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漫才部っ!!  作者: 育深
まんざいぶはぶしつをまもりたいそのいち
23/52

まんざいぶ、やっとまんざいぶっぽいことをしだす

目にタバスコ入った

舞台下の観客席を異様な雰囲気が包む中、ネタを始め

なくてはならない。

それは俺たちにとって想像以上のプレッシャーとなってのしかかった。


……やべえ、声が出ねえ。

俺がわろ○んかの太った人のようなパニックに陥っていると、それを察したにゃんこ先輩が始めに話し始めた。


「ええ、今回まあ漫才部として勧誘会に出させて頂きました、2-Aの南郷楓って言います!

そんでこっちが1-Cの北城多々良言うてね、まあ今回は2人でやらせて頂きます」


「はい、お願いしますね先輩。

今回はじめてな上に部員2人なんですけどもね」


笑いが起きることはない、まあテレビとは違うんだ当たり前、サクラはいない。

それでも素人で経験など欠片もない俺たちの頬を歪ませるには十分なことだった。


友達いれば身内効果で笑いが起きてたかも知れないんだが……ないものねだりは無駄極まりない。

今はこの空気を変えないといけない。


「じゃあ北城も滑ったことだし、私が最近ハマったことに付き合ってもらおうかな」


先輩、それは不味いですわ。

お豆腐メンタル漫才初心者の人間に滑ったはまずいっすわ。

そう思って隣を見れば、にゃんこ先輩も表情にいつもの余裕はなかった。

こ、ここまで漫才が難しいとは……


「はい、先輩わかりました。

因みに何にハマったんですか?」


「魔法少女」


「……はい?」


「魔法少女にハマった」


まだ笑いは起こらない。


お前らなんだ?勉強しすぎて脳ミソ腐ったんか?

正直ここのリアクションで1発笑いを取って起きたかったんだが……


「はぁ、魔法少女っすか。

そりゃまた随分と特殊な趣味をお持ちになられたようで……」


「私も今まで色々なものに興味を持ってきたんだけどね、初めてだよ」


「いや魔法少女にハマるって言うのはちょっとまず言ってる意味すらわからないんですけどね。


因みに今までは何にハマってたんですか?」


ここでクスリと笑い声が聞こえてきた。

声はとても小さかったが、今俺の神経は研ぎ澄まされているのだ。

聞き逃すはずはない。



にゃんこ先輩もそれに気付いたようで俺に目配せをしてきた。


ここからずっと私たちのターンとでも言うような自信に満ちた表情。


本当にこの人は……かっこいいわ、惚れそう。

……分かりました先輩、ここから先は一方通行です!


「まあ5年前くらいには昆虫採集にハマってたかな」


「へえ」


「そんで2年前くらいには昆虫採集、1年前は昆虫採集。

1か月前までは昆虫採集にハマってたよ!」


「全然多趣味じゃない……ただの昆虫博士だこの人」


箸が落ちただけで笑う女子高生の分際で笑いがすくねえ……空気の問題か……


「私もやっぱやってみたいわけですよ、魔法少女!」


「やるんですか、まあ例え世界を敵に回したとしてもこの命尽きるまで付き合いますけど」


あれ?なんか黄色い歓声が聞こえてるんだけど……

ここ笑ってほしいとこなんだけどなぁ。


「軽い口調で重いこと言うなこの子……大丈夫かな?


まあいいや、じゃあ私が魔法少女をやるから北城はカメムシをお願いね」

「昆虫博士が残ってるぞおい」


「冗談だよ、私が魔法少女で北城は後に魔法少女になった親友ポジションをよろしく!」


「俺男なんだけどなあ、まあいっか」


「じゃあ行くよ……


おい待て!悪は絶対許さない!

完全変態!モンシロチョウ!参上!」

「お前が待て昆虫博士!


憧れを拗らせて虫にならないでくださいよ、モンシロチョウじゃ戦力不足です。


はぁ……というかなんですかそれ、戦隊モノっすか?」


「そうだね、ごめん。

間違えちゃった」


「どう間違えるっていうんだ……脳味噌の大きさも昆虫サイズってか?

……やかましいわ」


少しずつ笑ってくれている人が増えている……が、昆虫ネタは普通科の生徒には分かり辛いらしい。

頭の上にクエスチョンマークを浮かべているやつが大半だ。


「うわあああああああ!」


「なに!?えっなに!?」


「クソ、悪の組織に捕まってしまった!」


「えっ、あっ……

やめろ!モンシロチョウを離せ!」


「ダメだ!まだ不完全変態のお前では歯が立たない!」


「何が言いたい……って結局カメムシじゃん!」


笑いの波が薄い……テンポの問題か……


「離せ!くっ、やめろおおお!」


「どうしたんですか!?モンシロチョウ!」


「羽をもがれた」


「これでオチましたね」


「っていうネタをね、この前幼稚園児の前でやってた三流漫才師を見たんだ!」


「ああ、それは園児じゃ理解できないですね……」


「だよね!

幼稚園児だから何かも分からずに笑ってたんだけどさ、もうちょっと年相応なネタをやってもいいと思うんだよ!」


「あ、そういえば年相応と言えばですけど……」


「随分と無理な導入の仕方するね……」


もう台本なんて頭にない、ギリギリどんな話の流れかだってことだけ覚えているくらいだ。

隣で苦笑いする先輩を横目に俺は次のネタに入る。


「僕が一年前誘拐した女子小学生のことなんですけど……」


「犯罪の匂いというか犯罪の味がするよ」


「なんか最近折り紙でなにか作る授業をやってるみたいで……」


「へぇ、小学校行かせてあげてるんだ、誘拐したのに」


「いえ、米軍基地です」


「イカれてんなぁ」


「そこで自分が折った物に名前を付けるとかで、他の大きいお友達達は、ぷりきゅやとかアソパソマソとか可愛い名前を付けてるらしいんですけど……」


「大きいお友達って兵士だよね?

ゴツい兵士だよね?

冗談だろおい?」


少し笑いが起きた。

ような気がする、もうこの際幻聴でもなんでもいいから笑い声が聞きたい。


「うちの娘だけ何故か作った紙飛行機の名前がB-29なんですよ!」


「いつの間にか自分の娘にしてるし、そして女子小学生毒され過ぎだよ、ゴツい兵士より立派な軍人だよ……」


「まあそれでハブられるなんてことはないからいいんですけどね、その授業でも隣の席のマイケルが作ったカエルに向けて爆撃を浴びせるごっこ遊びで楽しんだようですし」


「危険思想だよ、カエルさん可哀想……」


「因みにマイケルは自分のカエルに真珠湾海軍基地って言う名前を付けていたらしいですけどね」


「米米戦争が起きた」


「っていうネタを幼稚園児相手にやってた二刀流漫才師が居てですね」


「刀を持つないい加減にしろ、ありがとうございました!」


ぱらぱらと始まって軈て広い体育館全体を包んだ拍手に見送られながら、俺たちは舞台袖へと小走りで戻る。

道中自分の手を見てみると、少しだけまだ震えていた。


全く、これじゃM1は到底無理だな。

これ地の文限界まで削ってギャグに極振りしてんのにあんまおもろな……げふんげふん

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