まんざいぶおいてめえらまんざいしろっていってんのになんですぐそっちほーめんにむかうんだよ
「というわけで今日はそのネタ作りをしようって話なんだよ北城君!!」
ソファーから身体を起こしたにゃんこ先輩が俺を指差して言う。
「まあそりゃ曲がりなりにも漫才部名乗ってるわけですからねぇ、でも俺らってそんなんやったことないですけどなんとかなるんすか?」
俺はまんざいぶしょーめつたいさくいーんかい、と書かれた黒板をバックに疑問を口にするが、にゃんこ先輩はあまり気にしていないようだった。
「まあこういうのって頑張ったっていう事実が大事な訳だしね。
別にウケるかどうかは関係ないと思うぜ」
「確かにそれもそうですね、じゃあとりあえずネタ考えますか」
「じゃあ今日も一応私ネタ作ってきたからそれベースに作ろうか!
はいこれしょんべんノート!」
「その呼び方ホントにやめてもらっていいですかね」
彼女は自分の鞄からいつぞやの黄ばんだジャポ2カ学習帳を取り出して俺に渡す。
と、同時に誰かの携帯の音が部室に鳴り響いた。
「あ、ごめん。
私だ……ちょっと待ってて」
「ああはい、了解です」
にゃんこ先輩は着信の文字を見ると、険しい顔をして部室から出ていった。
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「なんだよ、東雲か。
どうしたの?こんな時間に電話してきてさ……」
私は電話の向こうの相手に向かって不機嫌そうにしてるのを隠さずに言う。
「す、すみません南郷さん。
なんか昨日ウチの中学の連中が南霧谷の奴に接触したみたいでして」
それを聞いて私はため息を尽く。
そんな程度で電話してこないでほしい。
もうそんなこと私には関係ないのだから。
「それでやられっぱなしっつうのもナメられるんで近々南の奴らシメようと思ってるんすけど……」
「ああはいはい、私に手出すなって言ってるわけでしょ。
言われなくても出さないよから勝手にやってて。
私今漫才のネタ作るので忙しいんだから」
「えっ、漫才?なんでそん……」
なんかまだ言っていたがそんなんに付き合ってる暇はないのだ。
ピロロン、と軽快な音を立てて通話を切った私は、再び漫才部の扉を開けた。
「北城、読み終わったー?
ってなんで私の座ってたソファーに顔埋めてるの……?」
「万有引力の法則です」
「そのソファーの質量いくつだよ……」
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「変わらないなぁ、南郷さんは」
自慢の赤髪を手で整えながら、東雲 郁羽は懐かしげに1人笑う。
細くて筋肉質なそのスタイルと、端正な顔立ちが特徴のその風貌でそんなことするもんだから周囲の女性をの反応が結構えげつない。
「あの人なんか楽しそうだったけど男でも出来たのかな、そんなわけないよね。
あったとしても南郷さんの目の前でボコしてこっちに彼女を振り向かせよう」
彼は虚ろな目でそう言ったが次の瞬間には何事もなかったように呟いた。
「ま、北霧谷の方位磁針様がそんなもん作るわけないよね」
西山原中の方位磁針は些か性格に難ありである。