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The Body31Try it!(03)


申し訳ありません。単純なサブタイナンバーのつけ間違いです。本文に変更はございません。



The Body31Try it!(03)



眼を覚ますと君は居なかった。

心の中を風が一陣通り抜ける。


『有難う。幸せな夜でした』


ルージュで書かれたメモを手に暫しの間ボーッとした。


ルームサービスで朝食を取り、シャワーで眼を覚ますと彼女の会社に向かう。


皆既に集まっていた。



貴方が顔を出すと、一斉に振り返る。

口々に私と貴方にお礼の言葉が向けられる。結局全員で朝まで飲んでここに直行だったようね。失敗したかな、ちょっと残念ね。

でもオンナは着替えないと。夜の匂いを残したままは、少なくとも私の流儀ではないのよね。


貴方は、昨夜の服装のまま、しれっとした顔でメンバー全員に訊く。


「で、どうだった?」


「一緒に遊んで、一緒に飲んでたら、いがみあってるのがバカバカしくなっちゃって、改めて一緒に力を併せて頑張ろう!ってことになりました。

もっとも……具体的にどうしたらイイかは分かってないんです。それもお二人に下駄を預けちゃえってことになったので、宜しく御願いします!」


舞の言葉に皆も笑いながらも、不安気な眼差しで私達を見詰めていた。

彼がそっと目配せしてきた。

まったくズルいんだから……そっとため息を漏らす。


「まぁ、そんなことだろうと思って、実は昨日、ある会社の見学に、吉見所長と行ってきました」


彼がプレゼン用のシステムを操作し始め、照明が落とされると、スクリーンに昨日見たのと同じ光景が映された。

こんなのがあるなら……わざわざ行かなくったって……。そんな苦情はお首にも出さずに言葉をつなぐ。


「実際に見るのとでは違いもあるし、感じ難いかもしれませんが、実物は感動的ですらあったわね。見ての通りよ。ガラス張りのサーバールームね。無論、セキュリティについては充分考慮されてます。

吉見さんの事務所の方達は、見てお分かりのように、特別なデザインの機械が置いてあるわけではないの。無論、機械以外の什器備品や内装にはデザインの手が入っていて、周囲との調和が取れているのはウチのメンバーなら分かるわよね」


一様に皆頷く。


そこで話を切り、バトンを渡すように彼をみる。


「実はこの映像は、設置されて五年経った時のものだが、映すために特別な事をしてる訳ではない。


両サイドのサーバー群に挟まれた机の上に書類が出してあるのが見えるだろ、これはメンテの為の資料で、この時も実際に作業中だ。つまり、ほぼ日常の光景と思ってくれてイイ」


「スゴイっすね……」


木崎君か。


「つまり、いつもこれだけ片付けられてるって訳っすね」


「そういう事だ。何故だと思う?」


「見られてるから、ですね」


これはウチの真田さん。


「そっか、常に見られてるから、片付けるという行為が不文律であっても、行き届くようになるって事か」


「加えて、恐らくなんだけど、見られてるから、悪さもし難いという心理的な効果もあると思うわ」


「確かにな」


二人のやりとりに皆も首肯するように頷きながら画面に見入っていた。


「無論、悪い事しようとするヤツは、そういう心理を逆手に取る事もあるが、その辺りは別にセキュリティを施してある」


「なるほど、極論かもしれませんが、デザインはデザインとして、ITやセキュリティはそれとして、それぞれ独自に考えても問題は無い、ってことになりませんか」


恐らくは全員が獏とは感じていたであろう核心に木崎君が切り込んで来る。

吉見ぃ!これって出来レース!?昨日の予感はコレみたい。

軽く睨みつけると、そこに居たのは、ニヤニヤ笑ういたずらっ子。


このツケは昨夜の甘ったれ位じゃ済まさせはしないんだから!ゼッタイよ!


「ということだな。無論、デザインコンセプトを共有し、その枠内に仕様やコスト面も含めてクライアントの要求水準を満たし得るIT関連やセキュリティ設備を納めていく必要はある。その為に一緒にやるステップやコミュニケーションは欠かせないがね」


皆、呪縛から解き放たれたような眼をして、それぞれに思いを馳せているようだった。

その様子を眺めていたが、突然、


「さて、今の話は、飽くまでも現段階では、と割り切って欲しい。これを見てくれ、」


と言って切り替わった映像に誰もが声を失い、食い入るように見入った。

今までの映像に映し出されていた美しさの源泉が、「整然」という言葉に求められたのに対して、こちらは、スペース自体がもう芸術品そのものであり、機械が置いてあるという感じさえなかった。よく見れば、アクセスランプらしき灯りが見えるので、見るヒトが見れば直ぐにこのスペースの正体を理解する筈ね。


「これは、ある海外の企業がコストを無視して良いという条件で、ある人物に作らせたワンオフのサーバールームだ。ま、サーバールームなんてどこもワンオフだから、スペシャルな、というべきだろうな」


「どの位掛けたら、こんなもんができるんすかね……」


「一説によると、一億ドルと言われている。もっとも、単純に資材費用のみを積み上げた数字はもっと低いんだけどな。頼んだ相手が有名な建築デザイナーだったから、その価格もあながち誇張では無い筈だ」


「うへぇっ!」


「皆、覚えておいて呉れ。いいか、満足するなよ!デザインにせよ、ITやセキュリティにせよ、クライアントの要求は千差万別だし、時代も変わる。それらに合わせて、環境が変わり、境界も変わる。統合するとかしないとかは本質ではなく、方法論でしかないのさ!判るかな?」


皆コックリと頷く。


「実際に、このサーバールーム程度の規模なら、今やパームトップサイズで実現可能になって来ている。コストも充分現実的な範囲だと言ってイイだろう。そうなればITやセキュリティもその概念を変えざるをえないだろうし、デザインもその自由度は飛躍的に高まり、デザインそのものの在り様を変質させる可能性もあるかもしれん。想像しにくいだろうから、言ってしまうと、切手サイズ、いや小指の爪程のメモリーでテラ・バイトクラスと考えてイイ」


「それって……」


木崎君が絶句する。その様子を見て、ウチの社員も、何となくイメージができたみたい。無論、私も。


「そう、こんなサーバールームを作った日には、世界中の情報を集めてもまだお釣りが来る、ま、人間の欲望に限界は無いからな、そこまでは行き着かんだろうが、割り切れば出来なかない、ってことだよ。デザイン側の話し方をすれば、まぁ、人間のサイズが小さくなって、しかも宇宙空間に放り出されるようなもんかな。想像がつかんだろ?私もデキン。


そんだけのギャップ、小賢しい言い方をすれば、パラダイムシフトってやつかな、ソイツが、もう間も無く、起こる。クラウドなんて言って世間が騒いじゃいるが、そんな事は、単なる予兆だ!小さな枠組みでグダグダしてる暇はお互いに無いぞっ!」


「うーん……」


木崎君のみならず、考え込む彼の事務所の面々。いつに無く檄を飛ばす貴方に戸惑いを隠せないのは、私も同じ。


イイえ、昨日の不安げな貴方を知る私にこそ、パラダイムシフトよ!


その様子をゆっくりと見渡すと、貴方は厳かに宣告する。


「以上だ。舞君、以降の広報に関する照会は全て私に回してくれ」


ズルいヒト!トコトン、独りで泥水を飲むつもりね。


あたしの悲しい気持ちを遮るように声を掛けて来た。


「広田社長も、コメントは控えて貰います。申し訳ないが、お願いします」


分かったわよ、でもツケはツケなんだから!とばかりに軽く睨んで頷く。


「所長!この後、チョットイイっすか?」


最初に立ち直った木崎君が、貴方に話し掛けた。


「あぁ」


「広田社長、この会議室をそのままお借りします」



「済まなかったな」


「イイえ。楽しかったっすよ」


「そうか。で、なんだ?」


「えぇ、秘書さん、気を使い回っていたようで気の毒でした」


「ありがとう。そっちは後でケアをしておくようにしよう」


「そうしてあげて下さい」


「あぁ。済まんな」


コンコンとノックの後、顔を覗かせたのは、広田社長だ。


「イッケね!」


と小さく呟き、脇をすり抜けていこうとする木崎君の首根っこを抑えて、


「ちょっとイイかしら?木崎君、あなたもどうやら共犯よね」


当の首謀者は苦笑いする。


「すまん。彼は私の指示に従ったまでなんだ。いいとこ、従犯がせいぜいだ。離してやってくれ」


「ふーん。じゃぁ、罪を認めるって事かしら」


手を離す。


「じゃ、そういう事なんで、俺は……」


と言ってそそくさとドアを閉め、出て行く木崎君。足音が遠ざかるのを確かめ、徐に斬りつける。


「一体どういう了見よ!?」


「コロンブスの卵は知ってるだろ?」


「それが何だってぇのよ!」


「あっさり答を出しちまったら、誰も考えなくなる。違うかい?」


「そりゃぁ……」


「それなりのステップが要るのさ」


「分かったわ。で、昨夜のは何よ!あれも儀式だっていう気!?」


「いや、あれは」


「何さ!」


「俺の甘えだ。君だから甘えてしまったんだ」


あっさりと白旗を掲げ、見詰めてくる。


「許して呉れとか、済まないとかはないの!」


「あぁ、実のとこ、それ程悪いとは思ってないんだ」


ニコッと笑う。


癪に触る!


「ツケにしとくわよ!いつかきっと取り立てるんだから!」


「うーん。利子がそれ程溜まらんウチに頼むわ」


「あっきれたオトコね。そんなに待たせる気なの?分かったわよ。利子だけ貰っとくわ!」


唇を奪う。ナスがままにされる貴方。悔しいから鼻を軽く噛んでやる。


「今日はこの辺で勘弁してあげるわよ!」


「助かるよ」


「もう腹の立つ!」


と言いながら、鼻歌混じりで社長室に戻る。


まったく悔しいんだから!




家に二人で帰る。


「ゴメンなさい。電話しようと思ったんだけど、気がついたら、飲み始めちゃってて、雰囲気壊すのイヤでそのままにしちゃった」


「あぁ、いいさ。私も考え事がしたくて、無断外泊させて貰った。だからアイコさ」


「そっかぁ。あぁ、よかったぁ。あ、これお土産。帰ったら見てね」


「ありがと。そうだ。今度二人で行かないか?」


「えっ!」


「ディズニーランドにさ」


「イイの?」


「悪い訳ないじゃないか。実は……」


貴方は笑うと白状した。


「私は行った事がないんだ。君に夢の世界とやらへ是非案内して欲しいんだけどな」


「ウン!歩き回って疲れたら、マッサージしてあげるね!」


「そりゃぁ、本当に夢心地になりそうだな!」


二人で笑っていたら、あっというまに家へついてしまった。



座った貴方の膝にモミが飛び乗る。

でもあたしが食事の準備を始めると、直ぐに足元にやってきて、頭や顔を擦り付けるようにして、お食事をねだるの。


「ごっめーんねぇ、モミぃ!お腹すいてるわよね!」


貴方と離れていた一日分を取り戻そうと、あたしは夢中で貴方を求め、やがて満たされて眠りについた。



朝方気付くとモミが二人の間のスペースに潜り込んでいた。



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息をするように嘘をくという表現があります。小生の感覚では、この表現は男性に対して使われ、女性に対して使われることは少ない、もしくはほぼほぼ無いように思います。加えてその表現には、悪いイメージというだけではなく、何らかの庇護?的な意味合いも含む微妙なニュアンスだと受け止めています。これは小生がの男という属性からの贖罪のようなものかも……。

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再々に渡る「今更」なのですが、視点の切り替えを頻繁にしています。また、会話文も「誰が」をはっきりさせていません。少々判りづらいかも知れませんね。会話のリズムとか考えますとどうしてもそうなる、というのは言い訳で、今の小生の力量及ばずということでご容赦願います。

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