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俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第一章 冒険者としての始まり
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第二二話 調査クエスト6

「ところで質問があるんだけどさ。フランのことを盗賊の一人が【大瀑布(だいばくふ)】って呼んだんだけど、あれってどういう意味だったのかな」


 話題の転換も兼ねて、フランに質問を投げてみる。


「それは冒険者の一部に付けられることのある、非公式な二つ名です。外見や戦い方などが特徴的な冒険者に付けられることが多いですね」


 ほうほう。ってことは、フランの場合外見が【大瀑布】って感じじゃないから、きっと戦い方について付けられた二つ名なんだろう。

 えげつねぇ戦い方が浮かぶんだけど。


「……大出力による広域殲滅?」


「そうですね。私の場合は大量の水や氷を広範囲に叩きつけて戦うことが多かったもので、【大瀑布】の二つ名が付けられていました。それにしても、良く分かりましたね」


 感心したように言ってくれるフランだけど、ヒントは十分貰った後だ。


「前にフランがトリ・アクアを使用したときの有効範囲と、大瀑布って言葉の意味を考えればね。けどそうなると、前衛である俺の足枷っぷりが尋常じゃないんだけど」


 敵陣に切り込んで戦うスタイルを採用してる今の俺は、フランの火力を十全に活かせないような立ち回りをしてるってことだ。戦力リソースを適切に割り振るなら、俺はフランの近くで敵の迎撃を行った方が良い。


「今はリクのレベル上げが優先順位の高い事柄です。そして、今のリクに相手が可能な敵になら私も接近を許すこと無く対処が可能ですし……むしろ、接近されたとしても対処可能ではないかと」


 うん、足枷って部分に否定の言葉が一切無かったね。否定されてもお世辞だって丸分かりだから良いんだけど。いや俺相手だから良いのであって、他の人なら多少気分を害してもおかしくないか。


「恐らく、レベルが五〇……いえ四〇にもなれば、私にとって適正レベルの相手であっても、リクになら本当の意味で前衛を任せられそうですね」


 フランにはもう少し言葉選びに気を付けて欲しいと思っていると、今度は評価の高そうな言葉を貰った。

 でも、フランのレベルって七五だったよな……? そんなフランにとって適正レベルの相手に、レベル四〇の時点の俺を戦わせるつもりなのか。


「あのさ、フラン。エディターは確かにリソースの再分配ができるから色々臨機応変に対応できるけど、リソースが増える訳じゃないんだよ。例えば現在HPは現在MPとしか値を共有できないから、比較的素直なレベル差が生まれるし」


 そう、エディターには制限がある。

 現在HPと現在MP、最大HPと最大MPはそれぞれ値の共有ができる。そしてSTRやINTなどその他のステータスは、全て値を共有できる。

 概ね等価値な値同士で共有可能だと思って貰えば良い。STRなどと比べ三倍程度の値を持つHPやMPを、そのまま攻撃力や防御力にすることは通常(・・)できない訳だ。


「それに今までだって、敏捷性(AGI)にものを言わせて耐久性(VIT)を軽視できるから、格上相手に有利な展開に持ち込めてるだけで。背伸びをするにも限界は来るよ」


 その背伸びの限界が普通の人より随分高いのは、自分でも分かってるけど。


「そうでしょうか……? いえ、リク自身がそう考えているのであれば、私が意見するのもおかしな話ですね」


 フランが大人しく引き下がってくれる様子なので、何となく引っ掛かりを覚える言い回しだったのは無視しよう。そうしよう。


「それはそうと、今日はフランにエディターを使ってみてもらうって言ったけどさ。一つやってみて欲しいことがあるんだ」


 いざというときの為に、微塵も自重してない使い方を伝えておいても良いだろう。


 その使い方を伝えたとき、フランから向けられる視線が今まで見たことが無い種類のそれになっていた。






 日も落ちかけた夕暮れ時。森の隣で静かに佇む町──ボスコの町に到着した。


 大人の胸ほどの高さがある柵で周囲をぐるりと囲み、門には眠そうに欠伸をかみ殺す青年が一人立っている。

 森が近いだけあって、町中は木造の建造物が目立つ。アインバーグの街並みと比べれば頼りなさげに見えるが、木材同士の継ぎ目がぴたりと合っているところを見るに、決して吹けば飛ぶあばら屋などではないらしい。

 街中のほとんどが石材でできた城塞都市の様相を呈するアインバーグと比較するのが、そもそも間違っている気はした。


 馬車を馬ごと任せられる宿屋はボスコには無いらしいので、そちらは御者に丸投げして。

 俺とフランはひとまず普通の宿を探した。


 手頃な宿を見付けて部屋を確保した俺達が次に取った行動は、酒場へ行くことだった。手っ取り早い情報収集としては定番らしく、こんなところまでゲーム的な感覚を持ち込めるとは思わなかった。


 訪れた酒場は何処となくウエスタンな雰囲気を醸し出す、そこそこに賑わっているところだった。

 幾つかの大きな円形テーブルと、カウンター。三十人も入れば満員だろうと思われるこの場所には現在、二十人程の客が入っている。

 酒場と言いつつしっかりとした食事も取れる場所のようで、例えば口の周りを盛大に汚しながらステーキを頬張る髭面の大男も居た。


 客層としては低くても三十歳がほとんどといった様子で、俺とフランはやや目立つ。客からの視線を集めつつカウンターまで進むと、エプロン姿の若い女性店員がグラスに注いだ水を二つ運んできた。


「注文が決まったら呼んでくださいねー!」


 営業スマイルを振り撒き、やや砕けた敬語を話す店員だった。何と無しに去っていく背中を見送っていると、ステーキを頬張っていた大男に尻を触られそうになる。店員は大男の小指を掴み、ありえない方向に曲げて激痛を与え撃退していた。

 強い。


「……こういう光景にも慣れていかないといけないのかな」


 傷だらけのテーブルに手を触れながら、きっと乱闘騒ぎになる場面もそう珍しくないのだろうと想像しつつ感想を漏らした。


「冒険者を続けていくのであれば、そうでしょうね。リクなら心配せずとも、自然に慣れるのではないかと思いますが」


 特に気負った様子も無いフランが、水を一口飲みながら返した。


「あー、そうかも」


 我ながら順応性の高さには自信がある。






 入店して最初に見たステーキが随分美味しそうだったので、俺は欲望に負ける形でステーキを注文。フランは軽めにサンドイッチセットを注文していた。


 各々目の前に運ばれた料理を口に運びつつ、店内の様子を改めて窺う。エディターのエリア表示で、人を示すマーカーに対しそれぞれの視線の向きを示す矢印を追加して。

 いやまあ、チートだ。簡易な俯瞰視点を得ているに等しいこの状況、戦闘においても非常に役立つ。チートというよりはむしろ、デバッグモードを起動しているような状況だけどな。

 話が逸れたが、俺はその画面をフランに対しても視覚化している。


「どの辺りから攻めたものかね」


「右下の三人組などはいかがでしょうか。レベル的にも服装的にも同業者でしょうし、何かしらの異変に気付いている可能性はあるかと」


 第三者から見れば何のことやら分からないだろう台詞は、俺達の右後方に位置するテーブルで酒を呷っている冒険者らしき三人組を対象としている。

 平均レベルは二五ほどで、年齢は恐らく三十前後だろう。俺の皮装備をもう少し上等な品に変えたらこんな具合かな、という防具に身を包んでいて、全員が前衛職っぽく見える。

 バランス悪いなオイ。


「ところでさ、フラン」


「リクも気が付きましたか」


 そりゃ気付くよ。だってずっとコンソール見てるし。

 ずっとフランに視線を向けてるマーカーあるし。


「何か心当たりは?」


「……この町に来たのは初めてではありませんが、こうも不躾に見られるようなことをした覚えはありません。ただ、名前自体は私もギルドの受付で対応したことがある方で、見覚えくらいはあります」


 フェデリコ・ロレンツィ、と名前が表示されたマーカーに二人して目を凝らす。

 レベルは五〇と中々に高く、果たして何が目的でフランに目を付けているのか分からないのが不気味だ。


「戦闘スタイルは二挺のハンドガンを使ってのミドルレンジ。四つ星冒険者として実力は評価されていますが、女性関係にだらしがないとフロランタン先輩から聞いたことがあります」


 フロランタンさん、何でそういう情報ばっかりフランに教えてるのかね。この場合は役に立ちそうだけど。


「よし、スルーの方向でいこう。強烈に面倒事の匂いがする」


 臭いものには全力で蓋をしていく所存である。


 そうと決まれば、と酒を注文。酔った勢いでフランクに話し掛けに行く作戦だ。当然、三人組の方に。

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