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俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第二章 それでも駆け出し冒険者と言い張る
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第五二話 アーデのステータス編集

随分と更新に手間取りました。構成の甘さが出てしまったようです。

 前方二〇〇メートル程度の地点にて、エミュレーター・コピーの存在を確認。同時に、計十頭のオークがその周囲を徘徊──否、哨戒している。

 俺達は先に発見される愚を犯さぬよう身を屈め、木々に隠れていた。


「一定ルートをぐーるぐる。これもう、完全に戦術的な行動を取ってるな」


 ぽつり、雨音に紛れる程度のボリュームで俺は呟いた。


「中心に居るのは三頭ですか。レベルは周囲の魔物と比較してやや高めですね」


 やはり雨音に紛れて、フランの声が俺の耳に届く。というか声が発せられたのが俺の耳元だ。フランの顔が非常に近い。


「リーダー格っぽいオークだけ倒したら、そこから瓦解したりしないかな?」


 俺から見てフランの反対側から、アーデの声が聞こえた。これまた近いので、こちらは手で押して距離を取らせる。


「物理的に拒絶するの止めて!?」


「拒絶まではしていない。ただ、俺のパーソナルスペースからは出て貰う」


 フランはともかく、アーデに対し至近距離にまで接近することを許容するほど気を許した覚えは無い。

 むしろフランの方は、何故こんなにも俺に対して無防備なのかと本人に問い掛けたい気分ではある。けれど、この場にはアーデも居るので今はやめておこう。


「フランちゃんは大丈夫みたいだし、ワタシも大丈夫かなって思ったんだけど」


「親しい友人と、知り合い。そんな二人を同列に扱うような人間、信用できるか?」


 アーデが納得したくなさそうな表情をしつつ反論する様子も無いので、放置して良いだろう。


「私は親しい友人ですか」


 声が聞こえたのでフランの方を見ると、若干嬉しそうな表情を浮かべていた。


「前世を含めても上位に位置する程度には親しい友人かな。今世の友人はまだ少ないけど」


 ジャック達初心冒険者三人は一応友人と言えるだろうし、お人好しお姉さんのロロさんは完全に友人だろう。【鋼刃】の二つ名を持つドミニクさんは微妙なところ。白のラインハルトことエルさんも果たしてどうか。こちらについては、職場の先輩という認識が強いかな。

 やっぱり、今世の友人としてはダントツでフランが親しいな。恩を受けているのもあるし、そもそも話のレベルがとても合う。相手に合わせるというワンクッションが不要で、俺の根底にある人嫌いの部分が顔を出さない。


 それはさておき、と言って俺は話を戻す。


「エミュレーター・コピーを手に持ってる個体が居るんだよな」


 そう、持っている個体が。これはもう、最悪の場合はエミュレーター・コピーを駆使して戦う変異オークを敵として想定しなければならない事態だ。最高に派手なパーティーになりそうだよチクショウ。


「アーデさん、変異オークがエミュレーター・コピーの機能を行使してくる可能性は有りますか?」


 フランが俺の懸念と同じ内容を言葉にして、アーデにぶつけた。果たしてアーデの答えは。


「有り得ない……って答えたいんだけど、エミュレーターって機能の自由度が高すぎるからねー。それができるようにオークを変異させれば、多分不可能じゃないよ」


 最悪の想定ではなく、基準の想定にしておこう。そうならなかったら運が良かった、ラッキーだったと思う。そうしよう。

 知っているか、本当のポジティブはネガティブの向こう側にあるんだそうだ。この考えを他人に強要するつもりはないけれど、少なくとも俺は真理だと思っている。


「となると、安全策を取るなら周囲の戦力を削ってから本丸を落とす。迅速に解決を目指すなら、MP効率を無視した電撃作戦で中央突破。この二つが出てくるな」


「ですがエミュレーター・コピーが絡むこの件の場合、時間をかけると何が起こるか分からないのが怖いところです。私は後者の電撃作戦を敢行し、万一失敗した際には即座に撤退するという方向で進めるべきかと」


 俺が心の中で懸念していたことは、しっかりフランに補足された。


「あ、安全策じゃダメかな? 電撃作戦なんて、ワタシ付いていける自信が無いよ……」


 不安そうにアーデが溢した。


 ふむ、置いていくのも手か。或いは……。


「アーデに二つの選択肢を提示しよう。ここで帰るか、俺に今後の生殺与奪(せいさつよだつ)を握られつつ作戦に参加するか。ちなみに後者はお勧めしない。内容の説明も事後にしか行わない。さあどうする?」


 フラン同様、アーデのステータス編集を可能にし、戦闘力を引き上げるか。


「露骨に怖いこと言ってくるね!? 生殺与奪なんて言葉、本でも滅多に見ないよ!?」


 俺も口に出して言ったのは初めてかも知れない。普通使う言葉じゃないだろう。


「誇張表現じゃないからな。流石に俺も、これを強要するのは気が引ける。今回帰る選択をしたとしても、俺は一切アーデを責めない。事後報告もきちんとしよう」


 それでどうする、と。声に出さず目で問い掛ける。


 アーデは俯きながら小さく唸り、非常に悩んでいる様子。アーデからすると詳細が分からない以上、迂闊に頷けもしないだろう。というか、俺がアーデの立場なら悩んだ素振りだけ見せて帰る。デメリットの大きさが測れもしない選択肢なんて、論外だ。


「……分かった。作戦に参加するよ」


 そしてまさかの返答。提示だけはしたものの、選ばれるとは思っていなかった選択肢だったのに。


「いや本当にお勧めしないぞ? この作戦中の(・・・・・・)生殺与奪じゃなくて、今後の(・・・)生殺与奪だからな? 取り返しがつかない状況になるからな? 良く考えろ。目の前の男は本当に信用出来るか? 命を預けられるか? 悪いことは言わない、もう一度しっかり考えてみた方が良い」


「そこまで言ってくれるリッ君だったら、信じて良さそうだけどね。という訳で、何をするのか分からないけどお願いするよ」


 アーデは、俺が散々警告したにも拘らず意見を曲げなかった。普段より少しだけ真面目な表情で、しかし然程の緊張感は無く。


「どう思う、フラン? 止めさせるべきだと思うならフランの方からも言って欲しい」


 なので、第三者の意見を求めることにした。


「現に私は問題を感じていませんから、止めさせる必要は無いかと」


 斜め上の内容で即答された。


 俺はアーデに視線を向け直し、口を開く。


「……アーデ、考え直すなら今の内だぞ」


「大仰な前置きが来たときは私も覚悟を決めないとって思ってたけど、今となっては考え直す必要性が皆無なんだろうなって印象しかないよ。そういう訳で、今度こそお願いするねー」


 ほとんど負け惜しみのようになってきた俺の言葉に説得力は無かったらしく、アーデは本当に気楽な様子で最後通達をしてきた。


「内容を言わなかったとはいえ、後から文句を言っても知らないからな」


 そして負け惜しみそのものの言葉を告げてから、俺も覚悟を決める。


 エディターを構えてアーデに近づけると、アーデは少し驚いた様子を見せた。しかし、その場から動こうとはせず。


「手で剣に触れてくれ。ああ、別に刃の部分じゃなくて良い」


 俺の指示通り、アーデがエディターに触れる。数秒後、アナライズモードによってアーデのデータが読み取れた。


▼▼▼▼▼

Name:アデライーデ・ローゼンハイム

Lv.49

EXP:11760

HP:1382

MP:1527

STR:389

VIT:460

DEX:537

AGI:466

INT:615

▲▲▲▲▲


 レベルで言えば、俺と大差は無い。能力値としてはかなり平均的で、突出したものは無い。オールラウンダーと言えば聞こえは良いが、器用貧乏とも言えるか。


「……これで、アーデのステータスを編集できるようになった。魔法についてはフランに一任するから、アーデのINTをひとまずAGIに割り振っておく」


 編集後のステータスがこう。


▼▼▼▼▼

Name:アデライーデ・ローゼンハイム

Lv.49

EXP:11760

HP:1382

MP:1527

STR:389

VIT:460

DEX:537

AGI:1080(614)

INT:1(-614)

▲▲▲▲▲


 実際に表示もして、アーデ本人に見える状態にしておく。


「わ、一気に倍以上の敏捷性だねー。そっか、生殺与奪を握るって言葉はこういうことだったんだ。ワタシの長所も短所も自在に変動させられるなら、生かすも殺すも自由自在だよね」


 見たところ、動揺は無さそうだ。嘘が致命的に下手なアーデがこういう態度を取るのなら、特に問題は無いか。いや、それはそれで問題な気はするけれど。


「予告無しでステータス編集をするつもりは無いけど、状況次第ではそうとも限らない。とはいえ、今回の件においては基本的にこのステータスだとして行動してくれ」


 本当ならリアルタイムで適切なステ振りをしていきたいところではあるけれど、比較的呼吸を合わせられるフランに対してですらそれは少し厳しい。まあ、頑張ればいけなくはない。しかし、アーデに対しそれは無理だと断言する。


「分かったよ。この敏捷性があれば白兵戦もかなり余裕ができそうだし、二人の足を引っ張らずに済むかな」


 安心したように溜息をつくアーデ。

 俺はそれを見て、どう判断すべきなのか。

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