まんざいぶぶちょーはかなしいほどまでにぼっちである
「おはよう……むにゃむにゃ」
北城……そんなとこ触るなよぉ……
「あ、あの……」
「すぅすぅ……星」
えへぇ、もう……しょうがない奴だなぁ。
「な、南郷さん?」
「モーニングスター……ぐぅ」
あ、そこはダメだってぇ……
「な、南郷さん!」
んぅ?
あれ?なんか私を呼ぶ声が聞こえる。
「南郷さん!」
まるで天使のような美しい声。
これが最近話題の異世界転生か……
「いい加減起きてください!」
そんな悲鳴とも取れる声が聞こえた直後、私の頭からドゴッという鈍い音が……
痛い……
「うぅん、グッドモーニングスター……」
「なんですかその物騒な挨拶……」
朦朧とした意識の中、出来る限りの返答をするとそんな声が聞こえてくる。
どうやら私はあのまま寝てしまっていたようだ。
目を開けるとそこは見知らぬ場所、などではなく2-Aの教室のいつもの自分の席。
しかしここには私ともう一人、教科書で私の頭をぶっ叩いたと思われるクラスメイト以外誰も居なかった。
因みに教室の外が騒がしかったので、少なくとも異世界転生でないことは理解した。
「どうしたの?
えっと……」
「村主です!
村主汐音!
もうすぐクラス替えから1ヶ月は経つんだよ、隣の席の人間の名前くらい覚えたらどうなのかな!?」
そう名乗った彼女は、ロングストレートの黒髪で顔全体が整ったパーツで揃っているのと、化粧もしていないだろうにデキモノ1つない綺麗な肌くらいしか特筆できないような目立たない子だった。
「あ、あぁ。
えっと……誰だったっけ?」
「村主だよ!
記憶力どうかしてるんじゃないの!?」
「ああ思い出した……そいえばよく隣に居た気がするよ。
で、何用ですかな……」
私が欠伸をしながら寝惚け眼を擦って聞くと、村主さんは思い出したように顔を張らせて言う。
「そ、そうだ。
昼休みにはここを文化祭実行委員が使うんだから早く退かなきゃ!
南郷さんったら気持ち良さそうに寝てるもんだから誰も起こそうとしないんだもん!
早く行かなきゃ間に合わない!」
……それは多分私が気持ち良さそうに寝てたからじゃなくてただぼっちに話し掛けるのが憚られただけだと思うんだよ、とても悲しい。
朝といい今といい今日は自分のぼっちを痛感させられる厄日だ。
というか……休み時間?
ん?なんか嫌な予感がする……
一体私いつから寝てたっけ……
んでもって今は何限目だっけ……
「あのさ……午前の授業全部終わったの?」
学校指定の鞄を小脇に抱え、今にも教室から出ようとしているお隣さんを呼び止めると、彼女は遅刻寸前だからか焦りを募らせたような表情のまま答えた。
「終わったけど……それがどうしたの?」
やっべえ北城に何のコンタクトも取ってねえ……
仕方ない、今からでも行くしかない。
私は机の横に掛けられていた鞄をすぐさま肩に引っ提げて勢いよく教室のドアを開け、1-Cの教室へ向かって走り出す。
「え、いきなりどうしたの!?」
そんな私を不審に思ったらしいお隣さんがドアから顔を覗かせた。
「ありがとうトロロ!
本当に助かったよ」
「……
……私某映画のでっかい灰色のやつじゃないんだけど!
席が隣なだけだからね!」
硬直が長いな、村主さんにツッコミは向いてない。




