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俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第一章 冒険者としての始まり
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第一四話 ギルド本部2

「では、報告書の内容について話をさせて貰おう。来たまえ、茶の用意は出来ている」


 そう言って踵を返し、ギルドマスターであるディートリヒ・ポラースシュテルンさんは部屋の奥……の扉を開けた。

 どうやら立ち話では終わらないらしい。


 ギルドマスターの後に続いて扉を抜けると、まず紅茶の香りが漂ってきた。

 足の短い長方形のテーブルに、二人掛けソファーが二つ。壁には夕焼けの海を描いた風景画が飾られ、格式を感じさせつつも穏やかな印象だ。


 勧められるままにソファーへ座り、いよいよ本腰を入れてギルドマスターと話をすることになった。なってしまった。


「単刀直入に訊くが、この報告書の内容は事実と相違無いだろうか」


 芳しい香りを漂わせるティーセットの横にある一枚の紙を示し、ギルドマスターは俺に質問を投げた。


 フランが作成してくれたらしい、丁寧な字体で書かれたその報告書に俺は目を通す。

 特に事実を曲げた内容ではなかった。


「はい、間違いありません。コマンドブルの群れは俺が一人で片付けました」


 俺の隣では、フランが三人分のカップに紅茶を注いでいる。心なしか、表情が硬いような。


「ああ、そうだろう。して、その方法は如何なるものだったのかを問いたい」


 うわ、やり辛い。流れるように連続攻撃を叩き込んでくるこの感じ。


「群れに囲まれないよう深追いをせず、剣で数を減らしていきました。報告書にある通り(・・・・・・・・)です」


 報告書の内容について、ということでここに来ているので、そこからの軌道修正が難しくなるよう言葉を付け加える。


「敵に囲まれるよりも殲滅速度の方が上回った、ということか」


「いえ、所詮は直進ばかりの猪でしたから。少し立ち位置を工夫するだけで、結構上手くやり込められましたよ」


 奥のブルの突進を、手前のブルで遮ったりとか。まあ下位種のブルなら連撃の中の一太刀でも仕留められるだけの攻撃力が確保できたから、そこまで工夫はしなかったけど。


「相手が小回りの利く魔物の群れだったら、今回のように上手くはいかなかったと思います」


 今回は敵がやり易い部類だっただけ、という態度でやり過ごそう。実際その通りではあるだろうし。


「リクはレベルの割に高い速度がありますから、それであっても善戦はしたと思いますが」


 おおっとここで参加してくるのかい、フランさん。けれどなるほど、その着地点はとても良いと思いますよ。


「どうかなー。フランからの援護は必須になったと思うけど」


「そもそも、ルーキーが魔物の群れをソロ討伐しようなどとするのは、普通であれば自殺行為です。有効な遠距離攻撃によって一方的な戦いができる、とでもいうのであれば話は別ですが……リクは剣士ですし」


 具体例を出すなら、魔法使いとか弓使いとかかな。防護柵なんかがあればやり易そうだ。


「俺みたいに小回りが利く剣士だったら、自殺行為とまでは言われなくて済むと思うけど……?」


 若干引きつった表情でフランに返答する。半分は演技で、もう半分は素だ。だってここまで言われるとは思ってなかったから。


「それでも一度囲まれてしまえば相当に危険な状況になるのですから、大差は無いでしょう」


「……今後はもっと気を付けます」


 思わず敬語になってしまった俺を、鷹の目が射抜いてくる。

 止めてください、ボロが出ている演技(・・・・・・・・・)にボロが出そうです。


「分かれば良いのです」


 心なしか楽しげに見えるフランは、きっと演技をしているんだと思いたい。俺をネチネチと扱き下ろして悦に浸ってるなんてことは無いと信じたい。


「妙な空気になってしまいましたが、ギルドマスターからはまだ何かありますか?」


 俺がそこはかとなく不安を抱いていると、フランが話を進めた。

 さてどう転ぶかね。


「……いや、私の威圧に耐えたことと先程のやり取りを見て、納得した」


 お? これはもう帰れる流れ? ってか帰りたいよ?


「フランセットには少々業務の話があるので残って貰うが、スギサキ君は帰って休みたまえ。明日からの調査クエストも、良い結果を期待している」


 厳つい顔に笑顔を浮かべてそう言ってくれるギルドマスターは、果たしてどの程度まで本音で語ってくれているのかね。……せめて二割くらいは本音だと良いなー。


「分かりました。今日のところはゆっくり休ませて貰いますね。では失礼します」


 笑顔を作り会釈をし、去り際にフランへ視線を送って退室し。俺はエディターで捕捉しているフロランタンさんを確保しに行く。











◆◆◆◆◆


 気遣うような視線を私──フランセット・シャリエに送ったリクを見送った後、この部屋に残されたのは二人。私とギルドマスターです。

 業務の話(・・・・)があるというのは恐らく、リクを追い出したから(・・・・・・・・・・)話せる内容に移行する、というだけなのでしょう。


「そう身構えてくれるな」


 ふ、と軽く笑みを浮かべるギルドマスターですが、比較的見慣れている私にとっても威圧感があります。身構えないというのは、やはり難易度が高いと言わざるを得ません。


「善処します」


 ですのでせめて、努力する姿勢を見せることにしました。


「その返答は如何なものかと思うが。まあ良い、今は話を進めることにしよう」


 私は何か対応を誤ったのでしょうか。リクがまだ隣に居てくれたなら、ベターな模範解答を実演して貰えたような気がします。


「先程私は業務の話と言ったが、話す内容が変わる訳でも無い。議題は彼──リク・スギサキ君についてだ」


 今の私の顔を見れば、やはり、と分かり易く書いてあることでしょう。


「知っている情報を話したまえ」


「申し訳ありませんが、お断りします」


 即座に拒否の言葉を返した私を、ギルドマスターはじっと見詰めています。


「私がリクについての情報をギルドマスターに伝える行為は、リクにとって著しく不利益のあることだと判断しました。それは長期的に見て、ギルドにとっても大きな損失に繋がると考えます」


 初心者である今の時点で中堅クラスの戦力と見做せるリクには、冒険者ギルドを嫌って欲しくはありません。

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