表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/38

The Body24we've got the lost(01)

The Body24we've got the lost(01)



あたしの卒業が近付いたある日、彼にお酒を飲みに誘われた。


「そろそろ卒業だね。一つお願いがあるんだが……」


「なぁに?あたしがお願いする立場の筈なのに……」


「私のムスメ達に会って欲しいんだ……どうだろう?」


「それって……」


「あぁ」


「うん!」


「良く考えて答えて欲しいんだ。キツイ会見になるかもしれないんだよ」


あたしは背筋を伸ばし、彼の顔を見詰めた。


「覚悟はしてます。大丈夫。それに一度はお会いしておかないと……でしょ?」


彼はあたしの顔をじっと見て、やがて微笑んだ。


「そうだね」


「ねェ、英司さん、もっとワガママにして下さい」


「イイのかい?多分、大変だよ」


「多分じゃないわね。絶対に、よね」


「あぁ、宣告しておくよ」


「うん、イイよ」


彼は一瞬驚いた顔をした。


「その顔、ママみたいって思ったんでしょ。イイよ。そう思ったら、そう言ってイイ。うぅうん言って欲しい。だって、あたしはママのムスメだもん。似てるとこ一杯あるよ。だったら、一杯見せてあげる。でも、それもあたしなの」


ジッと見詰めあう。


「OK。どうやら私の方が覚悟を必要としているな」


「うん、そうよ!」


苦笑する貴方を素知らぬ顔でそっぽを向く。


「それも似てるな……」


「うん」


やっと彼の方を向いて笑顔を見せて上げる。


「参ったな……」


ふふっ。




その日は晴れ。

ホテルの喫茶店で、あたしは彼達の座る予定の席に背を向けた別の席で緊張しながら待っている。


彼が、2人の女の子を連れて入って来る。席の側を通る時、軽く目配せ。

あたしは、心持ち硬い表情だったと思う。コックリと頷く。


「二人とも好きなものを頼んでイイぞ」


「あたしはオレンジジュースとぉ、チチぃ、ケーキ頼んでイイ!?」


苦笑する貴方の顔が浮かぶようだ。どうやら妹さんね。屈託がない子。

お姉さんらしき方は、


「じゃ、あたしも同じで」


と続けた。


暫く日頃の話をお互いにしていた。

やがて改まった口調になって貴方が言う。


「実は二人に会って欲しいヒトがいるんだけど、会って貰えるかい?」


「なぁにぃ、チチぃ、彼女でもできたの?」


全く屈託のない子だな。


「カノン!チチ、そのヒトってチチの大事なヒト?」


「そう。大事なヒト、だ」


「そう……」


お姉さんの方は、黙って俯いた。焦らすように時間だけが過ぎて行く。

やがてボソッと呟くように言った。


「イイよ。会ってあげる……」


苦しそうな押し潰すように絞り出した低い声。心が傷んだ。


「そうか、会って呉れるか」


貴方も辛そうな声。


「じゃぁ、席にきて貰うよ。愛、君」


辛い気持ちに別れを告げ、あたしは立ち上がる。笑顔をつくり、三人が居る席の脇に立った。


「初めまして!」


妹さんの方が、一瞬あれっ、という顔をした。以前、ママに付き合って、地域ボランティアに行った時に二人には会ったことがある。覚えてたのね。


「愛です」


彼が席をずれ、あたしは、


「掛けてもイイかしら?」


と二人に尋ねた。

妹さんの方は、好奇心一杯のキラキラする目で、お姉さんの方は、悲しげな目でそれぞれに頷く。


「愛君、姉のサクラと妹のカノンだ」


「よろしくね」


「ハァ……ヨロシク」


これはサクラちゃん。


「ハイッ!」


これはカノンちゃん。


「ゴメンなさいね。急に、どうしてもお二人に会いたかったの」


何か言い掛ける彼を目で制して続ける。


「あのね、お二人のお父さんとお付き合いをさせて貰ってるの。だから、どうあれ、お二人にお会いすべきだって。もし、許して貰えるなら、これからもお二人とお会いしたいな。そう思ってるの。どうかな?これからも会って貰える?」


「うん、イイよ!」


「カノン!少し考えさせて下さい。スミマセン……」


「うぅうん、イイのよ。当たり前だわ、同じ立場なら、同じ気持ちになると思う」


コックリと頷くサクラちゃん。

急に顔を上げて貴方の目を見る。


「結婚するの?」


鋭い!


「その積もりだ」


「そう……そうなんだ。でも……でも、ハハは、一人だけだよ。サクラやカノンのハハは、このヒトじゃない!

チチの奥さんにそのヒトがなったとしても、サクラやカノンのハハにはなれないよ」


悲しげな声。


「勿論そうだ」


「でもぉ、新しいお姉さんにはなれるよね?ね、そうでしょ?」


こちらは元気な声。前向きね。


「えぇ。お二人さえ良ければ、新しいお姉さんで十分よ」


「サクラだって、お姉ちゃんが欲しいって言ってたじゃん」


「そりゃそうだけど……」


「まぁ、いいさ、サクラ、よく考えてサクラ自身の答えを出していいんだよ」


「そうね。カノンちゃんのお話は嬉しいわ。でもサクラちゃんは、サクラちゃんの答えを出して聞かせて。ね、お願いよ」


「分かった……」


その様子を見てもう限界かな、と思う。


「吉見さん、あたしはこれで先に失礼します。サクラちゃん、カノンちゃん、もし良ければ、またお会いしましょ?」


躊躇う事なくニコニコと頷くカノンちゃん、まだ暗い表情でコックリと頷くサクラちゃん、姉妹とは言え正反対なのね。


「じゃぁ」


彼にこのままでと眼とジェスチャーで制し、席を立つ。


「じゃぁ、またねぇ!」


ニコニコと手を振るカノンちゃん、サクラちゃんは俯いたままだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ