まんざいぶのぶちょーはいがいとさいのーがあるかもしれない
「ああ!おめでとう!
漫才部は前回のM1で優勝した実績のある部活だよ!
良かったね!」
バカAは俺の手を取り大袈裟に話す。
というかM1にいなかったろお前。
もうちょい上手い嘘をつけ、地雷臭を匂わせるな。
「あ、ごめん。
屁こいた」
バカB、別の臭いで掻き消せとは言ってない。
……うわくっさ……
「まあ、確かに私は去年M1で優勝したよ、ラッパー部門でね」
そんな部門はねえ。
……あったとして何を披露するんだよラッパー部門……
「そんな私に気後れしてしまうのは分かる。
でも私は君を見た時来たんだよ……虫の知らせがね!」
こんなところで遊んでる場合じゃねえな、今すぐ身内全員に電話してくれ。
「気後れっつか、知恵遅れ?」
笑いながら口を出してきたバカCは土に沈んだ。
なにも見えなかったが恐らくパジャマ女がやったんだろう。
「で、どうする?
入る?加入する?入部する?」
選択肢が1つしかねえよ……どうするよ……
つかまずこんな理不尽な勧誘に誰が乗るんだよ……
「喜んで入らせていただきます」
俺は乗るぞ、このビックウェーブに。
というか乗らなきゃ死ぬ、これは津波だ。
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言うが早いか、連れてこられたのは空き教室という名の彼女の寝室。
俺が入っていたトイレの目の前の教室だ。
教室の扉の上にあるプレートには社会科準備室と書かれているが、そこに可愛らしい丸文字で「漫才部っ!!」と上書きされていた。
部屋に入るなり、パジャマ女は振り向いて満面の笑みを浮かべた。
「にゃははー、漫才部へようこそ!
私は部長の南郷楓だよ!」
「ああ、はい。
北城多々良っす」
俺は若干気圧されながらも彼女にそう返すと満足げに微笑んで部室という名の元社会科準備室に入っていく。
「いいよ、適当に腰かけて」
「いや先輩、腰かけるところ無いんすけど」
漫才部の部室は散らかっているという次元の話ではなかった。
乱雑に積み上げられた漫画本、シーツがぐちゃぐちゃのベット、昆虫の剥製、マネキン、幼児向けアニメのヒロインのフィギュア、血の着いたモーニングスター。
そんなものがところ狭しと置かれている。
完全に私室だ。
なんかえげつないものが最後らへんに出てきたわけだがこの際触れたら負けだ。
「座れるって、そこの血塗れのイブニングスターの上にでも座ればいいじゃんか」
自ら負けに行ったか……
つかおぞましいこと言うなよ、ケツ穴がおはようしちゃうよ。
というかイブニングスターってなに……なにその斬新な間違い方……
「……遠慮しとくっすわ」
脳内ではあれこれ言ってもツッコミを入れた瞬間に土に沈んだバカBを見た後だと口に出すのは憚られるのだ。
……今さらだけど自分のボケにツッコミ入れられた瞬間に泡ふかせる漫才師ってなんなんだ……