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The Body29Try it!(01)

The Body29Try it!(01)



突然、舞ママがウチにやってきた。


「今日はお願いが合って来たの。仕事のことなんだけど、まだ社内には極秘にしておきたいし、愛ちゃんにも承諾をして貰うというプライベートな背景もあるので、お宅へお邪魔させて貰ったわ」


いつになく改まった口調で切り出した舞ママは続けた。


「建築デザインを長い事手掛けて来たけど、最近の傾向として、ITやセキュリティの観点が外せないのよ。勿論、いろんな局面で、貴方に相談には乗って貰っているし、そのレベルでも今までは十分にこなせてきたわ。ただ、これからはデザインのスタート段階でセキュリティを考慮したものにしていったらどうかって考え始めてるのよ」


「ふむ。なるほど。クライアントの意向は兎も角、自由性の高いデザイン、それとは相反する面の多いセキュリティという二つの要素をスタート段階から総合的に考えるってことか」


「そう、使い勝手や働き易さという点で利害を合致させる必要もあるわ」


「うーん。で、具体的には?」


「一緒にならない?」


「君らしいなぁ……やらないか?じゃなく、ならないか?か。

最初にお願いがあってと聞こえたのは空耳だったか?」


私をみやって苦笑する。


「そっ!」


言ってしまってホッとしたように舞ママは、珈琲を手に取り、一口啜って、貴方の顔を見詰める。仕事の眼なのか、オンナの眼なのか、あたしには判断がつかない。多分どっちも混ざっている気がするな。


「うーん」


迷ってる訳ではないわね。貴方の気持ちはもう決まっている。


「分かった。基本OKだ」


「じゃぁ!」


「ちょっと待って欲しい。色々と考えなきゃいけないことがある筈だ。舞君は、どうなんだい?」


「これからよ。貴方の返事を貰ってからと思っていたから」


「そう……まぁ、舞君なら大丈夫だろうな」


「えぇ」


と言いつつ、あたしを見る二人の眼。


「もう、イイわよ!レールは敷かれてるようなもんじゃない!」


貴方は少しの間考え込んでから、


「まず両者でプロジェクトチームを作って検討を進めよう。そのチームにはテストプロジェクトを二、三担当して貰う。当てはあるから、案件の方は、任せて呉れるかな」


「お任せするわ」


「その結果次第、ということでどうだろ?」


「えぇ、それでいいわ」


「プロジェクトは、舞君と愛の二人をリーダーに進めて貰う、それもイイかな?」


「分かったわ」


「えぇっ!あたしなんか……」


「大丈夫だ。二人でバックアップはするさ」


貴方には考えがあるのだろう。不安だけど、肯くしかなかった。

話を終え、舞ママが帰った後、一人書斎に篭った貴方の様子は少し不安だった。

どうやら何処かに電話をしてるようね。


「遅くにスマんな」


「うん、チョイと話がある。所内じゃチョットマズイんだ。直ぐウチに来て貰えるか?」


貴方は部屋から出て来ると言った。


「ザキを呼んだ。碌に食ってないだろう。軽く食べるものを用意してやって貰えるかな」


1時間程してから、木崎さんがやって来た。


あたしがサンドイッチ等を持って行くと、一緒に加わるよう言われた。


木崎さんは、会社では余り目立つ存在ではなかったのに、何故か貴方の影の手足と言われることがあった。見た目暗くて、居るのか居ないのか分からないような存在だったので、そう言われる理由は分からなかったのだけど。


「ザキ、ついさっきまで広田社長がいてな、デザインとセキュリティを合同で進める話を持ち掛けられた」


「へぇっ?それは仕事としてですか?それとも会社を一つにするという意味ですか?」


「あぁ、後者を前提とした話だ」


「うーん、そいつは無謀じゃないっすかねぇ」


「そうなんだ」


えぇっ?!さっきはOKって……。


「可能性がゼロなら、私も挑戦するのはやぶさかではない。だが、二割がた、つまり八割程度の成功の可能性があるだけに、無謀、というか、詰まんないよな?!」


「所長らしいなぁ」


ククッと笑う木崎さん。


「どちらかが、或いは双方が妥協すれば、って事っすよね……」


「あぁ、妥協したデザイン?妥協したセキュリティ?ナンセンス!だろ?」


「そうっすね。今時ナンセンスという表現はいただけないっすけど」


にやつく木崎さん。事務所でこうした口を貴方にきくヒトはいない。


「俺が歳だと言いたいのかな?」


「いや、表現力が豊か過ぎて、今時の若いモンは、ついてくのに苦労するってだけのことっすけどね」


「それを理解しているお前もって事、になるよな」


「所長に長年付き合ってりゃ、分かるようになっちまいますよ」


「ふん。まぁそう聞いておく」


ニヤニヤ笑いの木崎さん。


「でだ、プロジェクトチームを立ち上げて、細部を詰めながら、テストケースを幾つかやらせることにした」


「広田社長を傷付けず、仕事も無事に完了させる、だけど内実失敗だと判らせるってことっすかね」


「そうだ」


「で、俺の役回りは?」


「3つある。テストケースを受けるにあたり、例の如くコンサル業務も受ける事になる。お前さんには、プロジェクトチームの中に居て貰って、それを担当して貰うが、サポートというより、実務サイドは例のチームでするから、実務面は気にしなくていい。相手側との直接対応の窓口業務がメインと考えてくれてイイ。それが一つ目だ」


「へぇいっす」


「次に、プロジェクトはデッドエンドに嵌り込むはずだな。その時、妥協する方向に向かうようなら、その流れを止め、ぶつかり合わせて互いの高みを目指させる。早い話、憎まれ役をやって呉れって事だな。それが二つ目」


「うっへぇ」


「最後は、外向けには成功と見せつつ、内部的には失敗だった、もしくは再考の余地有り位には悟らせる。これはまぁ切り口を見つけてくれればイイし、やってりゃ自然と気付くだろうから出番は無いかもしれん。以上がお前さんの役割だ。楽なもんだろ?」


今度は貴方がニヤツク番。


「ラジャっす。いつものことだけど所長もキツイよなぁ」


「悪いな」


「本当にそう思ってます?」


「イヤ」


「まーったくヤナ性格!」


「嫌いじゃないだろ?この手の裏方」


「ヒッデェ!と言いたいけど、まぁ、そうっすけどねぇ。

で、奥さん、すんません、秘書さんは、なんかで関わるんですか?」


「あぁ、先方のお嬢さんと一緒にチームリーダーをやって貰う」


「それって、さっきの話でいうと、最後の敗戦処理をしろって言ってるようなもんじゃないっすか……そんな事させるんっすかぁ?」


「ま、最終段階は俺が引き受ける積りだ。二人は、ムードメーカーだよ。プラス方向へは先方の舞君が、モデレートを愛が担当と言った所だろう」


「で、マイナス方向での火付けと扇動が俺っすかぁ」


「あぁ!なぁる……チェッ、所長がその覚悟なら受けるしかないっすかね」


「そういうことだな」


「あぁあ、俺って、ホント損な性格だな」


言葉とは裏腹に楽しそうな顔をする木崎さん。そんな彼を見ていたずらっ子みたいに笑ってる貴方。似た者同士って感じもする。


なる程ね、これが影の手足って言われる所以なのかな。




二つの会社でプロジェクトチームが立ち上がり、合同で詳細の検討が始まる。何も分からないなりに、やってみると結構面白いのね。


それにしても意外だったのは、デザイン会社の方が自由度の高さが必要かと思っていたのに、セキュリティ部門を構成するこちら側の方が、予算面で自由度を求める割合が高かった事よ。進歩の激しいIT、特にセキュリティ系は研究調査が欠かせず、間接コストが氷山のように埋没していたことが分かる。


それぞれ専門の組織同士が一緒になるというのは初の試みという事もあって、噂が流れ始めるとマスコミが取材に来るようになる。対応は、勿論、それぞれの代表も受けるけど、プロジェクトチーム、その中でも舞が広報として、対応することが多くなった。外交的な舞は適役だ。


お互い学ぶ事が多く、手戻りなんかも当初はあったけど、飲み込めばプロ同士、順調に和気藹々と進んで行く。

本当に失敗するのかな?



だけど、お互いの仕様が煮詰まりかけて来ると状況は一変する。デザインを追及しようとすれば、セキュリティを無視せざるを得なくなる。その逆も同じ。


お互いのチームで、議論を重ねるけど、平行線。仕事はこちらが用意したものという強みがあって、舞も渋々折れ合おうとするのだけれど、その都度木崎さんが、


「それじゃぁダメだ、クライアントが納得しない。何より、そんな半端なデザインを世に送り出したら、広田社長はもとより、吉見所長の名にも響く!絶対ダメだ!」


と言って竿刺すもんだから、同じ所員側からだけでなく、相手方からも不平不満が頻発し始め、チームの空気はサイアク。



そんな空気のまま、ムダに時がすぎて行く。煮詰まってしまってから二日程経った時、差し入れを持って貴方がやって来た。広田社長も顔を出す。最初のウチは、遠慮して大過のない無難な状況報告に終始していたメンバーだったが、誰かがチョットした不満を言い始めるとイッキに爆発した。


懸命に説得しようとする広田社長を尻目に黙って聞く貴方。

暫く議論にならないような議論が続く。


ガス抜き、にはならないよ。言い合えば言い合う程、不満が募っていくんだもん。


「さて、言いたいことは以上かな?」


穏やかにメンバーを見渡す貴方に、メンバーも少し落ち着いて肯く。


「言い合ってても仕方ない。ここ迄来たら、後はやるかやらないか、だ。違うか?」


不承不承ながらも肯く面々。


「とはいえだ、このままじゃ仕事にならんよな……」


と、一区切り置いたが、既にワル企みは完結している感じ……。


「そうだな、今日は、休み!業務命令だ。全員でディズニーランドにいって来い!費用はウチで持つから花火が終わるまで行ってろ!」


皆不安な顔付きで、舞とあたし、そして広田社長を交互に見る。説得に疲れた社長も溜息をつき、


「そうね、そうしなさい」


チームメンバーは、不安な中にも嬉しそうな表情をする。


そりゃそうよね。費用も会社持ちなら文句なしのお仕事だわ。


「愛、済まんが、全て領収書を貰って来てくれ」


「総てって、食事とかもですか?」


「あぁ、単独行動したら自分で持つこと、全員でする飲食については、こちらで負担する。社のクルマを使ってくれ、駐車場代もこちらで持つ」


「分かりました」


「さぁ、そうと決まれば、グズグズしてないでサッサと行くんだ!」


ポンポンと手を打って、退席を促した。

貴方は、最後に部屋を出ようとした木崎さんにそっと耳打ちする。


「じゃぁ。お守りは頼んだぞ」


「はぁ……」


流石の木崎さんも自信無げだよね。


「まっ、後は何とかする。フレームアップだけでイイ」


「分っかりました……」


諦めたように嘆く彼の肩をポンと叩いて送り出す。そして彼に続いて出て行くあたしにも耳打ちした。


「愛、スマンな。思い切り楽しんで来てくれてイイ。終わったら全員で飲むなりしてもイイから」


「はいっ!」


貴方には何か考えがあるに違いないと信じ、不安な思いを拭って、飛び切りの笑顔で答えた、つもりだけど、肩をそっと抱いて送り出された。




貴方は、部屋に残って肩を落とす私を見て言う。


「さてと我々も息抜きに行かないか?」


「呑気ねぇ」


「偶にはデートにと思ったんだが……ダメかな?」


「本当かしら……」


ニヤニヤ笑いは、悪企みの進行中よね。



久々のドライブは、何年ぶり……かな?




今一つサブタイに納得が出来ていないのですが、かと言って良いタイトルも浮かばず、で投稿致します。

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