まんざいぶのふたりはいっしょにかえるともだちがどうがくねんにいないのだ
「じゃあ読ませてもらいますね」
俺は学習帳のページを捲り、最初のページに目を通す
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[趣味]
「にゃんこ先輩ってなんか趣味あるんですか?」
「私ね、実は最近新しい趣味が出来たんだよ!」
「へえ、何にハマったんですか?」
「魔法少女!」
「特殊なものにハマりましたね」
あはははは
「そうなんだよ、今までも色々ハマってきたけど魔法少女は初めてでさ」
「でしょうね」
あはははは
「先輩ってじゃあ今まで何にハマってたんですか?」
あはははは
「色々って言っても気になりますよ」
あはははは
「俺は……」
あはははは
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「先輩ちょっと待ってください」
「どうしたー、北城?
抱腹絶倒かー?」
「いやあの憤怒の形相で物申したい箇所があるんですけどいいですかね」
「いいぞ、漫才はお互いが最高だと思えるものを作らなきゃお客さんは笑ってくれないからな!」
「ああ今そういうのいいんで。
先輩このあはははは、っていうのはなんなんすか?」
「それは当たり前だろ……そのお笑いでの笑えるポイントにお客さんの笑い声を入れてみたんだ!
ユニークだろ!」
「なんか途中から俺がなんか喋る度に笑われてていじめみたいになってますけど大丈夫ですかね。
しかも最後の方俺セリフに被せられてますし。
ってこれ隣に小さい文字で涙を流しながらって書いてますけど泣いちゃってるじゃないですか俺……
そんなに俺の顔が面白いかこらてめえおい」
俺の猛抗議をよそに大爆笑するにゃんこ先輩。
「これを狙ってた!これを狙ってたんだよ北城!
M1出とくか!?」
「愚問ですね……」
俺は一呼吸置くと澄ました顔で答えてみせる。
「コンビ解散で」
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時刻は6時を回って学校から出る生徒がぱらぱらと出てきた頃、俺たちも漫才部の部室を後にして帰路についていた。
俺は私鉄で2駅、にゃんこ先輩は私鉄で1駅とJRで2駅。
なのでいつもにゃんこ先輩が私鉄を降りるまでは一緒に帰っている。
「しかもあれって幼稚園の時書いたって嘘じゃないですか、にゃんこ先輩とか言ってる時点で完全に俺っすよ」
俺が呆れ顔で彼女に話し掛ける。
「まあね、流石の私でも自分で考えたネタを人に見せるのって恥ずかしいから」
そりゃそうか、でもこの人の場合人間離れしているせいで偶に人間らしいことを言うと違和感が湧くレベルだ。
「で、どうだった北城!?」
正直俺の扱いが酷すぎてレビュー星1を付けてやりたいところだが、こういうのは俺の好みだった。
「最高でしたよ、俺がいじめられてて誠に不愉快でしたけど」
そういうと、にゃんこ先輩は嬉しそうにほくそ笑んで話す。
「にゃははー、悪かったって北城!
じゃあ今日はこれからハンバーガーでも食いに行くか!
奢ってやんよ!」
「マジですか!
煽てといて正解でしたね……」
「あーお前最低だぞー!
お前が奢れ!」
「嫌ですよ俺常時金欠なんですから!」
今日もまたちょびっと漫才部っぽいことして、その他ほぼ大半を雑談で過ごして……
俺はこんな青春に憧れてたんだよなぁ、なんてつくづく思うのだ。