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The Body34A thrilling night(03)

The Body34A thrilling night(03)



「あらぁ、素敵なお店ねぇ!先程のお店もおいしかったけど、ここも期待しちゃおう!」


静かな店内に突然華やかな声が響くと店内の照度が増したようになった。眉を顰める舞ママ。


「ママ?どうかしたの?」


「シッ!」


指を唇に当て、黙るように眼で私達二人を制する。新しい客は隣室に案内された。


「先程はご馳走様でしたぁ。

お酒は約束してなかったと思うけれどぉ、こちらもご馳走になっていいのかなぁ?


それともぉ……吉見さんには、何か魂胆がおありなのかなぁ?ウフフッ」


顔が青冷めるのが判る。


「チャーミングな女性とお酒をご一緒したくなったという魂胆さ。ご不満かな?」


あぁ……貴方の声だ。


「あらぁ、不満だなんて、吉見さんにそんなこと言われるなんて嬉しいわぁ。下心がおありでも裕美は嬉しいけどなぁ……」


誰?誰なの?


「ハハッ、大層なお褒めを頂いたようで嬉しいが、わたしのようなオトコは、月を見て一献、花を見て一献、雪を見て、そして美女を肴にまた一献、そんな酒がいいんだよ」


「あらぁ、肴ってことはぁ、眺めるモノじゃないってことかしらぁ?」


「ハハッ、これは一本取られたな」


「遠慮なさらず、お食べになって欲しいなぁ……」


「いや、遠慮しておこう」


「あらぁ、それは残念ねぇ……。でも、待ちくたびれちゃったぁ!もう私を楽にして下さらない?」


「それは私の役ではないさ」


それまで続けられていたギリギリの間合いを測り合うような誘いと鍔を触れない競り合いが、貴方のその一言で破れたのが判った。


「役?そんな事は私が決めるのよ!その配役で踊ればいいのよ」


「ダンスは苦手でね」


クスっと笑う舞ママ。目がそんな事はないといってる。


「苦手でもいいわよ。監督次第でどうにでもなるわ!」


「そうかな」


「そうよ!」


「監督の腕が良くても、役者の才能とやる気は必要だ。それに君は監督ではない。俺が踊る舞台じゃ、君は端役だ。君は君の舞台の主役になるべきなのさ」


「貴方も一緒に……」


「いや、俺は君の舞台では通りすがりの通行人Aだよ。本来なら台詞もなく、声をかけられる事も、スポットライトを浴びる事もなかった。君がアドリブで巻き込んでしまっただけだ。関わるべきではなかったんだよ。お互いにね。


君は自責の念に駆られただけだ。私を愛してはいまい。信じてすらいないはずだ」


「誰が貴方なんか」


「そうだよ。こんな寄り道をする必要はなかったのさ」


「でも、私が姉さんを……」


「殺めてしまったって思ってるのなら、それは大きな間違いだよ」


「でも、あたしが殺してしまったようなものだわ」


「それは違う。彼女は……。彼女は自分も私も信じる事ができずに死を選んだ。決して君のせいではない」


「姉さんが弱い人間だったとでも言いたいの!」


「強いヒトだった、だから折れちまった。いや強くはなかったのかもな。強くなろうとしてムリをして、し続けて疲れちまったんだ。


いい機会だと思う。彼女の最後の言葉を伝えておこう。ずっと迷ってた。伝えるべきなのか、伝えずにおくべきなのか。

君が幸せになってくれれば、それで私との関わりは終わる。

そうなって欲しかった。彼女もそうあって欲しいと願っていた」


「姉さんが?」


「そうだ。だが君は、いつまでも自責の念を引き摺り断ち切れずにいる。

それは、私、そして何よりも君のお姉さんも願う事ではないんだよ」




「君も知るように、涼子、君のお姉さんが亡くなった時、彼女の側にいたのは私だけだった。医者や看護師も臨終を確認したに過ぎない。


私に残したのが彼女の最後の言葉だ。


彼女は維持装置の電源を切り、コードやチューブを自らズタズタにした。私が部屋に行くとその惨状に驚き、コールボタンを押したが、返事がなかった。それすらも切っていたんだ。


飛び出し掛けた私を涼子は呼び止めた。

静かな声でね」



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