊張して眠れないんだ」

「添い寝してやろうか」

「殺されたいのか」

「冗談だ」

 ちょっとしたジョークのつもりが殺気の篭った言葉が返ってきてしまった。


「裏工作されないよう大会当日まで対戦相手は分からないってこともあってか、いつも不安だ」

「なら、一つ良い事を教えてやろう」

「良いこと?また良からぬことじゃないだろうな」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ」

「授業が嫌いな不真面目ルームメイト」

 事実だから言い返せない。


「それで良い事ってなんだ?」

「簡単だ。楽しめば良い」

「楽しむだと。この結果で将来を左右される可能性だってあるのにか?」

 なぜか不機嫌にさせてしまったようだ。いや、真面目で堅物なジュリアスならありえるか。


「お前はそう固く考えすぎなんだよ」

「将来を考えるのは当然のことだ。遊び呆けていればそれが将来仕打ちとなって返ってくるからな」

「お決まりの返答をどうも」

「む、馬鹿にしているのか?」

「そうじゃない。俺が言いたいのは将来のことを考えすぎて萎縮するのは本末転倒って言いたいんだよ」

「そ、それは確かにそうだが……」

「だいたい目の前の戦いで楽しめずにこの先楽しいことが出来ると思うか?」

「出来るんじゃないのか?」

「ま、出来る奴もいるだろうな。だが周りを見てみろ。一生懸命勉強して良い学校を卒業したのに結果は引きこもりのニート。もしくは家庭を疎かにして仕事の毎日。それのどこに楽しい未来があるって言うんだ」

「それは……確かに」

「良いか?小さいとき楽しい事を知っている奴はどうやれば楽しくなるかを知っているってことだ。だが周りの目を気にして勉強ばかりの奴は何が楽しいのか、何をすれば楽しくなるのかを知らないのさ」

「それはそうだが、それでもしも負けたら……」

「その考えが楽しくないんだよ」

「え?」

「戦いで作戦を練るのは負けないためじゃない。勝つためだ。どうやれば勝てるのか、どうすれば相手を倒せるのか。それだけだ。良いかポジティブに考えろ。負けたらどうしようって考えるんじゃなく、どうすれば勝てるのかって。そっちの方が数倍も楽しいじゃねぇか」

「……ムカつく」

「なんで!」

「きっと他の人が聞けば腹を立てるようなことだろう。だが、そうだな……そっちのほうが楽しそうだ」

「だろ」

 笑みを浮かべるジュリアスに微笑換えして拳を突き出した。


「勝とうぜ」

「ああ……」

 ジュリアスは同意するように拳を打ち合わせてきた。



 次の日。

 朝からマイブームのタコスを堪能した俺は授業に出ていた。

 だが、今日は別に憂鬱な気分じゃない。なぜなら今日は座学が無いからだ!別に何かの行事とかじゃないぞ。いや、行事なのか。

 今日からいよいよ、武闘大会個人戦、団体戦の予選が行われるからだ。と言っても授業の中で行われるからそんなに時間もかからない。前と違うといえば、全学年の一組~十二組までの冒険科全員による合同授業だけど。でも冒険科の生徒だけでも総勢二千四百人だからな。尋常じゃない。流石はマンモス学園。


「それではこれより武闘大会予選を行う。だが勿論ここでの勝敗や闘い方などは成績に入るからな。真剣に闘うように」

 見たことのない丸刈り先生だな。きっと他のクラスの担任だろ。


「今日から四日個人戦を行い、来週からは団体戦を行う」

 団体戦より個人戦の方が人数は少ないし、勝敗が早くつくからだろうな。


「個人戦に参加する生徒はここに残り、残りの生徒は観客席で観戦するように」

 その言葉に生徒たちが行動を開始した。


「そんじゃ、ジン頑張れよ」

「ああ」

「応援しているから」

「団体戦前に手の内を明かさないで下さいね」

「あ、ああ」

 レオリオたちに声援を貰った俺は欠伸をしながら待つ。

 で、十分してようやく個人戦参加者だけになった。が、八組下の生徒の参加者は俺を入れて二人だけ。てか、九組下からは俺だけだし。どんだけ出るのが嫌なんだよ!

 恥を曝したくないからか、それとも既に互いに実力を知っているからなのかは分からないがもう少し参加しても良いだろうに。ま、それでも参加者が千二百人以上は居るけど。

 これ、本当に四日で終わるのかよ。


「これより、最初の対戦相手を決めてもらう」

 決まってないのかよ!これだけ居るんだからそっちで決めとけよ。


「一人ずつこのクジを引くように。それじゃ一組の出席番号一番から」

「はい!」

 元気のある返事をした青年が丸刈り先生の横にある大きな箱に近づく。見た目からして日本人のような奴だな。あいつも送り人なのか?


「マカベ・トーヤ。青の6番!」

 なるほど、人数が多いからまずは赤、青、緑、黄色、白、黒の色ごとでトーナメントを勝ち抜いた者が軍務科との戦闘での代表に選ばれるわけか。これなら時間短縮になるな。それにしても女子の歓声が凄いな。確かにそれなりにイケメンだし、一組の一番ともなれば女子にモテるだろうな。ケッ、俺には関係ないけどな。

 で、クジを引くこと約二時間。長い!長すぎるだろ。人数が多いから仕方が無いけどさ。どう考えても時間がかかりすぎだろ。


「最後。十一組出席番号42番、オニガワラ・ジン!」

「へーい」

 ああ、ネム。時間掛かり過ぎて眠くなってきた。てか、俺が引く必要ある?最後で空いている枠も分かってるのに。もう一度言うけど、引く必要ある?


「ほら、さっさと引け」

「へ~い、へい」

 箱に手を突っ込んでボールクジを引く。と言っても残り一個だから選ぶ必要がないけどさ。


「オニガワラ・ジン。緑の52番!」

 丸刈り先生の宣言でようやく対戦相手が決まった。優勝するには八回勝てば優勝か。それにしてもクジを引いただけなのに疲れた。


「自分が出場する色の腕章をつけた先生の場所に集まるように。それでは解散」

 さて移動するか。腕章をつけた先生あれはエレイン先生だな。

 そんな事を思いながら移動していると、これまた露骨聞こえてくる聞こえてくる。

 哀れみ、軽蔑、見下しの視線と一緒に好き勝手な言葉が俺の耳入ってくる。そんな中から幾つかご紹介しよう!


「おい見ろよ。あれ」

「うわ、本当に参加してるよ」

「あの人、魔力が無いらしいわよ」

「本当に!?よくそれで参加しようと思ったわね」

「どんだけ頑張っても無駄なのにね」

「どうせ、思い出や少しでも成績をあげる為に積極性をアピールしたいんでしょ」

「哀れね」

「本当だぜ」

「でも、アイツと最初に当たる奴ラッキーだよな」

「本当に」

 まあ、こんな感じだ。別にこの学園が実力主義なことに関しては文句どころか賛同だけどさ。あんまり人を見た目や肩書きで判断しないほうが良いと俺は思うぞ。あ、それから人の頑張りや努力を馬鹿にする奴は嫌いだ。

 この世が弱肉強食。強者と弱者でハッキリと別れていることに関して問題は無い。だけど生まれた時から強者の奴なんていやしないし、今が強者でも次の日には弱者になっているかもしれないんだからあんまり他人を馬鹿にしない方が身のためだと俺は思うがね。


「何してるの!早く並びなさい!」

「やべっ!」

 しまった思わず眠気対策のために思考を巡らせていたら歩くのが遅くなってしまっていた。

 ま、そんなこんなで始まった個人戦の一回戦が始まる。え?全員で闘えるのかって。勿論無理だ。確かにここの闘技場は東京ドーム以上の大きさがあるが、千二百人以上の選手を一斉に闘わせられるほど広くない。因みにこの闘技場は学園の中にはる闘技場で3番目の大きさらしい。どんだけ広いんだよ!このマンモス学園は!

 適当に整列した俺はルール説明を始めたエレイン先生の話を適当に聞き流しながら始まるのを待つ。


「それじゃ、ルール説明を行います。まず1回戦~5回戦までは一試合十分。準準決勝と準決勝は15分。決勝は20分となっており、審判は人数にも限りありますから5回戦までは主審のみ。準々決勝、準決勝は主審1に副審が2人、決勝は主審1に副審4人で行います。武器や魔法に関して制限はありません。ですが危険と判断すれば審判が止めに入ります。またその指示に従えない場合は失格とみなします。質問はありますか?」

 エレイン先生の言葉に誰も反応しない。しまった寝てた。


「それでは試合を始めます。それでは画面に表示された自分の番号のステージに向かって下さい」

 説明も終わったので画面を見て移動する。戦場となるステージは5×5のステージ。随分と広いが決勝でも同じ広さなのか?

 そんな事を思いながらステージに上がる。


「へへ、まさか俺の相手がこんな出来損ないとはな。超ラッキーだぜ」

 俺の前に立つ男はこれまたどこにでもいそうな男子生徒だった。ちょっと目を引いたのは耳につけたピアスの数。あれ、両耳で12個あるよな。どんだけつけてるんだ。


「これより一回戦を始める。両者準備は良いか」

 審判の声と同時に男はマグナム式の拳銃を構える。


「俺はいつでも良いぜ」

「問題ない」

「それでは……始め!」

「これで、終わり――がはっ!」

 その言葉を吐いた男子生徒は気絶した。


「確かに終わりだったな」

「そ、そこまで!勝者、オニガワラ・ジン!」

 審判の宣言で俺の一回戦は終了した。

 ああ、終わった終わった。二回戦まで時間あるしどうしようか。ジュリアスの試合でも見に行くか。


「なあ」

「なんだ?」

「他の生徒の応援にも行って良いのか?」

「構わないが、声援程度だぞ。試合の邪魔をすればその時点で失格だ」

「分かってるよ」

 さて審判の了承も得た事だし観戦にでも行くとするか。


    ************************


 試合が始まって既に五分が経過していた。まさか最初から同じクラスの子と当たるなんて!

 桃色のツインテールをした小柄な少女の名前はネル・フォン・ラズワエル。クラスメイトで実技成績はクラスで9位。順位で言えば私のほうが上だけど、正直私は彼女と相性が悪い。刀で闘う私に対して彼女は遠距離と中距離を得意とする銃を使う。またなにより弱点を補う闘い方をみっちりと研究している。とてもやり辛い相手だ。

 このままだと間違いなく判定負けしてしまう。何か手を考えないと!


「試合中に考え事なんて良くないよ!」

「しまっ!」

 反応が遅れてしまい左肩と左頬を掠めてしまう。


「流石はジュリアス君だね。完全に勝利したと思ったんだけどねぇ」

 いったい私は何をしているんだ。試合中に考え事なんてらしくない。それに緊張しているのかいつも以上に足が重たい。


「でもこのまま逃げ切ればネルの勝ちだね」

 その通りだ。このままタイムオーバーになれば私の負けだ。


「でも、それじゃつまらないからネルは最後まで攻めさせて貰うね!」

「チッ!」

 掠めた左肩が思うように動かない。これもネルの魔法によるところか。

 彼女の得意な魔法は闇魔法。その中でも相手を麻痺させたり、幻惑にかけたりと、行動不能にする魔法が得意だ。まさか硬化魔法ではなくて麻痺系統の魔法式を弾丸に埋め込んでくるなんて考えもしなかった!

 魔法武器に比べ魔導武器での魔法の効果は半分しかだせない。その理由は簡単だ。

 魔法武器での魔法攻撃は一つの攻撃が魔法で構成されていること。

 それにたいして魔導武器は弾丸に魔法を付与していること。分かりやすく説明するなら弾丸を魔法の膜で覆うような感じだ。そのため効果が半分しか出せないのだ。

 でもその分メリットもある。魔法武器に比べ一度に使用する魔力量が少ないことだ。そのため魔力量が少ない冒険者や軍人なんかは魔法武器より魔導武器を使用する者が多い。

 完全に主導権を奪われてしまった私はネルの攻撃を回避するしかない。このままでは負けてしまう。あと二分も残っていないと言うのに!


「ジュリアス何をしてるんだ!」

 ジン!どうしてここに居るんだ!まさか負けた……いや、きっと勝ったんだ。流石だな。


「ボサッとしてないで闘え!逃げるだけじゃ楽しいわけないだろうが!」

 楽しむ……。

 私の頭の中に昨夜の会話が頭の中に蘇る。


『良いかポジティブに考えろ。負けたらどうしようって考えるんじゃなく、どうすれば勝てるのかって。そっちの方が数倍も楽しいじゃねぇか』

 ジンお前の言うとおりだ。私はまたネガティブな事を考えてしまっていたんだな。

 考えろ。今度はポジティブな事を。この試合に勝ち。他の試合も勝ちアラタと一緒に冒険科の代表になって軍務科の連中にも勝って学園の代表になる。


「フフッ」

 思わず笑いが漏れてしまった。でも構わない。なぜならこれほどまでに心躍る楽しい考えは久しぶりだからだ。

 もっと考えろ。楽しい想像を現実のモノにするために。

 考えろ。どうすれば目の前の敵に勝てるのか。

 深く考えろ。相手の攻撃を回避し打ち崩せるのかを。


「今から何をしたってネルの勝利は変わらないよ」

 見つけた!

 そう判断すると同時に私は彼女目掛けて走り出していた。


「近づけさせないよ!」

 サブマシンガンから大量に発射される弾丸。だけど考えを変えただけで今まで以上に視界は良好で体が思い通りに動く。ああ、今私楽しくて仕方が無いんだ。だから今まで以上に集中できているんだ。

 弾丸の軌道を予測し私は躱しながら彼女に近づいていく。


「どうして当たらないのよ!」

 今だ!

 これまでの闘いで唯一彼女の攻撃が僅かに止まる瞬間がある。それはリロードする時だ。

 その瞬間を待ちわびた私は強化魔法で身体能力を上昇させ間合いを詰める。


「しまっ!」

 慌てた声を漏らすがもう遅い。両手に持っていたサブマシンガンを弾き飛ばすと切先を彼女の喉に突きつけた。


「勝者、ジュリアス・L・シュカルプ!」

 主審の合図と同時に歓声が鳴り響いた。だけど今の私にその歓声はあまり聞こえなかった。

 ああ、これが楽しむということか。頭の中で描いた想像通りになった展開。これほど嬉しくて楽しいことはない。

 突きつけていた刀を鞘に戻した私はステージから降りようとした。


「待って」

 だけどネルに止められてしまった。


「何だ」

「どうしてなの?」

「すまないが、よく意味が分からないんだが?」

「どうみてもネルの方が有利だった。主導権だって握っていたのにどうして勝てたの?」

 確かに私は心のどこかで負けを確信していた。

 相手が私の相性が悪いことや、彼女の武器が二丁拳銃であることもそうだ。

 二丁拳銃のメリットは幾つかあり、まずその一つが広範囲の攻撃が可能であること。

 弾丸が二倍であること。

 片方が弾切れになればもう片方で牽制している間にリロードが可能であることだ。


「確かに君の攻撃は凄まじかった。接近戦を得意とする私としては最悪の相手と言えただろう。だけどリロードの際体の軸がずれ命中率が下がるのと弾切れを恐れてなのか分からないが、リロードが終わったサブマシンガンで攻撃してくる癖があること。そしてなによりリロードが終わってから構えるまでの僅かな隙がある事に気がついたからだ」

「そんな。あの短時間で見抜くなんて……」

「勿論最初からじゃない。どちらかと言えば私は負けを確信していた。だけど」

「彼の応援のお陰?」

「その通りだ。私はこの戦いを楽しむことにした」

「つまり楽しむために考えていたら勝てたってこと?」

「ま、気に食わないかも知れないがそういうことだ」

「うん、気に食わないね」

 ま、そうだろう。真剣に闘っている者からすれば楽しむなんてことは冒涜に聞こえて仕方が無いはずだ。


「こんな事なら今後応援は中止にして貰うべきだったな」

「え?」

 そんな愚痴を溢しながら彼女はステージを降りていった。

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