まんざいぶふくぶちょーもみじにたおれふす
「ああ、ごめんね。
こいつなんか外出たがらないもんだからちょっと時間食っちゃって」
禊の手を引いて玄関に出た俺は、目の前の5人に言葉をかける。
彼等は俺の方を見て唖然としている。
俺のかおに何かついてんのか?
あ、なんか左頬に紅葉がついてる気がする。
「ほら禊、行け」
俺が促すとあたふたしていたさっきの姿はどこへやら、禊は唾を飲んで冷たい声で言った。
「あんたらちょっとそこ並んで」
「あっ、はい」
気圧されでもしたのか、彼等はおずおずと並びにかかる。
最初に並んだのはリーダーっぽい男、タツって呼ばれてた気がする。
「あんた東雲にボコられたからって変な憂さ晴らしすんなよ!滅茶苦茶迷惑なんだよ!!」
バチンッ!と俺の時よりえぐい角度で入った平手は俺よりも背が高そうな巨漢を一撃でノックアウトした。
文字の通り尻餅をついたのだ。
「いってぇ……」
「ゴリラのごとき怪力だ……」
俺はそう呟いてえげつない惨状から目を伏せる。
というか東雲って誰だよ……
とまぁ俺でもそう思ったのだ。
後続に並ぶ4人はもう死んだような目をしている。
地味男君は一周回って悟りを開いている。
次はチャラ男君、小刻みに足が震えていてホストというか生まれたての小鹿だ。
なにもうまくないな、うん。
「私にフラれたからってちょっかいかけてこないでよ!というか俺彼女3人以上作る主義とか聞いて付き合う股の緩い女じゃないわよ私は!」
「いやお前の股は緩いよ……」
言ってる内にバチコンッという音を鳴らして顎に入れられたビンタ……
うわぁあれは脳揺れたな……
よろめくチャラ男、生まれたてのチャラ男。
死の縁のチャラ男、頑張れチャラ男。
なに考えてるんだ俺は……
お次は時代錯誤のケバい女、世田とか呼ばれてた覚えがある。
「自分がモテないからって妬んでんじゃない!
まずその一昔どころか三昔くらい前のスケバンファッション直せばいいだろ!」
バゴッ、ってさっきからビンタで出る音じゃないよねこれ……
「お前もツインテールはちょっと古いぞ、一昔前のラノベか……」
おっと、心の声が出てしまった。
「次!あんた誰よ!」
バシンッ、ってお前せめて知ってやれ……
存在すら認知されてないとか辛すぎる。
確かにこのスポーツ刈りは一度もしゃべってなかったから影薄かったけど……
「同級生だろお前……」
もうちょっと関心を持てよ。
次は地味な少年だ。
うわ、なんか神々しい。
悟りすぎて神になってる。
「まぁ、あんたにここまでする悪気がなかったのは分かってるよ」
「えっ!?本当ですか!?ありがとうございます」
神々しいオーラ消えた。
露骨すぎるぞ少年。
「で済むと思ってんのか糞童貞が!!」
バシッ、という音と共に俺の心にも深い傷が与えられてしまった。
貫き通すと誓っていても辛いものは辛いのだ。
5人が鼻水と涙をダラダラ垂らしながら地を這う阿鼻叫喚の中、俺は彼女の肩に手を掛ける。
「そうだ、それでいい。
後童貞をバカにするのはやめな……」
「お前さっきから一々うるせえよ!!」
ドパンッ、ってこれ違う。
銃で撃たれたときに鳴るやつだから……
その記憶を最後に、俺は意識を闇に捨てた。