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魔力なし転生者の最強異世界物語  作者: 月見酒
第三章 おっさんは次の目的を探す
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第二十二話 漆黒のサンタクロース ④

「今の話を聞いてどうしてリサが頼むを止めたのかは理解した。だけどお前等はそれでも俺に指名依頼を出して来た。護衛して欲しいと。本当に良いんだな?」

 俺は最終確認をするように問うた。

 通常の依頼もそうだが、冒険者が引き受けた後に依頼主が依頼を中止すれば罰金を支払わなければならない。

 だが俺はまだ指名依頼を受けてはいない。だから罰金を支払う必要もない。ならまだ指名依頼をキャンセルする事だって出来る。


「ええ、そうよ。お願いするわ。私たちを護って」

 しかしセリシャたちは強い意思を俺に向け頼み込んできた。それだけリサの事が心配であり、ライブを成功させたいと思ったいる事が伝わってきた。

 そんな彼女たちの強い意思に俺の心は反応するように少し感じるものがあった。だが俺は冒険者だ。私情で動いたりしない。

 だから俺は不敵な笑みを浮かべて答えた。


「ああ、良いぜ。その指名依頼、この鬼瓦仁が引き受けてやるよ」

 俺たちは早速指名依頼を内容を確認した。

 主な内容は彼女たちHERETIC(ヘレティック)の護衛。そして命を狙ってくる殺人予告の手紙を出してきた奴が襲撃して来た際はそれの撃退もしくは討伐。

 その内容を冒険者組合に報告すると、依頼のランクと依頼に対する達成報酬の金額と仲介料がセリシャのスマホにメールとして送られてきた。

 その内容を見たセリシャたちは驚愕の反応を見せる。


「何よこの馬鹿げた金額は!初めて冒険者に依頼したけどこんなにお金が掛かるものなの!」

 どうやら達成報酬の金額が思いのほか高かったようだな。

 気になった俺はセリシャに頼んでスマホに表示されているメールの内容を見させて貰った。


─────────────────────

依頼 指名

依頼内容 護衛と討伐

依頼難易度 Bランク

依頼主 セリシャ・ツェザール

指名冒険者 鬼瓦仁

冒険者情報 フリーダムのギルドマスター、Aランク冒険者

達成報酬 120万RK

仲介料 20万

─────────────────────


 影光に教えて貰っていたがBランクの指名依頼の相場としては普通だ。だがセリシャたちからしてみればどうしてこんな高額なのかと思ってしまうんだろう。で、その理由が下に書かれていた。


─────────────────────

 今回の指名依頼の達成報酬は我々冒険者組合が査定した結果、Bランクであると判断しました。また指名された冒険者が成功率100%であり、Aランクの冒険者である事を鑑みてこの金額となりました。

 また仲介料に関しましては冒険者組合規定に基づいた金額ですので、値下げ等は一切致しません。

 報酬金額の値下げが望みなのであれば、冒険者と相談する事が出来ます。

 またその際仲介役が必要なのであれば冒険者組合の方に連絡して下さい。ただしその際にも仲介料として規定の金額を支払って頂く事になりますのでご了承下さい。

─────────────────────


 初めて依頼すればこの金額を見れば誰だって文句を言いたくなるかもしれない。

 だが冒険者組合は指名依頼に関する情報をネットで公開している。だから指名依頼が正式に受理された後で文句を言ったところで、冒険者組合はセリシャのクレームを受け付けないだろう。

 それにこの説明文。どう考えても冒険者組合が得するようになっている。

 誰だって多額のお金を払うのは嫌だろう。そこで標的を冒険者組合から冒険者に向けさせ、組合が儲かるようになっている。これを考えた奴は間違いなくあくどい野郎だな。

 で、俺はそんな依頼主であるセリシャに視線を向けると。


「ジン、お願いなんだけど。値下げしてくれないかしら?」

 満面な笑みで俺に頼み込んでくる。うん、分かっていた。だがこれほど欲望を隠すために笑みと言う仮面を付けた女性を目の前にするのは初めてだ。ある意味尊敬したくなるほどに。

 女性の頼みとあらば値下げも考えないでもない。だが俺も冒険者だ。命を掛けて依頼をこなしている。

 だから俺は満面な笑みを浮かべ返して答えてやった。


「無理」

 その瞬間、春から極寒の真冬に変わるほどセリシャの表情は一瞬にして真顔へと豹変した。

 女ってのは都合が悪いとここまで表情を変えれるものなのか。恐ろしいな。

 俺はこの時女の欲望に対する闇を見た気がした。

 で、話し合った結果。依頼を達成した後にもう一度話し合うと言う事にはならず、旭たちとお金を出し合って払うと言う事になった。

 てか最初からそのつもりじゃなかったのか。内心そう思ったが口には出さないでおいた。

 無事に依頼を受諾した俺はさっそくセリシャたちに会う直前に感じた不安を伝える事にした。


「セリシャ悪いんだが、リサに連絡してくれないか?」

「え?急にどうしたの?」

 低めのトーンで言ってくる俺の言葉に疑問に感じたのか怪訝な表情で聞き返してくる。それはセリシャだけでなく旭たちも同じだった。


「どうも嫌な予感がする。悪いがリサに連絡してくれ」

「リサが心配なのは分かるけど、私たちと違ってリサは固有スキルがあるから大丈夫よ」

 セリシャたちもリサの固有スキルのお陰で何度も助けられているのだろう。だからこそ絶対的な信頼と自信があるに違いない。だが俺は冒険者だ。そしてあの気まぐれ島に5年間住んでいた。

 そんな気まぐれ島で身についたこの嫌な予感が最悪な話、外れた事がない。


「頼む」

「わ、分かったわ」

 いったい俺がどんな表情をしているのか俺には分からない。だがセリシャたちの気配からは少し恐れを感じ取った。それはセリシャの声音からも感じ取れた。別に脅すつもりはなかったんだがな。

 セリシャはスマホを数度タップしてリサに電話を掛けると、音量を少し大きくしてスマホをテーブルの真ん中に置いた。

 しかし、1分経ってもリサが電話に出ることはなかった。


「もしかして疲れて寝ているのかしら?」

 セリシャはそんな事を言っている事に俺は内心呆れていた。

 どうしてコイツ等は最悪な可能性を考えないんだ。命を狙われている自覚が本当にあるのか心の底から疑いたくなる。

 セリシャたちは冒険者じゃない。ただの一般市民だ。だから危機的状況に大しても鈍いのかもしれない。だが何度も命を狙われていれば少しぐらい最悪な状況が脳裏に過ぎってもいい筈だ。

 もしかしたら本当は過ぎっているのかもしれない。だがそれを考えるのが辛くて意識してか、無意識かは分からないが、考えないようにしているのかもしれない。

 セリシャはリサが寝ているのだと判断したのか通話を切ろうとした。

 俺はそれを見て慌てて止めに入ろうとした。まだ1分しか経っていないんだぞ。切るには早すぎるだろ!

 しかしそれは必要なかった。画面に表示されている呼び出し中の文字が通話中に変わった。

 それを見た俺は内心安堵し、セリシャはスマホ画面に向かって喋ろうとした。


「あ、リサ。今大丈――」

『助けて!』

 恐怖と焦りを含んだリサの絶叫がスマホから吐き出される。

 それを耳にしたセリシャたちは驚愕の表情を浮かべるが、俺は舌打ちをしていた。やっぱりか!


「リサ、どうしたのよ!大丈夫なの!」

 テーブルに置かれていたスマホを掻っ攫うように手にしたセリシャはスマホ画面に向かって叫ぶ。

 この行動は当然と言える。友人が危機的状況に陥ってるんだ。誰だって冷静さを失うだろう。安否を確かめるのは間違ってはいない。だがそれは最後の質問だ。今すぐ聞かなければならないのは現在の状況と場所だ。

 だから俺はセリシャからスマホを奪い取る。


「ちょっと何するの!」

 スマホを奪われた事に腹を立てるセリシャ。

 しかしそんなセリシャを相手している暇はない。それにそんな悠長な事をしていたらリサの命が危険だ。


「リサ、聞こえるか!ジンだ!」

「ジ、ジン!なんでアンタがセリシャと一緒に居るんだよ!」

 意外な人物の声に驚いているのは分かるが、どうでもいい!


「そんな事は後で説明してやるから、今は現在の状況と場所を教えろ!」

 俺はスマホが画面に向かって怒鳴り散らす。

 俺たちの行動が周囲から注目を集めていることは分かっている。だが緊急事態なんだ。そんな事を気にしてる暇なんてない!

 しかし、リサから返事が返ってこない。まさか殺られたのか?いや、殺されたような音は聞こえなかった。それに走っているのか荒い呼吸音が僅かだが聞こえる。疲れて喋れないのか?


「おいリサ、どうし――」

「アンタには関係ないだろ!」

 スマホから聞こえた荒立てた声。それは俺に対する助けの拒否だった。

 普通ならここで落ち込んだり、黙り込んでしまう奴だっているだろう。だが生憎と俺のメンタルは気まぐれ島で5年間も鍛え上げられてるんだ。だからこの程度で落ち込んだりしな――


「さっさとセリシャに代われ!この女たらし!」

 その瞬間、脳裏にフェリシティーや他の女性を抱いた時の事が蘇る。

 女たらし……って危ない危ない。もう少しでメンタルゲージがゼロになるところだった。

 ってそんな冗談を言ってる場合じゃない。


「文句があるなら後で聞いてやるから、さっさと現状と場所を教えろ、この頑固女!」

「なっ!誰が頑固女だ!」

 リサの怒気を含んだ反論が聞こえてくる。コイツは本当に自分がどんな危機的状況に立たされているのか理解してるのか。


「いいから、さっさと教えろ!ライブも近いんだろうが!」

 俺はスマホ画面に向かって怒鳴り散らす。

 リサの反論が聞こえなくなった。まさか殺らたのか?

 そんな不安が脳裏に過ぎる。

 だが嫌そうな声ではあったが返事が返ってきた。


「前にも襲われた黒いローブの男に襲われてる。場所は14区の中央公園西口付近」

「分かった。近くに身を隠せそうな場所があったら隠れてろ!」

 俺はそれだけ伝えるとセリシャに借りるぞ、とだけ言って喫茶店を飛び出した。


「ま、待っ――」

 なにやらセリシャたちが言っていたが聞こえなかった。

 外に出た瞬間、3%まで力を解放して地面を蹴ってビルの上にジャンプする。

 俺は自分のスマホを空いている左手で取り出して、リサに教えて貰った14区の中央公園の場所をマップに表示する。

 チッ!ここからだと一直線に向かっても20キロも離れてやがる。

 俺はすぐさま5%まで力を解放してビルの上を伝って向かった。

 風を切り裂き、空気の中を走っている感覚を味わいながらマップに従って走る。それにしても位置情報が変わるのが遅すぎるだろ。

 自分が表示されている場所がまるで瞬間移動しているように変わっていく。目的地に向かっているのか少し不安になってくる。

 残り1キロと言う距離でリサの気配を感じ取った俺は自分のスマホのポケットにしまう。もうリサの気配を感じられるのならマップを頼りに向かう必要はない。

 コンクリートの地面を陥没させることになるが走る速度を上げてリサの許へと向かう。と言うよりもさっきからもう陥没させているから気にする必要は無い。ただ少し陥没が深くなるだけの話だ。

 その後は一瞬と言えた。

 すぐに中央公園に到着した俺はリサの気配を頼りに西口に向かった。ヤバいな、殺意のある気配がリサに近づいてやがる。

 そう思った瞬時、尻餅を付いているリサが黒いローブに身に纏った男が杖のような槍のようなものでリサを刺し殺そうとしている光景が目に飛び込んできた。


「チッ!」

 俺は踏み出していた左足に解放している5%の力全てを込めて地面を蹴った。

 40メートルの距離を一蹴りで零距離にした俺は黒いローブ野郎の顔面を思いっきり、


「おらっ!」

「グヘッ!」

 殴り飛ばした。

 瞬時、俺が一瞬で移動したせいで強烈な波動が公園内に巻き起こる。葉っぱの無い木々は大きく枝を揺らし、リサは強烈な突風に顔を覆い隠す。

 しかしローブ野郎は殴り飛ばされたにも拘らず地面に倒れるどころか、きっちりと両足で着地して俺に殺気を飛ばしてくる。

 なんて野郎だ。俺の一撃をまともに食らって倒れないどころか両足で着地するなんていったい何者だ?影光でももしかしたら倒れる一撃だぞ。

 俺は男から視線を逸らす事無く逆に殺気を飛ばして牽制する。その間にリサの安否を確認する。


「リサ大丈夫か?」

「ジ、ジン!?本当にアンタなのか?」

 俺が助けに来たことがそんなに驚きだったのか、リサは驚愕の表情を浮かべて聞いてくる。今は自分の心配をしたらどうなんだ?


「ああ、そうだよ。お化けにでも見えるのか?」

「いや、だって……(まだ5分も経ってな――)」

「何をそんなに驚いているのか知らないが、今は教えてくれ。アイツが今までお前たちを襲ってきた奴で間違いないな?」

 何やら小さな声でブツブツと言っているが俺には聞こえない。

 それよりも俺にとっては奴が犯人で間違いないのか確認するほうが最優先事項だ。

 そんな俺の質問に現実に戻ってきたリサは真剣な表情で返事をした。

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