The Body17As time goes by……(03)
The Body17As time goes by……(03)
吉見さん抜きで舞の家で勉強会だ。アンド、クリスマスのプレゼント作戦も兼ねていた。一頻りアァデモナイコウデモナイとやりとりをしてお茶になった。
貴方が居ない寂しさが、急に胸に迫り、あたしは沈み込んでいた。
舞ママが気にして尋ねてくれる。
「どうしたの?愛ちゃん、何かあったの?」
「え、えぇ……」
黙り込むあたしを暫く見ていたが、舞ママはやがて呟くように言った。
「愛ちゃん、貴女、恋をしてるのね」
「えっ?愛!ホント?」
「舞、あなたは少し黙ってなさい」
舞はちょっと不服そうにしたが、好奇心に勝てなかったようだ。目を煌めかせてあたしを見詰める。
「愛ちゃん、話してくれる?力になりたいの。お相手の想像はついているわ。彼、よね」
一瞬顔を上げるとママが居た。涙が溢れてきた。
あたしは訥々と語り始めた。
ママと彼とのこと。その時芽生えた想いの事。そして募る一方となっていく思いの丈の全てを曝け出す。
あたしが語り終えると、暫くの間、沈黙が部屋を支配した。
「あのね、愛ちゃん、貴方の恋は、もしかすると、実る事はないのかもしれない」
抗議しかけたあたしを遮り続ける。
「これは勿論可能性の問題。外れるかもしれないの。だって、ライバルは亡くなった貴女のママ。死んだ人には勝てないわ。そして吉見さんは、そういうヒト。だからこそ貴女は惹かれた。恋をした。違うかしら?」
力なく頷く。
「そう。だから多分貴女は誰がなんと言おうと恋し続けるのでしょうね。
それも仕方が無い事ね。貴方がその運命のエアポケットから抜け出すのか、或いははまり込んだままなのか、それともエアポケットが消えてしまうのか?もしかするとエアポケットと一体になれるのか?分からない。誰にも分からないわ。
そうね。傷つくかもしれない。一生消える事の無い傷を負うかもしれなくてよ。それでもイイ?後悔しない?」
山中さんと同じだった。ただ、もっと深かった。深い愛が感じられた。
同時に、彼への深い理解も……。
「悪い事だとは思わないから反対はしない。でも味方もしない。傷つくとわかっていて、千尋の谷に突き落とすような強さは私にはないの。だから見守って上げる。それだけよ。イイ?」
わたしは頷くと一言だけやっと言った。
「アリガト……」
脳天気の舞も流石にしばらくの間黙っていたが、立ち直りは一番早かった。
「あぁ、チェー、あたしも吉見さん、狙っていたのになぁ」
「舞っ、貴女の恋は軽過ぎるのよ。
天然もあるけど、貴女の場合、殆ど計算づく。女の子のうちはそれでもいいの。そしてその方が良い結婚はできるかもしれないわ。でもね、オンナになるとき、その軽さや計算を超えなくてはならない時がある。多分ね。
オンナって言ったけど、sexって言う意味ではないのよ。精神的という意味でもないの。なんだろ、オトコとオンナ、そういう関係も超えた感覚なのね」
諭すようにではなく、思い出を語るように言った。
「うーん、分かんない!」
舞ママは苦笑していた。
「分かんないけど、愛、あたしは味方だからね!」
「舞!」
「分かってるって、口出しとかはしないわよ。それならイイでしょ?気持ちの問題よ、ママ!」
25日が来た。舞の家の前での待ち合わせ。彼は花束と小さなバッグだけを手にしていた。
あたしを貴方は眩しそうに見た。
「見覚えのあるドレスだ」
「ウン。褒めて上げる。ママのお気に入りだったもの。あたしも好きなんだ。ママに包まれてる気もするの」
「そっか。ミッソーニだ。古いものだが、私の好きな時代のミッソーニのものでもあるんだ。その頃のは貴重だ。大事にするとイイよ」
「あら、ひょっとして……」
フッと笑うと、
「言わぬが花、だよ」
「ウン」
嬉しかった。ママがタンスの奥に箱に入れて大事に仕舞ってた訳が分かったわ。
頭を軽く抱き寄せ、髪を撫ぜる。
ママじゃ無いよって言おうかと思ったけれど、これも……言わぬが花ね、きっと。
楽しい食事が終わり、プレゼントを交換した。彼は、小さなバッグから、小さな包みを3つ取り出した。
「ウワァー!ね、ね、開けてイイ?」
iPod!
「充電はして貰ってある。それぞれのイメージで曲も入れてみたんだ」
ちいさなシャッフル。へェーと呟きながら銘々に曲を聞き始めた。
思わず涙。あの曲だ。
二人の目をはばかる事なく、抱きついて、あたしは言った。
「ダイスキ!」
「おいおい」
やんわりと引き離すと言った。
「改めて、メリークリスマス!」
「ウン。メリークリスマス!」
二人も苦笑しながら声を合わせて言う。
「メリークリスマス!」




