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三十話

 最近多忙なジーヴに代わり、凄腕の女騎士に稽古をつけてもらっている。素振りから、構えや、実践など。実践と言っても、軽いものだけど。



 流石と言うか、普段から剣を振っている人は筋肉が違う。同じ女でも、騎士というだけあって、立ち振舞いがカッコいい。これで見た目がいかつい、竜と人を掛け合わせたような感じじゃなかったら完璧だった。この人と剣での切り合いになったら、ちょっと勝てそうにないかな。


 

 何事もそつなくこなしてきた私だったが、どうやら、魔法とだけは相性か悪いみたい。剣の腕はだいぶ上達したと褒められるけど、魔法のほうはからっきしダメで、苦笑いされる始末。



 うーん、難しい……。闇魔法なら、ミルリアで使うにはもってこいの魔法なんだとか。魔物しか住んでいないんだから、当たり前だよね。そんないい場所にいるというのに、中々使いこなせない。こういうのは、やっぱり持って生まれた才能だろうか。



「先生、動きません」

「うーん、闇魔法は攻撃向けだし、こより様はすでに実践も積んでいるから、イケると思ったんだけどなぁ……」



 困ったように笑うリリィ先生。そうなのだ、先生は、見た目のいかつさのわりに可愛らしい名前の持ち主なのだ。



 むむむ、と力を込めてみるけど、やっぱり目の前の缶は微動だにしない。そういえば、茜師匠に言われたなー、魔法は脱力していても使えるものだって。……師匠、元気かな。道場の子供達も。亰も、元気にしているといいな。



 半分強引に連れてこられたわけだけど、私がジーヴのお気に入りのお陰で、さほど周囲の目は冷たくない。こうして、稽古をつけてくれる人もいるぐらいだし。



 と、なると、いつも食事を運んでくる時のメイドにはよっぽど嫌われているんだなぁ、私。そんな嫌われるようなこと、したかな? ジーヴ以外の命は狙った覚え、ないんだけど。もしかして、あのメイド……余程のジーヴ信者か?



「闇魔法が使えるようになると、人間でも邪気に耐えられるのよ」



 へぇ、いいこと聞いた。それなら、マスクなしで町におりられる。肌を隠す服を着ていけば、目立つことなく町を出歩けるではないか。とかなんとか考えてはみたけど、そういえば次はないって、ジーヴに釘刺されてたんだった。忘れてたわー。


 

 剣の腕は日に日に上達していくものの、魔法のほうはカメの歩みよりも遅い。それでも、魔法を使って何とか、缶に一切手は触れずにへこませることができるようになった。進歩と言えよう。カメの歩みよりも遅い魔法の訓練に励む。うーん……勇者こより、これでいいのか?



 訓練を終えて、お風呂で汗を流す。魔法は、剣を振るより体力を使う。汗でベッタリと肌に張り付いた服を脱ぎ、シャワーを浴びる。髪の毛をタオルである程度拭いて、雫がしたたり落ちなくなってから、お風呂場から出る。



 簡素な白のワンピースを着て、元の世界でいうところのドライヤーみたいな魔道具を使って、長い髪の毛を乾かす。



 本来なら、お風呂で体を洗うのも、髪の毛を乾かすのも、すべて専属メイドのビーちゃんの仕事なのだが、恥ずかしいので、キチンとジーヴに言ってから、ビーちゃんに断って一人でやっている。



 流石に、ドライヤーのように冷風までは出てこないので、乾かしてすぐは暑い。長い髪の毛を冷ますように部屋の中を歩き回る。ちなみに、いつなんどき襲われてもいいように、私の腰には剣が下げてある。木刀から進化だ。



「入ってもいいか? こより」

「はぁい」



 歩き回っていると、扉の向こう側から声をかけられる。仮にも相手は王様なので、丁度立っていたし、扉を開ける。



 ジーヴは、仕事に終われているせいか、少しやつれた気がする。部屋に入り、ソファに体を預けるように座る。そのまま、目も瞑る。私は、ビーちゃんを呼んでお茶とお菓子を持ってくるように頼んだ。



 向かい合うように、テーブルを挟んだ反対側のソファに座る。お茶とお菓子を待っている間、ジーヴがポツリと呟く。



「……風呂上がりか」

「えっ、何でわかったの」



 髪の毛はもう乾いている。頬が蒸気している? と頬に手を当てるが、特に熱くもない。そもそも、ジーヴは目を閉じている。第三の目が額にない限り、見えないはず。ジーヴが、ふっと口元を緩ませる。



「石鹸の優しい香りがする」



 香りで風呂上がりかどうか判断するなんて、変態さんのような感じだけど、イケメンなら許されてしまうのがこの世の中というものだ。人間、美しいものには弱い。



「稽古は、どうだ」

「剣は順調かな。剣は」


 

 わざとらしく剣()、と強調して言えば、ジーヴが目を開きくっと笑う。

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