表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/38

The Body26Our funny Weddings

The Body26Our funny Weddings



舞ママにお願いしてた元の家の始末がやっと済んだ。思い出の詰まった家を手放すのは寂しかったが、二つあっても仕方がないので、あたしの荷物の大半と思い出の品だけ持ち出した後の荷物を処分してお願いしていた。


「帰る家なくなっちゃたな……」


貴方が黙って抱き締めていう。


「どこにも帰る必要はない、ここが君の帰る家だよ」


「そうね」


寂しさを振り払い、身体を離して居住まいを正しながらも戯けて言った。


「ヨロシクお願い致します」


ちょっとだけ下げた頭を持ち上げて見ると、貴方は厳かに言った。


「レイ、貴女のムスメを預かる。決して離さない。そっちで会うことがあれば、三人で話をしよう」


「ママ、見ててね」


二人で小瓶に手を合わせた。




幸せだなぁ……そんな風に日が過ぎていったある日山中さんが結婚で退職されることになり、挨拶に来た。


一通りの挨拶が済んだその席で山中さんが切り出す。


「ねぇ、愛さん!」


「はい?」


「貴女、所長の秘書をやらない?て言うかぁ、やって欲しいの」


「はぁ?」


「ウチの事務所はチームワークで仕事をこなしているけど、やっぱり所長のキャラで仕事を取ってるのが大半なのね。色々人を付けてスキルや顧客との関係は皆飲み込んで来てるの。でもね」


「えぇ」


「所員を付けちゃうと、っていうか、所長が出て行くと、あっちもこっちも硬くなっちゃうのよ。それだけ、所長がこの世界のオーソリティだって事でもあるし、それ自体は悪いことじゃないんだけど、ちょっとは雰囲気を和らげる必要はあるの。その方が仕事の範囲とか幅に広がりも出易いしさ。で、あたしなりにも努力はして来たし、常にヒトにも当たって来たのよ。だけどうまくいかなくてさぁ、それで貴女って訳!」


「はぁ……」


チラッと貴方を見る。貴方は目を瞑っていた。


「どう思う?」


目を開いて貴方は、


「うーん、悪くないと思う」


「ですよねぇ、それで、所員にきちんとアピールする必要もあるから、お二人にはついでに、籍を入れて頂こうってことなんです」


「そこか……」


と呟いた貴方は苦笑い。

「そう。だっていつまでも今のままじゃ、愛ちゃんも可哀想ですよ!」


「あたしは……」


「うぅうん。絶対良くないわ」


「所長もそう思っているはず。勿論、色んな障害があるのは察しているの。そんな半端で済ませる所長じゃないもの。未だにってことはそれなりの理由はあるんでしょうね。でも、もういいんじゃない!?という外圧を掛けに来たの!」


ウィンクはあたしに。


ありがと。でも、あのサクラちゃんがどう反応するか、すっごく不安だな。


「でね、今度のあたしの式には、所長のお嬢さん達にも来て頂きたいの!フラワーガールとしてよ。ね、いかが、所長?」


「そこまでしてくれるのかい?」


「えぇ、代わりにご祝儀は大いに期待してますけどね」


「そんなことがなくったって……だが、ありがと。そのプランに乗らせて貰おう。イイかい、愛?」


「えぇ」


「もっとも二人はOKでも……。ちょっと禁じ手を使うかな」


「それってサクラちゃん達に……」


「いや、電話するベストなタイミングを教えてもらうだけさ」


「ならイイけど」


「他ならともかく、私は二人に無理をさせる気はないよ」


「うん」


「もう完全にイイ夫婦ね」


「そんなぁ」


「おいおい」


裏で動いたのは舞ね。

お礼を言えば、きっと自慢気にするんだろうな、言わないとこ見ると、山中さんは口止めされてるのよね、黙って乗ってしまう方がいいのかなぁ。


「ねぇ、これって……」


「舞くんの差し金、だろうね」


「気が付いてたの?」


「あぁ、山中君は、サクラ達の存在は兎も角だが、事情そのものはよくは知らない筈さ。だとしたら、出てくる答えはそれだけだろうね」


「そうよねぇ」


「あぁ、君は黙って乗って上げてくれ、礼は私から彼女にそれとなくするようにしよう」


「そうするわ」


「それにしても……舞君も意外と苦労人だ」


「うん、ほんと、そう思う」


二人へのフラワーガール依頼は、二人のOKは勿論、お母さまの了解も無事取り付け、式も粛々と進行していく。最後に山中さんは、ブーケを投げずにサクラちゃんに手渡す。するとサクラちゃんは、はにかみながら、はい!ブーケは、あたしの目の前に差し出された。

サクラちゃんとカノンちゃんを交互に見る。カノンちゃんはニコニコと、そしてサクラちゃんはにこやかに笑い掛けてる。


受け取ったブーケを盾に涙するあたしを二人が優しく包む。式の時とは違う、小さいけれど温かな拍手が鳴り響く。


山中さんが近付き、小さく耳打ちする。


「おめでと!」


もう言葉にならず夢中で肯く。

二人を送っての帰り道、の筈が、いつもとは違う道をクルマは走っていた。


「どこに行くの?」


彼は無言で運転を続けた。やがて見覚えのある景色が現れ始める。


「そっか」


クルマが停まると、あたしは降り立った。向かった先はママの墓前。

あたしが屈み込むと貴方も並んで手を合わせた。


「レイ、改めて報告だ。愛を貰う。今更反対してもムダだよ」


そう言った後、あたしの方を向くとそっとウィンク。


「ママ、うーん、です」


「なんだそれ!」


二人で笑顔を交わし合う。

家に着くと、見計らったように舞からメール。しかもたった一言。


「んで!いつ?」


バルザック並ね。


「今直ぐ!おいで!」


そのやりとりを見せると何もかも承知してるとばかりに貴方は肯いた。

程なく舞が、サクラちゃんとカノンちゃんを引き連れて登場した。


「ママも来るわ。賢一が連れて来る」


やがて舞ママと賢一さんが、ちょっと遅れて山中さんが旦那さん同伴でやって来た。


「もう気が早いんだから、おちおちハネムーンにも行けないじゃないの!」


「どうせ見込んで出発は明日でしょ!」


舞のツッコミに一同大爆笑。

そっとサクラちゃんを見やると、サクラちゃんは貴方にそっと近付き、耳打ちしていた。うん、うん、と肯く貴方の目は嬉しそうに濡れていた。


カノンちゃんは、主役そっちのけで周囲に笑みを振舞っている。あの舞が、お嬢様にヌカずく小間使いか乳母の如くといった風情で、そんなカノンちゃんの世話を焼く。


騒がしかった座の空気が収まった時、山中さんが口火を切る。


「皆さん、先程はあたし達の門出に際してお集まり頂き、また盛大なお祝いを有難うございました。さて、そのあたし達の幸せな空気に感化されたらしく、ここにまた新たなカップルが、」


とヒト呼吸置いた。


「なんと!二組もゴールインする事になった事をお知らせするという、喜ばしい役を勤めさせて頂きまぁす!」


二組っ!?


「ここに居る我らがボス、吉見所長と愛さん、それと賢一さんと舞子さんです」


感嘆の声と拍手!

カノンちゃんが、「舞お姉様」の頬にキスする。舞ったら、蕩ける様な顔をしちゃって。


「正式な宴は、帰って来た私が腕によりを掛けて、仕切らせ貰うわ。今夜はささやかな内祝いね。思いっきり楽しんじゃいましょ!」


「山中くん、すまん、今は清水新夫人だったな。君が腕によりを掛けたら、大事になるんだがな!」


「えぇ、覚悟しておいて頂きます」


皆釣られて笑ってしまった。サクラちゃんも……良かった。でも気になるな。そっと耳打ち。


「ね、さっきサクラちゃんはなんて?」


「あ、うん、いいヒト達だね、おめでと、そう言ってた」


「そうなんだ……そっかぁ」


そっと見ると、偶々だろうか、こちらを見たサクラちゃんと眼が合う。

その顔がニッコリと笑った。

可愛い!


山中さんがハネムーンから戻ると、程なく合同結婚式が恙無く執り行われた。

舞と賢一さんは、その足でヨーロッパ旅行に出掛け、あたしは翌日から秘書業務を開始した。


一週間もすると慣れて来たかな。周りの評価も悪くはないようだし、始めた頃はどぎまぎしてたけど、ホッと胸をなぜおろす。


ただ、仕事と家庭のモードの切り替えにはまだギクシャクしてる。帰りのクルマの中で思わず所長と言い掛けたり、顧客との面談中に英司さんと呼び掛けてハッとしたり、そんな時、思わず舌を出してしまって顔を赤らめ、そんなあたしをお客さんと貴方は一緒に苦笑いするのだ。幸いに、周りはそんなあたしを温かく、見守ってくれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ