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俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第五章 本格的に力を付けよう
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第一五三話 風属性上級攻撃魔法

まずは色々と後処理を。

 ゼルマとのやり取りを終えて、昼過ぎ。

 そのままゼルマとは別れ、俺とフランは一度ホテルの部屋へ戻る。俺だけは帝国軍の軍服に着替えてから、またすぐに部屋を移動。行き先はベットリヒ少将達の部屋だ。


 ノックをすると、出迎えてくれたのはやや隙の多い帝国軍人、ロンメル少尉だった。


 軽く挨拶を交わして入室し、中に居たベットリヒ少将、バルヒェット准尉、リーデル准尉とも同じく挨拶を交わす。


 さて、茶番を始めにアスター商会へ行こう。






 場所を移してアスター商会本部。現地に来ているのは俺とベットリヒ少将、ロンメル少尉の三名。昨日来た面子だ。

 フラン、バルヒェット准尉、リーデル准尉はそのままホテルで待機している。なお、エディターの機能を使用しているため、現場の状況は適宜伝わる。というより伝える。


 商会を訪れてすぐ通されたのは、昨日と同じ部屋。そこで代表と秘書が待っていた。副代表は居なかった。


 挨拶もそこそこに本題へと入り、話は非常にスムーズに進む。

 当然ではある。何せここまで、こちらの筋書き通りに事を進めているのだから。


 アスター商会は帝国軍から、魔寄せの香に関する調査依頼を受けた。けれど俺とフランが独断で捜査を強行し、強引にではあるが既に事態を収束させている。

 その際に押収した魔寄せの香は帝国軍が回収しているが、候補に挙がっていた二つの商会のどちらが黒だったのかは伏せている。しかし、また同じようなことが起これば今回の一件を含めて全ての証拠を帝国軍に開示する、と商会を脅しておいた。

 ……という、筋書き(・・・)


 勿論、アスター商会側の表向きの話としては、昨日受けた調査依頼を何故か(・・・)今日突然取り下げられることになる。

 そして帝国軍の表向きの話としては、別口で調査を依頼していた方が当たりを引いたため急遽アスター商会への依頼を取り下げる、という流れだ。


 そういう訳で表向きはともかくとして、実際のところ依頼取り下げは双方にとって何ら不都合が無い。


 既にアスター商会へ渡していた前金については代表が返却しようとしてきて、本当の話し合いも必要だったけれど。苦笑する少将が、既に渡したものだと言って断った。

 代表がこっそりと俺の顔色を伺ってきたので、興味が無いことを態度で示す必要があったりした。






 帝国内での話は全て少将にお任せし、軍服の返却も忘れず行って。俺とフランは西の霊峰ヴェストケーゲルを目指す。


 なお帝国軍人の皆さんとの別れ際、また何かあった時には依頼をするかもしれないと言われた。そして同時に、今回の一件についての報酬だとして金銭を押し付けられた。

 ……いや、最初は断ったんだよ。原因が帝国側にあるとはいえ、こちらの無理も押し通したし。結果的には被害を抑えられた分、俺達が居なかった場合より良い状態にできたんだろうけど。


「帝国軍少将とのパイプがしっかりとできた、と考えれば、そう悪い話でもないか。一個人としては信用できる人柄でもあるし」


 グリフォン(ゲイル)の背に乗り空を飛び、後ろにはフランが居る中。俺は半分くらい自分に言い聞かせるような心持ちで呟いた。


「戦争回避のため、現場まで足を運ぶような方ですからね。私も信用できると思います。とはいえ、完全な味方に引き込みたいと考えている素振りも若干ながら見られましたが」


 平気な顔して俺に軍服を貸し出したり、かなりの裁量を俺に与えたり。有用な(・・・)協力者(・・・)というだけではない扱いを受けていた自覚はある。


「フランから見ても、そんな印象か。となると少しは警戒しておいた方が良いのかね。強引な手は使って来そうにないけど」


「念頭に置いておく、という程度で良いかと。いざとなればクラリッサ様を巻き込みましょう」


「紅紫のエクスナーを顎で使うような言い草とは、フランも言うようになったもんだ」


「無実のリクを一方的に疑っていたのです。少しくらいは」


 バッサリと切り捨てるような、フランにしてはやや珍しい言い方だ。

 何なら本人である俺よりずっと怒っていたらしい。


「俺は気にしてないんだけどなぁ」


「その分、私が気にしているのです」


 ということらしい。気合十分、といった声色だ。


「リクは相手に少しでも正当性がある場合、途端に甘くなりますから。それはリクの美点だとも思いますが、だからといって損をするのは看過できません」


 そういうフランは、俺に対して極端に甘い気がするんだけど。

 ……ただそこを指摘すると、ブーメラン状態になる気がするから止めておこう。






 そんな具合にフランと話をしたりしなかったりしつつ、ハイスピードな空の旅を継続していて、ふと思ったことを口に出す。


「そういえば、結合起動(ユニオンキャスト)についてなんだけど。より上位の魔法の習得にも役立つ、って話」


 俺も中級の風魔法は十全に扱えるようになっているし、ここらで上級にも手を出しておきたい。


「はい。高威力の魔法を制御する感覚が分かるので、習得がとてもスムーズでした」


 フランの感覚として、二重(ダブル)は一つ上の段階の魔法と比べて威力はやや下、制御の容易さはやや上といったところ。三重(トリプル)は威力で完全に超え、制御もやや難しくなるとのこと。

 ……あれ?


「リクの場合は中級の三重結合起動トリプルユニオンキャストを使いこなしていますから、今すぐ上級魔法を試してみても成功するのではないでしょうか?」


「……ゲイル、ちょっと地上に降りるぞ」


 試そう。とりあえず試そう。


 雑多かつ疎らに草木が生える、まるで人の手が入っていない荒地に降り立つ。

 そのままゲイルの背からも降りて、今まで試したことの無い魔法──風属性上級攻撃魔法(トリ・ウィンド)を試す。






 結論から言おう。使えた。それはもうあっさりと。


 何か巨大な生物が、大地に爪を振りかざしたかのような。そんな深い溝が、長く俺達の前方へと続いている。

 三日月状の刃の形で風を放った結果だ。


 続けてその二重結合起動も試し、成功。制御にこそやや難があるものの、数回練習すれば実用レベルに到達させられそうな手応えがあった。

 溝は、人が落ちたら死にかねない深さになった。


「もっと早くに試しておけば良かった。あとこの溝はどうしよう。放置するには規模が大きすぎる」


「私が修復しておきますね」


 割と本気で困っていた俺だが、フランがあっさりと地属性上級魔法を発動。ちょっとした地震のような揺れを起こしつつ、溝を見事に塞いでくれた。


「ありがとう。ついでに質問なんだけど、もしかして最近フランが習得したのは水の最上級魔法だけじゃなかったりする?」


「はい。先ほど使った地属性以外にも、火、風、光の上級魔法を習得しています」


 魔法使いとして穴が無さ過ぎる。闇以外全部じゃないか。

 いや、中級までは以前から使えたのを知っているけれども。


「使える属性が多いのは、少しと言わず羨ましいな」


「そうですか? リクのように一つの属性に極めて高い適性を持つというのも、かなりの強みですよ」


 当然のごとく返され、しばし考える。

 確かに、風に特化した適性のお陰で飛行すら可能になっている現状は悪くない……どころかかなり良いだろう。


「それもそうか」


「はい、それもそうです」


 大方の予想通り、フランは機嫌良さげに肯定の言葉を返してくれた。






 さて、再び空を飛んでの移動中。

 一度地上に降りる前と唯一異なるのは、ゲイルごと俺達を覆っている風が中級風魔法の三重結合起動ではなく、上級風魔法の単一起動(シングルキャスト)になっていることだ。

 流石にまだ上級の二重結合起動は使わない。制御に不安がある状態で、その風を纏いたくはないからだ。


「確かに若干制御はし易く、出力は下がっている、と。使用感の違いもあるし、少しこれで慣らしておきたいな」


 中級の三重結合起動と上級の単一起動とでは、単純な使用難度で言っても前者の方が上だろう。けれど先ほど述べた通り、使用感の違いもある。

 例えるなら、前者は特に束ねられていない三本の細い棒で物を押している感覚、後者は太い一本の棒で物を押している感覚。当然、後者の方が単純なのでやりやすい。

 ただ後者の本数を二本に、つまり上級の二重結合起動とする場合、太い二本で物を押すことになるので難易度は跳ね上がるという訳だ。


 と、ここでゲイルが短く鳴く。

 次の瞬間、俺達の周囲にある風が出力を増した。──正確には、ゲイルの風魔法がそこに追加された。


「……お前、速度の低下がそんなに気に入らなかったのか。相変わらずの飛行バカだな」


 俺の風と全く喧嘩をさせずに自分の風を加えるというのは、まあ評価に値するけれど。


 ゲイルは俺の言葉に、これまた短く鳴き声を返すのみ。しかし、今度は何処か得意げにも聞こえた。

 俺は小さくため息を吐く。


「ふふ、息はぴったりですね」


「出会った当初から、確かに呼吸は合ってる」


 何せ一緒にフレイムエレメンタルを討伐したしな。


 魔物討伐のことを思い出していたからか、マップ上の進行方向に気になる表示が現れた。

 ハルピュイア──飛行能力を持つ、上級の魔物が三体いる。


「ハルピュイアですか。迂回しても良さそうですが」


「折角だし狩るよ。少し素材が欲しいし、試したい戦い方もある」


 そう言って俺は抜き身の八咫烏とエディターを取り出す。ただし個別にではなく、一緒に。

 大太刀である八咫烏の柄を延長するように形を変えてあるエディター。二つ合わせて、大薙刀という表現が過小評価になる長大さだ。便宜上、今後は大薙刀と呼称するが。

 ともあれこれならばゲイルに乗ったままでも、全く問題無く攻撃できる。


「さてゲイル。合わせろ」


 またしても短く、けれど今度は獰猛に。ゲイルが鳴いた。

騎獣に乗った状態での物理攻撃手段を獲得しました。

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