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俺が神様から貰った魔法の剣はチートツールでした  作者: 御影しい
第四章 有名税は払いたくないものです
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第一一五話 武術都市防衛5

明けましておめでとうございます。

2019年に入り、初の更新でございます。

◆◆◆◆◆


 俺──リク・スギサキは今、自身の騎獣であるゲイルと共に、スミレ・アサミヤさんとの共闘中だ。

 敵はエミュレーター・コピーである棍棒を持つオーガ、そしてその他多数の魔物。


 別個体のオーガやケンタウロスも接近中なので、本気で余裕が無い。

 いざとなったらゲイルに乗って逃げよう。その場合はきちんとスミレさんも連れて行こう。


「リクさん」


 逃げることも視野に入れつつ戦っている俺に対し、スミレさんが声を掛けてきた。


「無茶な頼みをしたいのですが、聞いて頂けますか」


 こちらの脳天目掛けて振り下ろされるオーガの棍棒を、風を纏ったエディターで斜めに受け流しながら。並行して周囲へ風魔法を撒きながら。

 俺はスミレさんの話に耳を傾ける。


「はい、何でしょうか?」


 オーガの脇腹にスミレさんの斬撃が入るも、すぐに再生されて元通り。


 もう嫌だコイツ。


「私を、オーガとの戦闘だけに集中させて欲しいのです」


 周囲が魔物だらけの状況で、それは確かに無茶な頼みだった。


「それで押し切れますか?」


 だから俺からは確認をする。


「押し切ります」


 即座に断言されてしまったので、これは仕方が無い。


「それなら、露払いはお任せを」


 俺にはマップ表示もあるし、対多数の戦闘はハードルが低い。それにエディターの大太刀形態にも慣れてきた。

 やってやれないことは無いさ。


「ありがとうございます」


 スミレさんは感謝の言葉を俺に述べて、先程までより更にキレを増した動きでオーガと対峙する。

 敵の攻撃を見極め、回避の動きは最小限に。氷雨が放つ冷気の出力を上げて、傷を凍結させることで再生能力をある程度まで阻害している。

 短距離の縮地を多用し、敵の死角へ。間断なく繰り出される連撃は、激流の如く。


 しばらく眺めていたい程に見事な剣捌きだけれど、俺は俺の仕事をしなければ。


 今しがたオーガの後方よりやって来たジェネラルオークが、スミレさんに向かおうとしている。


 俺はその背後へ迅速に回り込み、肩口から斜めに斬り捨てた。真上へ飛び、殺到してきていた複数の魔物の攻撃を回避する。

 ジ・ウィンドで圧縮した風をそこへ撃ち込み、炸裂させる。四肢を欠損したり、腹に風穴が開いた魔物を量産した。


 空中に居る状態のまま、モノ・ウィンドで急加速。マップ表示で周囲の敵と味方の位置を常に把握し続け、効率的なルートを模索する。

 極振りの対象を連続で切り替え、縮地を連続で使用する。


 攻撃を攻撃と思うな。移動した結果、すれ違った敵が斬り殺されているだけだ。


 まだ速く。もっと速く。

 全ての敵は単なるチェックポイント。ただ一心に翔け抜けろ。






 幾らの敵を斬ったか。

 返り血を、技量ではなく速さによって浴びずにいた俺の前に今、ケンタウロスとオーガがそれぞれ二体ずつ現れた。

 一体ずつ仕留める予定だったけれど、同時に現れた。完全にタイミングを合わせてきた。

 それ以外の周囲の雑魚を粗方片付け終えているのは、頑張った甲斐があったというべきか。


 しかし、俺が一人で上級の魔物四体を相手取るのは、中々にヘビーといえる。故に。


「ゲイル!」


 俺ではなく、俺達(・・)で戦う。


 大きく上に飛び、後方からやって来たゲイルの背に乗る。

 鞍に跨り手綱を握り、風魔法を発動させて。エディターを騎槍形態(・・・・)に変形させ、準備は万端。


「まずは右腕」


 風魔法に意識を集中。AGIの効果対象を限定。


 ──縮地。


 ケンタウロスの一体に狙いを定め、横を通過。騎槍で右肩を穿った。

 飛び散る血飛沫を後方へ置き去りにして、翔け抜ける。


 後方斜め上へとバク転するようにしながら鋭角に方向転換しつつ、上下が反転した状態で別個体のケンタウロスが突き出してきたハルバードを打ち払う。


 左右からこちらを挟みこむようにして、二体のオーガが跳躍しつつ棍棒を振り上げてきた。


 ゲイルが反転した上下を側転するように正しながら両翼で空気を打ち、迫っていたオーガ二体を吹き飛ばす。


 右腕を失ったケンタウロスがスミレさんの方へ走っていく姿を確認したため、これを追撃。ゲイルが前肢の爪に風魔法を纏わせ頭部を掴み、潰す。


 その間に接近してきたオーガ二体とケンタウロス一体に、俺が強風を浴びせて地面に縫い付ける。


 ゲイルが吼えて、大気を震わせた。


「思っていたより断然余裕があるな。ゲイルのお陰か」


 とはいえ、これで相手も俺達の速さを知った。少なくとも、自ら背を見せるような愚は犯さないだろう。

 だからここからは、全開で行く。


「という訳で喜べゲイル。今からは速さの限界を追求する立ち回りだ。純然たる速さで、敵を圧倒するぞ」


 機嫌の良い、甲高い鳴き声が短く響く。


 ──縮地。


 オーガの目と鼻の先に、ゲイルの鋭い嘴がある。


 迅速に棍棒を振るったオーガだが、既に俺達の姿はそこに無く。お土産に左目への傷を残すのみ。


 左目に受けた傷の痛みと怒りで雄叫びを上げるオーガを余所に、ケンタウロスの背後に回っている俺達はランスチャージ。心臓を狙うがギリギリで反応され、脇腹に刺さる。

 そのケンタウロスが必死の形相で騎槍を掴んできたが、アイテムボックスに仕舞うことで簡単に対処。ゲイルも俺の行動は承知の上で、即座にその場を離脱する。


 ケンタウロスのステータスを編集。MPとDEXに極振り。

 これであいつはただの雑魚だ。


 これなら残る二体のオーガも、と考えたところで──俺の視界に黒い球体が映った。


「──下がれ!」


 俺が手綱を引き、退避の意図を伝える言葉の途中で、ゲイルが大きく羽ばたき急上昇してその場を離脱した。


 不気味な黒いイソギンチャク、あるいはウニとでも表現すれば良いのか。

 人間の手のような形が球体と紐で繋がり、何十も何百も伸びていく。それは周囲に転がる沢山の魔物の死体を掴み取り、球体の中へと引き込んでいく。

 そして俺の記憶違いでなければ、その球体がある場所には二体のオーガが居たはずで。マップ表示には「■■ガ■ード」と、もはや見慣れた文字化け表示。


 本当に……見慣れたくなんて、なかった……。


 気を取り直そう。

 ともあれ、オーガをベースにした魔物が出てくるのは間違い無い。

 上級の魔物の変異種を相手にするのは初めてだ。


 果たして黒い球体の中から現れたのは──馬の下半身を持ち、二つの顔と四本の腕を持つオーガだった。


 もうオーガじゃねぇよコレ。

 三面六臂じゃないだけマシってか。

新年早々出てきたものが、斯様なゲテモノでございます。

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