まんざいぶしょーめつたいさくいーんかい
「今日の活動は、即興コントだぞ!」
我らがにゃんこ先輩はその大人っぽい美声をいつも以上に張り上げて机を叩いた。
ある日の放課後のことである。
「いきなりどうしたんすかにゃんこ先輩、マタタビでも食ったんすか?」
「本格的に私のこと猫扱いするのやめてもらっていいかな?
そして態々昼買ってきたのかは知らないけどキャットフードは片付けてきてくれよ……」
彼女の目線の先には俺の買った高級キャットフード。
3,000円近くしたのだ。
冗談にしては笑えない上に財布へのダメージが大きすぎた。
二度と買わないと心に誓おう。
「実はなんかよくわかんないけどこの部室使えなくなるかもしれないんだってさ」
言わせてもらうがなんかよくわからないわけではない。
今までが好き勝手出来ていたことが奇跡に近しいのだ。
「ええ……理事長の孫の友達の親の祖父なんでしょ?
権力で何とかして下さいよ」
「あれれ、私すごいおじいちゃんになっちゃった……」
「とまぁ軽いジャブはこれくらいにしてどうするか考えましょう」
俺は机から離れて黒板に、まんざいぶしょーめつたいさくいーんかい、と書く。
「重いボディブローがさっきから入ってるわけだけどこの際気にしなくていいんだよな、な」
涙目で言うにゃんこ先輩まじにゃんこ。
「というかにゃんこ先輩、なんで部室使えなくなるからって即興漫才なんですか?」
俺は教卓から乗り出して、パンツが見えそうなにゃんこ先輩のスカート付近を凝視しながら言う。
実はさっきから教卓の方から見ればパンツが拝めることを察して態々黒板まで来たのだ。
完璧な言い訳が出来る状況、今日こそはあの魅惑の漆黒の中を拝んで見せる。
「北城、お前がボケすぎるとこっちのキャラが薄くなるからそんな必死にスカートの中を覗こうとしないいで……」
もじもじとスカートを弄りながら言うにゃんこ先輩、体制を変えるのが一番手っ取り早いと思うんだけど……
「なに言ってるんですか?にゃんこ先輩。
僕はただスカートの中身が見たいから教卓に来ただけで他意はありませんし縦縞な感情なんてありませんよ」
「そうだな北城、私は正直者が好きだよ。
他意もないだろうし、お前は邪だろうね」
「因みに先輩のパンツの柄は?」
「くまさ……殺すぞ」
あれおかしい、誤魔化そうと思った筈なのになんか殺されそうになってる。
「まあとりあえずここの高校には来週部活の勧誘会があるだろ、そこで私は漫才を披露することによってこの部室を魔の手から守り抜こうと思うんだよ」
社会科準備室を侵す魔の手はどっちかって言うと俺たちだけどな、なんて思わないまでもないがそれは心の内に留めておく。
「出来るんですか?
というかクラスでなにも喋らないボッチが急にそんなことやりだして引かれないですかね?」
「以外と応援してくれると思うよ、陽キャはなんだかんだ性格がいいしね!」
「その陰キャが性格悪いみたいな感じ、盛大に俺を巻き込んだ自虐っすね」
「盛大に自分の四肢を爆散させた他虐だよ?」
「やかましいですねにゃんこ先輩って」
「残念ながら周知の事実なんだよね」