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俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第五章 本格的に力を付けよう
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第一六二話 ズュートケーゲル調査8

思ったよりは、まともに戦闘が続きました。

 右目を潰され、暴れまわっていた溶岩竜(ラーヴァドラッヘ)。その動きが落ち着いてきた頃合い。


 風属性上級攻撃魔法の二重結合起動ダブルユニオンキャストで発生させた風を纏う俺は、VIT以外の値をAGIに割り振った。


▼▼▼▼▼

Name:リク・スギサキ

Lv.124

EXP:77219

HP:5976

MP:4923

STR:1(-1988)

VIT:2539

DEX:1(-2266)

AGI:8231(6523)

INT:1(-2269)

▲▲▲▲▲


 先ほど追加でフレイムエレメンタルを討伐したため、レベルも少し上がっている。

 編集無しの状態で言えば、今の俺のAGIはレベル三二二相当。縮地や電光石火と併せて、速度に不足はないだろう。とはいえ最低値のDEXでこの状態を長時間維持するのは無理だ。魔法の制御に不安が出てくる。


 故に、速攻。


 縮地を使用し、溶岩竜の胸部で輝く魔石の前に移動。


 やはり凄まじい熱気だ。近付くと汗が噴き出してくる。


 間髪いれずに紫電。真一文字に振るうエディターに初速が乗った瞬間、AGIに振っていた値をSTRに割り振る。


 風を纏った刀身が溶岩竜の身体に触れ、体表のマグマを爆ぜるように飛散させる。

 今まで感じた中でも最も堅い手応えを感じつつ、重撃を使用。


 チェーンソーで岩を斬ろうとしたらこんな音が鳴るだろうか。けたたましい爆音を伴って刀身が溶岩竜の身体の中を進み、俺はエディターを振り抜いた。


 ばっくりと割れた溶岩竜の胸部。内部には巨大な魔石がある。

 血のように赤い魔石の表面には、削られた(・・・・)ような(・・・)窪みが見て取れた。


 その魔石に攻撃を加えたかったが、流石に時間が無かった。溶岩竜の右前肢が鋭い爪をこちらに向けて振るってくる。


 俺は再びAGIに値を割り振り、跳ね飛ばされるように真上へ飛んで難を逃れた。


 ……まだ、アドレス取得は不完全か。編集はできず、参照まで。


▼▼▼▼▼

Name:ラーヴァドラッヘ

Lv.256

EXP:326400

HP:45922

MP:12240

STR:17593

VIT:15744

DEX:6407

AGI:10220

INT:7348

▲▲▲▲▲


 クソ(たけ)え。

 特に、極振りでないとはいえ今の俺より二〇〇〇も高いAGIとかどうなってんだ。こっちが風魔法と縮地を使えなかったら詰んでるぞ。


 ラーヴァドラッヘがこちらを見上げて口を開く。その奥からは当然の如く、赤い光が漏れて──暴力的に溢れ出す。


 これまでの竜の息吹(ドラゴンブレス)が熱線のような形で収束されていたのに対し、今度のこれはショットガンのように広がりを見せてきた。


 どうも逃げ場が無さそうに見え、数発貰うのは覚悟するかとVITに値を割り振ろうとした矢先。


『テトラ・アクア!』


 万象を凍て付かせる冷気を内包した大きな氷塊が、間に割って入る。高かった収束率を捨てたブレスは威力を減じており、氷塊の冷気に飲み込まれて消えた。


「あれの何処が安全第一ですか!」


 ゲイルに乗ったフランが近くにやって来て、怒った表情を俺に向ける。


「……え、駄目だった?」


 最速で近付いて、一気にアドレス取得を目論んだ訳だけど。いや、結果は僅かに及ばなかったとはいえ、成功まであと少しだし。


「分かりました。後でお話があります!」


 泣かれるのも嫌だけれど、怒らせるのも嫌だな。比較するのであれば、後者の方がマシではあれど。


『ヒールⅢ』


 そして怒っていながら、熱気と飛散したマグマによって身体の至る所に火傷を負った俺へ回復魔法を飛ばしてくれる辺りが、本当に優しい。こちらが礼の言葉を述べると、素っ気なさを滲ませつつも返事をくれたし。


 ともあれ戦闘は続いている。

 今はエルさん達が距離を詰めて、溶岩竜と対峙していた。


 俺が溶岩竜に与えた胸部の傷は既に塞がっており、魔石を直接狙うことはできない。

 けれど単純にエルさんの攻撃力が高く、溶岩竜の身体を構成するマグマを吹き飛ばしていっている。また、マリアベルさんの水魔法が熱気を中和しつつ、堅牢な装甲として機能している。


 とはいえ、周囲に発生したフレイムエレメンタル達も少しずつ氷を融かし動きを再開させていて、そうでなくとも溶岩竜の餌になられると困る。


 実際、溶岩竜の視線は時折エルさん達から外れ、フレイムエレメンタル達に向けられている。

 一体食べればレベルが三つ確実に上昇、という単純(きょうあく)なレベルアップはしないだろうが、それでも常識外のレベル上昇は起こると判明した。


 またフレイムエレメンタルを全て片付ける、というのは遠慮したい。ここから長期戦の構えを取るにはスタミナが足りないし、何より次もフレイムエレメンタルを出現させられては堪らない。


 やはり、ステータス編集の権限を獲得するのが一番だな。


「……リク?」


 じとっとした目で俺を見てくるフラン。考えを読まれたか。


「後で聞くフランの話は、きっと長くなるかな!」


 色々と諦めて吹っ切れた俺は、改めて風の制御を強く意識して飛ぶ。

 フランが何か言っているのが聞こえるが、今は聞こえないことにする。


 まずは氷を融かして動き始めたフレイムエレメンタルを何体か仕留めて、本命の溶岩竜に行こう。


 山肌スレスレの低空飛行で標的に接近し、大太刀を用いた辻斬り。先程の溶岩竜に比べ、フレイムエレメンタルのなんと斬り易いことか。

 十分にレベルが上がった今、自己のステータス編集さえしていれば攻撃力も速度も足りる。


 氷から逃れたフレイムエレメンタルを作業的に一〇体ばかり片付けてから、流石に無視できなくなってきている疲労をポーションがぶ飲みで対処する。


 空ではエルさん達と溶岩竜の対決に加え、フランも遠距離から水魔法を飛ばし移動砲台として活躍していた。


 フランを乗せたゲイルは徹底的な位置取りにこだわり、十分な余裕をもって溶岩竜の攻撃を回避しながら、フランの魔法攻撃の射線を確保している。


 現状、良い感じに溶岩竜の意識が俺から外れているようだ。なので仕掛けてしまおう。


 ある程度リソースを消費してしまった風魔法を破棄し、改めて発動。俺の周囲に、轟音を発する風が渦巻く。


 おや、溶岩竜がこちらを見てしまったな。風の音に反応したか。

 まあ良いか。相手の(・・・)反応速度を(・・・・・)超えれば(・・・・)問題無い。


 縮地、紫電、電光石火。速度に関する技法であるそれらは全て、一呼吸で終えられる動作に対して適用できる。




 だから次の瞬間、俺は空中でエディターを振り終えていた。




 斜め下後方に振り返れば、首を中程まで斬られた溶岩竜の背中が見える。


 使用したのは電光石火。エディターの刀身には圧縮した薄い風を纏わせ、破壊力ではなく切断力を重視した。


 僅かに手が届いていなかったステータス編集の権限を獲得。そして編集完了。


▼▼▼▼▼

Name:ラーヴァドラッヘ

Lv.256

EXP:326400

HP:1(-45921)

MP:58161(45921)

STR:1(-17592)

VIT:1(-15743)

DEX:57308(50901)

AGI:1(-10219)

INT:1(-7347)

▲▲▲▲▲


 MPとDEX以外の値が最低値。もうこいつは、どんな魔物よりも弱い。


『モノ・ウィンド』


 何の変哲もない、単なる風の弾丸を放つ。それが溶岩竜の体表に届き、風船が割れたような軽い破裂音が鳴った。


 つい先程まで確固たる竜の形を保っていたマグマが、ドロリと流れ落ち始める。それでも溶岩竜は緩慢な動きで首をこちらに回し、黄金色の左眼を向けてきた。

 僅かに口を開き、まるで何か言いたいことがあるかのようだったけれど。結局何も音を発すること無く、形を失い流れ落ちた。


 マップ上でも溶岩竜の討伐完了を確認し、ほっと一息。

 気が抜けそうになったのをぐっと堪え、まだ大量に残っているフレイムエレメンタルを見てため息。


 エディターを篭手形態へと変えて、八咫烏を取り出した。


 ……後処理までしっかりと、だよな。

でも最後はあっさりと。

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