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俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第一章 冒険者としての始まり
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第三一話 調査クエスト15

引き続き戦闘回。

 この一帯のワイバーンが残り少なくなってきたタイミングで、私はエルケンバルトさんに念話を飛ばします。


『エルケンバルトさん。こちらはフランセットです。少し宜しいですか?』


 彼からしてみれば圧倒的な格下相手とはいえ、現在は戦闘中です。いきなり本題に入るべきではないでしょう。


『構わないよ。何だい?』


 平時と何ら変わらぬ穏やかな口調で返事が来ました。それでは本題に入りましょう。


『ここのコマンドワイバーンをエルケンバルトさんにお任せして、私とリクは次の標的に移ろうと思うのですが』


『……あのコマンドワイバーンが貰った情報通りに存在した時点で疑う余地も無いけれど、果たしてどういう手段で得た情報なのかな』


 今は木々が邪魔して直接エルケンバルトさんの顔は見えませんが、きっと遠い目をしているのだろうなと推測できます。


『うん、任されよう。この場は僕が片付けておくよ。その後で合流を』


『ありがとうございます』


 それはともかく、了承を得ました。次はリクに念話を飛ばしましょう。


『リク。こちらはフランセットです。少し宜しいですか?』


 決して多くはないはずのMPを上手く運用しているのか、ずっと空中でワイバーン狩りをしているリク。ひょっとして、レベルアップ時のMP回復も計算に入れているのでしょうか。だとすると、やりくり上手です。


『ん、移動かな? そろそろかとは思ってたんだけど』


 こちらの意図を先読みした言葉は実に淀み無く、的を射ていました。その間もワイバーンへの攻撃を続行しているのですから、既に冒険者として手馴れた感があります。戦闘経験は決して多くないはずなのですが。


『はい、私もそう思って念話しています。標的は現在どの方角でしょうか?』


 私も負けてはいられません。念話を続行しつつ、氷柱を空に射出しワイバーンを攻撃します。


『今のフランから見て二時方向。距離にして七キロメートルってところかな。良い具合に接近してきてる』


 即答されたところを見るに、既にエディターで現在地は調べていたようです。見事に使いこなしていますね。


 私がリクに対し改めて感心していると、そのリクが私のすぐ近くへ風を纏いつつ着地しました。腕や足など数箇所に怪我がありますが、いずれも軽傷です。避けられない攻撃はきっと、VITに値を割り振って防いだのでしょう。


「初級魔法で制限が多いとはいえ、空を飛べるってのはかなり戦いやすいね。空中で自分より速く動く敵には慣れてないのか、ワイバーンの相手もそう難しくなかったし。この調子なら、コマンドワイバーンの相手もある程度こなせそうだよ」


 事も無げにそう語るリクの表情には、僅かな緊張も興奮も無く。

 自分をあまり高く評価しないリクの性格も考えれば、本当に心配は必要無さそうです。


「そのようですね。これなら、討ち漏らしも無く迎撃できるかもしれません」


 アインガングの戦力に不安がある訳ではありませんが、敵に不可解な点が多い以上はできるだけこちらで処理しておきたいところです。


「……変なフラグ立ってないよな?」


 やや小さめの声で、リクが何かを言いました。不穏な響きだったような気がします。


 私の視線に気付いたのか、リクは首を横に振り、何でもないと言ってきました。


「何かあればすぐ報告するから、今は敵を倒そう」


 まるで、これから何か起こることを予期しているような言い方でした。






 果たして、リクの言葉から受けた私の印象は正解でした。


 山中を移動して別のコマンドワイバーンのもとへ急ぐ途中、リクが嫌そうに口を開きます。


「不本意ながら予想してたけど、またコマンドワイバーンが一体増えた。しかもやっぱりボスコ方面に移動を開始してる。色んな意味で偶然じゃ片付かないな、これは……」


 あと何体続くか、と小さく呟くリクを見て、私も不安になります。


「根本原因は何なのでしょうか。コマンダーが連続して複数発生した事例など、聞いたこともありませんが……」


 つい弱気な発言をしてしまった私を見て、リクが苦笑しつつ口を開きます。


「不可解な出来事に対して滅茶苦茶強い武器(エディター)がここにあるんだから、まあ何とかなるんじゃないかな」


 普段より少しだけ細められた目は、曖昧な言葉に反して強い意志を感じさせました。


「俺のレベルも、本来格上の魔物を倒しまくってるお陰で馬鹿みたいに上がっていってるし。今、なんとレベル四三だよ。山に入る前はレベル三四だったのに。……本当は数ヶ月かけて、このくらいに上げる予定だったんだけどなぁ」


 最後に一瞬だけ遠い目になりましたが、強い意志を感じさせてくれました。


「……ふふ、そうですね。何とかしてみましょう。元よりその為に、今の私たちは行動しているのですから」


 私が笑うと、リクも笑顔を返してくれました。






 移動中、リクにエディターの画面を見せて貰いました。そこに映ったマップでは、私達と少し距離を置いてコマンドワイバーン一頭、更にもう少し距離を置いてコマンドワイバーンもう一頭が、ほぼ一直線に並んでいます。

 リクの作戦として、距離が近い方のコマンドワイバーンが形成しつつある群れをまず削り、後続のコマンドワイバーンが到着したところで、前者のコマンドワイバーンを仕留めつつアナライズモードで調べることになりました。

 いきなり群れを統率するコマンダーを仕留めてしまえば、通常種がどう動くか予想できません。なので、敢えて後続のコマンダーを待つ訳です。その上で根本原因が判明することを期待し、片方のコマンダーを討つと。

 欲を言えば真っ先にコマンドワイバーンを調べてしまいたいのですが、中途半端に手傷を負わせてしまっては危険度が跳ね上がります。ここはリクの堅実な判断に従いましょう。


 さて、コマンドワイバーンの群れがいよいよ近付いてきました。道中で魔力も回復(・・)しましたし、全開でいきます。


 空を飛ぶ標的が目視で確認できるようになってから、私は周囲に氷柱を複数展開。木々の間を通しつつワイバーンの下方へ設置。標的がその真上に来る直前に打ち上げ、腹部を貫き、一気に五頭を仕留めました。


 群れの一部が突然攻撃されて絶命する様を見て、ワイバーン達に動揺が広がったのが見て取れます。真下に敵が居ると思い込み、そこから距離を取るように高度を上げました。──狙い通りです。


 上空にて待機させていた上級水魔法、トリ・アクアを操作開始。DEXに極振りし操作精度を限界まで高めた無数の氷の刃で、群れを蹂躙します。











◆◆◆◆◆


 エディターを隣に居るフランに預けた俺──リク・スギサキは今、チートの凄まじさを目撃している。


 空中にて舞う無数の氷刃が、その場に居るワイバーン達を無慈悲に切り裂き、単なる肉塊へと変えていく。ある個体は攻撃を避けようとして翼膜を切り裂かれ墜落し、ある個体は迎撃のため爪牙を振るうも物量に負け氷の剣山と化す。無論、辛うじて難を逃れる個体も在るが、フランの波状攻撃を前に着実にその数を減らしていく。


 ここで、魔法の仕組みについて軽く説明しておこう。

 魔法というのは当然、ステータスで言えばINTが最も大きく影響するものだ。たとえ等級の同じ魔法を使おうと、INTに差がある魔法使い同士でぶつけ合えば結果は一目瞭然。単純に、高いINTを誇る魔法使いが発動させた魔法が勝つ。

 しかしながら、それは真正面からぶつけた場合の話。仮にINTが低くとも、器用さを示すDEXが高ければ、逆転も不可能ではない。

 格闘技に当て嵌めて考えるならば、INTが筋力を、DEXが技量を示すといえば分かり易いか。如何に力が強かろうと、それを高い技量で()なされては意味が無い。つまりはそういう話で。


 魔法にINTが影響するタイミングは二つ。まず発動前の構築時、いわば設計の自由度が変わる。次に発動時、出力の強さが決定する。つまり発動後には、INTが影響しない(・・・・・)

 発動後に影響するのは、DEXだ。器用さの意味が示す通り、発動後の操作性を上げる。


 話を戻そう。

 ではフランが何をしたかと言えば、魔法の発動時までINTに極振り、発動後はDEXに極振りだ。凶悪である。

 圧倒的自由度で設計され、高出力で発動した魔法が、これまた圧倒的な技量で精密操作されている。相手は死ぬ。


 現在のステータスとして、耐久性と敏捷性を犠牲にしているフラン。その護衛に付いている俺だが、果たしてワイバーン達にはこちらに襲い掛かる余裕などあるだろうか。甚だ疑問だ。

 いや、万全を期して護衛はするんだけどさ。

むしろ蹂躙。

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