表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第五章 本格的に力を付けよう
162/242

第一五五話 ズュートケーゲル調査1

実は似ている部分が多いですね。

 エルさんから、四大霊峰ズュートケーゲルの異常を伝えられて。ここ最近はその調査を行っていたことを知らされて。

 そして今、俺に調査への参加を打診しにきた、と言われた。


「俺の剣の能力で原因を一気に探る、というようなお話でしょうか?」


「そうだね。一応、山頂付近に原因がありそうだということまでは分かったんだけど、あまり時間を掛けていられる状況ではなくなってきたんだ」


 何せ比較的安全な麓でも、上級の魔物しか居ないのが四大霊峰だからな。そんな場所から魔物が大移動なんてした日には、周囲にどれほどの影響があるか。


「魔物は通常の生殖で増える以外にも、高濃度の魔力やその他の要因によって突発的に発生することがある。その多くは大した力を持たないけれど、今回は場所が四大霊峰だ。到底、楽観視できる状況にはない」


 中級程度の力を持つことはザラにある、とはフランからの補足。いやまあ、この場に居る三人(・・・・・・・・)からすると、それは大した力(・・・・)ではないかもしれないけれど。


「お話は分かりました。今回の件、お引き受けします」


「早速準備に取り掛かりますね」


「いや一応はただの調査だから。フランまで一緒に行く必要は、必ずしも無いから」


 流れるように席を立ち、やはり同行する気満々のフランに、俺は待ったを掛けた。気分は悪あがきだ。


「リクは、調査のみで終わると考えていますか?」


「……終わると良いな、と考えてる」


「答えは出ましたね」


 フランはそれだけ言って、自分の部屋へと向かっていった。準備をするということだろう。


 俺、負けるの早いなぁ。

 そしてエルさん、仲間を見て嬉しそうな顔をしない!


「仲が良さそうで、安心したよ」


「そりゃあ、仲は良いですけどね。本当ならこうも過保護になられないように、強くなろうとしているんですよ俺は」


 全身血まみれで倒れ伏した姿を見せてしまった、俺の所為だけれども。


 思えば武術都市の一件は、直接的にも間接的にも俺を戦力として増強するようなことが凝縮されていたな。やっぱり導師の掌の上だった、ということだろうか。


「一人の女性のために強くなろうとするとは、リク君も男だね」


「そんな格好良いものではないです。単なる自己満足ですよ」


 何だか話し過ぎてしまった気がする。


「そういえば、丁度俺が冒険者ギルドに行っているタイミングでエルさんもいらっしゃったようですが、偶然ですか?」


 俺の問い掛けに、エルさんは首を横に振った。


「もちろん、偶然ではないよ。昨日、僕もこの件についてギルドマスターへ報告をしてね。その時に、リク君の話を聞いたんだ」


「話というと、一体どういった流れで?」


 まさかエルさんが持ってきたこの一件まで、ギルドマスターの仕業ではあるまいな。


「明日ある用件で呼び出すから、その後に誘ってみてはどうだ、と。用件がどういった内容なのかまでは聞いていないよ。ただ、確かにタイミングが良いから今日ああして待たせて貰っていた訳さ」


「なるほど。ギルドマスターがゴリ押しして俺を巻き込むよう誘導した訳では、無さそうですね。ちなみに話の内容は、六つ星冒険者への昇級でした」


 ゴリ押しではない、というだけの話ではあるけれど。誘導そのものはあった訳だ。

 とはいえエルさんもエディターの能力は元々知っていた。俺の存在を思い出す可能性は、元から高かっただろう。


「へえ、そうか! 昇級おめでとう!」


 無感動に自身の昇級を述べた俺などより、むしろエルさんの方が余程大きな情動があったように思う。

 とはいえ、昇級そのものには本当に何の感慨も無いけれど、こうも素直に祝福されるとそれは嬉しい。


「ありがとうございます」


 なのでこちらも素直に礼を返す。


「ところで、現地までの移動手段はどうしますか? 俺とフランはグリフォンに乗って行くことになると思いますが」


 ここでふと思った疑問を口に出した。如何に最強の冒険者とはいえ、移動速度まで最速ではないだろう。


「ここ最近は移動が増えていたからね。僕も騎獣を手に入れたんだ。ペガサスなんだけど」


「ああ、ペガサスですか。……ペガサス?」


 翼の生えた白馬のイメージだけれど、その通りならエルさんに似合い過ぎてびっくりだ。まさしく聖騎士様といったところか。


 一応どんな外見なのかエルさんに訊いてみると、俺のイメージで大体合っていた。ただし一つ付け加えるなら、ユニコーンと混ざっている。つまり、額から真っ直ぐ延びる一本角を持っているそうな。


「通常のペガサスは角を持たないんだけど。どうやら特殊個体らしいね」


 特殊個体、か。

 まあ何にせよ、エルさんが騎獣とするくらいだ。きっと飛行速度も高いだろう。






「リク。持っていく物をまとめたので、アイテムボックスに入れて欲しいのですが」


 そのまま少しの間エルさんと雑談を続けていたら、フランが戻ってきて開口一番そんなことを頼んできた。


「了解。足りないものは無かったかな?」


 椅子から立ち上がりつつ、念のための質問。


「ポーションの数が少し心許ないので、できれば買い足しておきたいです」


「それなら体力用も魔力用も大量にストックがあるから大丈夫。他には?」


「そうですね──」


 そんな具合に確認していき、結局どれも俺が持っていたので、フランがまとめた荷物を俺のアイテムボックスに収納し準備が完了した。


「という訳で準備はできました。今からでも出発できます」


 俺の準備? それも全部アイテムボックスに入ってるから大丈夫。

 アイテムボックス様様だ。


「流石に早いね。それじゃあ僕も騎獣を連れてくるから、南門でまた合流しよう」


 エルさんはそう言って立ち上がり、俺の家を出て行った。











 ……で、俺とフランはゲイルを連れて南門に来て、そこで少しの間待っていた訳なんだけど。エルさんとその騎獣を待っていたはずが、どうして一人増えているのかな?


「しばらくぶりね、フラン、リク君。私も同行するわ」


 青みがかった銀髪と瑠璃色の目を持ち、溌溂とした空気を纏う美女。青のシャリエこと、マリアベル・シャリエさん──つまりはフランのお姉さんだ。


 一体どういうことかと、疑問の視線をエルさんへと投げかける。

 すると力無く首を横に振られ、まあ、何となく理解はした。


「ご無沙汰しています、マリアベルさん。そしてエルさん、お話があります」


 しかし、しかしだ。理解と納得は隣人ではあれ、同一の存在ではない。

 故に俺は、角の生えたペガサスの手綱を握っているエルさんの腕を掴み、少し歩いてその場から距離を取る。


 あまり離れすぎても何なので、適当なところで足を止めて防音のための魔法を発動する。


「詳しい話を伺います」


 断定である。頼みではない。


「……僕が自宅に帰ると、たまたま彼女が居てね。エクエス──僕の騎獣を連れて行こうとする理由を問われて、その結果が今さ」


 観念した様子でエルさんが語った話に、嫌な親近感が湧いた。


「……やはり仲間でしたか」


「……ああ、僕らは仲間だとも」


 こんなにもやるせない気持ちで仲間宣言をすることになるとは、思わなかった。


 魔法を解除して元の場所──フランとマリアベルさんの所へ戻る。


「お話は終わったみたいね。それじゃあ張り切って行きましょうか」


 俺とエルさんの間で、おおよそどんな会話が繰り広げられたのかは分かっているだろう。それでも一切調子を崩さず話を進められるのは、果たして感心すべきなのかどうか。


 とはいえそれを口に出す気は無いので、俺は素直に頷いておいた。

 もちろん、エルさんも同様に頷いている。






 俺とフランはグリフォン(ゲイル)に乗り、エルさんとマリアベルさんはペガサス(エクエス)に乗って。同じく南に向かって空を飛んでいる。

 行き先は当然ながら四大霊峰の南、ズュートケーゲルだ。


「フランと一緒に何処かへ行くなんて、いつぶりのことかしら」


 上機嫌なマリアベルさんが、まるで散歩にでも行くかのような気軽さで言った。

 繰り返すが、行き先は四大霊峰である。


「クエストという意味であれば、三年は前のお話になるでしょうか」


 フランもフランで、普通に受け答えをしている。緊張でガチガチになるよりはマシだろうが。


 俺はこっそり、そして小さくため息を吐く。


「三年か。どのくらい成長してるか、見るのが楽しみね」


 くどいようだが、行き先は四大霊峰である。


「一応言わせて貰うけれど、これから行くのはズュートケーゲルだよ。あまり気を抜かないで欲しいな」


 俺と似たような感想だったのか、エルさんがそんな注文を付けた。


「何処へ行くにせよ、エルの傍が世界で一番安全な場所だもの。私は心配していないわ」


 対するマリアベルさんの返しが、手慣れ過ぎている。甘えたような響きも無く、単なる事実の確認とでもいうような自然さだった。


 凄いな、と変なところで感心していると、俺の腰に回されたフランの腕に少しだけ力が込められた。


「リクの傍も、安全です」


 それは俺だけに聞こえるような、小さな声。

 何やら可愛らしい対抗心が生まれているらしかった。


 いやこれダブルデートじゃねぇから。

ダブルデートじゃなかったのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ちゃんと女性陣が男性陣の手綱を握ってるところがリアルでいい。 [一言] 独り身の自分がリア充(2組)をほのぼのした気分で見てられるなんて…… あ、自分の場合は平常運転だったわ(苦笑) …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ