まんざいぶぶいんのなれそめ
冒頭から寒っむいコントが始まったので混乱している方が多いと思うので、説明も兼ねて目の前の先輩とのファーストコンタクトについて回想したいと思う。
あれは、1週間前のことだった……
「おーい、もしもーし?
聞いてる、北城?
あーダメだこいつ回想に入ってやがる」
この私立木芽高校の記念すべき32回目の入学式が終わってから早3日。
確かに俺は友達がいないが、まだチャンスはあるそう思っていた。
だがそれは淡い幻想。
なぜなら木芽高校、中高一貫校なのだ。
編入生は俺一人ではないが極端に少ない。
何で俺がこんなぼっちライフを送る羽目になったかと言えば簡単なことで、ただ受験する学科を間違えたのだ。
俺が受けたのは特進クラスで中学からの繰り上がりが大半を占める上に、生徒が箱入りだったりくそ真面目なので俺に合わない。
決して友達のいない言い訳をしているわけではないぞ。
普通クラスなら余裕で友達100人越えてたと思う。
で、今俺は便所で授業を絶賛神回避中である。
遅刻したのに途中で教室入るのもかったるい故、サボってしまおうという魂胆だ。
きーんこーんかんこーんとお馴染みの音を響かせて、3限のチャイムがなった。
そう、1限だけ遅刻したはずの俺は既に2限までサボってしまっているのである。
トイレの外には普通科の生徒がたむろししているが、普通科は偏差値が低いので仕方ない。
何故か?
学校側の思惑としては、中学からの人間だけでなく外からの生徒も入りやすくしたかったのだろうか如何せん場所が悪かったのだ。
この高校自体は名門校だが、四方を囲むのは4つの不良中学。
バカで四方を囲まれた四面楚歌である。
家から近いのと比較的新しいという理由で偏差値も見ずここに入りたがるヤンキー連中が殺到し、普通科は口に出すのも憚られるほどの低偏差値を誇っている。
あれあんま面白くねえな……
いい加減便所の中でスマホを弄るのも飽きたので、授業に戻ろうとする。
手を洗って顔を上げると便所の鏡に写る端正な顔と目が合う。
まぁ俺のことなんだけど。
長く伸びウェーブのかかった前髪をカチューシャで纏めて、毛先を金色に染めた個性的な髪型と気だるそうな目が特徴の美少年。
惚れそう、というか掘れそう。
身長は因みに176センチだ。
「よしっ」
顔を洗って授業に出る準備を整え、いざ教室へ!
「待てよ、お前1年だよな」
便所からでた瞬間にエンカウント。
恐らく顔面からして普通科の生徒。
制服をこれでもかというほどに着崩して最早逆にネタに走っているような風貌の三人組である。
にやにやとお下劣な顔を引っ提げながら俺に寄ってくる。
「はぁ、そっすけど……」
もうやだおうちに帰りたい。
バカの四面楚歌で何で普通科なんてもんを開設したんだこの学校は……
ほら今にも俺という善良な生徒が危害を加えられそうになっているぞ。
「おい!こいつ特進じゃね?」
俺がこいつらを普通科と気付いたのはいかにもバカっぽそう面をしているから、特進科と普通科では制服の色合いが微妙に違うのだ。
それと学年別にも違うので、制服を見ただけでそいつが何科の何年生か分かってしまう。
「うわ、マジだ!
特進が髪染めてサボりかよ」
「まずいんじゃないの?
ねえ?」
バカ3人衆が俺を囲むような位置で立つ。
そしてその中の1人、バカAが俺の肩に腕を回してきた。
これはいけない。
「待ちたまえ諸君!」
俺がチビりそうになっていると、今は使われていないはずのボロい教室からパジャマを着て熊のぬいぐるみを抱えた茶髪での少女が姿を現した。
髪は長く、右目は隠れていて若干天然のウェーブもかかっている髪。
背中まで伸びているのをポニーテールにしていて、身長は165あるかどうか。
スタイルは抜群で豊満な胸と大人びた顔立ちは正直トップクラスだ。
尤もそんなこと気にならないほどの格好で出てきたわけだが……
学校でお泊まりでもしたのか?
「げっ、南郷じゃねえか」
「寝てろよお前……」
なにしたんだ南郷、お前のせいでテンプレ展開が序盤からお陀仏しそうになっているぞ。
ここは俺がかっこよくバカ3人衆にとっちめられてゲームオーバー。
あれおかしい、1話で話が終わってしまった。
「そしてそこの君!
漫才部に入りたまえ!」
何を言ってるんだこのパジャマ女。
これが彼女、南郷楓と俺、北城多々良とのファーストコンタクトだった。