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俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第一章 冒険者としての始まり
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第二八話 調査クエスト12

おかしい……サブタイトルに反して調査をしてない……。

「アルジェント山脈にまで足を伸ばすとなると、片道でも一週間程度は掛かる。クエスト期間の延長を申請しておくべきだね」


 エルさんから実務的な部分の指摘が出てきた。

 となると、念話が届くところにまで一度戻る必要があるのだろうか。そんな風に俺は考えていたが。


「後ほど私が念話を送って延長申請を出しておきます。延長期間は二週間程度で良いでしょうか?」


 どうやらフランの念話範囲は俺が思っていた以上に広いらしく、ここボスコからもアインバーグに念話が届くようだ。


 元々が一週間の調査期間なので、計三週間。ここからの往復だけで約二週間消費、調査に残りの一週間弱を見積もる訳か。


「僕はそれで構わないよ。それにしても、初クエストの派生がこんな規模の調査クエストになるだなんて、リク君からすると大変な話だね」


 今後の行動はより計画的にしていかないといけないなと決意を新たにしていると、何やら同情的な視線と言葉を向けられた。


「転生前にも、神様から大変な人生になるとは聞いていましたから。その上で転生を選んだ以上、この程度は最初から織り込み済みです。心配は無用ですよ」


 それに、気付いたら(・・・・・)死ぬしかなかった(・・・・・・・・)前世の最期と比べれば、まあ大抵のことには落ち着いて対処できる。


「あの、リク。いきなり死んだような目になりましたが、本当に大丈夫ですか?」


 過去の不幸に思いを巡らせていると、フランに顔を覗き込まれていた。いかん、顔にまで出ていたか。


「前世の最期を思い出してただけだから大丈夫。今生は何が何でも平穏を謳歌して、きっと老衰で死んでやるんだ」


 その為にも、平穏を脅かす敵は実力を以って排除できるだけのレベルを獲得する。場合によっては昨晩のように、エディターの機能をフル活用してのセルフパワーレベリングだって辞さない覚悟だ。

 若干ながら本末転倒な気配がするけど、前世のような最期だけは認められない。是が非でも、死に場所を自分で選ぶくらいの権利は獲得する。


「死に方を今から考えている時点で大丈夫とは思えませんよ。一体、前世ではどのような──いえ、すみません、失言でした。忘れてください」


 俺がさらっと言った「前世の最期」について質問しようとしたらしきフランが、慌てて発言を取り止めた。

 ろくな死に方じゃなかったのは伝わっただろうけど、俺の方から話題に出したんだから、そんなに気にしなくてもいいのに。


「いや、機会があったらその内話すよ。それはそれとして、移動を開始しましょうか」


 念のため、気にしていないことをアピールしつつ。エルさんに向けて話し掛けながら話題の転換を図っておいた。






 アインバーグからボスコまで乗ってきた馬車にはまだ一人分くらいスペースの余裕があったが、移動速度に優れるエルさんが先行を申し出たため、俺とフランは当初と変わらず二人で馬車に揺られている。

 とりあえず、瞬間速度だけならまだしも平均速度が馬車より速いってのがおかしいと思った。史上最高レベル到達者なんだから、と納得しておくしかないのだろうか。或いはステータスというシステムそのものについてか。

 しかしそれにしても。


「折角合流したんだから、エルさんも馬車に乗れば良かったのに」


 外の景色をぼんやり眺めながら、当たり障りの無い話をフランに振ってみた。


「エルケンバルトさんは真面目な方ですから、私達二人だけが先に調査を行っていたことに思うところがあったのでしょう。それでなくとも一般人には危険度の高い話になってきているのです。早期解決を図る、というのは如何にもエルケンバルトさんらしい行動だと思います」


 長い付き合いがあるはずのフランから見たエルさんも、やはりそんな人物であるらしい。となると、この調査クエストが終わるまでには、エディターの能力について話してしまって良さそうな気がする。


「……本当に、協力者としては行き過ぎな人物だなぁ」


 そもそも五つ星のフランが居る時点で、過剰戦力の可能性があるってのに。


「頼もしい方でしょう?」


 それを気にした風でもないフランは、陽気に微笑んでいるし。











 その後いくつかの町や村を経由して、俺とフランはアルジェント山脈の玄関口にあたる街──山岳都市アインガングへと到着した。

 移動に掛かった時間は丸六日間と少々。今は昼過ぎといった時間帯だ。


 遠くを望めば雄大な山々が幾重にも連なり、山頂付近には雪化粧をして真っ白に染まっている。手前を見れば、先程の山々から続く曲線に沿って、沢山の建物が軒を連ねている。


 俺達が乗る馬車が通っているのは、傾斜の緩やかな坂道だった。ほぼ真っ直ぐな線を描きつつ、山頂方向に対して斜めに延びている。幅は恐らく、二トントラックが二台は並走できるほど。交通量も幅に見合った多さで、荷馬車がひっきりなしに行き交う。


「アインガングは古くからこの地に住まう人々が作り上げた街です。中級の中でも比較的気性が荒い部類であるワイバーンをして、容易に手を出せないと認識させる防衛能力が有名ですね」


 すっかり解説役が板についたフランが、今回もまた俺に解説してくれる。


「一般に名も売れ始める中級冒険者──つまり三つ星や四つ星の冒険者の数だけで言えば、ギルド本部があるアインバーグと比較しても然程変わりません。また、稀にやってくる魔物を迎撃する為の兵器も充実しているので、冒険者という最大戦力を除いたとしても最低限の防衛はできます」


 冒険者が最大戦力というところに引っ掛かりを覚えて質問したところ、すぐに返答が来る。


「常駐している軍は存在しますが、彼らは積極的に魔物を狩る我々冒険者ほどレベルが高くありません。勿論、そのレベルのために魔物狩りを行うこともありますが、その……」


 途中で言葉を途切れさせたフランの顔を覗きこむと、非常に言い辛そうにしている。それなら、俺の方から情報を引き出してみよう。


「少し話は変わるんだけどさ。軍に所属してる兵士と、三つ星辺りの冒険者、どっちの方が羽振りが良い? あと、兵士から冒険者に転身するのと、その逆、どっちの方が多い? それと、軍の最高戦力って冒険者で言うところの星いくつ程度?」


 所得に大きな開きがあるなら、条件が良い方を選択するだろう。そしてこんな世界だ、自分本位に生きる人間の方が色々な意味で強そうに感じる。


「特に最後の質問が出る時点で、リクには察しがついていそうですね。……ええ、初級冒険者ならばともかく、中級以上の冒険者ともなれば、軍における幹部クラスの人間と同等以上の富を得られます。そしてそれは、当人に実力さえあれば速やかに手が届く。そうなると必然的に、一定以上の実力者は兵士でいるよりも、冒険者として活動した方が良いと考える場合が多いようです。四つ星相当の実力を持っていてなお兵士であり続けた方が、二十年前に一人。歴史の上でもかなり稀な例ですね」


 レベルという概念がある以上はレベリングによって能力を上げるのが手っ取り早い戦力強化だし、でもそれには個々人によって異なる上限があると聞いた。つまりは、そういうことなんだろう。


「集団に対して突出した実力ってのも、かえって周りの足を引っ張るだろうしなぁ」


 ステータスなんてシステムが存在しなければ、兵士と冒険者にそんな差は生まれなかったんだろうけど。そうなると今度は、魔物に対してヒトが圧倒的に無力だ。システムを(・・・・・)構築した(・・・・)最高神(・・・)も、中々に苦肉の策だったと苦笑していた。あの苦笑にはその辺りの意味が含まれていたのかと今更分かる。


「ところでその人、冒険者に転身せず最後まで軍に所属してたのかな?」


 二十年前の話を掘り起こさなければ語れないレベルってのが興味をそそった。果たしてどんな人物だったのか、までは分からないだろうけど。


「いえ、今はギルドマスターですから」


 分からないと思ってたんだけど。貫くような鋭い眼光のギルドマスターを見て退役軍人っぽいと感じた俺の直感が、とても正しかったんだけど。

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