プロローグ 最期の架橋
ー聖都ノルスタシア。多種多様な店が立ち並び、訪れた旅人達がこの都市から出られなくなる数え切れない程の魅力があり、多くの住民が幸せに暮らす、この世界の中心都市。ほかの数々の街は破壊され、唯一残されたこの都市にも危機が迫っていた。
世界は光を失い闇に包まれ、建物からは炎と黒煙が昇り、人々の恐怖に叫ぶ声が絶えず聞こえる。都市の外部には紫色の形を持たない“異形の幻獣”が人々を喰らおうと城壁を越えようとしていた。
聖都ノルスタシアとデモンズクロス山脈を結ぶ道、イルミナ街道で二人の少女が異形の幻獣に立ち向かっていた。
「道がつくれる程度に雑魚を倒して親玉の所まで突破するわよ、余計な体力を使わないで!」
白いローブに身を包んだ少女が叫ぶ。
「幻獣の数が多すぎます…!これじゃあ到達する前にやられてしまいます!無理があります!!」
小さい赤ん坊を抱き、黒いローブをまとった少女は目の前の幻獣に道を開けろとばかりに斬りつける。
「…あ」
気づいた時には幻獣に背後をとられていた。終わった。目の前の光景に少女は死を覚悟した。その瞬間、音速で風を切る音が聞こえた。近距離にいた幻獣は切り刻まれ、白いローブの少女の前には術式が展開されていた。
「雑魚だからって油断しないで。私たちがここでやられてしまったら、この世界は終わりなの。」
こちらを真っ直ぐにみつめてくる瞳は透き通り、この世界を救うことを諦めていなかった。
そう、この世界は1人の英雄と1人の盟友にかかっている。その為にも私たちは諦めるわけにはいかない。しかし、このままでは大型幻獣にたどり着く前に、雑魚に体力を削られてやられてしまう。困っていると英雄の少女が口を開いた。
「私の魔法で一気に親玉までの道をつくる!術式が完成するまでの時間を稼いで!」
「わかりました、任せてください!」
英雄の少女が両手を前に出し、術式を生成し始めた。強大な魔力を使う術式は発動までに時間を要する。それまでの間、時間を稼がなければならない。
盟友の少女は剣を手に、再び幻獣を倒し始めた。斬っても斬っても無限のようにわいてきてキリがない。赤ん坊を片手に抱き、片手で剣を振っている為に斬った時の反動が物凄い。そろそろ限界がきてしまう。…はやく術式を完成させて!!
「できたわ!伏せて!!」
そう言われ片手の剣を離し、赤ん坊を守るように抱きしめて地面に伏せた。英雄の少女の前には先程よりも大きな術式が展開されていた。
「漆黒の幻獣共。我の壮大な光の加護と共に、古代から現代に至るまでの罪を悔い改めよ。永遠の光」
瞬間、光が二人を中心として広範囲に広がり、爆音と共に幻獣だけでなく、範囲内の植物や建物をも巻き込み爆発した。これを知った時から名称はイマイチな気がしていたが、爆発系魔法では上級魔法であり、実際に見てみると名称とは裏腹に物凄い威力だった。
上級魔法によって大半の魔力を使った少女はその場に膝をついた。
「はぁ…はぁ…、これで…親玉への道はできたわ…。」
英雄の少女はそういうと立ち上がり、この戦いの親玉である大型幻獣に向かって歩み始めた。今にも倒れそうになりながらも。
盟友の少女も英雄の少女を追い、フラフラしている彼女に肩を貸した。
「あなたはもう良くやりました。ここからは私に任せてください。」
「私じゃないとあいつは倒せない。私は英雄なの、あいつを倒すのは私の使命であり、私の復讐よ!」
魔力の大半を使い切ったのに、まだ戦えると言っている…。あいつに友達を殺された復讐がしたいのはわかるけど…!
「感情は時に冷静な判断を邪魔する、そうでしょう!旅の心得の基本ですよ!」
英雄の少女は唇を噛み締め、キッとこちらを睨むと怒鳴り散らした。
「あいつに!友達が殺されたのよ!!私の大切な友達が!その復讐をして仇を取るのは友達として当たり前でしょ!!」
懐に抱いていた赤ん坊は、大きな声と先程の爆発音で目を覚まし泣き出してしまった。盟友の少女は反論する。
「だからって復讐しか考えずに戦ってあなたがやられてしまったら、、それこそ亡くなった友達が浮かばれないでしょう!」
「私は英雄なの!私がやられるなんてことは絶対にありえない!!」
ダメだ。彼女はもう既に正常な判断ができなくなっている。このまま彼女を戦場に残すのは危険だ。もちろん彼女にとっても、この世界にとっても。英雄である彼女がやられてしまっては、この世界を救う事など不可能だ。彼女を避難させなければ。
そんな者達の都合など、幻獣が考えるわけもない。数百メートル離れた先の少女達の正面の大型幻獣、親玉は咆哮をあげると口を開け紫色の霧を吐き出した。その霧は少女達を囲み、みるみるうちに異形の幻獣へと変貌した。
「…しまった!囲まれた!」
盟友の少女は回していた手を解くと、剣を抜き幻獣に立ち向かっていった。
支えを失くした英雄の少女はその場に倒れ込んだが、すぐにその場に膝をついて術式を生成し始めた。
ーもう魔力は残っていないはずなのに…。
その時、再び大型幻獣が咆哮をあげ、口を大きく開いた。今度は大型幻獣の口に紫の稲妻を走らせた黒い球のようなものが見えた。それは次第に大きくなってきている。
「まずい!逃げてください!!」
最悪の事態を想定し、無駄だとわかっていても大型幻獣に背を向け赤ん坊を守ろうと抱きしめた。
そして大型幻獣がもう1度、大きな咆哮をあげると何かが飛んでくる音が聞こえる。すごい速さで音は大きくなり、盟友の少女は覚悟を決め、もう1度ギュッと赤ん坊を抱きしめ目を瞑った。
英雄の少女はハッとなって後ろを向く。背後には英雄の感情の揺れによって戦いに巻き込まれ死を覚悟した盟友、友達の姿があった。
ー私は、また同じ道を辿るの?また友達を失ってしまうの?…そんなこと、させないッ!!
英雄の少女は術式の生成を中断させ振り向くと、魔法を詠唱した。
ー最期の架橋!
…え?この魔法は……
音が消えた。次第に大きくなってきていた爆音が急にやんだ。目を開け声のする方に振り返った。
そこにはボロボロに傷ついた英雄の少女が天使の加護を作り上げていた。
「まさか…!」
命終系魔法。自身の身に危険が起きた時に魔力を振り絞り、大切な人を護ろうとする英雄の最期の術式不要魔法。命終系魔法には同時に対象を護る天使の加護が展開される。
英雄の少女はこう告げた。
「今まで復讐の事だけを考えて戦ってきた。その結果、周りの人達やあなたを巻き込んでしまっていたことに気づけなかった。ごめんなさい。……私はこいつと共に消える。たとえここで倒しても根源を解明しない限り、このような惨事は必ず起きてしまう。今回は只の一時凌ぎに過ぎない。」
はぁ…はぁ…と苦しみながらも呼吸を整えて続ける。
「…この世界の未来はその子に託された。その子を来るその時まで守ってあげてほしい。その子は未来の希望だから…!」
盟友の少女はシールドに手を付き涙を流している。
「いやだ、だめ…。あなたも一緒にきて……!」
白いローブの少女はニッコリと微笑むと
「今まで私の我儘に付き合ってくれて…支えてくれて…。たくさんの思い出を、ありがとう。」
ありがとう。違う、私は言われる側じゃなくてありがとうを伝える側の者。いつも助けられてるのはこの私なのに…。初めてあった時、私を助けてくれたのもあなたじゃないですか…。私がたくさんのありがとうを伝えなきゃいけないはずなのに…。
英雄の少女はボロボロの身体で振り返ると大型幻獣の方を向き、両手を広げると背中から羽が現れた。端から端まで綺麗な純白でとても立派だ。
「待って…!ソフィア!!」
手を握り、英雄天使・ソフィアは術式を生成し始めた。
大型幻獣も口を開け、徹底的に消そうとしてきている。次の攻撃を受けたら助かりはしないだろう。
3回目にして最大の咆哮と共に、禍々しい黒に覆われた球がこちらに飛んでくる。
ソフィアが静かに告げる。
「さようなら。……インフィニティ・バースト!」
天使の加護の内部が強い光を放ち始め、外の様子が見えなくなってくる。
「ソフィア!!!!!」
ソフィアの最期の架橋が作動し、盟友の少女は完全にこの世界から消えた。
ソフィアは自身の爆発によって、大型幻獣と共に消えた。
その爆発によって出来たクレーターの中心には、英雄・ソフィアが身につけていたボロボロの白いローブが落ちていた。
この度は「ANGEL ISLAND -天使の奇跡-」プロローグを読んでいただき、誠にありがとうございます。
ネット小説デビュー作品として、自分で満足できてかつ、読者の皆様にも楽しんで読んでいただける作品を作っていきたいとおもっております。
読者の皆様、応援よろしくお願いします。
[追記]初回投稿1-16より大幅にプロローグを変更し3-18に序章を完成いたしました。長らくお待たせして申し訳ありません。
今後も色々な要素を追加予定です。今後の展開をご期待ください。
〜随時コメントを受け付けております〜
タイトル、こっちの方がしっくりくるんじゃないか。など様々な提案もじっくり検討致しますので、お気づきの点がございましたらどしどしコメントお願いします。




