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俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第二章 それでも駆け出し冒険者と言い張る
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第七二話 街歩き

最近出番が無かったキャラ三人が登場。

◆◆◆◆◆


 週末の朝。多くの人にとって休日である今日、俺──リク・スギサキは自室で目を覚ました。時計が示す時刻は、午前七時を少し過ぎている。徐々にはっきりしてくる意識を自覚しながら、ベッドの上で上体を起こす。

 さて、今日はフランの実家へ遊びに行く日だ。この世界(エクサフィス)の大型犬を存分に撫で回そう。






 午前中を何事も無く平穏に過ごし、ちょうど昼飯時の今現在。気温は高過ぎず低過ぎず、大変快適で過ごし易い。身支度を終えて外に出た俺が抱いた感想だ。

 今の時間帯は大きな街であるアインバーグなので人通りがとても多く、油断すれば通行人と肩がぶつかりそうになる。……という状況説明が本来ならできたはずなのだけれど、俺の周囲はぽっかりとスペースが空いている。あからさまに避けられているのが分かる。


 危険人物とまでは言わないが、それに類する扱いを受けている現状には文句の一つも言いたくなるな。

 そんな不満を心の中で燻らせていると。


「あれ、スギサキじゃないかい? ああ、やっぱりそうだ」


 聞き覚えのある声が俺の斜め後ろから追い掛けてきた。俺は首を回し、そちらを見る。


「おや、三人お揃いで。その格好と荷物を見るに、今からクエストかな?」


 俺が視線を向けた先に居たのは先程声を掛けてきたアンヌと、その仲間であるエリック、ジャック。訓練所でロロさんを通じ知り合った面々であり、今は各々が防具を着込んだ上、大きなバッグを背負っている。

 どうやら三人の中にアイテムボックス持ちは居ないか、容量が小さいのだと思われる。


 ここで改めて、便利な機能をくれたあの神様には感謝の念を送りたい。エディターについても本当に助かってます。転生直後、コマンドブルに襲われた時は恨み言を言ってしまって申し訳ありませんでした。


「うん、ゴブリンの群れを討伐しに行くんだ。近隣の村がちょくちょく襲われて、家畜とかに被害が出てるらしいよ」


 真面目な表情で答えたのはエリック。一見すると気弱そうな少年だが、その実俺の高速戦闘にある程度まで粘ってみせる根性がある。


「俺らも前よりは強くなってきてるしな。さくっと片付けてくるぜ」


 自信ありげにそう言い切るのはジャック。三人の中で断トツに危なっかしく、先輩冒険者であるロロさんから説教を受ける頻度が高い。


「頼むからそうやって調子に乗らないでおくれよ。中規模の群れらしいから、今のあたしらにとって余裕の相手って訳じゃないんだ」


 水を差すというか釘を刺したのはアンヌ。割とドライな性格をしているのか、訓練中は敗北を受け入れる判断が早い。


「べ、別に調子になんて乗ってないっての! そりゃ余裕とまでは言えないだろうけど、別に強敵でもないだろ」


 ムキになって反論するジャックだが、その態度が既にアウトだろうに。


「その強敵でもないって言い方が既に十分、調子に乗ってるじゃないのさ。格下相手にすら油断も容赦もしないスギサキを見習いなよ」


「ちょっと待て、何で俺に飛び火する」


 血も涙も無いみたいな、そんな言い方だったんだけど。


「あー……、なるほど」


「ジャックは今何を納得した!」


 納得のタイミングに悪意しか感じない!


「いや、うん。確かに調子に乗ってたっつーか、油断してたかもな。……あそこまで徹底的には、できる自信無ぇし」


 後で覚えとけよ、という言葉が出掛かったが飲み込んでおく。今この言葉は逆効果だ。ただし、睨みつけるくらいは許容範囲だろう。そういうことにしておく。


 ジャックは半歩、顔を強張らせながら距離を取った。


「ところでスギサキ君は何をしてるのかな?」


「この空気の中で普通に質問できるエリックは大物だよ。それで質問に対する答えだけど、友人の家に遊びに行こうとしてる」


 この三人の中で一番優秀かつ肝が据わっているのは、魔法使いであるエリックだ。もっと頑張れ前衛二人。


「そうなんだ。スギサキ君が友人って言うくらいだから、やっぱり凄い人なのかな」


「やっぱりの意味は分からないけど、フランのことだから凄い人って部分は肯定する」


 気にしなければ良いのかも知れないけれど、指摘しないとなると受け入れている(・・・・・・・)と勝手な解釈をされかねない。我ながら細かい性格なのは自覚があるよ。


「なんだ、デートかい。友人なんて言ってぼかさなくても良いのにさ」


「家は家でも実家でね。ご両親に挨拶をしに行くんだ」


 にやにやし始めていたアンヌが視界の端に映っていたので、話の方向性を予測し冷静にカウンターを食らわせた。


「そっ、そこまで進んでたのかい!?」


「そこで飼われてる犬を触りに行く」


「話が噛み合ってない!?」


 にわかに動揺し始めたアンヌだが、俺は事実しか言っていない。誤解を招くのは承知の上であることも含めきちんとした説明を行うと、三人とも納得した様子を見せた。アンヌだけはやや疲れていたが。


「スギサキ君って、人畜無害そうな顔の割に良い性格してるよね」


「街行く人達からはこの顔で避けられてるけどな。すっかり有名人らしい」


 日本人として平均的な顔をしているとは思うけれど。黒髪黒目というのはこの世界(エクサフィス)において比較的珍しいようで、すっかり特徴を覚えられてしまった。


「じゃあ、そろそろ行くよ。約束の時間に対して余裕を持ってたけど、ぼちぼち使い切りそうだ。そっちはクエスト、頑張って」


「おう、またな」


「安全第一で頑張ってくるよ」


「ありがとう。今度また、訓練に付き合って貰えると嬉しいな」


 それぞれと別れの言葉を交わし、俺は再び足を動かし始める。

 しかし、エリックはまたあの高速戦闘をご所望か。現時点ですら、初級冒険者の後衛としては近接戦闘能力が高めなんだけど。


 さておき、フランのご両親からの反応はどうなるかね。アンヌに言った冗談のような方向性で勘違いされると、急いでそれを解く必要があるな。

 何にせよ、会ってからか。



一般人からは避けられる系主人公。

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