まんざいぶふくぶちょーはなんからぶこめをしだした、はやくまんざいしろえんじん
知ってる天井……じゃない。
目を開けばそこは、禊の部屋だった。
「……ありがと」
か細く弱々しい声が聞こえて来たのでそっちを見てみると、いまだ制服のままの彼女の姿。
「先に謝れ暴力女、今何時?」
きっと彼女が気絶した俺をここまで運んでくれたのだろう、気絶させたのもこいつだけど。
「ごめんて、もう6時だよ」
うっわそんなぶっ倒れたのか……
「……ああもう俺帰るわ、じゃあな」
「えっ……あ、うん」
そんな声が聞こえた気がしたが、俺はお構いなしに部屋から出る。
そして便所を借り、部屋に戻った。
そこにはまだ動こうとしない禊が顔を俯かせていた。
「えっ、なんで?
帰ったんじゃなかったの?」
俺を見て不思議そうな顔を浮かべる禊だったが、どこか嬉しげな表情にも見えた。
「気が変わった、スマフラやるぞ」
ぶっきらぼうに言い放った俺に対して少しの間固まっていた彼女は満面の笑みで答える。
「うん!」
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「少し見ない間に強くなったじゃないか禊君……
でもまだまだだ」
10戦10敗、もうやだ。
「強くなったっていうかウチ多々良に負けたことないんだけど……」
言ってから彼女はハッと口を押さえた。
「いや下の名前で呼ぶの恥ずかしがんなよ……純情か」
「うっさいなぁ、どうでもいいでしょ」
半目で睨む禊だったが、その頬は少し赤らんでいた。
「というかさ、どうして鍵締まってた筈なのに入ってこれたの?」
「ああ、それね。
俺お前の親になんかあったとき様の合鍵貰ってたんだよ」
「も、持ち歩いてくれてたの?」
「いや違う、つい自分の鍵と間違えて持ってきちゃった」
「あっそ……本当童貞捨てる気ないね」
若干頬を膨らませたようにしながら呟く禊に俺は飄々とした態度で返す。
「それは誉め言葉だぞ禊、あの親を真似したクソ姉やお前みたいなことにゃならねえよ」
「な、なんでウチも入ってんの!?」
いや逆に入らない方がおかしいだろお前その年で経験人数何人だよ……
「じゃあ今度こそ帰るわ、負けてばっかりでつまんなくなってきた」
俺は通学鞄を手に取ってドアノブに手を掛ける。
「あっ、うん」
禊は少し残念そうに笑った。
……やっぱあんなビンタ食らわせりゃ学校のこと心配にもなるか……
「いいよ、俺明日からチャリで学校送ってってやっから
じゃあな」
「……ふぇ」
呆然とする禊を置いて、俺は部屋から出たのであった。