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俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第五章 本格的に力を付けよう
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第一四〇話 アサミヤ家で得たもの2

休憩も兼ねて。

 場所をほんの少しだけ移し、結界の外。


 模擬戦の結果が衝撃的だったためだろうが、(やかま)しくなり過ぎたギャラリーを黙らせてから、ドミニクさんの近くへ寄っていく。何やらフランと話をしているらしい。

 なお、黙らせ方は「一番騒いでいる人間と今すぐ戦いたくなってきた」と呟いただけ。一瞬で葬式のような静けさが訪れた。


 さておき、話を進めよう。


「いかがでしたか、リクの実力は」


 何処と無く得意げな空気を醸し出すフランが、ドミニクさんに感想を求めていた。


「本格的にヤベエな。リクの言う通りあの速さに慣れりゃあ、多少は戦えるようになるだろうが、多少止まりだ」


 なるほど、ドミニクさんから見てそんな感じか。


「慣れだけでは、ドミニクさんでも対処できませんか?」


 早速だが俺も会話に参加した。まずはしっかり確認を。


 ドミニクさんとフランの両方から視線を向けられる。


「不思議そうな顔すんなよ。当たり前だろうが。むしろアレを慣れた程度で対処可能だと思った理由は何だ」


「だってドミニクさんですから」


 死角に回った俺に対して、勘で振った大剣をしっかり命中させてくる人だぞ。


「そうか」


「そうです」


 納得して貰えたようだ。ドミニクさんのこういうところ、最高だと思う。


「とはいえ俺が今の技法をドミニクさんに教えた方が手っ取り早いかもしれないので、それも並行して行いましょう。特にその大剣を高速で切り返せるようになるのは大きいと思います」


「そいつはそう易々と教えて良いモンなのか?」


 疑問を挟まれたが、気にしない。


「許可は得ています」


「そうじゃなくてだな。いや、それもそうだがよ」


 さらっと流そうとしたけれど、少し俺の想定と違う部分があったようだ。

 はて、何だろうか。


 ドミニクさんは神妙な顔をして、口を開く。


「経緯は知らんが、それらはお前さんが成した事で得た技法だろう? だったら──」


「──だったら俺がどう扱おうと、俺の勝手でしょう」


 なんだ、そういうことか。なら押し切ろう。


「はっきり言いますが、現状ではドミニクさんでも俺の訓練の相手には不足です。しかも慣れだけでは完全な対処はできないと、他ならぬ本人の発言もあった。だからドミニクさんに強くなって貰うのは、極めて自分勝手な俺の都合です。……とっとと強くなってください。もっとも、俺はその先を行きますが」


 意図して挑発した。ふざけたことに笑みまで浮かべて。


 目論見は成功。ドミニクさんは額に青筋を浮かべている。


「言ってくれるじゃねえか、なあオイ? 上等だ。教えて貰おうじゃねえか!」


 フランがジト目でこちらを見ていることには気付きつつ、それを全力でスルーした。






 さあ、座学の時間だ。


 講師は俺。生徒はドミニクさん……と、実にタイミング良く訓練所にやって来たエリック達四人組に加えて、顔だけ知っている多数の冒険者達。総勢三〇名ほど。

 その他の人達の邪魔にならぬよう、壁際に集まっている。


 生徒数についてドミニクさんからツッコミが入ったけれど、どうせほとんどが習得できないからと雑に返しておいた。


 ちなみにフランは結合起動(ユニオンキャスト)の訓練に行った。座学なので、俺が無茶する方法が無いからだ。


 しかし確かに、大げさなことになってしまったな。


 俺は集まった一人ひとりの顔を見渡してから、改まった口調で開始する。


「本日講師を勤めさせて頂く、リク・スギサキと申します。皆さん、どうぞ宜しくお願い致します」


 完全に悪乗りの産物だった。が、ほとんどの参加者から拍手が来た。何でだ。

 まあ、それならそれで、このままやるか。


「本日私が皆さんにお伝えするのは、ここリッヒレーベン王国の東側に位置する武術都市オルデンにて多大な影響力を持つ家、アサミヤ家に存在する特殊な技法です。クスキ流戦闘術という名でまとめられた技法群の一部ですが、皆さんにとって非常に有用なものであることは保証致します」


 俺がこう言うと、期待の目を向けてくる冒険者が多く居る。

 ついさっき、ドミニクさん相手に実演していたしな。効果の程は分かっているだろう。


「本題に入る前に一つ、私から確認があります。皆さんは私と同じく冒険者ですので、普段からステータスシステムの恩恵を強く受けているものと思われますが、果たしてそのステータスシステムをどのようなものと認識されていますか?」


 やや抽象的な質問だという自覚はある。だが、これを明文化させて説明できないなら、本題に入ったところで確実に身にならない。


 ざわめきが起こった。近い位置に居る者同士で話し合っている場面が、幾つも見られる。けれど俺に対して答えようとする人間は……一人だけ居た。


 自信無さげにゆるく手を挙げているその人物は、エリック・ブラス。火属性魔法の申し子にして、近接戦闘に完全対応するという謎の魔法使いだ。


「そちらの方、どうぞ」


 彼に視線を合わせ、俺は答えを促した。

 今の俺は講師ということになっているので、あえて友人であることは無視した対応だ。


「自身の能力を恒常的に引き上げてくれるもので、その認識によって効果の度合いを上げ下げできるもの……かな?」


 やはり、エリックは素質があった。

 黒の神授兵装(エディター)によってステータスシステムの恩恵を多角的に体感できる俺が至った結論に、ほど近いところまで迫ってきている。

 特に認識によって(・・・・・・)という部分が素晴らしい。


 気付けば俺は拍手をしていた。


「素晴らしいですね。そう、今彼が言ってくれた通り、認識によって効果の度合いが変わっているのです。例えば、全力で振り下ろした剣だから、斬ったものを真っ二つにできる。例えば、万全の体勢で構えた盾だから、受けた攻撃を防ぎ切れる。そういった必然性によってステータス分の攻撃力や防御力が最大限発揮できると考えている方が多数かと思われますが、それはほんの僅かに本質を見誤った認識なのです」


 俺に褒められ周囲から視線を集めたエリックは、照れくさそうに笑みを浮かべた。


 なお、その本質を最大限悪用(・・)していると思われるのが、俺が先日受け取った大太刀、八咫烏だ。

 使い手がステータスシステムについて未熟であってもそれを完全に補ってしまう、邪道極まる武具だ。


「とはいえこれは言葉だけで納得できるものでもないでしょう。ですので一度、実演を交えてご説明いたします」


 また少しだけ場所を移し、訓練所に設置してある案山子のような的の近くへやって来た。


 アイテムボックスから八咫烏(・・・)を取り出し、抜刀。的の上部の真横から、垂直に刃を当てる。刀身全体の向きとしては、水平に。


「これは武具の補助を受けての芸当で、こういったことも可能だと知って頂くためのものですが、極端な例の方が視覚的にも理解し易いかと思いますのでお見せしますね」


 そう宣言してから、俺は八咫烏を下げる。つまり的の表面を、刃で撫でる。


 重撃を使用。ただし衝撃発生のスパンを長めに取って。


 その結果として、的は上から切断されていく。数センチメートルごとに切断された破片が、まるで輪切りにされた大根のように転がっていった。


 今日一番のざわめきが広がった。一部で悲鳴のような声が聞こえたのは、俺の気のせいだろう。


「今のはSTR適用の有無を連続で切り替え、かつ刃で撫でただけで十分な殺傷能力を持つようステータスシステムを運用した結果です」


 意味が分かんねぇ、とか。できる気がしねぇ、とか。

 そんな弱音がちらほら聞こえてくる。


「今の芸当をそのまま習得する必要はありません。先程もお伝えしましたが、あくまでこういったことも可能であると示したまでです。それでは実演をひとまず終えて、座学に戻りましょうか」


 技法の習得まではいかずとも、ステータスシステムに対する理解度が深まればそれだけでも十分効果はある。弱音を零した連中は、果たしてその辺りを理解しているのかな?

豪快な知識のお裾分け。

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